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河合拓氏のコラムから読み取る「デジタル化」の本当の意味

『生き残るアパレル 死ぬアパレル』(ダイヤモンド社)著者のターンアラウンドマネジャー河合拓氏が毎週、ダイヤモンドチェーンストア・オンラインに寄稿しているコラムは小売業関係者なら知らない人はいないでしょう。その中で2021年4月6日公開分は、生き残りか淘汰かの岐路に立つアパレル商社のデジタル化を主題しながらも、小売業の肝である「在庫」とDXの関わり合いについて興味深い指摘がありました。本稿で取り上げてみたいと思います。

需要予測は「相場を張る」に等しい

2021年4月6日に公開された河合氏のコラムのテーマは「脱トレードで問題解決業をめざせ!岐路に立つアパレル商社の生き残り戦略が『デジタル』ではない理由」だ。

※記事はこちらから ↓↓

このコラム本文は非常に長いが、筆者なりに構成を4つにまとめると以下のようになる。

  • 「適正在庫であれば持つべきだ」という主張があるが、適正な在庫水準は分からない
  • 相場(トレード)は常に変動し、勝ちパターンは長続きしない
  • 在庫を最小化するための視点は4つあり、このうちの1つであるFULL KAITENは余剰在庫の適正販売をデジタル技術で最適化するものだ
  • DXは業務効率化にとどまらず付加価値を創出して競争力を高めるものでなければならない

商社にとって「在庫は悪。絶対に持ってはならない」という理屈が通るのは理解できる。しかし、実際に在庫を持って商売する小売業は話が違ってくる。単に在庫を減らせば、比例して売上も減ってしまい事業シュリンクによってジリ貧が待っているだけだからだ。

すると、決まって「需要予測で売れ筋となる商品の発注を増やすことで、在庫を増やしても売れ残りを減らすことができる」と言う人が必ず一定割合で出てくる。
しかし、予測というのは、事前に予測し得ない外的要因によって結果が大きく左右される。いくらAIを用いても予測はなかなか当たらない。AIの権威として知られる東京大学の松尾豊教授も「AIをビジネスインフラとして使えるようになるにはあと20年はかかる」とかねて説いている。

つまり、需要予測は運任せの“博打”であり、河合氏のコラムで言うところの「相場を張る」行為に他ならない。

ビッグデータ解析という本当のDX

それでは、売上を維持しつつ在庫を最小化するにはどうすれば良いのか。河合氏は4つの視点を提示している。

  1. そもそも調達在庫をどのように考えるか
  2. 消費者の購買力や競争環境から適正価格をどう設定し、どう売るか
  3. 在庫レスを実現するための手法はなにか
  4. それでも余った在庫はどうするか

これら4点の戦略は次のようになるという。

①の解決策は、ビッグデータ(自社の個客)から調達量を算出するDigital MDである。
➁は、ユニクロ、ZARAなどの商品分析しそのコスパをどうすれば勝てるか、彼らに満足できていない層はどうすれば奪い取ることができるかを考えることだ。
➂についていえば、受注生産などの技術を活用することになる。
④については、これもFULL KAITENなどが提供する余剰在庫の適正販売をデジタル技術で最適化することである(参考:https://full-kaiten.com/
 ※原文ママ

この4つの戦略に共通するのは、高い付加価値をを創出するという点だ。これを商品を軸にみると、価格競争に勝つために商品原価を下げ些細なコスト削減を積み重ねるのではなく、消費者に商品価値の高い商品を届けるということだろう。

(「商品価値と低価格戦略」についてはZaikology Newsの下記別記事に詳述しています)

そしてDXは付加価値によって競争力を高めるものでなければならない。単にデジタルによって業務が効率化するだけではDXとはいえず「デジタル化」に過ぎないし、競争力が向上しなければ雇用が奪われ賃金も減るというのが資本主義経済の宿命だからだ。

(調査担当デスク)

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