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【セミナーレポート】イベント需要を攻略せよ!〜欠品を20%抑制した丸高衣料の在庫戦略と店舗コミュニケーション〜

2024年6月26日(水)に、『こどもの森』の丸高衣料株式会社様ご登壇のオフラインセミナー「イベント需要を攻略せよ!〜欠品を20%抑制した丸高衣料の在庫戦略と店舗コミュニケーション〜」を大阪で開催しました。

当日ご参加いただきました皆様に、御礼申し上げます。
講演後の交流会では参加者同士で活発に意見交換をしており、以下のような感想が寄せられました。

  • 多店舗、多SKUでの実例が拝聴でき、具体的なイメージを持つことができた
  • もっと話を聞きたい
  • 他社様での在庫活用・ディストリビューティングでの具体的な取組と課題がうかがえて参考になった
  • 同じベビー・子ども業界のアパレル企業として取組・課題がお伺いできて非常に参考になった

登壇者:髙浦 文武氏(丸高衣料株式会社 営業部)
新卒で大手半導体メーカーへ入社し、営業マンとして3年間勤務。
2023年に丸高衣料株式会社へ入社し、国内工場・配送センターでの研修を経た後、店舗営業・VMD・ブランディングなどに携わる。
2024年よりDB業務の推進を担当し、現在に至る。

登壇者:太田 千夏(フルカイテン株式会社 カスタマーサクセスチーム)
大手アパレル企業にて、店長として個店ごとの経営課題の解決・組織設計を実現。立地や店舗規模に応じた在庫コントロールを実施し、利益の創出に尽力。
その後、商品本部(生産部)にて、キッズ布帛商品の生産管理に従事。
現在は、カスタマーサクセスチームにて、顧客支援に従事。

登壇者:岸良 腕(フルカイテン株式会社 マーケティング マネージャー)
人材企業を経て、2020年1月にフルカイテンに入社。入社後はインサイドセールス・カスタマーサクセスとして様々な小売企業様に対しての提案・支援業務を担当。その後マーケティングマネージャーとして、ターゲットの選定やメッセージの発信などのマーケティング活動全般を担当。

ベビー・子供服業界はイベント需要が大事

髙浦氏 ベビー・子供服小売業界は、イベント需要に大きく左右される側面があります。例えば、入学式や遠足、運動会、年金支給日などです。そのため、売れるタイミングで商品が欠品せずきちんと揃っていることが理想ですが、現実的にはそれが難しく欠品が発生しており課題感がありました。

前述した課題に対しては、以下の対策を実施していました。

1.初回投入数の見直し
欠品のデータを用いて、仕入れ数を決定

2.期中の在庫移動
移動は実施していたものの、各支店の営業担当が不定期かつ、属人的に移動

岸良(セミナーのモデレーター) どのように欠品のデータを用いて、初回投入数の見直し
と仕入れ数の決定をしていたのか教えてください。

髙浦氏 自動発注という形で、売れた商品の補充をしていました。どれくらい補充するかはシーズン初めの段階で社内で議論をしていました。

欠品による機会損失は『一番悔しい』

髙浦氏 FULL KAITENを導入する前は、欠品による機会損失が一番悔しいと感じるポイントでした。弊社は多くの店舗が量販店のコーナーに展開しており、売り場面積と投入できる商品数にも制限があります。在庫を積みすぎても、少なすぎてもロスになるので判断が難しい部分もありました。

特に在庫移動においては、以下の観点で課題が多くありました。

  • 店舗によって地域特性や店の形、大きさも異なり、展開している品番も異なる
  • 移動業務は会社の隅々まで熟知しているベテランが実施。個人により方法が異なり属人化。若い世代への引き継ぎも難しい
  • 様々な人が移動することで、何をいつどれくらい移動したか一元管理しづらい

岸良 御社はSKU数が約5,000あり、全国に店舗が300店近くあると思いますが、どこ店舗に何をいくつ移動するかの判断は難しかったですか?

髙浦氏 はい。私は在庫移動業務に携わって1年ほどなので、今も勉強中なのですが、初めは品番を把握するだけでも大変でした。品番はシーズン毎に変わるので、ベテランの方なら対応できるものの、私はどんな品番があるのか追いつくのに必死でした。これらの課題を解決するために、FULL KAITEN〈在庫配分〉をトライアル契約することになりました。

欠品を20%抑制した方法

髙浦氏 FULL KAITEN〈在庫配分〉を導入し、弊社の支援担当であるカスタマーサクセスの太田さんと以下の目標や基準を決めました。

  • ゴール
    • 売上粗利の改善
  • 目標
    • 2024年 S/Sシーズンの機会損失抑制
  • 対象期間
    • 3ヶ月間
  • 対象店舗
    • 大阪70店舗
      • 全国で300店舗あるが、トライアル期間は大阪の店舗のみを対象とした
  • 注力業務
    • 業務設計
      • 在庫配分業務を再現性をもって実施するための型化
    • 業務定着
      • 業務設計した内容を実践し、普段の業務に定着させる

結果として、在庫移動で動かした商品のうち約20%が店舗の欠品改善に貢献しました。

岸良 支援を担当しているカスタマーサクセスの太田さんは、どのような点を意識して支援をしましたか?

太田 在庫配分の製品を導入しているお客様のご支援を多数していますが、皆様が一番求めているのが粗利の改善です。今回、丸高衣料様では初回3か月間のトライアル契約でしたので、まずは売上と粗利の改善を目標に掲げ、在庫配分業務の適正化を進めました。

FULL KAITEN〈在庫配分〉は、倉庫出荷、倉庫回収、店間移動、在庫集約の4つができます。今回は、店間移動に着目し、まずは業務定着を目指しました。

業務が定着することで、売れる場所に売れる在庫がある状態を作ることができ、魅力的な売り場にすることで機会損失の抑制に繋がるというお話をさせて頂きました。

岸良 在庫移動にあたっては、どのような点を意識して行いましたか?

太田 ベビー・子供服のようなシーズン性の高い商品はライフサイクルが短いため、商品ライフサイクルに沿った商売が大事です。弊社では、商品の投入から完売までのプロセスを指す『商品ライフサイクル』という考え方を用いて移動のタイミングを検討しています。

商品ライフサイクルを表した図

商品ライフサイクルには、5つの時期があると定義しています。

シーズンイン :商品立ち上げ期間。売上は低い
ピークイン  :売上が大きく伸長し、売場拡大期間
ピーク    :最も売上に貢献する期間
ピークアウト :売上が大きく下降し、売場縮小期間
シーズンアウト:商品売り切り期間。売上は低い

商品ライフサイクルを詳しく説明した図

売れ始め→ピーク→段々と売上が下降していくというような流れになります。この中で、どこで在庫を移動をするのかが非常に重要なポイントになることを、丸高衣料様とすり合わせをさせて頂きました。

一番重要なポイントは、商品ライフサイクルの「ピークイン」(もしくは「ピークアウト」)のタイミングで在庫移動を実施したことです。

ピークに差しかかる前は店舗で在庫がなくなってくるため、在庫のばらつきが出てきます。このままの状態でピークに差しかかってしまうと、売れている店舗では欠品が発生します。そこで、FULL KAITENを用いて、これから先どのぐらい売れるかという予測に基づきピークに備えた在庫移動を行いました。

岸良 欠品が起きてから在庫を移動すると後手を踏みますが、前始末型の在庫移動でより大きな成果創出が可能になりますね。

太田 はい。ピークアウトで慌てて移動してもあまり効果は出ないので、今回は2024年S/Sの タイミングで実施しました。

店舗から寄せられたAIへの不信感を、コミュニケーションの工夫で乗り越えた

講演の様子

岸良 前段では、どのようなアクションをして成果を創出したのか伺いましたが、成果を創出できたポイントについて教えてください。

ポイント1:店間移動の業務フローを再度構築

髙浦氏 ポイントは3つあります。1つ目は、店間移動の業務フローを再度構築したことです。

店舗側と本部側で理想の状態と現実を洗い出しました。店舗側の理想は、弊社の中で業務の型がある状態を作り、担当者によって視点のばらつきがない状態です。

本部側は、本部指示が出る曜日に移動指示を実行できる人員が準備されていたり、移動先店舗は、入荷した商品を当日に店頭に品出しすることができたりすることが理想です。そのためには、全体最適で在庫移動をすることが重要でした。

現実的には、在庫移動の型はなく経験豊富な社員が対応していました。在庫移動は商品を一つひとつ見て判断していたため、限られた人数の中で実行するには手間と時間がかかるので後回しになっていました。加えて、データはあるものの、それを有効活用しきれていなかった点も改善したいと考えていました。

岸良 なるほど。具体的にはどのような業務フローを作りましたか?

髙浦氏 何曜日に何をするか決めました。基本的には、火曜日には全店に在庫移動の指示を出して、火曜日と水曜日にお店のスタッフ 作業をして頂いています。土日に売れるようにしたいので、できれば木曜日か金曜日には店頭で商品が並んでいる状態を目標にして作業をしています。

岸良 業務フローはどのように構築したのですか?

髙浦氏 経験豊富な社員の感覚と経験や、御社カスタマーサクセスの太田さんとも相談しながら決めました。

岸良 太田さんは業務フローの構築にあたり、意識していたことはありますか?

太田 髙浦様が在庫移動業務を実施する上で、忙しくて手が回らなかったという状態にならないように髙浦様の一週間の業務をヒアリングさせて頂きました。すると、「月曜日は避けた方が良さそうですね。」ということが分かり、在庫移動の指示は火曜日に出すことを目標としておきました。

店舗の目線では、火曜日の移動指示を受けて、きちんと土日に商品が店頭に並んでいる状態を作る必要があるとお伝えしました。店舗から店舗へのリードタイムや、配送のリードタイムも考えた上で、必ず火曜日か水曜日には出荷することなどを一つずつ決めていきました。

ポイント2:現場(店舗)を巻き込むコミュニケーションの重要性

髙浦氏 ポイント2つめは、現場(店舗)を巻き込むコミュニケーションの重要性です。FULL KAITENのようなプロジェクトが始まり、本部から発信しても店舗の皆さんと溝ができてしまったりすることは、どの会社でも良く起きることだと思います。

まずは目線と気持ちを合わせ、プロジェクトを前に進めたいと思いました。

FULL KAITENを導入した初期は、AIに対する店舗からの不信感もありました。AIという言葉だけを聞き「AIって大丈夫なの?」のような漠然とした不安を抱えたりしておられる方もいました。

私自身も、FULL KAITENのトライアル期間にAIのことを勉強させて頂き、実はそこまで複雑なものではないことや、データを用いて根拠に基づいた在庫移動であることも一つひとつ丁寧にお話ししようと心がけていました。

例えば、なぜこの品番が移動対象になっているのかや、 移動の判断はAIが行いますが様々な設定をするのは私たち人間であること、「この移動は少し無理があるのでは?」と思う際は人間が手直しすることも伝え、全部AIが決めるのではなく、人の手を介して取り組むことをお話ししました。

あとは、FULL KAITENで在庫移動を実施したあとに、移動した結果どうだったのかを検証しますが、その内容を踏まえての成果や成功体験も共有できる範囲でお話ししました。

とはいえ、まだ店舗の皆さんから様々な声はあります。少しずつ理解して頂けるように取り組んでいます。

岸良 FULL KAITENのようなITツールを導入する際に、髙浦様が実践したコミュニケーションの取り方はとても参考になると思います。

髙浦氏 店舗の皆さんに対しては「人間ができないことをAIに助けてもらう」というような言い方を心がけていました。初めの頃は批判的な意見もありましたが、「そこは皆で淡々とやるべきことをやりましょう。」と伝えることで、段々と理解して頂けるようになりました。

FULL KAITENを導入して一番進化したと思うのは、本部側で在庫移動を進めたことで結果が出た点です。店舗からの不満が0になることは難しいかもしれませんが、本部が在庫移動の業務の型や成果の出し方を理解できた点は進化です。

岸良 素晴らしいですね。店舗向けのFULL KAITEN説明会を実施したそうですね。

髙浦氏 FULL KAITENを導入する前に、店舗向けの説明会をオンラインで3回に分けて行いました。大阪での説明会は完了したので、今後、他支店での運用前に説明会を実施したいと思います。

ポイント3:効果検証の実施で最適な配置になるよう調整

髙浦氏 在庫を移動したことで、どれくらい費用対効果があったのか検証しました。検証にあたっては、御社カスタマーサクセスの太田さんに協力頂きました。

太田 効果検証は、在庫移動によって増加した在庫で生まれた販売数(創出販売数)を算出しました。

効果検証のイメージ図

上記の図を使ってご説明します。一番左の移動前在庫数5(SKU単位)は、移動前にあるSKUが店舗に5つあったという意味です。他の店舗から在庫が4つ移動されてきたとして、その4点が一定期間(2週間~3週間)の間にいくつ売れたかを弊社側でデータを集計し、丸高衣料様に提出させて頂きました。

4つ移動したうちの2つが売れた場合、在庫移動したうち、何割の在庫が売れたかを表す『稼働率』という指標を用いて定量成果を出しました。

店別や商品カテゴリー別、あとはブランド別などの傾向も抑え、好調なブランドと店舗、不調なブランドと店舗不調な店舗なども洗い出しました。

岸良 高浦様は効果検証をどう評価していらっしゃいますか?

高浦氏 SKUベースで販売状況など細かく見られるので、非常に助かっています。データを活かして、来期の生産ではどのカテゴリーの商品を強化するかなども加味できています。

岸良 効果検証で重視した指標はありますか?

髙浦氏 稼働率です。弊社の商材は、イベント毎に売れる数量が変動する傾向があるため、直近のイベントに合わせて移動する商品を意図的に選定しています。移動の意図がある商品が実際に動いたかどうかを見るには、稼働率を追うのが最も把握しやすかったです。

岸良 稼働率を上げるために、どのようなアクションをしましたか?

髙浦氏 稼働率が毎週のように0の店舗は何かしらの傾向があると思い、電話でヒアリングと実際に移動したものを店頭に出しているのかという確認をしました。

今後の活用計画

髙浦氏 さらに効率的な在庫移動を実施するために、3つのポイントがあります。

1つ目は、少ない在庫で効果的に在庫移動を実施することです。これに関しては、トライアンドエラーが必要ですが、2024年5月から大阪支店以外の全国5支店でFULL KAITENの運用を始めました。データを元に移動の振り返りを全社で実施し、最適な運用方法を見つけていきたいです。直近では、在庫移動による運賃がどれくらいかかっているのか気になるので、「何枚以上じゃないと移動しない」のような設定や、移動先の店舗数なども設定することで費用対が良い方法を探していきます。

2つめは、時間をかけずに運用するために作業負荷改善をしたいです。既に作業負担については時間的にも大きく改善しているので、FULL KAITENの画面上にある沢山の分析指標を使いこなして効率的かつ効果的に在庫を分析したいです。

3つ目は分析の幅を増やして成果をあげることです。分析の幅については、今は店別とブランド別での分析がメインです。今後は、品番単位やSKU単位で効果検証を行い生産にも生かしていきたいです。

岸良 カスタマーサクセスの太田さんから見て、丸高衣料様が3か月間で成果を創出されたポイントはどこにあると思いますか?

太田 髙浦様は、いつも目的意識を持っていらっしゃいます。FULL KAITENプロジェクトに関しても、「このプロジェクトはこの目的で存在し、最終的にこういう状態にしたい」というお考えを強く持っていらっしゃいます。弊社とのミーティングでは、目的に立ち返ったお話をしたり、在庫移動の結果が芳しくない時も目的とゴールをすり合わせ軌道修正したことが大きなポイントだと思います。

店舗の方への密なコミュニケーションは、私から促したわけではなく、髙浦様自身で取り組んでくださったことです。FULL KAITENとは何なのかをかみ砕いて、根気強く説明する過程では様々な苦労があったと思います。様々な工夫をして軌道に乗りました。

岸良 髙浦様から見て、弊社カスタマーサクセスの太田はどのような印象でしたか?

髙浦氏 FULL KAITENに携わるメンバーは比較的ベテランの社員が多く、色々と細かい要望やかなり踏み込んだ要望もさせて頂きました。太田さん自身がアパレル小売業の出身で、店長や子供服の生産をご経験したこともあり、弊社の商売や、イベントごとの需要も非常によく理解してくださいました。同じ会社の社員のような感じで一緒に取り組んでくださったのですごく助かりました。

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