GDOが欠品率を下げ在庫回転率を上げた秘訣は「マインドセットとPDCA」
2022/8/23(火)に、弊社初となるオフラインイベント「ゴルフダイジェスト・オンライン事業部長に聞く! 1年で欠品率を16.4%→2.9%に、 在庫回転率も+1.5回転した裏側」を開催いたしました。
当日ご参加いただきました皆様に、御礼申し上げます。
本記事では、ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)事業部長の坪井様によるセッションレポートをお届けいたします。
GDOが欠品防止と在庫回転率UPの両立を実現したノウハウと、DX推進時の「あるある」を解決するヒントを語っていただきました。
株式会社ゴルフダイジェスト・オンラインについて
登壇者:坪井 春樹氏(株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン リテールビジネスユニット事業部長)
新卒で大手通販企業に入社し、婦人服の調達にはじまりカタログ製作などを経験。2012年にGDO入社。 在庫管理、バイヤー、販促、PL管理等の経験を経て、リテール部門の責任者として事業運営を担当している。
坪井氏:弊社は、GDOのゴルフショップを運営している会社です。GDO自体は、様々なサービスを展開しておりまして、我々のリテール部隊だけではなく、ゴルフ場の予約やメディア、広告ビジネス、スコア管理アプリなど、ゴルフにまつわるポータルサイトを運営している会社になります。
そして私が、ゴルフショップの運営をしている部隊の事業責任者をしております。
実はリアルの店舗もあるのですが、本日はFULL KAITEN主催のセミナーなので、関連しているECショップをメインにお話しさせていただきます。
基本的にはオンラインで販売をしておりまして、クラブやウェア、アクセサリー、中古クラブを販売しています。ゴルフ専門という独自性を生かして運営しており、SKU数が非常に多いところが特徴です。
また、ブランド数などECの特性を生かして幅広く品揃えをしているというところも特徴だと思っております。
導入前の課題
SKUの多さと発注サイクルで在庫管理が複雑に
坪井氏:まずは、FULL KAITENの導入前に抱えていた課題についてお話しいたします。
在庫管理の面では管理するSKU数が10万点以上と多く、多品種のものをうまく管理するのが難しい点。また、下記2つのような発注方法と販売サイクルが異なるものがあるため、上手く在庫管理をしていくのが難しくなっていました。
- プレオーダーのみ(※)
- ウェア、バッグ、一部アクセサリ
- プレオーダー+補充発注
- クラブ、シューズ、ボール、一部アクセサリ
(※)展示会発注など、ある程度バックオーダーをかけてメーカーに生産依頼をしていくこと
簡単に販売構成比は以下の通りです。一般的なゴルフショップのイメージとして、ゴルフクラブの販売が多いというイメージがあるかなと思うのですが、我々はECというのもあるため、ウェアの構成比がかなり高くなっています。
アクセサリーやウェアの単価が低く、数量ベースで見るとその2点の数量が非常に多くなっているため、ここも含めて管理が難しくなる1ポイントとなっています。
膨大なSKU数でそれぞれの在庫状況が見れていなかった
坪井氏:元々事業課題として抱えていたのは大きく分けて3つあります。まず1点目は、たくさんのSKUの中でもそれぞれの在庫の健康状態が簡単にはわからないという点です。
もちろん在庫の量や金額は分かるのですが、実態として良いのか悪いのか。そういったものが、各SKU単位に落としていったときに中々分からないというのが課題としてありました。
2点目は発注の判断を担当者に依存していたため、精度が安定しないという点。
3点目は在庫消化のタイミングが遅いという点です。例えば、販売期間が1年だとした時、賞味期限から残り3ヶ月ぐらいで急に値引きをしたり整理をして処分をするというのが実態としてありました。
その結果、過剰な在庫が増えたり粗利率が低下したりと、キャッシュフローの悪化が顕在化してきたため、FULL KAITENの導入を決断しました。
欠品を防ぐためには補充発注の頻度が重要
坪井氏:ではFULL KAITENをどう活用しているのかについてお話しします。
弊社では、在庫に適正値を設けてその数値を下回ると自動的に発注が飛ぶ、定点発注という仕組みを使っています。この発注点を決める部分にFULL KAITENを活用しました。
具体的には補充対象リストをaccessから抽出し、最適な在庫数を計算して発注点を設定する部分にFULL KAITENの追加発注機能とリスト抽出機能を使っています。
元々この時間に多くの時間を使っていました。ですが弊社では、補充発注の頻度を上げる事が欠品を防ぐために一番重要だと思っています。
多くのSKU数を抱えている売り場担当の方なら共感してもらえると思うのですが、何が売れるかはその時にならないと分からないし、全てを見尽くすこともできません。それなら、売れたものに対して即座に対応できる方が、結果として欠品を防ぐことができます。
そのためには発注のタイミングを増やしていくことや、発注点を常に新しい情報でブラッシュアップすることが必要です。
FULL KAITENを導入したことで、簡単にリストを抽出できることや、AIの判断を参考にして発注できるようになったのが、とても大きかったと思います。
FULL KAITEN導入で欠品率の改善と回転率向上を両立
坪井氏:導入後の成果としては、欠品率が16.4%から2.9%に改善したこと、在庫回転率が年+1.5回転/年に改善しました。
実際、在庫の欠品だけを解消するのであれば在庫を積めば何とかなる部分もあります。ですが、回転率が同時に上がったというのが一つの成果だと思っているため、この部分を中心にご説明します。
成果を出すポイントとして、一番大きかったと思うのは以下の2点です。
- 在庫対策のマインドセット
- PDCAのスピードアップ
社員を在庫改善のマインドに変えた3ステップ
坪井氏:まず在庫化対策のマインドセットについて。
元々、発注量と在庫量を増やして売り上げを取るような空気感が強くありました。事業自体は右肩上がりで成長できていたのですが、在庫が多くなり立ち行かなくなってきたというようなステージに変わってきたという事がありました。
その時に、社内で在庫を改善させるぞというマインドに変えていく事ができたのが、成果を出せたポイントだと思っています。
実際の改善プロセスは以下のような3ステップを辿りました。
- 在庫改善の優先度が高いことを社内に周知
- 経営層が”自由に”在庫推移を確認できるようFULL KAITENを活用
- 在庫改善に対する取り組みを社内で評価
まずステップ1についてですが、自分達の改善テーマを全社的に周知させることが非常に大事です。弊社の場合は、FULL KAITENの導入がきっかけになったなと思ってます。
現場レベルでも経営層レベルでも、ツールを使ってリテール部隊が在庫改善に動きますよ、と意思表示をした。それがメンバークラスにも周知されたという点がまず第一歩だと思ってます。
ステップ2について、一番のポイントは自由に見えることが重要だと思っています。
売上推移自体は、様々なデータベースやツールで簡単に見れるのですが、在庫の推移は今まではあまり簡単には見れませんでした。担当レベルではもちろん毎日確認しているのですが、経営層から質問が来た際に慌ててエクセルやパワポを作って報告することがありました。
これがFULL KAITENで自由に在庫推移を確認できるようになったことにより、こちらが報告しなくても良い状態になったのがポイントとして大きかったと思います。
最後に、ステップ3についてです。せっかくツールを導入したり体制も変えて改善活動をしている中で、それをうまく評価することが会社としてすごく大事だと思ってます。
先ほども申し上げた通り、発注する人が評価されるという空気がどうしてもあったのですが、それだけではなく在庫管理することも重要なポジションなんだよと、ちゃんと会社で評価してあげるよう取り組んでいきました。
実際、GDOでは年末にMVPを表彰する場があるのですが、一昨年と去年は2年連続で在庫管理をしているチームから表彰されました。
PDCAのスピードと頻度あげた3つのプロセス
坪井氏:続いての成果ポイント、PDCAのスピードアップについてです。
マインドが整った後は運用の精度を上げていくかがテーマだと思っていて、ここは少し運用レベルが入ってくる部分です。
行ったプロセスとしては以下の通りです。
- 複雑なExcelやaccess管理を削減し、考える時間を確保する
- 担当者同士で牽引し合える関係づくり
- 権限を移譲して現場に任せる
まずステップ1についてです。先ほどお話した通り、弊社はSKU数が多くリストを作るために丸1日かかっており、リストを作ること自体が仕事になってしまっていました。
ですがリストを作ることではなく、リストを作った後が重要です。そのため、リスト作成をFULL KAITENに任せることで1時間〜2時間に短縮する事ができ、その分考えることに時間を費やす事ができました。
続いてステップ2です。GDOでは商品を仕入れたり発注をするバイヤー、在庫管理者、販促担当者というように各工程でそれぞれ担当者がおります。
ですが、例えば担当者の権力が強すぎて、別の担当者に物を言えない状態であると物事は上手くいきませんよね。お互いの役割が形成し合って、消化すべきものや発注しすぎだよねみたいに物事を気軽に言えるような関係を目指すようにしました。
ステップ3については、ある程度体制が整ったら現場に権限を持たせてスピーディーにPDCAを回していく方がいいと思ってます。
もちろん失敗するという不安もあると思います。ですが、失敗を恐れてチェックをし過ぎるのではなく、とにかくPDCAのスピードと頻度を上げていくことにフォーカスした方が成果が出ると実感しています。
今後の展望
坪井氏:最後に今後の展望についてお話しさせていただきます。全体としてはもちろん、ECの売り上げを拡大していきます。そのために重要なのは品揃えだと考えており、商品の幅はもちろん奥行きも意識をして、欲しいものがすぐに見つかるようなサイトを目指して取り組んでいるところです。
組織運営の部分では、メンバーが主体的に動けるようになるのが重要だと思ってます。コロナ渦でリモートワークとなり、ミーティングの場でも主体的に発言する機会や回数が減ってきている部分を組織課題として感じています。
ただそうなると、あらゆる取り組みが進まなくなります。そのため先ほどもお話した通り、ある程度現場に任せてスピード感を重視する。そして、それをうまく評価する事にフォーカスする組織作りが大事だと思ってます。
Q&A
AIによるデータと人間の判断の線引きについて
Q.AIに任せる部分と人間に任せる部分の線引きで気をつけていることは何でしょうか?
坪井氏:AIに関しては、100%の精度を求めないということが大事です。弊社では8割ぐらいをAIに頼り、最終的な判断は人が行っています。
AIのメリットは、人がジャッジするまでの時間を短縮できる部分と感覚ではないロジックに基づいた判断ができる部分のため、AIと上手く共存をする使い方が良いと思っています。
補充発注について
Q.FULL KAITEN導入前と導入後で、補充発注の頻度はどの程度変わりましたか?
坪井氏:FULL KAITEN導入前は2週間に1回程度で、忙しいともう少し間が空いていました。今は週1〜2程度で発注しています。
欠品防止について
Q.欠品防止をするために、今日お話いただいたこと以外で効果的だと思われることはありますか?
坪井氏:欠品を防ぐという意味では、先ほどお話した在庫管理メンバーがメーカーに在庫情報を確認して、こまめに発注を繰り返すようにしてくれています。
中々補充発注が難しいような商品に対してもそういった行動をとってもらい、期中に必要なものを発注してくれた点がとても大きかったです。
そういう時間を割けるようになっていくことが一番大事だと思うので、FULL KAITENで作業を効率化したのが繋がっていったと思います。
業務効率について
Q.業務効率を上げるためにどのようなルーティーンで仕事をしていますか?
坪井氏:弊社ではクラブなどのカテゴリー単位で、バイヤー・在庫コントローラー・販促担当と担当者を設けているのですが、各担当が月曜日からミーティングを何個か行いながら消化施策や売り上げ施策を考えるというミーティング設計にしてます。