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オランダに学ぶサーキュラーエコノミー実践事例3選

気候変動への危機感が強まる中、環境への負荷削減とビジネスを両立させるとして、欧米諸国を中心に注目されている、サーキュラーエコノミー。

特にオランダは、2050年までに首都アムステルダムを100%の循環型都市にするという野心的な目標を掲げ、官民*が連携することで様々な事業のサーキュラー化に成功しています。

本記事では、オランダ在住の筆者が世界から注目を集めるサーキュラーエコノミーの概要と、環境分野で世界を牽引するオランダの取り組みをご紹介いたします。

*官民:公務員と民間人。 また、官庁と民間。

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サーキュラーエコノミーとは

サーキュラーエコノミー(循環型経済)とは、廃棄物として捨てられている材料や製品を「資源」として捉え直して活用し、循環させる新しい経済の仕組みのことです。

似たような概念として、3R(リデュース・リユース・リサイクル)がありますが、3Rは廃棄物の一部を再利用することを目指しているのに対し、サーキュラーエコノミーは廃棄物の全てを資源として再利用すること(=ゼロ・ウェイスト)を目指している、という点で大きく異なります。

サーキュラーエコノミーでは全てを資源と捉えるため、廃棄物という概念が存在しません。そのため、資源の回収や再利用を前提とした、原材料の調達や製品・サービス設計が行われます。

一方、現在の経済システムは「資源を採掘する」→「製品を生産する」→「消費する」→「捨てる」という、資源の流れが直線的で一方通行であることから、リニアエコノミー(線型経済)と呼ばれています。

オランダ政府 From a linear to a circular economyを元に筆者が作成

この経済システムは、大量生産、大量消費、大量廃棄を前提としており、採掘された資源は製品に使用され、最後には必ず廃棄される運命にあります。

しかし、資源は有限であるため、このままの経済の仕組みのままでは資源が底をつき、経済全体が立ち行かなくなる恐れがあります。つまり、現在の経済の仕組み自体が持続可能でないのです。

そのような未来を避けるために考え出された経済の仕組みがサーキュラーエコノミーです。

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サーキュラーエコノミーが生むビジネスチャンス

サーキュラーエコノミーへの移行においては、従来のビジネスモデルの抜本的な見直しが必要です。しかし、この無駄(廃棄物)を利益(資源)に変えるというモデルの転換は、単に環境負荷を削減するだけでなく、多くのビジネスチャンスや雇用を創出します。

従来の経済システムでは、資源を採掘し、製品を生産する上で発生したコストを、製品を売り切ることによってのみ回収してきました。しかし、このビジネスモデルは利益を得るまでのリードタイムが非常に長く、かつ資源の稼働率・利用率という観点で見ても非効率的であることがわかります。

実際に、昨今の変化の早い不確実な市場や社会に振り回され、既存のビジネスモデルを保持した企業の成長は行き詰まっているのが現状です。

サーキュラーエコノミーへの転換は、これらの状況を打破することができます。例えば、使用済み製品を回収して再利用するのはもちろん、商品を販売する代わりにサブスクリプションを行ったり、使われていない資産を活用して新たな収益源としたりといった循環型のビジネスモデルを導入することで、新たな価値を生み出すことができるのです。

世界をリードするオランダの取り組み

このような背景から、各国の政府はサーキュラーエコノミーに着目し、移行に向けてさまざまな取り組みを行っています。

特に、環境先進国として知られるオランダは、サーキュラーエコノミー分野でも先進的な取り組みを多く行っているとして注目を集め、世界をリードする国としてその存在感を強めています。

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オランダ政府は、EUがサーキュラーエコノミーを実現するための行動計画を公表したことを受けて、2050年までに資源を100%循環させることを目標とした長期的なロードマップを作成し、2016年より国家プロジェクトして、サーキュラーエコノミーへの移行に取り組んでいます。

具体的には、サーキュラーエコノミー分野への補助金の拡充や、規制の緩和や改訂を行うことで、民間活動を促進しています。また、官民連携のプロジェクトもさかんに行われ、行政が持つデータを民間に共有することで、サーキュラー化に役立てる活動も行っています。

このような政府による積極的かつ柔軟な働きかけにより、民間でサーキュラーエコノミーに取り組みやすい環境が整っており、さまざまな革新的なプロジェクトが行われています。

以下では、サーキュラーエコノミーの具体的な事例として、オランダの先進的なビジネスモデルを3つご紹介いたします。

分解して再利用できる建築|CIRCL

ABN AMROホームページより

CIRCLはオランダのメガバンクの一つである「ABN AMRO」が設立した複合施設で、廃棄予定だった食品を使ったレストランや、サスティナブルな製品を扱うセレクトショップ、さらに自由に使用できる会議室やイベントスペースなども併設されています。

一見するとスタイリッシュでモダンな建物ですが、このCIRCLの特筆すべき点は、竣工前から取り壊されることを前提としており、解体後に約90%の資材が再利用できるように設計されていることです。

具体的には、資材として活用しやすい木材を主な建材として使用し、また、資材の固定には接着剤ではなく、金属製の留め具を使います。

ここで重要なのは、使用後に価値をなるべく保てる資材を使うことです。

たとえば、コンクリートはリサイクルが可能ですが、リサイクルコンクリートは強度が落ち、低価格でしか取引されないため、コンクリートの使用は極力抑えています。

金具で取り外しが可能な木材は、分解すればそのまま建材として活用でき、価値をほとんど落とさずに再利用することができます。

さらに、建物内に設置されているエレベーターは使用回数に応じて料金を支払うリース式となっています。修理や部品の交換が可能なだけでなく、契約終了後はリース元の企業に返却され、別の建物のエレベーターとして利用することができるため、ほとんど廃棄物が出ない仕組みです。

また、建設にはオランダ国内で取り壊された建物の資材も利用されています。例えば、木製の床は古い修道院で使われていたものであったり、他企業のオフィスが解体された際に引き取った家具や窓枠が活用されています。このように再利用された建材は独特の風合いを醸し、空間に新たな価値を創出します。

このように、建材や設備の価値(=資源の価値)を落とすことなく未来につなげる仕組みはサーキュラーエコノミーに取り組む上で非常に重要です。

自分で修理できるスマホ|Fair Phone

Fair Phoneの公式サイトより

現在、ほとんどのスマートフォンは2~3年ごとの買い替えを想定して設計されており、大手スマホメーカーはほとんど毎年のように新しいモデルを発表しています。

しかし、もし自分で消耗したバッテリーや割れた画面を交換でき、最新のカメラも簡単に装着できるとしたら、新しいスマホを買い直す必要があるでしょうか。

それを実現したのが、Fair Phoneです。

Fair Phoneはユーザーが自分で分解しやすくなっており、パーツの交換・修理を行うことで約10年間使用できるように設計されています。シンプルな設計であるのはもちろん、分解の手順が本体の部品にも書かれており、専門知識がなくとも簡単に分解・修理が可能です。

また、使用しなくなった本体や部品は企業に返却することができ、利用者にキャッシュバックされるため、実質的に製品はすべて企業のもとに返ってきます。返却された製品は多くの部品や素材がそのまま別の製品に再利用できるため、ほとんど廃棄がでないのも特徴です。

これらのビジネスモデルによって、企業は本体の販売に加えて部品の販売により利益を得られるだけでなく、新しい部品の生産コストを削減することができます。

さらに、丸ごと買い替えずとも最新の部品と交換することでアップグレードでき、また落下して損傷したとしても、簡単に修理が可能なスマホはユーザーにとってもメリットが大きい商品です。実際、2022年2月時点で約40万台売り上げています。

このように、Fair Phoneは環境に負荷をかけずに企業として利益を生み出すことができ、そのユーザーも価値を得ることができる、というサーキュラー型のビジネスモデルが実現しています。

廃棄物と活用先をマッチング|Exess Material Exchange

サーキュラーエコノミーを実現する上では、廃棄物を資源として活用することが最も重要かつ難しい点です。CIRCLの事例のように同じ業界同士で資源の再利用できる場合や、Fair Phoneの事例のようにユーザーと企業で資源を循環させることができる場合は良いですが、まだまだ資源として見出されていない廃棄物はたくさんあるでしょう。

Exess Material Exchange(以下EME)は、廃棄物を出す企業とそれを資源として活用できる技術や事業を持つ企業を結びつけるプラットフォームを提供しています。

この活動により、今まで繋がりのなかった異業種間での廃棄素材を使ったコラボレーションが可能になりました。

では、どのようにマッチングを行っているのでしょうか。企業どうしの取引を実現する上で必要なのは、その廃棄物が「いくらになるのか」がすぐにわかることです。そこで、EMEは廃棄素材のひとつひとつに「パスポート」を与えることで、その素材の経済的価値を算出しています。

パスポートには、素材の特徴や状態、調達場所、販売後のメンテナンス状況、環境負荷などが登録できるようになっており、それらのデータに基づいて、価値を最大限に発揮できる再利用の選択肢が提示され、マッチングができるようになっています。

情報の登録にはブロックチェーン技術を用いることで、情報の機密性が保たれるとともに、正確な情報の記録を可能にしています。

これらの技術とアイディアにより、ある企業は廃棄物を「資源」として売ることで新たな収入を得ることができ、その素材を活用したい事業者は資源調達先を確保することができます。

このように、サーキュラーエコノミーは新たなビジネスチャンスを創出する可能性も秘めているのです。

まとめ

  • サーキュラーエコノミーとは廃棄物として捨てられている材料や製品を「資源」として捉え直して活用し、循環させる経済の仕組みのこと
  • オランダでは政府と民間が協働し、サーキュラーエコノミーに取り組んでいる
  • オランダのサーキュラーエコノミー事例
    • 分解して再利用できる建築|CIRCL
    • 自分で修理できるスマホ|Fair Phone
    • 廃棄物と活用先をマッチングプラットフォーム|Exess Material Exchange

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