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トレンド変化が速すぎるZ世代|「コミュニティ作り」が攻略のカギに

恒例のZ世代の2024年上半期のトレンドランキングがこのほど発表されました。2023年下半期からほぼ総入れ替えとなり、流行の移り変わりの速さが改めて浮き彫りになりました。

従来のマーケティングや販促の常識が通用しないとも言えるZ世代の支持を得るにはどうすればよいのか。本記事で考えていきましょう。

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サードパーティークッキー廃止でCPA上昇は不可避

まず、大きな潮流として押さえておくべきことがあります。インターネットブラウザにおけるサードパーティークッキーの廃止です。アップルは既にSafari(サファリ)やiPhoneでサードパーティークッキーを使えないようにしています。グーグルは2020年に配信する方針を発表しましたが、3度にわたり延期していて、2025年初頭からChrome(クローム)で段階的に廃止していきます。

クッキーとは、ブラウザがサイト訪問者ごとにIDにあたる文字列を発行する仕組みです。サイト運営者が発行するクッキーはファーストパーティークッキーと呼ばれ、2回目以降の訪問でパスワード入力の手間が省かれるのはファーストパーティークッキーのお陰です。

これに対し、サードパーティークッキーは、サイトに広告を出している外部企業などが訪問者の閲覧履歴を把握できる仕組みとして使われてきました。利用者(訪問者)からすると、サイトをまたいで興味関心が追跡されることになります。閲覧履歴に基づいた広告(ターゲティング広告)が表示されるのはサードパーティークッキーの効果です。

このため、サードパーティークッキーはインターネット利用者のデータが拡散されてしまうことから、プライバシーや個人データ保護の観点で問題視されることが多くなりました。アップルやグーグルが廃止に動いているのは、プライバシー保護に取り組まざるを得なくなったためです。

このため、ターゲティング広告(追跡型広告)は大きな影響を受けるのが避けられません。サードパーティークッキーが廃止されると、消費者がどんなサイトを訪問してどんな商品を閲覧したかが分からなくなるため、趣味・嗜好に合った広告を表示させる精度が下がります。当然クリック率は下がりますし、実際に広告から商品購入に至った割合(コンバージョンレート)の測定も難しくなるでしょう。

つまり、小売・EC事業者にとってはユーザーデータが分断される時代が来るのです。すると、顧客獲得に要する広告コスト(CPA)が顕著に上昇します。「運用型広告の精度は2割落ちる」と指摘する専門家もいるほどです。

CPAが2割も上昇してしまっては、ビジネスモデルが瓦解するEC事業者も出てくるでしょう。そこで重要になるのが「LTV最大化」という考え方なのです。

※LTV:Life Time Value(ライフタイムバリュー)。顧客生涯価値

商品軸からコミュニティ起点でLTV最大化へ

新規顧客を獲得するハードルが高くなれば、一度接点を持った既存顧客を大切にするしかありません。これがLTV最大化です。そして、Z世代との付き合いにおいては、特にこのLTV最大化の考え方が重要になるのです。

まず、Z世代の人たちの特徴を挙げてみましょう。

  • ショート動画に慣れ親しみ、言語化されない感覚的なコミュニケーションを好む
  • SNSで複数のアカウント(本アカ、サブアカ、趣味アカ等)を持ち、それらに合わせてコミュニティとつながる
  • 消費行動での失敗を過度に恐れる

だいたい以上の3つに大別されると思います。次に小売・EC事業者から見たこれらの解釈と対応策を追加したのが下記表です。

いかがでしょうか。SNS上でコミュニティを構築することが重要であることが分かります。

若者に対するマーケティングの研究で知られるSHIBUYA109 lab.所長の長田麻衣氏は2022年5月に行われた講演会で、「体験(SNS)から逆算したサービス・商品の開発が求められる」と説いていました。「コト消費をしたらSNSに投稿し、同じ価値観(世界観)を持つ人たちから共感されたいという承認欲求がある」とも述べています。2年経っても色褪せない正鵠を射た指摘です。

yutoriに見る「コミュニティづくり」の重要さ

そんなコミュニティ起点のマーケティングを実践することで成功しているのが、2023年12月にアパレル企業として史上最速で新規株式公開(IPO)を果たしたyutori(ユトリ)です。

yutoriはもともと、古着に特化したInstagramメディア「古着女子」「古着男子」を立ち上げ、ファッション感度の高い若者同士がつながるコミュニティを育てていきました。SNSを駆使してこうした古着好きのコミュニティを盛り上げていくうちにフォロワーが増え続け、インフルエンサーにリポストしてもらうことでZ世代の間で人気が拡大していきました。

そこで満を持してストリートファッションブランドをこれらのコミュニティに投入し、EC展開して支持を集めていったのです。その後は、コミュニティ起点でトレンドや需要を把握し、M&Aで取得したブランドも展開するなどカテゴリーの多様化を進めています。

yutoriを徹底解剖した記事はこちら>

yutoriのマーケティングのもう一つの特長が、外部インフルエンサーの活用です。Z世代の特徴として「失敗したくない」意識が強いことは前述のとおりです。彼らは失敗を避けるために時間を使いますし、コミュニティの中で「失敗した」と見られたくない承認欲求もあります。

そのために効果的なのが、同じコミュニティに属するインフルエンサーの動画を参照することなのです。たとえインフルエンサーの真似をすることになったとしても、そうすることが自身にとって正しいことなので躊躇しません。

yutoriはこの辺りをよく理解しているからこそインフルエンサーマーケティングに注力しているのでしょう。

Z世代自らが店舗づくり

以上から、トレンドや関心の移り変わりが非常に速いものの、いったん心を掴めば長く付き合えるというZ世代の大まかな特性がお分かりいただけたと思います。

そして、実際に彼らZ世代の声を店舗づくりに採り入れている試みが始まっています。パン・パシフィック・インターナショナルホールディングスが運営するドン・キホーテの「キラキラドンキ」です。

キラキラドンキはZ世代と10代前半のα世代をターゲットにしています。このため、スタッフも10代後半から20代で構成しており、通常のドン・キホーテと同様に全ての商品の仕入れ権限も店側が持っているそうです。現在、北海道と東京、名古屋に計5ヶ所を展開しています。

日経新聞にキラキラドンキを分かりやすく取り上げた記事が出ていましたので、一部引用します。

「とにかくSNSの影響力が大きく、買い物客の知識量が多い。なので情報収集が余念がない」(藤原美咲店長)。多彩な色をした猫をイメージした「アニマル アイシャドウ」など、仕入れたばかりのコスメはあっという間に売れてしまう。まさに”猫の目”トレンドである。最近では百貨店でもこうした流れが強まる。大丸松坂屋百貨店によると、「かつてのような季節型や自主編集売り場は少なくなり、毎回来るたびに変化が楽しいポップアップ型の仕掛けが欠かせない」とか。

(日本経済新聞2023年12月21日付朝刊)

小売・EC事業者の想像を超える速さでトレンドが変わる消費にどう向き合うのか。キラキラドンキの事例は示唆を与えてくれます。そして、在庫政策の側面から見ると、在庫を多く積んで売り減らしていくビジネスモデルは、ますますリスクが高くなると言えるでしょう。限られた量の在庫を効率よく粗利益に変える力の向上と、ターゲットとするコミュニティの特徴や世界観を的確に捉えたMDがますます求められるのではないでしょうか。

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