【セミナーレポート】元DB責任者と元店長が意見をぶつける!利益を最大化させる店間移動はこれだ。
2023/8/31(水)に、オンラインセミナー「元DB責任者と元店長が意見をぶつける!利益を最大化させる店間移動はこれだ。」を開催いたしました。
当日ご参加いただきました皆様に、御礼申し上げます。
本記事では、数々の企業を支援してきたメンバー2人がセミナー内でお伝えした以下3点についてご紹介します。
- それぞれの部署のリアル
- 店間移動の最適な商品選定とタイミング
- 店長、DBの双方にとって適切な指示量とは
登壇者:森田 浩介 (フルカイテン株式会社カスタマーサクセス)
大手セレクトショップの店長として都心、地方と、規模の大小含め様々なマーケットの店舗運営を経験。新店舗、新ブランドの立ち上げプロジェクトにも参画。その後スーパーバイザーも兼務し、複数店舗のマネジメントも担う。人材育成、店舗計画の立案、店舗運営と幅広く業務に携わる。現在は、フルカイテン株式会社カスタマーサクセスチームに所属し、第一線で顧客支援を行う。
登壇者:山﨑 優介(フルカイテン株式会社カスタマーサクセス)
生活雑貨のチェーン展開を行う事業会社に入社し約15年間従事。主に商品管理部門の責任者として、ディストリビュート業務全般、値引き施策立案、自社倉庫やECサイトの立上げを担当。企業の在庫問題を解決することで「世界の大量廃棄問題を解決する」をミッションに掲げるフルカイテンに共感し2023年より参画。
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DB担当 vs 店長〜それぞれのホンネ〜
森田:本セミナーでは、元店長の森田と元DBの山崎がディスカッションをしながら、最適な店間移動について考えていきたいと思います。
まずは、日々業務をしていると遭遇する以下のような場面について考えてみましょう。
これらは、店長とDB担当者がそれぞれ利益や売上を高めようとして行っている指示ですが、お互いの本音を知らないと思わぬすれ違いが起きることもあります。
このような場面で、それぞれは何を思っているのでしょうか。
店長のホンネ:利益を上げるには各店舗の計画達成!
森田:まず、店長としては各店舗の状況を理解して欲しいと思っています。店舗の計画達成(KPI)のために売上を作る商品は必要なので、人気アイテムを他店に移動されてしまうと困ります。もし、人気アイテムを動かすのであれば、そのアイテム相応の売上が見込める商品を入れていただきたいです。
また、出荷量と入荷量にも配慮していただきたいです。出荷量が多すぎると、出荷作業に多くの時間が取られてしまい、重要な接客業務が疎かになってしまうこともあります。特に繁忙期に出荷指示があると、そもそも時間がない中で作業をしなくてはならないので、かなり厳しいです。入荷についても、他店から人気アイテムが届くのはありがたいのですが、入荷量が多いと検品が大変だったり、倉庫を圧迫したりして、作業効率が悪くなります。
DB担当の方には、こういった各店舗の状況もよく理解していただきたいなと思います。
DBのホンネ:利益を上げるには全体最適!
山崎:森田さん、ありがとうございます。DBとしては、会社全体にとって良いこと(全体最適)を目指しているため、店舗の状況を十分に考慮できていないこともあると思います。
しかし、店舗の皆さんにも会社全体の状況を意識していただきたいです。在庫を計画通りに消化できないと、発注や新商品開発などの会社全体の計画に響いてしまうので、効率良く在庫消化をするには、店間移動は避けられません。
また、人気アイテムを移動させないでほしいという要望についてですが、人気アイテムほど品薄になってしまって、どの店舗からも入荷のリクエストが来ます。各店舗の計画を達成するために人気アイテムが必要なのはよくわかりますが、売りやすいアイテムばかりに着目するのではなくて、今店舗にあるもので売上を作る努力をしていただきたいなと思います。
森田:山崎さん、ありがとうございます。双方の主張をまとめると以下のようになります。
店長とDBでは、目的や立場が異なるため、双方の利益をすり合わせるのは難しいですが、これらの問題はどのように解消できるでしょうか。
双方にとって最適な店間移動を行うには、以下の2点が重要です。
- 全社として在庫消化・売上UPにつながり、かつ店舗の売上が確保できる商品を選定し、移動させる
- 配送コスト・作業負担を考慮して指示量を決定する
ひとつずつ詳しく解説します。
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店間移動の最適な商品選定とタイミング
商品ライフサイクルに合わせた店間移動
森田:全社として在庫消化・売上UPにつながり、かつ店舗の売上が確保できる商品選定を行うためには、商品ライフサイクルを考慮することが重要です。
商品ライフサイクルとは、商品の投入から完売までのプロセスを指します。
プロセスは大きく5つの段階に分かれています。
- シーズンイン:商品立ち上げ期間。売上は低い
- ピークイン:売上が大きく伸長し、売場拡大期間
- ピーク:最も売上に貢献する期間
- ピークアウト:売上が大きく下降し、売場縮小期間
- シーズンアウト:商品売り切り期間。売上は低い
商品ライフサイクルの段階を横軸に取り、売上と在庫消化をグラフにすると以下のようになります。
シーズン性の高い商品を扱う事業では、売れる時期と販売期限が明確なため、商品ライフサイクルに沿った在庫移動が重要になります。
具体的には、下図のような在庫移動が理想的です。
店間移動はコストがかかるため実施回数を最小化すると考えると、上記の5つのフェーズ全てで行うのではなく、ピークインとピークアウトのタイミングで店間移動を行うのが最適です。
ピークインでの店間移動は、ピーク突入への準備として、それまでの売上を踏まえて店舗ごとの売上のばらつきの是正と、展開拡大のために行います。ここで店間移動を行うことで、ピークで売上をしっかり取ることができ、店舗側としても売れる商品が補充されるというメリットがあります。
また、ピークアウトでの店間移動は、消化効率の良い店舗に在庫を集約することで売れない店舗の余剰在庫の消化が実行できます。店舗側としても、余剰在庫を出荷することで、新商品を入荷するスペースを作ることができるでしょう。
このように、商品ライフサイクルに応じて店間移動を行うことで、店舗側にとっても、DB側にとっても利益を生むことができます。
カレンダーを共有することで、最適な商品選定が可能に
森田:しかし、商品ライフサイクルに合わせた店間移動を行うには、今がライフサイクルのどの段階にあたるのかをしっかり把握する必要があります。
特に、アパレルなどのシーズン性の商材は半袖Tシャツやワンピースなど、アイテムごとにライフサイクルが異なるため、以下のように商品群ごとにカレンダーを作成し、今がライフサイクルのどの段階なのかを社内で共有するのがおすすめです。
加えて、商品群ごとに販売計画(MDカレンダー)や販促計画と連携したものにすると何をいつ移動するかがより明確になるでしょう。
また、雑貨などの通年品は、「売り切り期限」を設定して、商品ライフサイクルを作り出すことで、シーズン性の商品と同じように期間軸で在庫を管理することができ、店間移動の判断がしやすくなります。
商品ライフサイクルを可視化することで、DB側は売上の波に合わせた在庫移動が可能になるだけではなく、店舗側としても今売るべき商品、今後売るべき商品があらかじめ把握することができます。
このように、商品ライフサイクルを可視化し、段階に応じた店間移動を行うことで、DB・店舗の双方にとって最適な商品選定が実現できるでしょう。
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最適な店間移動の指示量
山崎:では続いて、最適な店間移動の指示量についてお話いたします。
DB・店舗の双方にとって最適な量を目指す上では、まず以下の3点が重要なポイントになります。
- 物流費、店舗作業コストを適正に見積もる
- 各店舗の必要数に応じた在庫移動を行う
- DBカレンダーを作成して店舗と共有する
ひとつずつ詳しく解説します。
物流費、店舗作業コストを適正に見積もる
山崎:まず、コストを最小化することは店間移動を行う上での1番の課題です。ここでの「コスト」は物流費だけではなく、データ入力や荷造りなどの店舗作業コスト、また本部での指示作成なども含まれます。
店間移動では、そのような目に見えないコストを含めていかに費用対効果を上げるかが重要です。これらのコストを把握するために、実際の作業時間や配送数のヒアリングを行い、指示あたりの出荷量と店舗作業コストを試算をしましょう。
各店舗の必要数に応じた在庫移動を行う
山崎:次に重要なのが、各店舗の必要数に応じた移動を行うことです。ありがちな例として、非常に売り上げが良い店舗で人気のアイテムが欠品した場合、近隣の不調店舗からそのアイテムを全て移動することがあります。特に、DB担当者が少ない企業様やSKU数が非常に多い企業様はこのようなパターンに陥りがちです。
しかし、このように全数移動指示を出してしまうと、出荷をする店舗には大きな作業コストが発生しますし、空いた売り場を埋めるために計画の練り直しが必要になります。さらに、人気アイテムが抜かれてしまうことで、不調店のモチベーションも低下してしまい、店舗ごとに業績の偏りが拡大する可能性もあります。
そのため店間移動を行う上では、各店舗で余剰在庫・不足在庫を算出し、それに応じた移動指示を行い、過剰な店間移動を抑制することが重要です。
DBカレンダーを作成して店舗と共有する
最後のポイントが、DBカレンダーを作成して店舗と共有することです。ここでのDBカレンダーとは、在庫配分の計画書のことを指しています。
まず、DBカレンダーを作成・共有する上では、以下の点に気をつけましょう。
- 繁忙期の納品は避けて販売に集中してもらう
- 他の納品と店間移動が重ならないように配慮する
- 出荷量に応じて、適切なリードタイムを設定する
- 出荷の狙いや配分作成時に気を付けた項目を共有する
作業コストを削減するために、店舗の負担への配慮はとても大切です。想定外の指示をする必要がある場合も早めに依頼したり、無茶な依頼はしないようにしましょう。そして、出荷の狙いや、テレビ取材や雑誌掲載などの各部門からキャッチアップした情報も合わせて伝えることで、店舗の販促に生かすことができます。
このように、DBカレンダーを店舗にも共有することで、在庫移動の目的・作業量を共有することができ、店舗は移動に備えて作業人員を確保できるようになったり、より効果的な販促施策を行うことが可能になります。
このように、DBと店舗が互いにコミュニケーションを取り合い、店間移動におけるコストの最小化を目指すことで、双方にとって最適な指示量を達成できるでしょう。
まとめ
- DB・店舗の双方にとって最適な店間移動を実現するためには以下の2点が重要である
- 全社として在庫消化・売上UPにつながり、かつ店舗の売上が確保できる商品を選定し、移動させる
- 配送コスト・作業負担を考慮して指示量を決定する
- 最適な店間移動商品の選定方法
- 商品ライフサイクルに応じたアイテム選定
- ピークイン、ピークアウトなど目的にあった商品選定
- 通年アイテムは「売り切り期限」を設定
- ライフサイクル、販売計画を把握するためにカレンダーを作成する
- 商品ライフサイクルに応じたアイテム選定
- 最適な店間移動商品の指示量
- 各店舗の必要在庫数に応じた在庫移動を行う
- DBカレンダーを作成して店舗と在庫移動の意図を共有
- 物流費、店舗作業コストの適正な見積り