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アニメ×アパレルのコラボマーケティング|効用と勝算は?

アニメと有名ブランドを掛け合わせたコラボマーケティングが盛んです。2023年だけで見ても高級ブランドLOEWE(ロエベ)がスタジオジブリの「ハウルの動く城」とコラボレーションして大きな話題になりました。またZOZOTOWNは人気アニメコンテンツとのコラボ企画を連発しています。本記事では、コラボマーケティングが増えている背景を探ってみました。

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ラグジュアリーブランドもコラボ多用の時代

最近のアニメコラボでひときわ話題をさらったのが、ロエベと「ハウルの動く城」とのコラボだったのではないでしょうか。2021年に始まったロエベとジブリによるコラボは「となりのトトロ」「千と千尋の神隠し」に続いて3回目です。今回はハウルの世界観がロエベの職人技によって細やかに巧みに表現されています。

また、ドルチェ&ガッバーナ(Dolce & Gabbana)が2022年5月に人気アニメ「呪術廻戦」とコラボした商品を発売しました。渋谷で屋外の大型広告ディスプレーに大々的に映像が流されたことは記憶に新しいでしょう。

以上のようなラグジュアリーブランドまでもが日本の人気アニメとコラボしているのが近年の大きな特徴です。アパレルに靴、雑貨などを含めた普通のファッションブランドとアニメのコラボは枚挙にいとまがありません。

最近目立つのがZOZOです。ZOZOTOWNにおいて「チェンソーマン」「高良くんと天城くん」「ブルーロック」など人気アニメとのコラボを連発しているのです。

ZOZOTOWNとチェンソーマンのコラボ商品(ZOZOのプレスリリースより)

ZOZOTOWNに出店している店子ブランドとコラボするケースもありますが、ZOZOとアニメコンテンツとの単独型も多く、かなり知恵を絞っている様子が窺えます。

参考 : ZOZOが超強力アニメコラボ連発 その裏側をイケメン社員に直撃(WWDジャパン_2023/7/13公開)

このように、アニメコンテンツと組んだマーケティングは、ファッションビジネスにとって必須になっているとすら言える状況です。ファッション、アニメともにSNSとの相性が良いことも、SNSを駆使したコラボマーケティングを後押ししていると言えるでしょう。

日々あふれるコンテンツの中で埋没しない

では、コラボマーケティングはなぜ有効なのでしょうか。最初に挙げられる要因としては、日々コンテンツ(情報)が氾濫するなかで、コラボは埋もれることがないという点です。

例えば、ロエベはトートバッグでも数十万円するラグジュアリーブランドですし、ドルチェ&ガッバーナも同様です。通常であれば彼らがメディアに取り上げられる頻度は低く、それだけ消費者との接点も減ります。

それがコラボ企画によって、数多くのメディアに取り上げられました。メディアによってニュースになれば、SNSでバズりやすくなります。

日本のインターネット広告市場は拡大が続いています。経済産業省の特定サービス産業動態統計調査によれば、インターネット広告の市場規模は2006年に1200億円だったものが、2019年には8343億円にまで成長しました。コロナ禍が始まった2020年には1兆1008億円と前年比31.9%も伸びました(下グラフ)。

SNSをはじめとしたネット空間には広告コンテンツがあふれています。その中で、人気アニメと組んだコラボマーケティングは、それだけでニュースになりますし、意外性が消費者の記憶に残るという効果も望めますから、情報の大海の中で埋もれにくいということが強みであると言えます。なおかつ、期間限定にすれば、ブランド価値の毀損の恐れも低下するでしょう。

また、コラボによってそのラグジュアリーブランドの認知度がアニメに馴れ親しんだ若者の間で向上します。うまくいけば〈入り口商品〉として購入に至りますし、そうでなくとも若者がのちのち購買力を付けた時にラグジュアリーブランドとして想起してもらいやすくなれば、将来的な売上増につながるでしょう。

心理学・行動経済学の観点からも有効

一方、消費者側からみたコラボマーケティングの効用についてはどうでしょうか。この点は、社会心理学や行動経済学からのアプローチの一つとしてよく知られている「希少性の原理」の典型例と言えます。

希少性の原理とは、手に入りにくくなると、より貴重に思えてくるという特性のことです。人は欲しがる人が多く数が少ないものに惹かれる傾向が強いことが知られています。

例えば次のようなコピーは、この原理をそのまま用いたもので、よく目にするのではないでしょうか。

  • 数量限定! 早い者勝ち
  • 特別セール 本日○○時まで
  • 限定公演! 近日終了

(実際には限定されておらず、特別でもなんでもなくても、このようなコピーが使われるケースもあります)

希少性の原理が最も効果を発揮するのは、新規かつ競争相手がいる場面です。長期間ずっと手に入りにくいものよりも、手に入りにくくなったばかりのものの方を人は高く評価するからです。かつ、欲しがる人が多く数が少ないものに惹かれる傾向が強いことも知られています。

これをアニメとアパレルのコラボに当てはめてみましょう。まず、コラボの企画は開始の少し前あるいは直前に発表されることが多いです。そして、第一弾商品は供給数量を絞ります。初回特典を付けることもあるでしょう。

そのうえで、反響に応じて第二弾、第三弾を出すかを検討します(こうすれば「数量限定」と謳っても嘘にはなりません)。

こうなると、ファンは正常な判断が働かなくなります。本当にその商品が欲しいのか、冷静に分析できなくなるのです。

また、ブランド側からすれば、アニメのファン以外の顧客が購買に至らなくても、コラボ実施によって目に触れるだけでもマーケティングとしては成功となります。

行動経済学からみた値付けのポイントを解説した記事はこちら>
価格戦略は消費者との心理戦|行動経済学と事例から見る、値付けのポイント

まとめ

本記事は希少性の原理を活用したコラボマーケティングを批判するものではありません。様々なコンテンツがネット上にあふれる中で、その商品を買ってくれそうな人に、有用だと思ってもらえるコンテンツを届けるをいかに届けるかというマーケティングの極意が、アニメとファッションブランドとのコラボから見えてくると筆者は考えているのです。

この10月からはステマ(ステルスマーケティング)規制が始まりました。どの事業者もインフルエンサーも、コンテンツが埋没しないようにする工夫がより一層求められています。

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