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【在庫回転率の基礎知識と計算方法】在庫回転率を上げて適正在庫を維持する方法の解説

「在庫の動きが把握できない」「どの在庫がどれくらい滞留しているのだろうか」

在庫管理の課題に直面する担当者は少なくないのではないでしょうか。

よしんば在庫管理はしっかりできているとしても、在庫回転率や在庫回転期間を把握できなければ、余剰在庫を抱えるリスクが増え、じきに資金繰りに支障を来たしてしまいます。

本稿では、在庫回転率の基本知識、計算方法など、在庫回転率のイロハについて詳しく解説します。

在庫回転率とは?

まず在庫回転率とは何でしょうか。関連する指標である「在庫回転期間」と一緒にみていきます。

在庫回転期間は、在庫を仕入れてからどれくらいの期間で売れているかを表します。

在庫回転期間 = 在庫 ÷ 売上原価

A社:売上高200億円、売上原価100億円、期中平均在庫50億円
B社:売上高100億円、売上原価60億円、期中平均在庫15億円
※期中平均在庫とは、期首在庫と期末在庫を足して2で割った値です

この2社を比べてみましょう。在庫回転期間はそれぞれ次のようになります。

A社:50÷100=0.5(年) → 6ヵ月
B社:15÷60=0.25(年) → 3ヵ月

つまり、A社は仕入れた商品から売上を立てられるまでに6ヵ月かかります。言い換えると、6ヵ月かけないと在庫商品を全て売上に換えられないということです。

これに対し、B社は3ヵ月で在庫を売り切ることができます。

次に在庫回転率ですが、回転率は在庫回転期間の逆数となります。

在庫回転率 = 売上原価 ÷ 在庫

A社:100÷50=2(回転)
B社:  60÷15=4(回転)

2回転(A社)ということは、在庫が年間2回入れ替わったということです。仕入れた在庫を売り切るのに6ヵ月かかるのですから、1年で2回転しかしないわけです。

一方のB社は、在庫が年間で4回入れ替わります。

なお、在庫回転率や在庫回転期間の計算に売上原価ではなく売上高を用いる方法もありますが、それは後ほど詳述します。

在庫回転率を把握すべき理由

そもそも、なぜ在庫回転率を把握しなければいけないのでしょうか。順を追って考えていきましょう。

1.在庫量が適正かどうかの指標になる

前章のA社とB社を思い出してください。

A社:売上高200億円、売上原価100億円、期中平均在庫50億円
B社:売上高100億円、売上原価60億円、期中平均在庫15億円

両社が同じ小売業界で競合同士だと仮定すると、皆さんはどちらで働きたいですか? 筆者は、規模で勝るA社ではなく、在庫効率が良いB社を選びます。社会のボラティリティ(変化の度合い)が大きくなり、需要変動も激しくなっている現在、在庫回転率が2回転という企業体質は、リスクが大きいと思うからです。

というのも、在庫回転率が低い(在庫回転期間が長い)ということは、現金を回収するまで時間がかかることを意味します。


以下の現金の流れを見て下さい(分かりやすくするため掛買い・掛売りは無し)。

  1. 期首  

    現金100万円
    在庫  50万円

  1. 仕入れ:商品50万円分を現金仕入れ

    現金  50万円
    在庫100万円

  1. 売上げ:在庫50万円分を100万円で現金販売

    現金150万円
    在庫  50万円

在庫回転率が低いと、2から3まで長い期間を要します。この間、手元現金は減ったままであり、種々の支払い(販促費、人件費、租税公課などなど)が容赦なく発生します。

在庫量が適切であれば、資金繰りに悩む場面はかなり減るでしょう。在庫回転率はそのバロメーターになります。

2.無駄なコストを削減できる

後述するように、業種ごとに望ましい在庫回転率の目安はあります。その目安から大きく乖離している会社は、在庫管理に無駄なコストをかけている可能性が高いといえます。

在庫回転率が低いということは、余分な在庫を抱えている状態が恒常化しているということです。すると、次のようなコストが余分に発生してしまいます。

  • 入出荷の際の手間
  • 棚卸し作業の労力
  • 倉庫の賃料や保険料
  • 棚卸減耗損

ただでさえ、デフレ経済下で賃金が上がらないのに、余計な仕事が増える、あるいは余計な費用に現金が流出する現状に皆さんは耐えられますか? 筆者は我慢してほしくないと思っています。

3.顧客ニーズや売れ筋を把握できる

在庫管理をシステム化している会社であれば、品番(SKU)ごとの在庫と売上高のデータは存在するでしょう。在庫回転率は年間だけでなく、四半期ごと、月ごと、週次で計算することもできます。

そこで、SKUごとの在庫回転率を計算すれば、顧客ニーズを把握できるほか、商品ごとに売れ筋・死に筋の判断ができるのです。

顧客ニーズがある商品は補充発注がかかるケースが多いでしょう。一時的に在庫量が多くなっても、在庫回転率が高ければ短い期間内に売れていきますから、何ら心配することはありません。

逆に、他のSKUと比較して在庫数が少ないSKUもあると思います。しかし、在庫が少ないからといって油断はできません。在庫回転率が低ければ、売り切るまでに時間がかかるということを意味するからです。

このようなSKUは、いくら欠品しそうでも補充発注は止めた方がよいでしょう。深追いすると高い確率で売れ残ります。

4.  年間での需要予測ができる

次に、定番品の在庫回転率について考察します。シーズン単位や四半期単位に区切って在庫回転率を算出すると、それら期間ごとの需要(顧客ニーズ)の波を捉えることができます。

シーズンごとの需要の上下が分かれば、どれくらいの在庫を抱えれば良いかの参考になりますので、仕入れ発注業務の一助になります。

ただし、注意点が1つあります。需要の予測というのは大変難しいという点です(詳しくは別稿で触れます)。

なぜかというと、需要というものは、私たちが予測し得ない外的な要因に大きく左右されるからです(AIに予測させる場合でも、AIはそうした外的要因が起こることを予測できません)。

とはいっても、予測を全くしないわけにはいきません。ではどうすれば良いか。予測する対象となる期間を可能な限り短くするのです。近い将来を予測する方が遠い将来を予測よりも当たりやすいことは感覚的に分かると思います。

在庫回転率の計算方法

1.「金額」から計算する方法

在庫回転率や在庫回転期間の計算方法は、冒頭で述べたとおりです。

在庫回転率 = 売上原価 ÷ 在庫

在庫回転期間 = 在庫 ÷ 売上原価

なお、計算に際し売上原価ではなく売上高を用いる会社が散見されます。当然ながら売上原価よりも売上高の方が大きいですから、売上高で計算する方が在庫回転率、在庫回転期間いずれも数値は見かけ上は改善します。

A社:売上高200億円、売上原価100億円、期中平均在庫50億円
B社:売上高100億円、売上原価60億円、期中平均在庫15億円

再びこの例で、売上高を用いて計算してみます。

A社:200÷50=4(回転)
B社:100÷15=6.67(回転)

A社は4回転、B社は6.67回転となりました。売上原価で計算した結果(A社:2回転、B社:4回転)よりも、一見して少ない在庫しか抱えていないように映ります。

ここでよく考えてみてください。在庫と売上原価は原価ベース(取得原価)であるのに対し、売上高は売価です。前提が違う数字同士を四則演算するのでは、正確な数値を把握できないと筆者は考えます。

この点について、筆者は知人の公認会計士に質問したことがあります。すると、次のような答えが返ってきました。

個人的にはどちらでも良い気がする。なぜなら、出てきた数値をどのように受け止めるかは経営者の主観であり、どちらであっても本質には何ら変わりがないから。ただし、売価のボラティリティ(変動の度合い)が低ければ売上高で計算しても良いと思う。逆に売価が乱高下するような業種なら、売上原価で計算する方が無難だ。

人間は、見たいものをだけ見ようとする行動バイアスに常に晒されていますから、経営者が見かけの良い数字を使いたがるのは無理もないでしょう。とはいえ、本質から目を逸らしてほしくないとは思います。

2.「個数」から計算する方法

在庫回転率はこれまでみてきた金額で計算する以外に、個数で計算する方法もあります。筆者のような調査担当が他社の在庫回転率・在庫回転期間を計算するには、決算短信をはじめとした公表資料しか拠り所がありません。そうした資料は、企業活動が全て「金額」で表示されていて、在庫の「個数」、つまり在庫点数や売上点数は分からないのです。

しかし、自社であれば棚卸資産台帳や売上明細のデータが手に入りますから、在庫の動きを「個数」で追うことができます。すると、在庫回転率も個数で計算できるわけです。

結論から言うと、個数で計算するのが望ましいです。理由は次のとおりです。

  • 在庫金額は、期末評価で評価減を認識(商品評価損を計上)すると減少する
  • 在庫の仕入れ値(取得原価)は毎回一定であるとは限らない
  • 棚卸減耗損が小さくない業種だと、実態よりも在庫回転率が善く見える

つまり、金額で在庫回転率を計算すると、前記を要因として不正確な数値が出てくる恐れがあるのです。ただ、個数で計算するのは金額での計算よりも工数がかかるものです。週次、月次は金額ベース、四半期では個数ベースと使い分けるのも一計ではないでしょうか。

在庫回転率が高いか低いか判断に迷う場合

在庫回転率に限らず、ビジネスの世界では業種ごとの参考指標であるベンチマークを意識することも大切です。

その参考になる資料が経済産業省のウェブサイトに掲載されています。

経産省:商工業実態基本調査「中小企業の収益状況」
 ※別タブで開きます

1998年(平成10年)に終了した調査なのでデータは古いですが、企業各社のビジネスモデルが大きく変わったわけではないので、20年余たった今も参考になります。

まず、卸売企業と小売企業では、大企業が中小企業を大きく上回っていることが分かります。大企業の方が効率の良い経営をしていると言えばそれまでですが、在庫リスクを中小企業に押し付ける商慣行の影響もあるでしょう。

次に業種別でみてみると、次のような格差があります(平成10年調査)。

      【卸売】 【小売】
飲食料品   24.2回  17.1回
繊維・衣服等  8.0回   5.1回

ただし、これは計算に売上高を用いていることに留意してください。売上原価で計算する場合よりも高めに出ます。

在庫回転率の水準目安は?

では、弊社フルカイテンの顧客が多いアパレル産業における在庫回転率の水準の目安について、考えてみます。

前章でも触れましたが、商工業実態基本調査によれば、織物・衣服・身の回り品小売業の在庫回転率は5.1回転(平成10年調査)でした。

ここでファーストリテイリングと三陽商会、良品計画(無印良品)の在庫回転率を調べてみました。先の商工業実態基本調査に合わせ、売上高で計算しています。

ファーストリテイリング:4.9回転(売上原価ベース:2.5回転)※2020年8月期
三陽商会       :4.9回転(売上原価ベース:2.6回転)※2020年2月期
良品計画※全事業   :4.5回転(売上原価ベース:2.3回転)※2020年2月期

良品計画はアパレル以外の食品、リビングも含んだ数値です。各社似たり寄ったりですが、ファーストリテイリングはコロナ禍の影響を大きく受けた6ヵ月を含んだ数字であり、コロナ禍がなければ、もう少し在庫回転率は大きかったと思われます(さすがユニクロです)。

しかし、よく考えてみてください。売上原価ベースでは2.3~2.6回転にとどまっています。アパレルは少なくともシーズンが4つに分かれているはずであり、4回転していればシーズンごとに在庫が循環していると捉えることができます。

よって、この3社の現状は、下記2要素が絡み合っているといえるでしょう。

  • 毎シーズン、大量に売れ残りが発生している
  • 次の次のシーズンに売る商品を在庫として抱えている(つまりリードタイムが非常に長い)

アパレル業界の特性として、販売期間が始まる半年くらい前に商品企画を終え、発注しなければならないというリードタイムの長さがあります。ここにメスを入れない限り、在庫回転率が改善することはないでしょう。

つまり、在庫回転率の水準の目安は、ことアパレルに関してはあって無いようなものです。

在庫回転率を上げ、適正在庫を維持する方法

以上、見てきたように、在庫回転率を上げてそれぞれの会社に適正な水準の在庫高を維持することが、健全経営には必要不可欠です。そのポイントを順にみていきます。

1.目標となる在庫回転率を設定する

まずは現状把握と目標設定ですね。在庫回転率について、①全社、➁事業部(商品グループ)ごと、➂SKUごと、という各階層で直近の数字を出します。

そして、①➁➂それぞれの目標値を設定します。

在庫回転率の目標は、資金繰りや商品計画と密接に関わってきます。例えば商品甲、商品乙があるとして、それぞれどういった客層に訴求するのか、販売期間はどれくらい取れるか、翌年にキャリー可能か、などを勘案しながら、甲乙それぞれの目標在庫回転率を決める必要があるでしょう。

2.定期的に在庫回転率を把握

そのうえで、実際に商品甲、商品乙を仕入れたら、定期的に「個数」で在庫回転率を計算しましょう。四半期ごと、月ごと、週次などです。顧客ニーズを正確に把握できるので、補充発注の判断に役立つでしょう。

3.不良在庫を処分して生産を減らす

不良在庫の処分は非常に重要です。在庫として持ち続けていても、販売できる見込みは薄く、たとえ二束三文だとしても現金として回収する方が良いからです。在庫を処分すれば(個数ベースの)在庫回転率が上がるという効果もあります。

ただ、在庫を処分しようにも、どの商品が不良在庫なのかを把握できていなければ、現在の在庫数が多いだけでコンスタントに売れている商品までも「不良在庫」と誤認してしまう恐れもあります。

こうした利益の逸失を防ぐためにも、普段から定期的にSKU単位で在庫回転率を算出しておく必要があるのです。在庫回転率が低いSKUを特定して処分対象とするべきでしょう。

4.リードタイムの短縮と多頻度・少量発注

在庫回転率を上げるには、普段から保有する在庫数を減らす必要があります。そのために真っ先に思いつくのが、納品リードタイムや生産リードタイムを短縮することではないでしょうか。

リードタイムと同じ期間で売れるであろう数量が手元にないと、欠品が発生することになるので、リードタイムが長い商品の発注数量は多くなってしまいます(下図)。

リードタイムと補充量の関係(株式会社インフォグロースの資料に筆者が加筆し作成)

リードタイムを短縮できれば、発注してから納品されるまでの期間が短くなるということなので、その期間に起こり得る需要の増減の影響を受けにくくなります。よって、過剰な在庫を抱えたり欠品が起きたりということが起こりにくくなります。

しかし、リードタイムの短縮は難しいのではないでしょうか。そもそも可能であるなら、どの会社も既に短縮に取り組んでいるはずですよね。

そこで本稿では、発注の頻度を上げることを提案します。下図の例を見てください。発注頻度が低い場合(図の左)、1回の発注量は1000個になります。これに対し、高い頻度で少量の発注を繰り返す場合(同右)だと、1回の発注量は100個に抑えられます。

どちらが売れ残りリスクが小さいでしょうか。もちろん右側ですよね。右のケースでは、最初に100個発注した後で50個が売れ残ってしまったら、次の発注で発注量を減らせば良いわけです。つまり、予測精度が同じ50%でも、売れ残りリスクは違うのです。

「変化に強い」とはこういうことを指します。例えばリードタイムが3カ月だとして、3カ月に1回発注する際の発注量が1,000個、1週間に1回発注する際の発注量は10個、予測精度を50%と仮定します。

3カ月で1,000個売れると考えたものの、500個しか売れなかったケースと、1週間で10個売れると考えたのに5個しか売れなかったケースでは、明らかに後者の方が在庫リスクが低いですよね。

これまでは発注業務の負荷が高いために発注頻度を低くせざるを得ず、1回の発注数量が多くなっています。つまり、発注数量を抑えたければ発注頻度を上げる必要があり、発注頻度を上げるには、発注業務の負荷を下げる必要があるということです。

まとめ

在庫ビジネスの最重要指標の1つである在庫回転率(在庫回転期間)をひも解くだけで、こんなにもたくさんの論点と気付きがあることをお分かりいただけたと思います。

本稿が、データをうまく活用しキャッシュフローを最大化させる経営に取り組むヒントになれば幸いです。


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