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Japan IT Week2020秋で瀬川が「【在庫文脈で語るDX】コロナで変わった小売経営の潮目!」と題して講演しました

フルカイテン株式会社は2020年10月28日~30日の日程で幕張メッセにて開催中のJapan IT Week2020秋に出展し、代表・瀬川が出展企業によるセミナーで講演しました。「【在庫文脈で語るDX】コロナで変わった小売経営の潮目!」のテーマで、小売経営の根幹である「在庫」に目を向けた実効性のある業務デジタル化について解説しました。
講演要旨を以下にご紹介します。

市場縮小を前提にしたDX推進を

新型コロナウイルス危機で小売業界はわずか3ヵ月間で需要が大きく消失する事態を経験し、いろんな企業の経営破綻や経営の悪化が起きました。今までずっと存在していた店舗の過剰と在庫の問題がコロナ危機で相対的に大きくなった結果といえるでしょう。

ぜひ知っておいていただきたいのは、こうした需要消失は一過性ではないということです。実はコロナ前から日本の小売市場は縮小していたのです。

2014年までの15年間で1世帯あたりの消費支出は全年代で下がっています。最も下落幅が大きかったのは世帯主が44~49歳の世帯で、月間で最大6万円超落ちました。また、2018年には小売の市場規模は約145兆円で頭打ちになっています。
さらに昨年、日本の人口は50万人減少しました。これは鳥取県と同じくらいの人口です。

人口が減り、使えるお金も減っている。では未来はどうなるのでしょうか。2024年には団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者になり、65歳以上という括りで見ると、全国民の3分の1が高齢者になります。人類史上、類を見ない高齢化です。

そして2025年からはおよそ50年にわたり毎年100万人近い人口が減っていきます。これは人口動態から分かることで、人口に関する統計は最も信頼できる推計だといわれています。あまりズレがなく、現状はほぼほぼ推計どおりになっています。

ですから、市場が縮小していくことが確実だということを前提に、DXを考えないといけません。コロナ危機による需要消失は一過性でなく定着することを念頭に置いてください。そういう時代において重要になるのが在庫の問題ですね。

でも、在庫は単純に減らすと事業自体がシュリンクしてしまいます。多すぎるから減らせばいいという簡単な話ではありません。突破口は別のところにあります。

消費者が使えるお金が減っていくことは悪い話ばかりではなくて、お金を使うことに対する期待値が高くなります。買い物が特別な体験になるんですね。ここに突破口があるのです。

具体的にいうと、顧客接点における付加価値だと思っています。ここに投資できる会社が勝ち残っていくと思います。そして顧客接点への投資で我々ができることは、投資の源泉となる粗利を増やすことです。ですから、粗利を増やすために在庫問題を解決しないといけません。

大量生産が虎の子の粗利を奪っていく

では、どうやって粗利を増やすか。まずはPL脳からBS脳へ考え方を切り替えてほしいと思います。PLは売上第一、BSは粗利第一という意味です。

在庫と粗利には密接な関係があります。

上図の例では粗利が4000円出ていますが、売れ残った商品5000円分が棚卸資産(在庫)としてBSに蓄積されています。コロナ危機ではこの5000円がお金に換わらなくなって多くの企業が苦しんでいるわけです。

在庫は単に資金繰りに影響するだけでなく、値引きと評価減(商品評価損)という形で粗利を削っていきます(下図)。

非上場企業はルール上、評価減を認識しなくも良いですが、結局は売れ残った在庫は将来的にすごく値引きしてお金に換えるわけなので、損失(原価割れ)を先送りしているだけであり、評価減を出すのと同じなんですね。棚卸資産にもっと目を向けないと粗利を失う一方となります。

つまり粗利は商品原価と値引き、評価減の3つのバランスで成り立っています。にもかかわらず「商品原価イコール売上原価」と誤解している人が多いんですね。それはPLばかり見ていて値引きや評価減に気付きにくいのが一因です。

売れ残りの原因の1つが販売力を超えるような大量生産です。私は大量生産自体は悪いことだとは思っていません。ただ、売れる量を超えて生産するのはよくありません。売れ残るから値引きと評価減が発生するのです。

もう一つ、商品原価を下げると他社との間でどんどん商品が同質化していくという弊害もあります。ECでは、あるサイトでお目当ての商品が欠品していても他のサイトで同じような商品が売られていたりしますよね。もはや欠品という概念が消費者側には無くなったと言っても過言ではないぐらい、商品の同質化が起きてしまっているのです。

ですので、DXも、値引きや評価減をいかにして抑えていくかという文脈で考えてほしいと思います。

在庫リスクはいつ生じるのか

売れ残りを防ぐには、AIを使って需要予測をすればいいのではないか、という意見もよく聞きます。しかしながらAIには限界があって、「AI万能」というのはメディアが作り上げた幻想なんです。

というのも、需要やトレンドを抜群の精度で予測するのは非常に難しい。これにはちゃんと理由があります。予測し得ない外的な要因の影響を受けるからです。AIはそういうものに弱いんです。

米ガートナーのハイプサイクルの2020年版では、AIは「幻滅期」に位置付けられていて、その状態が5~10年続くとされています。ですから、予測だけに頼るという考え方をやめてほしいのです。

商品には発注から入荷、販売終了までライフタイムサイクルがありますが、予測だけで在庫問題を解決しようとすることは、発注時点における予測だけで売れ残りリスクを解決しようとしているということなんです(下図)。

予測だけに頼ると、発注時点での予測が外れたらもう終わりです。文字通り一発勝負です。でも、値引きや評価減で粗利を失うリスクは、発注段階で起きているのではなく、売り始めてから起きますよね。ですから販売開始から販売期間終了までの期間で在庫リスクを抑えながら粗利を極力失わないようにしようと考える方が、よほど現実的なんです。

ですから、予測が外れる原因となる変化は日々起きるということを制約条件だと捉えてください。それを前提に、いかにして変化に強い仕組みをつくるか。これが、私が3度の倒産危機の経験から考え出した理論である在庫実行管理(IEM)の原点です。

IEMの本質は在庫の質を可視化することです。「在庫」とひと口に言っても、中身は様々ですが、それを可視化します。そしてそれぞれの質に合わせて適切な対策を打っていきます。

例えば、質は予測し得ない外的な要因で日々変化しますが、悪化の兆しが見えたら早めに販促するということです。早め早めに手を打つ。そうすれば粗利体質に変わることができます。

こうしたことを、既に手もとにある在庫に対してやっていくんですね。在庫をどんどん増やして売上を伸ばそうという考え方とは全く異なります。単純に在庫を減らすのでは事業がジリ貧になりますから、「今ある在庫」のパフォーマンスを最大限引き出し、その結果として在庫が減るという順番です。

「在庫の質」を3つのポイントで可視化

では、在庫の質を可視化する3つのポイントを見て行きましょう。

まず1つ目。「今ある在庫」の中からまだまだ売れる隠れた実力商品をみつけます。在庫をどんどん増やさずに売上・粗利が増え、その結果、在庫も減っていきます。

2つ目は「今ある在庫」の中から客単価向上に貢献する実力商品をみつけるというものです。売上・粗利を増やすために客数(注文数)を増やそうとするのではなく、客単価を上げるという考え方です。

そして3つ目。「今ある在庫」の中から、再発注すべき商品をSKU単位で可視化します。

弊社は在庫実行管理(IEM)をどんな企業でも実践できるように『FULL KAITEN』をクラウドサービスとして提供しています。

導入企業さまの最近の事例2つを簡単にご紹介します。フェリシモグループの「haco!」では、わずか1ヵ月で客単価が5%上がりました。別のもう1社はインポート中心なのですが、コロナ危機で入荷がストップし、売れ筋商品が売り切れてしまいました。でも手持ちの隠れた実力商品の販促を強化することで数百万円の売上増を達成しました。

会場には立ち見する来場者も

この後、瀬川はEC事業を経営していた頃に経験した在庫過多を原因とする3度の倒産危機を克服する過程でFULL KAITENを開発した創業ストーリーについて語りました。開発ストーリーはこちらに詳細を掲載しています。

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代表取締役・瀬川が語る
アパレル業界の
縮小する国内市場で
勝ち抜く粗利経営