繊維製品技術研究会が主催する講座で瀬川が「売上至上主義から粗利経営へ」と題して講演しました

フルカイテン株式会社代表の瀬川直寛は、2021年10月22日に繊維製品技術研究会(ATTS)の第238回研究会例会に講師として招かれ、「売上至上主義から粗利経営へ~縮小市場におけるファッション業界の在庫戦略~」との演題で講演しました。

講演要旨を以下にご紹介します。

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コロナ前にはもう戻らない

私は2012年5月に会社を設立し、全く畑違いのベビー服の小売事業に参入しました。その後、全て在庫過多が原因で3度も倒産危機を経験しました。それらを克服していく過程で色々な気付きがあり、現在はそうした気付きを応用して様々な企業様の在庫問題を解決するため、在庫の効率を上げることで少ない在庫で多くの粗利益を生むための在庫分析クラウド『FULL KAITEN』を開発し、小売企業などに提供しています。

まず、新型コロナウイルス禍を点で見てみると、需要が短期間のうちに蒸発したということです。これによって在庫のたたき売りやブランド閉鎖、不採算店舗の統廃合、企業淘汰などが顕在化しました。

次に、コロナ禍を流れで捉えると、「市場縮小」が見えてきます(図1)。

図1

2014年には15年前の1999年と比べて消費支出(可処分所得)が多い世代で月間6.2万円も減少しました。そして人口が年間約50万人減少しており、2025年頃には減少幅が年60万~100万人へ拡大します。

2024年には団塊の世代の人たちが全員75歳以上の後期高齢者になります。そして2030年頃には人口の3分の1が65歳以上の高齢者になります。つまり人口が減りながら高齢化が進みますから、お金を使う層が思いっきり減っていきます。
要は、コロナ禍で急に需要が消失したわけではないのです。

また、アパレル小売の市場規模は9兆円~8兆円といわれていますが、日本のアパレル市場は年商数十億~数百億円のプレーヤーが多いですよね。そうした企業の経営者の皆さんは「ウチは300億円企業だから市場縮小は関係ないよ」と仰るんですね。

でも、彼らがターゲットとしている顧客層が30代女性だと仮定すると、その年齢層の人口が激減していくわけです。人口減少と高齢化のダブルパンチなので、30代女性の人口割合もどんどん低下していくからです。なので、数十億~数百億円という売上を維持できると考えることは合理的ではありません。本当に危機感を持ち、自分たちのビジネスモデルとブランドの立ち位置をよく考えないといけないと思います。

いつまでバブル期と同じ経営を続けるのか

アパレル産業ではバブル崩壊前まではプロパー消化率が90%前後ありました。当時は在庫を持つこと自体が戦略として正しくて、いかに欠品させないかが重要だったんです。

ところがバブル崩壊後の30年間は経済成長が終わり、人口減少と高齢化の弊害が顕在化するようになって、世界的に見てもリーマン・ショック等による経済環境の悪化が度々起こりました。日本のアパレル産業は市場環境が変わったのに、拡大市場でしか通用しない在庫の物量ありきの戦略を変えることができていないということです(図2)。

図2

経営を取り巻く環境が激変しているのですから、見るべき経営指標も変わります。9割方プロパーで売れていた時代は消化率や回転率などの遅行指標を見ていれば良かった。でも今は在庫の物量に頼ることができないので、先行指標を見ていかないといけません。遅行指標のような結果を見てから手を打つのでは遅いからです。

つまり、売上第一から粗利第一の時代に変わる潮目にいま来ているということです。そして、粗利第一経営では少ない在庫で多くの粗利益を生むことが目的となります。
そのためにプロパー消化率を重視し、値引き抑制と評価減(在庫評価損)の抑制、客単価向上に取り組まなければなりません。

※値引きや在庫評価損と粗利益の密接な関係は、下記記事で詳しく言及していますのでご参照ください。

ただし、粗利経営へ移行すると在庫が少なくなりますから商品原価は上がります。問題は商品原価が上がるデメリットと、在庫を多く持つことで誘発される値引きと評価減で失う粗利益とどちらが大きいかということです。明らかに前者の弊害の方が大きいですよね。

そして、商品原価が上がるということは、商品の付加価値を上げられるということです。そうすると、他社との商品の同質化を避けることができます(図3)。

図3

これからの時代、買い物体験が貴重になりますから、消費者がお金を使うことに対する期待値がますます上がると思います。そうなると、お客さんの体験価値をいかに高められるかという点での勝負になり、ブランドが勝負を左右する時代になります。

つまり、ブランド価値を高めるために粗利益が必要になるのです。

在庫効率を高め、稼ぐ力をつける

ただ、粗利経営というと、「在庫を減らせばいいのか」と短絡的に考える人がいますが、それはちょっと違います。在庫の量を単純に減らすだけでは売上と粗利は落ちてしまいます。

なぜかと言うと、これまではたくさんの在庫を用意し、その中からたまたま出てくるヒット商品によって売上と利益をつくってきたので、売る力、稼ぐ力が落ちているからです。拡大市場では売る力、稼ぐ力は重要ではなかった。この状態で在庫を減らせば当然ながら売上と利益は落ちます。

図4

なので、まずは今持っている在庫を使ってもっと利益を出す力を付けることが必要です(図4)。偶然出るヒット商品に頼るのではなく、売り手がきちんと狙って利益を稼ぐということです。
こうした力を付けてから在庫を減らしていくというステップで進めれば、事業をシュリンクさせることなく、粗利経営に変革することができます。

在庫分析クラウド『FULL KAITEN』

この後、瀬川は在庫分析クラウド『FULL KAITEN』の概要を説明し、デモンストレーションを実施しました。

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