2025SSに11回の店間移動で売上664万円、粗利益288万円を創出した暑い夏
株式会社ジェイアール西日本ファッショングッズ
課題
- 値引きに際して商品選定やオフ率の判断が前年踏襲となりがちで、ブランドの担当者やバイヤーごとに属人化していた。結果の検証も十分にやり切れていなかった
- 店間移動が、担当者が必要に応じて実施するにとどまり、ルーティン化できていなかった
解決策
- FULL KAITEN〈在庫分析〉の活用により商品ごとにオフ率に傾斜をかけ、無駄に失う粗利益を最小化
- FULL KAITEN〈店間移動〉を活用し、店舗に負担をかけることなく売れる商品を売れる店舗へ売れる量だけ移動
定量成果
- 2025年SS3カ月で、在庫を移動した先の店舗で当該商品が売れた割合(稼働率)が62.5%に到達
- 2025年SS3カ月において店間移動で創出した売上高は664万円余り、粗利益は約288万円に上った
株式会社ジェイアール西日本ファッショングッズ様は、JR西日本の駅ナカや沿線のSCを中心にバラエティ雑貨やアクセサリーなどの小売店を運営しています。売上高が年々伸びていくなかで、仕入れの抑制や在庫高のコントロールに対する意識が高まり、粗利益を無駄に毀損しないための値引き施策(オフ率設定)や店舗に負荷をかけない店間移動といったオペレーションに課題感を抱えるようになりました。
そこでFULL KAITEN〈在庫分析〉(現FULL KAITEN〈在庫ドック〉)とFULL KAITEN〈店間移動〉を活用することになりました。在庫のヒートマップに応じてオフ率に傾斜をかけたり、売れる商品を売れる店舗へ売れる量だけ移動させる業務を自動化したりすることで、収益性の向上につなげました。
本稿では、「エピソード」「イイコット」「ココシュカ」「ラ・パレット」「モニック」の5ブランドの直営店を管掌するデイリー・ライフスタイル事業課長の矢吹様にお話を伺いました。

※本記事に含まれる情報は2025年12月初旬時点のものです。
ヒートマップで在庫運用に助言
ーーFULL KAITEN導入前は業務において様々な課題を抱えていらしたと思います。在庫分析や在庫配分(店間移動)のようなタスクは、以前はどのように運用されていたのでしょうか。
矢吹様 在庫分析、要は値引き判断に関しては、基本的に「セールになったら値引きをしましょう」という大方針がありました。そのうえで、どの商品をどれだけオフするかという部分は、まずは前年踏襲するかしないかの判断です。あとは各担当、各バイヤー個人の判断に頼るなど、けっこう属人化していました。
それに対して、検証はやり切れていたとは言えず、結果として「消化率は何%で終わりました」「粗利率は何%でした」という結果としてしか見ることができていませんでしたね。店間移動も、それぞれの担当者が必要に応じて実施していたというのが正直なところで、ルーティンとしてはやっていませんでした。
ーー人によって判断基準が異なると、在庫消化や利益の見通しを立てにくかったのではないでしょうか。
矢吹様 そうですね。やはり、会社として、粗利益を上げていきましょうという大きな方針がありました。そのための方法は2つありますよね。1つは原価低減で、もう1つは値引き抑制です。無駄な値引きを無くしてオフ率をしっかりコントロールし、粗利益を増やすという方法論において、FULL KAITENを導入してやってみようということになりました。
まずはトライアルでスタートし、実際にやってみて大きな成果が出たと思います。
ーーありがとうございます。トライアル(当時は3カ月)から本契約への移行を決めていただいた際のポイントはどんなことだったのでしょうか。
矢吹様 トライアルの時期が夏の終わり頃でシーズンアウトのタイミングだったので、明確に大きな成果が出たというわけではなかったんですが、成果を出すためにもっと長いスパンでFULL KAITEN活用に取り組んでいこうと考えて本契約をさせていただきました。
最初にFULL KAITEN〈在庫分析〉(現FULL KAITEN〈在庫ドック〉)の導入から始めまして、値引きすべきSKU、すべきでないSKUが可視化されるという効果がありました。でも、そこから「値引きをする前に店舗間で移動させていれば値引きせずに済んだ在庫もあったんじゃないか」という課題意識も出てきました。そこで、FULL KAITEN〈店間移動〉も導入したという経緯になります。
ーーFULL KAITEN〈在庫分析〉ではどのような効果がありましたか。
矢吹様 やはりヒートマップですね(下図)。誰でもパッと見るだけで、どこにどの在庫が滞留しているのかが分かるんですよ。従来は、みんな何となく自分の担当アイテムについて「この辺りがマズそうだな」という感覚はあったかもしれません。でも、このヒートマップを見ると、はっきりアイテムごとに値引きの要否が出てくるわけです。

こうなると、みんな意識せざるを得ないですよね。今までは、在庫の実態が見えなかったので座視していても許されたかもしれませんが、こうして可視化されると、「早く手を打たないと」となりますよね。担当者でなくともヒートマップで見られるようになりますから、お互いに助言し合うことができるようになりました。
ーーなるほど、判断が速くなって、実行すべきことにに手をつけやすくなったということでしょうか。
矢吹様 そうですね。あと、御社の担当の清水さん(※フルカイテンCS=カスタマーサクセス)がミーティングを定期的に実施してくれて、アドバイス等で伴走してもらえたのも非常に大きいですね。
ーーちなみに、トライアルから本契約へ移行される際は、社内でどのように合意形成を図られたのでしょうか。
矢吹様 当社は結構、システムやツールを取り入れることに積極的な会社なので、そんなにハードルは高くなかったです。もちろん、理由と期待される効果はきちんと説明する必要がありました。
その点、当社はもともと在庫というものに対してかねて課題を感じていまして、仕入れを抑制したり在庫高を上限内に収めたりというところは会社として厳格に決めていました。在庫に対する意識はかなり高かったんです。なので、FULL KAITENによって、目標とする回転率や在庫高に近づくことができます、という点を強調しましたね。
ーー比較衡量されたサービスは他にありましたか。
矢吹様 いえ、比較検討はしませんでした。他のサービスは全く考えていなかったので。
「FULL KAITENが出した数字だから」と説得
ーーFULL KAITEN導入当初、どんな変化がありましたか。
矢吹様 FULL KAITEN〈在庫分析〉でヒートマップが見えるようになって、各担当が実際に作業してくれているんですけど、最初の頃は皆、ただ作業が増えたなあ、という感じでした。今は違うと思いますが。でも、徐々に粗利益や粗利率の面で成果が出だして、作業への慣れもあって、取り組みに対する意識は変わっていきましたね。

ーー「こういう成果が出てるから、作業が増えた意味はあった」と思わせるような変化や成果はどういったことだったのでしょうか。
矢吹様 やはり、実際に粗利率が大幅に改善し、在庫高も適正といいますか抑制できるようになっていって、且つ売上ももちろん伸びているという状態になったことですね。数字的に全てプラスの方向に結果として出ましたから。もちろん、FULL KAITENだけの成果ではないし、商品企画や店舗の応援など色々な要素が重なっての結果でしたが、前向きに捉えられるようになったと思います。
清水 従来は可視化したうえで商品選定まではできていても、商品ごとに値引き率に差を付けるといった細かいところまではしていらっしゃらなかったと思います。一律の値引きになってしまっていたんですね。そこで、「ここまでの値引きはしなくても良かったんじゃないか」「ちょっとオフ率が高すぎるんじゃないか」という課題感がヒートマップと照らし合わせることで出てきて、無駄に粗利を毀損してしまっている部分はもっと改善できそうだ、という意識をお持ちになっていったと思います。
そのうえで、今SSからオフ率に傾斜をかけるようになりました。しっかり値引きすべきものはオフ率を踏み込んで、そうでない商品は薄いオフ率にするといった具合に、ヒートマップに忠実に実行していただいたことで、結果につながったと考えています。
矢吹様 そうですね。あとは、店側の協力を得られたのも大きかったですね。従来は店の作業を増やさないために傾斜をつけず一律でオフ率を設定していた面もありました。ちょっとそこは、店舗にも頑張ってもらおうということで、傾斜をかけてやってもらって結果が出たので、「次のシーズンもこういう形でやるよ」と店に対して言いやすくなりました。
ーー業務効率の面で、作業時間がどれぐらい減ったというような変化はありましたか。
矢吹様 店間移動が分かりやすいですね。先ほど申し上げたように今までは担当者が必要に応じてやる程度でしたので、今FULL KAITENを使って移動している量を人力でやろうと思ったら多分、一日中やって終わるか終わらないかのレベルだと思います。それがFULL KAITENを使えば30分ぐらいでできてしまいます。
それが毎週1回ありますから、1カ月で見ると4,5日分は間違いなく短縮されて効率化してると思います。しかも精度(在庫を移動した先の店舗で売れた確率)が高くなっています。
余談ですが、お店から「この商品は移動させたくないです」とか「オフしたくないです」といった意見が結構上がっていたんですよ。それらに対しては「いや、FULL KAITENが出した結果だから」と説明して結構納得してもらいましたね。
ーーありがとうございます。店舗側の異見を「FULL KAITENから出た数字だから」と説得するという話は、他の導入企業さまでも頻出です(笑)
矢吹様 そうですか(笑)。私も感情が入ってしまう時はありますね。商品を担当してると余計に「これはもう少し(値引きしなくても)いけるんじゃないか」と思ってしまいます。でもFULL KAITENが計算した結果なら、そういう私情は入らなくなりますから。
「動かした先でこんなに売れるのか」
ーー定量的な成果についてお聞きします。最近では2025年6〜8月の盛夏において創出できた売上高と粗利益が大きかったようですね。
矢吹様 はい、2025年6〜8月の3カ月間で、店間移動によって664万円余りの売上を創出しまして、それによる粗利益の創出額は約288万円に上りました。これは、在庫が余っている店舗から足りない店舗へ移動させることで機会損失を回避したことによる売上と粗利益です。
ーー矢吹さんとしてはどのように受け止めていらっしゃいますか。
矢吹様 まず、稼働率(在庫を移動した先の店舗で売れた割合)がトータルで62.5%でした。これは、動かした先でこんなにも売れるのかと普通に驚きましたね。もしも移動させていなかったら、もともとあったお店で売れずに残って、最終的にセールで値引きせざるを得なかったかもしれません。それが、移動した先で6割以上がほぼプロパー価格で売れたということですから、さすがだなと思いました。
ーーファッションビジネスにおいて店間移動にはもともと賛否両論があると思います。データに基づいて動かせばちゃんと売れるんだという納得感のようなものはありましたか。
矢吹様 やっぱり、店間移動は労力がかかりますからね。特にお店の負担が大きいので、店舗側はあまりやりたがりません。なおかつ、もらう側はまだしも、出す側(取り上げられる側)には「その商品、まで持っておきたいのに」といった感情もあるかもしれません。その点、今回はFULL KAITENを活用して成果が出ましたので、引き続きお店に移動を要請できるなと考えています。
ーーFULL KAITENのプロダクトとしての独特の思想として「後始末から前始末へ」というものがあります(下図)。FULL KAITEN〈店間移動〉やFULL KAITEN〈在庫分析〉(現〈在庫ドック〉)が導く値引きアプローチなのですが、初めてご覧になった時はどのような印象を持たれましたか。

矢吹様 そうですね、当社もずっと長い間、「後始末」的にシーズンアウトの時期に高いオフ率で値引きするということをやってきました。清水さんからこうした説明を受けて、確かに、需要がそもそも無いところにどれだけ打ち込んだとしても、そんなに大きな売上にはつながらないよね、と改めて気づきました。なかなか、ピークが来る前やシーズンスタートの段階でオフをするのはもったいないと感じていましたし、どうしても「ピークが来たら売れるかもしないよね」という風に考えてしまいがちでした。
でも、FULL KAITENによって「需要のピークが来たとしても、今ある在庫数は消化しきれませんよ」という予測がはっきり出るので、そこはすごく分かりやすいですね。人力では、ピークインのタイミングでオフするという芸当は多分できないと思いますし。
CSによる伴走で大きな成果
ーー弊社カスタマーサクセス(CS)清水の支援はいかがですか。
矢吹様 まず、FULL KAITENを使い始めた頃は、私から言うよりも第三者の立場である清水さんからチームの全員に活用を促してくれたので、取り組みがより浸透したと思います。定期的に開催するミーティングで、清水さんが私の言いたいことを代弁してくれたことは、成果を出すことができた大きな要素です。
清水 ありがとうございます。特に何かこう、絶対にこう使ってください、という感じで申し上げたわけではないのですが、「次のミーティングまでにこれはやっておいてくださいね」ということを毎回毎回繰り返し設定させていただきました。あと、御社の場合はカテゴリーごとに担当者さまがいらっしゃるので、分けて分析するということを一対多数でやっていると、どうしても1つの使い方に拘泥してしまいがちになります。
そこは私から「こちらは私がお出しして、いついつまでにお送りします」と寄り添ってお手伝いしていました。その過程で徐々に浸透していきましたよね。もう本当に、皆様それぞれが根気強く継続してくださったことが、こうして成果につながっていると思います。
ーー今後、FULL KAITENをどのように活用していきたいですか。
矢吹様 昨冬はそこまでしっかり活用できませんでしたから、今AWにしっかり取り組んだらFULL KAITENでオールシーズンを1周します。今SSは大きくプラスの効果が出ましたけど、2周目の2026年SSに入ったら、どのようにFULL KAITENで効果をさらに高めていくのかという点を考えていきたいです。具体的にはまだこれからですけど、粗利益をさらに改善することと、在庫回転率を上げていく。その結果、新たな仕入れができるようになって売上が増えるという循環にしたいです。
次のステップとしては、Best在庫(ヒートマップで対象外=何もしない=に分類されるSKU)をはじめとした売れている在庫をより売っていくという取り組みも念頭に置いています。
ーー最後に、FULL KAITENの導入を検討している他社さまに伝えたいポイントがあればお願いします。
矢吹様 やはり、在庫の見える化、可視化によって在庫の課題がはっきり分かり、それに対する打ち手・施策を私たちと一緒に考えて伴走してくれる点が一番大きいかもしれません。BIツールは他にもたくさんありますけど、システムを売って、あとは勝手にやってください、というサービスではないですから。
ーー本日は誠にありがとうございました。