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ファッション業界のSDGs:環境先進国オランダの事例3選

近年、ファッション産業が環境に与える負荷が非常に大きいと指摘され、世界中のアパレル企業が持続可能なファッションの実現に向けてさまざまな取り組みを行っています。

本記事では、環境先進国として注目されるオランダの大学に在学中の筆者が現地の取り組みについて取り上げ、これからのファッションに対する私たちの向き合い方についてを探っていきます。

【お役立ち資料】ゼロから分かる「人権とビジネス」

はじめに

こんにちは!フルカイテン株式会社でインターンをしております、近藤と申します。

オランダの大学で経済・経営を学んでいる大学1年生です。

高校の英語の授業で取り上げられたグレタ・トゥンベリさんの国連のスピーチをきっかけに環境問題に関心を持ち、政策やビジネスを通して環境問題に対してより具体的な解決策を探りたいとの想いから、環境面で世界をリードするオランダの大学へ進学しました。

夏休み期間中のインターンシップを探していたところ、在庫量の適正化から衣服の大量廃棄問題の解決をミッションに掲げるフルカイテンに出会いました。持続可能な社会のあり方について学ぶ中で、私自身も社会課題に取り組む企業で働きたいと強く感じ、現在はオランダからリモートでインターン生として働いています。

現在アパレル業界においては、環境汚染や廃棄、労働搾取など様々な問題が指摘されています。今回は、フルカイテンがミッションとしても掲げているファッション業界のSDGs実現について、オランダでどのような取り組みが行われているのかリサーチしました。

ファッション業界の課題についてはこちらの記事で詳しく解説しております。

SDGsとアパレルの関係性とは?必須になる対応と事例をご紹介

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持続可能なファッションってなんだろう:オランダの事例3選

ジーンズのサブスク「MUD Jeans」: 「捨てない」を当たり前に

ジーンズは日常生活の中でも欠かせないアイテムのひとつですが、実は生産工程で環境にかなりダメージを与えている、というのをご存知でしょうか。

ジーンズは通常インディゴで染められますが、インディゴは水に溶けないため綿糸になかなか色が入りにくいのです。そのため、化学物質を用いながら10〜12回の染色を繰り返す必要があり、その工程で大量の水と化学物質が使用されています。また、デニムの材料となるコットンも生産には多くの水と農薬が必要です。しかし、このように多くの資源が使われてやっとのことで完成したジーンズは、消費者によって簡単に捨てられてしまうことも多くあります。

これらの問題にプロダクトとビジネスモデルの両面からアプローチし、世界的に注目を集めているのが「MUD Jeans」です。

MUD Jeansは「世の中からジーンズが捨てられる慣習をなくすこと」をミッションとして、ジーンズのサブスクリプションサービスを展開しています。利用者は、一年間ジーンズを借りたのち、そのジーンズを引き取るか、新しいジーンズと交換することが選ぶことができます。

また、履けなくなったり破れてしまった場合はそのジーンズをMUD Jeansに返却でき、それらのジーンズはまた新しいジーンズとして生まれ変わります。つまり、利用されたジーンズは最終的には全て企業によって回収される仕組みとなっているのです。

マッドジーンズの商品は全体の40%に古いジーンズが用いられ、残りの60%がオーガニックコットンが使用されています。これにより使用するコットンの量を減らすことで、綿の栽培に用いられる水や農薬、輸送による環境負荷の低減にもつながっています。

また、染色方法を工夫することで水の消費量を大幅に削減しています。通常ジーンズ1本あたり7000リットルの水が消費されていると言われますが、MUD Jeansは393リットルにまで抑えることに成功しました。

MUD Jeansはこれらのメソッドを他社にも公開し、業界全体での環境負荷低減を目指しています。

参考:MUD Jeans 

服の図書館「LENA Fashion Library」:「買う」から「借りる」へ

ファッション業界での問題は、私たち消費者にも深く関係しています。

1年前に買った服を、今どれだけ着ているでしょうか。

今買おうとしている服は、いつまで着るつもりでそれを選んだのでしょうか。

買ってすぐに捨ててしまう、着なくなってしまうなら、そもそも「買う」必要がないのではないか。そんな「新しい服の消費のあり方」を提案しているのが、オランダの首都アムステルダムにあるLENA Fashion Libraryです。名前からもわかるように、このストアでは本ではなく服を貸し出しています。

使い方は至ってシンプル。商品のタグには値段の代わりに1日あたりの使用料金を示す数字「クレジット」が書かれていて、料金は返却する日に借りた日数分を支払います。

1クレジットは0.25ユーロ(約35〜40円)で、ほとんどの商品が2〜6クレジットなので、1日あたり約300円以下で借りることができます。

また衣服の交換も自由です。例えば、もともとジャケット、パンツ、スウェットを借りていたけれど、暑くなってきたのでジャケットは返却して、夏らしいスカートを借りる、なども簡単です。また、料金計算も1日辺り何クレジット分利用しているか確認すれば良いので管理もしやすい仕組みになっています。

LENA fashion libraryは、いわば家の外にある巨大なクローゼットといったところでしょうか。そんなサービスに魅力を感じる利用者は、「気軽にいろんな服に挑戦してみたい」「購入する前に試したい」など理由はさまざまですが、このような行動の変化が「気軽に購入し、飽きたら捨てる」という悪循環を脱するきっかけになると私は思います。

「かわいい!」と思って衝動的に買ってしまっても、結局着なかったということは残念ながらしばしば起こります。また、服を安く購入できてしまうばかりに、捨てることに抵抗感を感じない人も多いでしょう。しかし、買う or 買わないの間に「借りる」という選択肢を増やすことで、そのような「間違った購入」を避けることができ、本当に欲しいものを購入し長く使い続けることができると思います。

服をシェアし、人々の行動を変えることで服一枚一枚の寿命を長くすることができれば、最終的には大量に生産する必要も、廃棄する必要もなくなり、価値ある資源を無駄にすることもなくなるのではないでしょうか。

参考:LENA Fashion Library 

クリエイター集団「The Fabricant」:ファッションもデジタル化へ

ファッションは身体を守るためのアイテムであると同時に、自己表現の手段でもあります。

では、私たちのアイデンティティの多くがSNSなどのオンライン上に存在するこの時代に、自己表現をするために物理的なアイテムは必要なのでしょうか?

デジタルファッションを専門とするクリエイター集団「The Fabricant」はこんな問いかけからスタートしました。彼らはファッションをデジタル化するという全く新しい方法で、汚染や廃棄の問題にアプローチしています。

デジタルファッションとは、SNSやバーチャル空間などのインターネット上で使用可能な服やアイテムのことを指します。物質的なプロダクトではないので、生産工程での資源の採掘や汚染、廃棄、労働搾取などの問題は当然起こりません。

もちろん、デジタルファッションは普段身につけるワードローブに取って替わることはできないでしょう。しかし、多くの人々がSNSの投稿に惹かれ、SNSに投稿するために製品を消費する中、オンライン上の自己表現のためであれば物理的である必要はありません。

実際、2019年5月にThe Fabricantは世界初のデジタルクチュールを発表し、オークションでは約100万円で落札されました。購入者の妻はそのドレスを画面上で見事に着こなしています。また、NFT保持者であれば同社のプラットフォームにアクセスでき、デジタルアイテムの作成、取引、着用のほか、イベントや勉強会にも参加することが可能で、若者を中心に人気が拡大しています。

全ての服がデジタルに置き替わることはないでしょうが、それでもこのようなデジタルアイテムが普及することで、服の消費量が減少し、廃棄や汚染削減につながるのではないでしょうか。

*NFT:「代替不可能なトークン」という意味の言葉。トークンとはブロックチェーン技術を使用して発行した暗号資産の総称のことで、コピーが容易なデジタルデータに対し、唯一無二な価値を付与し、新たな売買市場を生み出す技術として注目を浴びている。

参考:The Fabricant 

オランダに学ぶこれからのファッションとの向き合い方

いかがでしたでしょうか。日常を新しい視点から問いなおすことでサステナブルなファッションを追求するオランダの事例はどれも刺激的です。

私がオランダに実際に住んでみて感じることは、SDGsの推進が環境意識の高い消費者だけでなく、一般の消費者によっても進められているということです。

MUD JeansやLena fashion libraryなどのように、プロダクトやサービス自体が魅力的であるために、自然と人々が利用したくなり、使っていくうちにその背景について知ることでますます好きになるという流れが起こっているのです。

一方、日本に目を向けてみると、環境課題やSDGsに関連する商品やサービスは、いわゆる「意識高い人向け」のものとして見られがちなのではないでしょうか。環境に配慮した製品を使うことやそのような主張をすることがなんとなく敬遠される風潮があると感じます。

私はこの意識の根底には、よくない現状を改善するためには「我慢」しなければならないという先入観があるのではないかと考えています。服をたくさん買ってはいけない、食べ残しはしてはいけない、環境にも人権にも配慮した商品を使わなきゃいけない…などなど。

このように考えてしまうと、自分ひとりが「我慢」したところで一体なんの意味があるのかとめんどくさくなり、結局行動に移さない、そういった人が多いのではないでしょうか。

しかし、SDGsの実現は「我慢」が必要な苦しいものではなく、新しい生活スタイルや消費のあり方を探求するクリエイティブで楽しいものだと私は考えます。

オランダでは、SDGsに取り組む商品が日常に溶け込み、多くの消費者が純粋にそのサービスやプロダクトの魅力に惹かれて利用しています。

たとえば、廃棄直前の食材をレスキューできる「Too good to go」というアプリがあるのですが、食費の節約をしたい学生にとってはとても嬉しいサービスです。また、Tony’s chocolonely のチョコレートはただパッケージが可愛いため好んで購入していましたが、児童労働撲滅のための活動に貢献していると最近知り、すっかりファンになりました。

いろんな服を着たい、節約をしたい、かわいいパッケージのチョコレートが食べたいなど、最初は自分の欲求に従って行動しているだけですが、その選択が環境に良いことだと知ると少し嬉しくなり、より一層そのサービスやプロダクトを使いたくなっていくのです。

今の日常を少し違う角度から見つめてみる。「いろんな服を着るのに『買う』必要はないかもしれない、じゃあ借りてみよう」、「昨日外食しちゃったから、今日はスーパーの売れ残り品をレスキューして節約しよう」など、そうやって楽しみながら新しい生活スタイルを模索していくことが、結果的にSDGsの実現につながっていくのではないでしょうか。

まとめ

  • オランダは持続可能なファッション産業の先駆者として注目されており、以下のような取り組みが行われている
    • ジーンズのサブスクリプションサービスである「MUD Jeans」
    • 服を貸し出す図書館「LANA Fashion Library」
    • デジタルファッションを推進する「The Fabricant」
  • オランダは実際に使いたいと思うプロダクトが多く、使っていくうちにそのサービスの背景を知り、さらに好きになっていくという連鎖反応が起きやすいため、一般消費者によってSDGsが推進されやすいという特徴がある
  • SDGsに取り組むために「我慢」する必要はない。新しい生活を探る過程を楽しむことが持続可能な社会の実現につながる

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