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「セシルマクビー」店舗撤退へ…アムラー世代の変化に追い着けず赤字続きだった

安室奈美恵さんのブレイクと軌を一にして大流行した「渋谷109」ブランドの代表格、CECIL McBEE(セシルマクビー)を運営する株式会社ジャパンイマジネーションが2020年7月20日、事業を大幅縮小すると日本経済新聞と繊研新聞で報じられた。セシルマクビーは年度内に全店を閉店し、ライセンス事業に絞られるという。ギャルファッションを好んだ「アムラー世代」の好みの変化に付いていけずに販売不振となり、固定費削減のため不採算店舗の閉鎖を進めていた。そこに新型コロナウイルス危機が到来。事業継続を断念するきっかけになったようだ。

ギャルファッションにいち早く対応

ジャパンイマジネーションは戦後間もない1946年11月に創業。1957年に会社組織になった老舗婦人服店だ。

セシルマクビーは1987年、渋谷109に1号店を出店してブランドとしてのスタートを切った。その後、1990年代後半、安室さんが大ブレイクしてギャルファッションが女子高校生らを中心に大流行した。

経済ジャーナリスト高井尚之氏はPRESIDENT WOMANに寄せたコラム(2019.3.30)でこう述べています。

重衣料が得意なブランドだった「セシルマクビー」は路線を変え、当時「カジュアル、エレガンス、セクシー」の3方向で展開しました。とくに肌を露出するけど下品さのないセクシー服が大人気となりました。時代の変化をいち早く取り込み、マーケティングに成功したのです。

その後のセシルの大流行は広く知られているとおりだ。トレンドの変化に素早く対応し、インフルエンサーに着用させてファンを増やしていくことで成功を収めた。

アムラー世代もユニクロに出逢う

そうしたアムラー世代も、現在は40歳前後。経済の停滞が続いた「失われた20年」をどっぷり経験し、ファストファッションの隆盛を目の当たりにしてきた。衣服の平均単価がどんどん下がっていくとともに、ユニクロのファッション性が上がったことで、機能性を重視する消費者が増えたことは間違いない。

それに伴い、ジャパンイマジネーションの業績も悪化していった。東京商工リサーチによると、同社は2020年2月期まで6期連続で減収。当期純損益もずっと赤字だった。売上高は2016年1月期には177億円あったが、2020年2月期は121億円。4年間で32%も減少しピーク時からほぼ半減した。この間、赤字は毎年10億円を超えていた。まさにジリ貧だった。

原因は固定費負担の大きさに尽きる。2020年6月時点で店舗は他ブランドを含め全国に116カ所。近年はEC販売に注力していることから、単純計算で1店舗あたりの売上は1億円を割っていた可能性がある。同社の店舗は都心型商業施設に多く、賃料などの固定費負担が重かったと考えられる。

セシルマクビーの渋谷109店は2019年11月、ブランドコンセプトやロゴを一新してリニューアルオープンしたばかり。商品やスタイリングを「今の女性のマインド」に合わせて見直し、改めてヤング層の獲得を目指していた。

しかし、新型コロナの影響で売上の回復が見込めず、店舗・ECでの販売をやめることになったようだ。

教訓は「固定費」と「変化へ耐性」

ただ、ジャパンイマジネーションの会社としての自己資本比率は70%を超え、実質無借金経営。財務状態は依然として安定している。今後「Ank Rouge」や「Jamie エーエヌケー」などのブランドは継続する。

日経新聞によれば売上規模は40~50億円程度へ縮小する見込み。赤字を止血して経営リソースを集中させる狙いがありそうだ。

フリージャーナリスト南充浩氏はザイコロジー・ニュースへの寄稿で、こう指摘していた。

新型コロナによってこれまで経営が傾いていたアパレルは今後ドンドンと連続して経営破綻に追い込まれることになるでしょう。すでにメルベイユアッシュ、ハヴァナイストリップなどのアパレルが破産しています。
これらに共通するのは、
 1、 すでにコロナ前から経営が悪化していた
 2、 都心百貨店や大型商業施設に集中的に出店していた
 3、 ロードサイド路面店や地方路面店の出店が少なかった

という3点になります。レナウンもこの3点に当てはまります。今回の新型コロナショックで休業に追い込まれたのは、百貨店、都心商業施設、郊外ショッピングモールだったからです。

在庫が増えると、
 →大ロット発注でコストを下げて利益を確保しようとする
 →在庫がさらに増えるので売り場を増やす
 →売上は増えるが、固定費が増える

という負のスパイラルに陥りがち。固定費が増えると、環境変化に対して弱くなってしまう。無理して売上を作っても、採算が悪化しては元も子もない。

時代の変化をいち早く取り込み、マーケティングに成功したセシルマクビーといえど、その後の変化に対応し切れなかった。(南昇平)

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