アパレルDXとは?推進方法や成功事例を解説
昨今、「DX」という言葉をよく耳にするようになりました。新型コロナウィルスの影響でDXの重要性はますます大きくなり、アパレル業界にもDX化の波が来ています。しかし、定義やなぜ注目されているかを正確に理解できている方は少ないのではないでしょうか?
本記事ではDXの基礎から成功事例について解説いたします。
アパレルDXとは?
DXとはデジタル技術を活用しサービスを変革すること
そもそもDX(デジタルトランスフォーメーション)とは、組織がIT、IoT、AI、データ分析などのデジタル技術を活用し、新たなサービスやビジネスモデルの創出や業務プロセスや企業文化を変革することです。日本では2018年に経済産業省が発表した「DXレポート(※)」がきっかけとなり、DXが注目されるようになりました。
ここでよくある間違いが、デジタル化すること自体を目的にすることです。デジタル技術によって業務やサービスを変革(トランスフォーメーション)し、市場の中で競争優位性を維持することこそがDXの本質なのです。
※DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~ 経済産業省
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_01.pdf
「2025年の崖」へ対応するためにDXが必要不可欠
現在の日本において大きな問題になっているのは、2025年の崖です。2025年の崖とは上述した「DXレポート」内で使用された言葉で、既存システムのブラックボックス化(※)が解消されずデータ活用ができない場合、2025年以降に起きると予想される巨大なリスクを指します。DXレポートの内容は以下の通りです。
- データが活用できずデジタル時代を生き残れない
- 既存システムが事業部門ごとに構築されていたり、過剰なカスタマイズがされているため、全社を横断したデータ活用ができない。
- データが活用しきれず、市場やユーザーの変化に対して柔軟な対応ができないため、デジタル時代を生き残れなくなる。
- IT人材の不足
- 2025年までにIT人材は最大で約43万人不足する。
- それにより保守運用の担い手が不足し、システムトラブルやデータ滅失のリスクが高まる。
→このような課題を克服できない場合、2025年以降、最大12兆円/年の経済損失となる可能性が!
このような損失を回避するために、システム刷新を推進していく必要があるのです。
※ブラックボックス化:システムが複雑化し、それを分解・再現することができなくなること
アパレル業界ではDX化が遅れている
上記のような理由から、DX化をしていくことは非常に重要であり、また新型コロナウィルスの影響で社会全体にデジタル化の波が訪れています。しかし一般論として、アパレル業界はDX化が進んでいないと言われています。
その1番の要因はECサイトでは試着ができないということです。商品を購入する際、サイズや色、形が自分と合っているか、素材はどうかなど、消費者ごとに様々な決め手から購入するかを判断します。そのため、写真からでしか判断できないECサイトとアパレル商品は非常に相性が悪いと言えます。
ですが最近ではこのデメリットを克服する、オンラインでの試着が可能なサービスが各ブランドから多く出ています。
DX化するメリット
業務の生産性が向上する
在庫や倉庫、分析業務をDX化することにより、今まで何時間もかかっていた作業が短縮され、業務の効率化を図ることができます。さらに短縮された時間分、より売上への貢献度が高い業務にリソースを割くことができるため、生産性を向上させることが可能になります。
これまでは、「データを見る日」を作り、工数をかけてデータを探し出してセール選定作業をするしかありませんでしたが、効率的になったことで新たなチャレンジに時間を使うことができるようになりました。商品選定が速くなったので、品番ごとにより細かく価格設定をし、お客さまにより楽しんでいただけるような提案コンテンツの充実にリソースを配分できています。
FULL KAITEN導入で在庫分析をDXした株式会社cd. 道満様の声
業務効率化により生産性が向上したファッションEC「haco!」の事例はこちら>
市場や顧客ニーズの変化に柔軟な対応が可能
一般消費者によるSNSでの情報発信が盛んになったことで、アパレル業界は市場や顧客のニーズが非常に変化しやすくなっています。購入履歴や個人情報をデータ化することができれば、消費者の属性とニーズを掛け合わせて見ることができるようになるため、市場や顧客ニーズの変化に対し柔軟に対応することが可能になります。
DX化に向けた3ステップ
DX化する上でただ闇雲にシステムを導入すれば良いわけではありません。DXを実現するためには、デジタル技術を活用しどのように業務やサービスを変革するのかを明確にし、実行するための体制を整えることが不可欠です。
①DX化する目的を明確にする
上述した通り、システムを導入することは手段であり目的ではありません。目的なしにシステムを導入しただけでは、余計なコストがかかるだけで失敗に繋がります。DX化により、どのような価値を創出したいのか、そのためにどのようなプロセスを踏めば良いのかを予め明確にする必要があります。
②経営課題や刷新システムを把握する
目的を明確にした後は、現状把握を行います。自社で抱えている経営課題や刷新すべきシステムをできるだけ細かく洗い出しましょう。洗い出すことができたらどの部分を改善していくか検討を行います。
③DXに対応するための体制を作る
目的と現状を把握できたら、DXを推進するための体制を構築します。社外との連携も行い、DX部門の設置やDX人材の確保を行いましょう。またDXに終着点はありません。そのためPDCAサイクルを回し、生産性の向上や競争力の強化に繋げることが重要です。
アパレル企業のDX化による成功事例
ZOZOTOWN
店舗販売が主流であったアパレル業界で、いち早くDX化をしたのがZOZOTOWNです。現在提供している「マルチサイズプラットフォーム(MSP)」は、身長体重を設定することで、ZOZOTOWNのMSP対象商品からユーザーに合ったサイズを提供するサービスです。これにより、試着しないとサイズが分からないというECサイトのデメリットを解消することが可能になりました。また2017年から2022年6月23日まで提供されていた「ZOZOSUIT」の技術を活用したサービス「ZOZOFIT」を2022年夏より米国で提供予定です。
グンゼ
主に肌着やインナーを提供しているグンゼは、着るだけで姿勢や消費カロリー、心拍といった生体情報を計測できる繊維を開発しています。これらの情報をクラウド上で管理することで、消費者の姿勢や歪みの可視化のほか、健康に役立つアドバイスの提供を可能にしました。
レイ・カズン
「Ray Cassin」、「DOUBLE NAME」、「frams RAYCASSIN」といったレディース向けアパレルを展開しているレイ・カズンはDX化に向けたシステムとしてFULL KAITENを導入しています。
FULL KAITENとは、在庫データを活用し、EC・店舗・倉庫、全ての在庫をAIで予測・分析。商品力はあるのに眠っている在庫を明らかにすることができるシステムです。
このFULL KAITENに基づいて在庫移動を実施した結果、消化率を6.8%/週 向上することができました。また在庫リスクが高くなった商品をピックアップしシーズンセールよりも薄いオフ率でタイムセールを実施したところ、タイムセールの売上が33.5%増、粗利率は4.0%上昇し、粗利率の維持と消化促進の両立を実現しました。