在庫効率UPと売上急伸の二兎を追った直営事業、店間移動&店舗→EC移動の成功の裏側
ミズノ株式会社
課題
- MD(マーチャンダイザー)が実店舗担当、EC担当それぞれに配置されていて、Excelをメインに在庫を管理していたため、人による生産性のバラつきやノウハウの属人化があった
- DTC(直営)事業の成長を加速させる全社方針のもと、利益最大化と在庫効率向上の両立が求められる中で、実店舗数の増加に伴い在庫マネジメントの重要性が高まっていた
解決策
- FULL KAITEN〈店間移動〉を活用してデータ分析と移動指示の作成を自動化
- 適切な時期に適切な数量を移動させるため、データに基づく判断をルーティーン化
定量成果
- 実店舗用の在庫をEC用へ融通する「倉庫間移動」により、移動させた商品の稼働率(ECで実際に売れた率)が74.5%に達した
- 在庫の店間移動と実店舗→ECの移動で創出した粗利益が月当たり計約466万円増加
日本を代表する総合スポーツ用品メーカーであるミズノ株式会社様は、1906年の創業から120年の節目を迎えています。近年は直営ビジネスに注力しており、ECと実店舗による小売事業を強化しています。ただ、小売の売上高が伸びていく中で在庫マネジメントに関する課題が顕在化していました。そこで、ミズノ様はFULL KAITENを導入し、店舗用在庫をEC用に機動的に割り当てたり、適時に適量を店間移動したりして在庫効率と業務効率の向上に取り組みました。その結果、在庫移動(店間および実店舗→EC)により創出された粗利益が月あたり計約466万円増加したほか、実店舗で余剰になった商品をECで販売したところ稼働率(ECで実際に売れた率)が74.5%に上るといった成果が出ました。
本稿では、同社の直営ビジネスのMDを統括するオウンドチャネル統括本部マーチャンダイジング室の井口様、市岡様、串田様にFULL KAITENを通じた取り組みについてお話を伺いました。
※本記事に含まれる情報は2026年7月下旬時点のものです。
MD室を新設し全社最適へ
ーー皆様の簡単な自己紹介をお願いします。
井口様 私はマーチャンダイジング室(MD室)のマーチャンダイジング課でECと実店舗のMD&管理チームのマネージャーをしております。アスレティック事業部が管轄している商品が課の担当領域です。
市岡様 私は井口の下でECと店舗の主に係数管理を担っています。売上と粗利、在庫など全般の管理をしています。現在、当社は全社的に在庫を課題として捉えていまして、私はECと店舗の部分で関わっております。

串田様 同じく井口の下で市岡と同じ担当範囲を持っているんですが、 私はMD室ができた当初に管理担当という形で入りましたので、FULL KAITENの導入の部分は私が担当しつつ、その後市岡がいろいろな工夫を重ねてくれているという形になっていますね。
ーーありがとうございます。まず初めに、FULL KAITENを導入する前は、店間移動や倉庫間移動といった業務はどのように実施されていましたか。
串田様 もともと当社にはMD担当が店舗とECそれぞれの部門にいて、「店舗は店舗」「ECはEC」と担当者がそれぞれ自分たちの範囲の中で在庫を確認するということをやっていました。その後、店舗の担当者、スタッフなどが在庫移動の仕組みを取り入れたんですが、やはり担当者が自分のPCからシステム上で在庫をチェックしたり、Excelに出力して確認したりと、ほぼ手入力でやっていました。「どことどこの店の在庫を入れ替えようか」「どこへ集約させようか」と、手動で計算して判断するのがメインになっていました。

内舘(フルカイテン サプライチェーンコンサルタント) FULL KAITEN導入前は、人によってまちまちだとは思いますが、1時間でできる方もいれば半日とかかかる方もいらっしゃったと聞いています。
串田様 そうなんですよ。特にスポーツアパレルの場合、ものすごい数のアイテム数を抱えますから、それらをチェックするのは時間がかかります。あと、人によってスキルの差で時間やアウトプットに差が出ていました。
ーー当時MDのメンバーは何人くらいいらっしゃいましたか。
井口様 最初は店舗で4名、ECで3名でした。なお且つ取り扱い競技も全部は対象にできなくて、主要競技だけを見ていました。やはり、その人の力量や勘に頼り、かなり属人化していたと思います。
串田様 各店舗からそれぞれ商品に関する依頼が寄せられるので、それぞれに配慮しながら最適に(在庫を)動かさないといけないという判断の難しさもあったと思います。
ーーExcelメインだと属人化や、得手不得手による質のバラつきが出てきやすいですよね。まさにそこが組織としての課題だったのだと思います。
串田様 はい、ちょうどMD室も立ち上がったタイミングだったので、そうした課題を解決していこうということになりました。
井口様 店舗数が少ないうちは、個人の力量の範囲内でやっていても、そこまで大きな事故にはなりません。いま当社は直営ビジネスの拡大期にあるので、実店舗が増えれば増えるほど在庫を最適に配置・管理する難易度も上がっていきます。それに合わせて課題感が徐々に大きくなってきたという感じです。
ーー卸売主体から、ECを含めた小売を伸ばしていっているんですね。
市岡様 はい。当社は120年続いている会社なんですけれども、直営ビジネスを強化し出したのはここ数年です。正直なところ、直営ビジネスを展開するノウハウは手探りで進めていた部分もありました。その過程で出てきた課題として、店舗間の在庫の集約や担当者にかかる手間というものがありました。
ーーMD室が立ち上がって、大きくなってきた課題に対処していこうというところでFULL KAITENの導入を検討されたわけですね。
井口様 もともと当社はECチームがFULL KAITENにお世話になっていたので、彼らから紹介してもらいました。AIを使って効率的に結果を出す必要があると感じていましたので。
ーーとはいえ、他にも色々なツールが候補としてあったのではないかと思います。FULL KAITENを選ばれた理由、決め手はどういったことでしたか。
井口様 そうですね、ECチームが既に御社とやり取りさせていただいていたので、データ連携が非常にスムーズだったということがあります。また、我々が組織としてスピード感を求められている中で、御社がすごくスピーディーに対応してくださったのは大きな要素でしたね。
当初はトライアル契約で、その後きちんとレポートで定量的な効果検証をご報告いただけたので、無事に本契約に至りました。内舘さんからいただいたレポートを見て、「これだけ実績が出て、費用対効果が良くて、本契約しない理由はないな」と当時思ったことを今も鮮明に記憶しています。
串田様 井口が申したように見える形の結果が出たことは大きなポイントでしたが、内舘さんから非常によくサポートをしていただいたと感じています。
内舘 ありがとうございます。もったいないお言葉です(笑)。ただ、御社はやると決めたことは本当にきちんと実行してくださるので成果が出るんだと思います。FULL KAITENが出す数字をまずは信じて一緒にやり切ってくださったことが成果につながっていると感じます。
井口様 市岡と串田が、店舗側の上長や現場にも「FULL KAITENが出す数値を一度信じてやってみよう」と根気強く丁寧に説明してくれたので、店舗を巻き込むことができたのかなと思います。
ーー在庫を動かされる立場になる店舗側への説明に際して気をつけたこと等はありますか。
市岡様 在庫が来る店舗はいいんですけど、移動元の店舗はどうしても「売上を取られてしまう」という感覚になりがちです。これは自然なことなので、特に伝え方に気をつけました。
とはいえ、店間移動は全体最適につながる業務ですから、しっかり売ってもらえれば、またその店舗にしっかり在庫が届く、売れるところにちゃんと売れるものが届く、という動機づけに努めました。なので、売るための意見ももちろん店舗のスタッフたちから出してもらっていますし、それをどういった形で運用していくかも考えながら運用しています。
串田様 もう少し泥臭いところもありました。店舗スタッフには大勢がいる中で発言するのが得意でない方もいらっしゃるので、市岡が「FULL KAITENを入れて実際どう?」と店舗まで足を運んで聞きに行っていました。すると「ここが困っています」「ここは良くなりました」ときちんと言ってくれるんですよね。すり合わせをしながら運用の仕方を変えていきましたね。
店舗・ECに横串、店間移動がルーティーン化
ーー定性的な成果、定量的な成果についてお聞きします。FULL KAITENでどのような変化を感じられましたか。
串田様 まず1つ目としては、店間移動がルーティーン化して、きちんと定例の業務として回り出したのが大きなポイントだと感じています。以前はMDごとの忙しさによってはできない仕事があったんですが、そういったものがなくなり、定期的に回せるようになったことで機会損失も減っています。
そして、店舗スタッフたちのマインドも変わったんじゃないかなと思いますね。商品を移動させることを嫌がるのではなく、「これも移動したい」「次はこの商品を入れて一緒に売りたい」と提案されることもあります。だいぶポジティブに捉えてもらえていると感じます。
ーーなるほど、頼もしいですね。
市岡様 あとは、全商品をプロフィット(カテゴリー)ごとに機械的に出せるようになった点が非常に大きいと思います。以前は各MDが在庫の集約をして指示を出していましたが、それが1つに集約されて、皆が作業する時間も明らかに減っていますし、担当者によるレベルの差が無くなって、人は判断するだけで済んでいるといいますか、作業以外のことに時間が使えるようになったのは大きな変化です。
井口様 今まではMDによってExcelのフォーマットが違ったうえ指示のタイミングもバラバラでしたから(笑)、定常業務になることでそれらが解消されただけでも大きいですね。これにより店舗側の負荷が減りました。
ーー御社で特徴的なのが「倉庫間移動」としてFULL KAITENをご利用いただいているところです。もちろん物理的に倉庫間で在庫をやり取りするのではなく、データの上で、実店舗用の引き当て(割り当て)をEC用の引き当てに変えるという操作ですね。店舗ーEC間の在庫データの一元化自体に多くの企業が苦労しているところだと思います。その点、御社の倉庫間移動はまさにMD室の面目躍如なのではないでしょうか。
井口様 MD室ができる前は在庫に関して「店舗は店舗」「ECはEC」という感じでした。ただ、MDのミッションはDTC全体で売上を最大化することです。なのでMD室としてはEC、店舗どちらでもお客様にきちんと商品を届けられる状態にするのを第一に、双方で売上を最大化しようという意識を第一に持っています。なお且つ私たちがそういう発信をし続けることで、会社としても「ECで売れているんだったら、店舗の分を渡して売ればいいじゃないか(その逆も同様)」と、そういう意識に少しずつ変わってきていると感じます。
ーーまさに全社最適ですね。
内舘 やはりMD室という組織ができたからこそ、柔軟に進められるようになったのではないでしょうか。というのも、そうしたセクショナリズムで結構引っかかってしまうお客様も多いんですよね。

井口様 意図的に店舗とEC両方を担当するMDをつくるようにはしていまして、そういうところから店舗とEC両方きちんと見る意識を徹底している効果もあるかもしれません。モチベーションとしては、どちらかを頑張るのではなく「両方頑張ろう」になりますから。
ーー業務効率等の面で、例えば店間移動に費やす時間の削減効果はどれくらいありましたか。
串田様 もともと移動リストの作成に1人の作業時間がだいたい8時間かかっていました。それに対して今はもう週に1回という頻度を決めて、2時間くらいでできるようになりました。
市岡様 移動の考え方自体が変わったというのもありまして、従来は終売期に在庫を(ある店舗へ)集約するのが目的でした。それがFULL KAITENを使うようになってからは売上をつくるための移動になりましたね。集約はいわば在庫の補充でしたが、今は売上最大化のための移動です。
ーー効果検証では店間移動による創出粗利が月平均で291万円増え、稼働率は40%くらいになりました。「倉庫間移動」では創出粗利がひと月で175万円増加し稼働率が74.5%に達しています。これらはどう評価していらっしゃいますか。
井口様 店間移動の稼働率 40%というのは悪くないと思っています。ただ、季節によってムラが出る印象ですので、できる限りこの安定したパフォーマンスを継続できるように突き詰めていかないといけないと感じています。
市岡様 シーズンがかなり影響する商品が多いこともあり、そもそも従来は動かした後の稼動率という数字がそこまで見えていなかったんですよね。そこがしっかりと可視化されるようになり、皆がそこも意識するようになっていると実感しています。
串田様 いま以上に稼働率を上げようと思ったら、社内の運用も変える必要が出てくるのではないかと思っていまして、例えば確実に(在庫を)送っているかどうかを追いかけて確認するなどですね。とはいえ、今みなが受け入れている状態でオペレーションを回して40%をコンスタントに出し続けられているというのは、十分な実績だと思います。
対象店舗を拡大。発注精度の向上に期待
ーー今後、FULL KAITENをどのように活用していきたいとお思いでしょうか。
市岡様 店間移動に関しては、これからも対象店舗や移動数を拡大していこうと考えていますので、そこをFULL KAITENによって、事業規模が拡大する中でも在庫効率をさらに高めていきたいですね。
ーー確かに、移動対象の店舗が増えていけばいくほど難易度が上がりますからね。
市岡様 はい、選択肢も増えて、それこそ人力では絶対できないですから。
串田様 私自身はスポーツスタイルのシューズの卸売の在庫コントロールも担当していまして、本当の意味での全社最適という意味では、例えば「直営店ではこのサイズはもう十分だから、こっちのお得意様に卸した方がいいよね」というような動きもやっています。店間移動や倉庫間移動だけでなく、卸も含めてFULL KAITENをどう使うかいうところも内舘さんに引き続き相談させていただきたいと思います。
井口様 在庫の活用というのは、最終的には次期の発注精度アップにつながることが重要だと思っているので、次の発注を正しく出すための取り組みをFULL KAITENとやっていきたいですね。
内舘 皆様ありがとうございます。発注を正しくできればその後の無駄な在庫も生まれにくいですから、引き続き開発チームに連携してまいります。
串田様 どんどん新店舗も増えていきますから、過去のデータだけでなく、データに基づいて次のシーズンでどれぐらい売りたいかという意思も含めた発注予測を精度高くできることが、最終的な在庫効率にすごくつながります。
内舘 目下、自然言語でほしいデータを自由に取り出せるプラットフォームを開発中ですので、必ずお役に立てると思います。
ーー皆様、本日は誠にありがとうございました。