マーチャンダイジングの5つの適正とは?|軸となる考え方を徹底解説
MD(マーチャンダイザー)が計画を立てる上では「5つの適正」を軸としています。本記事では、アパレルブランドや大手スポーツアパレルなど数ブランドでMDを経験してきた筆者が「5つの適正」について解説します。
【お役立ち資料】商品ライフサイクルに応じた販売計画の作成ガイドはこちら>
5つの適正とは
「5つの適正」とは、アメリカ・マーケティング協会(AMA)が定義したマーチャンダイジングにおける基本的な考え方であり、以下5つを指しています。
- 適正な商品:顧客のニーズに合った商品やアイテムになっているか
- 適正な場所:仕入先、出店先、商品配置など顧客に適した場所になっているか
- 適正な時期:仕入れや販売時期が、顧客が求めるタイミングで商品を提供できているか
- 適正な数量:過不足のない数量を用意できるか
- 適正な価格:いくらで仕入れて、いくらで販売するか。ブランドコンセプトから想定できる価格になっているか
MDはこの5つの適正をもとに計画を立て商品の仕入れから販売、振り返りまでを実行するため、ブランドの軸にもなる非常に重要な要素となっています。
MD計画に関しては、筆者が以前執筆した記事も是非併せてご覧ください。
マーチャンダイジングとは? MD計画の基礎と成功に導く鍵を解説
5つの適正・ブランドコンセプト・ターゲットのバランスが重要
5つの適正を考える上では、ブランドコンセプトとターゲットがしっかりと設定されている必要があります。
そもそもブランド立ち上げ時に、ブランドとしてどのようなコンセプトでいくか、どのようなターゲットを狙いたいか、ペルソナを作りながら決めると思いますが、この部分が具体的に定まっていないとMDとしての業務は上手く行きません。
昨今、ファストファッションの流行やインフルエンサーによるアパレル領域への参入が増えたことにより、ブランド数が非常に多くなっています。つまり、似たようなコンセプトを設定しているブランドが増えているということです。
似たようなブランドが増えた中でコンセプトやターゲットがぶれていると、一気に売上が落ちていってしまいます。逆にコンセプトが明確になっており、それがターゲットに届いてさえいれば、ファンは必ずついてくれます。
そのため、ブランドコンセプトとターゲットを細かく設定し、軸をぶらさないことがブランド存続の鍵になります。
また、さらに継続して売上を上げていくためには、ブランドコンセプト・ターゲット・5つの適正のそれぞれがバランス良く洗練されていることが非常に重要です。
適正な商品
適正な商品とは、ターゲットとするお客様に対して売れる商品を揃える、いわゆる商品計画のことです。
商品について振り返る際の軸にもなっており、ターゲットとするお客様に売れていたのか、ターゲットからずれていた場合はなぜズレたのかを考える基準になっています。
さらに、売れたがターゲットからズレていた場合は、自分達がやっている商品作りも間違っているのではないか。そもそも売れなかった場合は何が原因なのか(トレンド、色、サイズ、形…)を競合他社とも比較しながら振り返りをします。
適正な場所
適正な場所とは、ターゲットに届きやすい出店場所や商品配置を行うことです。
例えば、渋谷は商業施設も多く様々な世代が集まる街ですが、SHIBUYA109、渋谷ヒカリエ、渋谷PARCO、東急プラザ渋谷、MIYASHITA PARKと出店する場所により集まりやすいターゲットが変わります。
同じ渋谷駅周辺でも出店場所を間違えてしまうと、ターゲットを獲得できなくなってしまうため、事前に年密な調査が必要です。
さらに商業施設に出店する場合、階数や区画も重要です。周りのブランドは自社と同じようなターゲット設定なのか、あまり人が流れてこない区画ではないかを注視しましょう。
もしも出店場所を間違えていたという判断になった場合は、営業と連携をして出店区画の変更や撤退の検討も必要です。
商品配置(VMD)については、その週の天気や去年の実績から打ち出す商品を選定することが重要ですが、午前中、午後、夜と時間帯に合わせてVMDを変更することも大切です。
例えば、午後4時以降は学校が終わる時間のため学生の来店確率が高まり、午後6時以降は、会社帰りのサラリーマンやOLの来店確率が高まります。
実際、路面店で販売員をしていた際は、時間帯によって店舗の前を通る客層が違い、お客様を掴むことが中々できなかったため、午前中、午後、夜でVMDを変えていました。
VMDについては以下2本の記事で詳しく解説していますので、是非ご参考ください。
適正な時期
適正な時期とは、お客様の購買需要が高まる時期に合わせて商品を打ち出すことです。
某スポーツアパレルのMDをしていた際、コロナの影響でダウンが1番売れる12月までに生産が間に合わず、ダウンが全く売れなかったことがありました。
商品が売れる時期は本当に一瞬のため、お客様の購買需要が高まる時期に必要な商品を打ち出すことが重要です。
適切な時期に合わせた商品の打ち出し方は、以下の資料で解説しております。
【お役立ち資料】商品ライフサイクルに応じた販売計画の作成ガイドはこちら>
適正な数量
適正な数量とは、過不足ない数量を用意することを指しますが、在庫管理ではなく価格帯から話が始まります。
ブランドを立ち上げる際、ターゲットに合わせてどんな価格帯で販売していくかを設定し、アイテム予算を決めます。設定した価格帯で予算を達成させるために何点発注するかが、適正な数量を考える上で重要になります。
適正な数量ではないと判断された場合は、アイテム予算の構成比は適正だったのか?価格帯の設定は間違っていないか?の振り返りを実施します。
適正な価格
適正な価格とは、ブランドコンセプトにあった価格設定を行うことです。
価格設定を行う上では、ブランドターゲットとは別にセールスターゲットの設定も必要です。上述の通り、ブランドターゲットは細かくペルソナを決めながら設定していますが、そのペルソナ像に憧れている客層をセールスターゲットと言います。
例えばハイブランドの場合、富裕層に近い層がブランドターゲットになりますが、そのブランドやターゲットに憧れを持ち、頑張って商品を購入しようとする層もいます。
そのため、ブランドターゲット向けの価格帯をメインにしつつ、セールスターゲット向けの価格帯も2割は用意するのが王道です。
まとめ
- 5つの適正とはマーチャンダイジングにおける基本的な考え方であり、以下5つを指す
- 適正な商品:顧客のニーズに合った商品やアイテムになっているか
- 適正な場所:仕入先、出店先、商品配置など顧客に適した場所になっているか
- 適正な時期:仕入れや販売時期が、顧客が求めるタイミングで商品を提供できているか
- 適正な数量:過不足のない数量を用意できるか
- 適正な価格:いくらで仕入れて、いくらで販売するか。ブランドコンセプトから想定できる価格になっているか
- 5つの適正、ひいてはブランドを存続させるためには、ブランドコンセプトとターゲットを固めることが重要