導入事例

欠品率が5分の1に低下し在庫回転率も年1.5回転プラス! 発注精度を向上させた“使えるデータ”可視化の神髄

株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)

ゴルフ用品・スポーツアパレル

小売
EC

FULL KAITEN導入後、発注業務の効率化などに取り組んだ株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)様は、在庫高を約3割減らした一方で増収を続けています。直近1年間は欠品率を16.4%から2.9%へと劇的に低下させるとともに、EC事業の在庫回転率が3回転から4.5回転へと1.5回転も向上しています(売上原価ベース)。リテールビジネスユニットの坪井春樹ユニット長にお話を伺いました。

※写真左が坪井様。右はフルカイテンCS我妻

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1.在庫に関する判断基準が定まらず、欠品頻発&在庫膨張

――まずGDO様の会社紹介と坪井様の自己紹介をお願いします

当社は2000年に設立し、ゴルフ用品販売事業(リテール事業)のほかゴルフ場予約サービス事業やゴルフレッスン事業(国内外)、広告事業等を手がけています。東証1部に上場しており、2021年12月期の連結売上高は395億円、当期純利益は10億円でした。

リテール事業ではECに加え中古クラブの買取販売も行っていますが、FULL KAITENはEC事業で活用しています。

私は、リテール事業を統括する立場で、仕入から販売までをマネージメントしています。

――FULL KAITEN導入前はどのような課題を抱えていましたか

在庫に関して言うと、特に帳票の管理の面で課題を感じていました。在庫の金額は把握していましたが、商品それぞれの“健康状態”というか、どの在庫がいま不要で、すぐに手を打つべきなのかといった判断基準がなかなか定まらなかったんです。

そのため在庫が膨れ上がり、滞留在庫も増える。そうした状態が長く続いていました。

――在庫の「質」つまり残在庫リスクを把握し切れなかったのですね

共通認識や共通の基準が無く、人によって問題視したり問題ないと判断したりして、判断がスムーズにいきませんでしたね。属人化の弊害です。

その結果、発注精度をなかなか上げられませんでした。だから欠品も起こるし在庫量も膨れ上がります。発注業務にかなりリソースをかけていたにもかかわらず、です。

――そうしたビジネスダメージを感じるなかでFULL KAITENを知ったわけですね

はい、FULL KAITENを知ったきっかけは忘れてしまいましたが(笑)、それまでFULL KAITENのようなサービスやツールの提案を受けたことは一度も無くて、すごく斬新なサービスだなと感じたことはよく覚えています。

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2.既存在庫をうまく活用するFULL KAITENの思想に共感

――FULL KAITENの活用によって、課題を解決するイメージを描くことができたのですね

そうですね。今すでに保有している在庫をうまく活用することで、売上や利益を最大化させることができるという思想にすごく共感できました。

我々はたくさんのSKUを抱えていますから、どの商品を訴求していくべきなのか、何を処分していくべきか、取捨選択の判断軸が必要でした。仕入れた在庫をいかに効率よく売上と粗利益につなげていくか、という考え方にマッチしたと思います。

――何が導入の決め手になりましたか

前述の、既に手もとにある在庫をうまく活用するという思想の部分と、日々改良が加えられるクラウドサービスであることが決め手になりました。商談の際、瀬川さん(※フルカイテン代表)から「サービスはまだ完成形ではなく、これからどんどん磨いていく。磨いていくうえで御社のデータを活用させていただきたい」というお話がありました。長い付き合いをしながら相乗効果の発揮を目指す関係になるんだろうなと思ったので、将来に対する投資という側面もありましたね。

あと、こんなに色々とサポートしてもらえるとは思っていませんでした(笑)。そこはすごく助かっています。クイックにシステム改良してもらえますし、運用面でもアドバイスをいただけるので。

――ただ、クラウドサービスですから、御社の業務設計をFULL KAITENに合わせて変えていただく必要がありました

確かに、業務の仕方を変えることに対する抵抗感は、現場メンバーの間に強くありました。それまではAccessとExcelを使っていましたから。見るべき指標があまり変わらないようにFULL KAITENを設計していただいた部分もあったとはいえ、管理運用の仕方が変わることに対する懸念が出てきました。

それでも、FULL KAITENによるメリットは大きいと判断していたので、何とか対応していきました。現在では知見が溜まっています。担当者が異動で交代しても問題なく使えるようにするノウハウを蓄積していきたいと考えています。

――FULL KAITENの導入によって、何をどのようにできるようになりましたか

在庫推移を簡単に見られるようになったことですね。すごく単純なことかもしれませんが、かなり重要です。

これまでは在庫金額の推移とかを毎日、グラフとして確認できていなかった。だから今日の在庫や明日の在庫は分かるんですが、時系列で把握できていなかったんですよ。それが視覚的にしかも簡単に見られるようになりました。

そのお陰で、無駄な報告が必要なくなりました(笑)。経営層も現場も同じ数字を同じ粒度で見られるので、報告が簡素化されたんです。「在庫は減ってますよ」と言葉で言うよりも、実際に減った度合いをグラフで見てもらう方が理解が進みますからね。

3.欠品率が1年で16.4%から2.9%へ低下。回転率も1.5回転プラス

――業務効率化による効果が発注にも如実に表れたんですね

そうです。判断基準が整ったことと、業務効率が上がったことが非常に大きいです。今まではAccessやExcelを駆使して商品リストを作成し、何をいくら発注するか決めていました。

やっていることはFULL KAITEN導入前後で同じなんですが、アウトプット(リスト作成)までの時間が早くなったことで、発注回数を増やせるようになりました。これが一番インパクトが大きかったですね。

この結果、欠品率が顕著に下がりました。2021年12月期で見ると、期初(1月第1週)は16.4%でしたが、1年後(12月最終週)には2.9%になりました。

余談ですが、Excel、Accessはデータが壊れてしまうリスクがあり、特にAccessはデータベースとつないでいたので、データベースに新しい項目が追加されたりすると、うまく動かなくなったりするんですよね。Excelもバージョンが変わると稼働しづらくなることもありましたが、その心配がなくなりました。

――業務負荷が下がったことで、こまめに発注するようになってもリソースがパンクしなくなったということですね

そうです。従来はAccessやExcelを使った手作業だったので業務負荷が大きく、多頻度発注をしたくてもできなかったんです。

当社は自動発注とマニュアル発注を用いていて、自動発注では定数(発注点)を下回ると、自動的に発注が飛ぶ仕組みになっています。その定数の設定をFULL KAITENを用いて行っています。

しかも、定数は売上状況に応じて適宜更新していくうえ、品番ごとに設定しています。従来はこの作業をAccessやExcelを駆使して手作業していましたから、何千という商品に対して行うのは一苦労だったんです。

これが、FULL KAITENによって効率的にできるようになりました。

FULL KAITENによって、直近よく売れた商品が分かりますから、そうした品番は定数をすぐ更新することで、こまめに発注を飛ばせるようになりました。この結果、欠品しにくくなるうえに、在庫が効率化されたんです。

――多頻度少量発注の効果が出ていますね。一方で、運送コスト面が気になるところです

多頻度発注になっても、運送コストはあまり変わっていません。大手メーカーさんの商品の場合、発注点を変えなかったとしても、売れれば発注は飛びますから、ほぼ毎日なにがしかの発注をかけている状態です。そして、毎日あるいは2、3日に一度は出荷されるので、メーカーさんにとってもコストはあまり変わっていません。

――欠品率が大きく下がったうえ、在庫回転率も向上したんですよね

そうなんです。在庫を増やして欠品を減らすことは簡単ですが、それでは在庫を効率よく売上と粗利益につなげることはできませんし、プロパー消化率も下がり、キャッシュフローが悪化しますよね。

でも今回は欠品率を低減させつつ在庫回転率を向上させることができました。在庫回転率(売上原価 ÷ 期中平均在庫)は2020年12月期に3.0回転だったものが、2021年12月期は4.5回転と1.5回転アップしました。

まさに眠っている在庫が減ったということなので、手応えを感じています。

4.これからは「無駄な値引き」を減らしていく

――御社がFULL KAITENを導入した初年度である2020年12月期は、在庫高を26%減らした一方、ゴルフ用品販売事業は3%増収でした。「無駄な在庫は極力持たない」という素地ができていたからこそ、2021年12月期に大きな成果が出たのではないかと思うのですが

仕入れた在庫をいかに効率よく売上と粗利益につなげるかという考え方の大切さに気付き、業務を合わせていけた結果だと思います。瀬川さんとFULL KAITENの思想が我々の売り場に適していたという面もありますね。

――ゲームチェンジが起こったエピソードはありますか

コロナ禍でリモートワーク中心になり、チームでコミュニケーションを取る機会が圧倒的に減りました。このため、業務を主体的にできるかどうかにメンバーで差が出てしまったんです。これには組織としても個人的にも危機感を感じていました。

そういった局面では、同じ情報、同じデータを基に会話できるかどうかが重要になります。その点、FULL KAITENのようなツールがあることでスムーズにコミュニケーションできた面はあります。恐らく重たいExcelやAccessを使っていては為し得なかったことです。

――今後、FULL KAITENをどのように活用していきますか

クオリティ分析機能を活用し、粗利額を増やし粗利率を上げることを目標にしています。販売消化をすべき商品をリスト化していち早くキャッチアップし、サイト内の販促施策につなげることで、賞味期限が来る前に手を打てるようになると思います。それによって過度な値引きを抑止できるとみています。

これまでも販促対象となる商品のリスト化はしていましたが、重たいExcelやAccessに頼っていたので、業務効率化を狙っています。

今までは、Excelを見るのはバイヤーくらいでしたが、クオリティ分析機能を使えば仕入れに関与していない販促担当も、商品の状態を把握できるようになります。そうなると、チームとして共通認識を持てるということなので、業務のレベルが上がりますよね。

情報が不足していると主体性は発揮できません。データがあれば、個人個人の知識の幅が広がり、各々ができることの可能性は広がります。

――今後の展望について教えて下さい

メーカーさんも大量に商品を生産しなくなりました。SDGs、サステナビリティの観点で大量生産・大量消費からの脱却という発想からですが、プロパーできれいに消費していきましょうというマインドが強くなっています。つまり、余分な在庫を持たないということですね。

メーカーさんもD2Cとかで直に小売りする力をつけてきましたから、我々のような小売事業者へ必ずしも優先的に商品を供給する必要がなくなっているのかなと思います。そういう中で我々が生き残っていくためには需要予測が大切だと思っています。

予測の精度を上げて、ロングタームでの発注をしていかなければならなくなるということです。

――でも、ロングタームの予測はすごく難しいです

その点は私も理解しています(笑)。なので、ロングタームの予測をするための判断基準というものにブレークダウンしていくと、今売っている商品が欠品したとして、もしも在庫がもっとあったとしたら、どれくらい売上と粗利のポテンシャルがあったのか、という仮想的な機会損失の数量・金額を割り出せるようになれば、次の発注数量が計算できると思うんです。

現在は当然ながら、在庫を持って売ったという実績値しか見ることができていません。でも、需要予測って、AIが正解を出すという捉え方だと非常に難しいと思うんですが、その手前の判断基準を示すレベルにおいて過去の実績値プラスアルファの要素、例えば「これがあったら、もっと売れたよ」というような要素が分かれば、それだけでも価値があります。

例えば、1つの商品を6ヵ月売ったとしても、途中の2ヵ月は欠品していた場合とフルで在庫を持っていた場合とでは、同じ数が売れたとしても、次に発注すべき数量は異なりますよね。空白の2ヵ月のうちにこれくらい売れていたでしょう、というデータを出せるとすごく価値があると思います。

編集後記

最初、CS我妻から「GDOさんの欠品率が1年で16.4%から2.9%へ下がりました」と聞いた時は正直耳を疑いました。欠品率を5分の1まで低減させることは並大抵のことではないからです。

在庫を増やして“ロングテール”状態にすれば欠品は減ります。在庫を増やさずに欠品も防ぐというトレードオフを克服するのが至難の業なのです。

私は恐る恐るGDOさんの在庫高と在庫回転率を調べてみました。この時の衝撃は忘れられません。回転率は年2回転も向上していて、在庫高も増収に見合った増え方でした(※決算短信ベース)。

成果が出た最大の要因が、FULL KAITENを地道に使い倒して結果を出した坪井さん率いるチームの実行力、ITリテラシーの高さであることは論を待たないところです。でも、FULL KAITENが吐き出した「使えるデータ」がGDO社内の共通言語になったことも、少なからず貢献しているのではないでしょうか。

FULL KAITENがGDOさんのお役に立つことができ、本当に誇らしく思いますし、この事例が他の小売企業の参考になれば、これほど嬉しいことはありません。

なお、坪井さんが最後に仰っていたロングタームの予測をするための判断基準について補足します。弊社のデータサイエンスチームが現在、欠品による空白期間があったとしても、補完して予測する計算モデル構築に向け、鋭意研究中です。どうぞご期待ください。(desk)