MD業務はDX化できるのか? 真に求められるのは「すぐ使える状態のデータ」
小売業の中核業務であるマーチャンダイジング(MD)。商品や顧客動向・トレンドなどの分析。商品開発から販売計画立案し、方向性を決めていく業務です。この業務を中心的に担っていくのがマーチャンダイザー(MD)です。
本稿では、某スポーツアパレルのMD職を務める筆者の立場から、MDの役割と業務の基本、そしてMDのDX(デジタル・トランスフォーメーション)の現状について深掘りしてみます。
MDの役割
小売業では、MD(マーチャンダイザー)が事業の軸となる役割を担います。
- 商品や顧客動向の分析
- トレンドなどの分析
- 商品開発から販売計画の立案
これらの方向性を決めていきます。
上記のように、MDの仕事は内容が多岐にわたるため、経験と知識が求められます。トレンドの変化をキャッチアップできるセンスや数学的な能力のバランスが必要です。
MDの仕事が企業に与える影響
MD業務は商品企画や数字をコントロールするという性質上、企業の利益に直結する重要な役割を負っています。
マーチャンダイジングの精度が、企業の利益や財務状態を左右すると言っても過言ではありません。これは同時に、顧客満足度の良し悪しに直結するということでもあります。
MD計画(商品化計画)の基礎
では、マーチャンダイザーはどのように計画を立てているのでしょうか。多くのMDが「5つの適正さ」を軸としています。
【5つの適正さ】
- 適正な商品 顧客のニーズに合った商品やアイテムになっているか
- 適正な場所 仕入先、出店先先、商品配置など顧客に適した場所になっているか
- 適正な時期 仕入れや販売時期が、顧客が求めるタイミングで商品を提供できているか
- 適正な数量 過不足のない数量を用意できるか
- 適正な価格 いくらで仕入れて、いくらで販売するか。ブランドコンセプトから想定できる価格になっているか
これらを基に計画を立て、商品の仕入れから販売までを実行していきます。
ただ、商品の展開が始まると、予定通り売上が進捗することはほぼありません。このため、MDが軌道修正をしながら進めていかなければならず、腕の見せどころとなります。
MD計画後の軌道修正が重要
販売開始後、軌道修正できることとできないことは何でしょうか。
「5つの適正さ」で表すと、1. の「適正な商品」以外は、販売を開始してからも軌道修正が可能です。ただし、売上の上下の動きに早く気づき、すぐに手を入れる事が大変重要であり、大前提となります。
多くのMDは全体の売上、店舗の売上、EC売上までは常に把握しているものの、商品一つ一つについては把握できていないのが実情です。このため、気づいた時にはシーズンも終盤となり、値引き価格でしか売れなくなってしまいます。
分析するまでのデータ加工作業に時間が掛かっている!
売上の上下に早く気づくために、新しいツールを取り入れている企業も増え、必要なデータを抽出しやすくはなっています。
しかしながら、そのデータを使って在庫の中身を分析し、何をすべきかを考える事が重要であるにもかかわらず、データを分析に使えるようにExcelで加工する作業に膨大な時間をかけているのが現実です(筆者の経験だと、集中しても丸一日はかかります)。
本来であれば、色々な施策を考えることに時間を費やしたいのに、考えることと実行することが疎かになってしまいます。これでは、軌道修正の大事な判断が良くない方向に振れる可能性もあります。
そうしている間にどんどん時間が過ぎ、商品の状態を見逃してしまうことで「適正な売り時」を逸してしまっては本末転倒です。
本来、MDがやるべきことは分析できる状態のデータを作ることではなく、そのデータを見て、次にどういう打ち手があるのかを考え実行することだからです。
DX化の現状

この様な状態を改善しようと、社内では「DX推進」という言葉を最近よく耳にします。しかし実際は、ITツールを導入したことによってDX化しているつもりになっていて、せっかくのDXをうまく取り入れられていないように感じます。
ITツールの導入がなされ、今まで出せなかったデータや、Excelで管理していた情報が簡単に出せるようになり作業効率は向上していますが、MDが欲しい「分析できる状態のデータ」を手にするにはさらなる加工が必要である点は変化がありません。
つまり、結局は一番手間のかかるデータ加工作業に時間を使ってしまっているのです。これが「DX」の現状です。
MDが求めるDXとは
MDとしては、データがすぐ分析に利用できる状態になっている事が理想ではないでしょうか?
データを分析できる状態にするまでの作業をDX化することによって、MDが本来するべき仕事(打ち手を考えて実行すること)に時間を使えるようになります。
例えば、商品の状態を簡単に見る事ができれば、売れている商品や売れていない商品だけでなく、その中間に位置する見落としがちな商品まで把握し、要因を早くキャッチアップできます。
その結果、売れた or 売れなかったということになる前に、手を入れることができるのです。
さらに欲をいえば、「今後も売れる商品」「このままでは残ってしまう商品」なども把握できれば、当初立てていた商品計画や売上(粗利)計画から実績がぶれる前に軌道修正できるようになるので、「売れたけど商品の追加や商品の移動が出来なかった」「値下げしても売り切ることができず在庫過多になった」というようにことを未然防止できます。
AIの実力はどれほどのもの?
最近、AIを用いた需要予測でMD計画ができると謳うシステムも出てきています。が、MDは、AIにMD計画を立ててもらいたいのではなく、MD計画の軌道修正の判断に役立つ分析ができる状態のデータが欲しいのです。
小売業では、トレンド・季節・社会情勢など、予測できない要因が数多くあり、AIでの予測精度は低いと考えられるます。MD計画は、最初にお話した「5つの適正さ」を把握しているMDが、分析できるデータを使って立てることで、その企業ごとに最適なものになるのではないかと考えています。
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