事例インタビュー

欠品率が1.3ポイント改善 店舗の負担も減らした倉庫出荷の進化

株式会社グラニフ

アパレル、雑貨ほか

小売
実店舗
EC

課題

  • 各店舗への配分数量をより精緻に判断する必要があり、在庫の偏りによる消化率の伸び悩みが課題となっていた
  • 在庫が滞留する店舗と足りない店舗が発生し、全体の消化率が上がらなかった
  • 週次で売上と在庫の分析を行えるのが、売上上位を占める品番に限られていた

解決策

  • FULL KAITEN〈倉庫出荷〉およびFULL KAITEN〈店間移動〉が日々の売上データから消化スピードを予測して算出した数値を、倉庫から実店舗への出荷数量と店間移動の数量に採用

定量成果

  • 実店舗の欠品率が1.3ポイント、在庫余剰の比率が7.4ポイントそれぞれ低下し改善
  • 店舗からEC用に移動させた商品の稼働率(ECで実際に売れた率)が、従来の52.6%から73.6%へ21ポイント上昇し、効率化にも直結

個性的なデザインTシャツの1号店が東京・下北沢にオープンしてから25年。株式会社グラニフ様は順調に業容を拡大し、デザインTシャツストアからアパレルや雑貨を含む多彩なアイテムを展開するブランドへと進化し、成長を続けています。その一方で、店舗への商品の適切な配分や消化率に改善の余地があり、アナログ化した業務をいかに効率化させるかという面で課題を抱えていらっしゃいました。

そこでグラニフ様は、FULL KAITEN〈倉庫出荷〉と〈店間移動〉を活用し、欠品率と在庫の余剰比率(基準週数を超えて滞留している品番の割合)を改善させるという成果を出されました。さらに在庫移動(倉庫ー店舗、実店舗間、実店舗ーEC)の対象品番の選定にかかる時間を月あたり約22時間削減することができました。

本稿では、執行役員の枝村様、アパレル企画セクションのディストリビューター(DB)である髙橋様、今榮様に成果を出した背景と今後の抱負について伺いました。

左から執行役員枝村様、DB髙橋様、DB今榮様、フルカイテン太田

※本記事に含まれる情報は2025年8月下旬時点のものです。

導入の決め手は業務時間の削減と正確性の向上

ーーFULL KAITEN導入前、在庫についてどのような悩みや課題感をお持ちでしたか

髙橋様 大きく3つありました。1つ目は、倉庫出荷に関して、その結果に対する比較や検証を行う時間を十分に確保できず、店舗ごとの在庫の持ち方が適正かどうかをしっかり判断することが難しかったこと。

2つ目は、商品の過剰出荷によって在庫が店舗に滞留してしまう一方、必要としている店舗へ行き渡らず、消化率も上がらなかったということ。3つ目は、在庫の調整やメンテナンス(売上や在庫の分析)に時間を割けるのが売上の上位品番に限られてしまい、売上中位や下位の品番まで手が回らなかったことです。

ーーなるほど、確かにSKUが多い企業ではよくあるお悩みかと思います。その中で、FULL KAITENを検討のうえ導入していただきましたが、何が具体の決め手になったのでしょうか

髙橋様 まず、約40店舗のテスト導入を実施し、その成果を検証しました。導入前と比べて、欠品率や余分出荷の比率が下がり、しっかり数字として成果を実感できたことが決め手の1つですね。

さらに、在庫メンテナンスに要する時間も短くなりました。1日あたり1〜2時間、月単位で約14時間の削減につながり、より多くの品番を正確に管理できるようになりました。これらの成果が導入に至る決め手になったと考えています。

グラニフ枝村様

枝村様 当社は毎年新しい取り組みに挑戦しており、一概に比較は難しいのですが、FULL KAITEN導入がプラスになるだろうと判断できた点が良かったです。テスト段階で、明らかに業務が効率化される工程がはっきりと分かりました。業務が属人的になるのはリスクが高いため避ける必要があると考えていたところ、太田さん(弊社カスタマーサクセス)に、基準や成果の測り方を設計していただけたことも有益でした。

ーーありがとうございます。FULL KAITEN導入によって変わったところや導入によって新たにできるようになったことは、例えばどんなものがありますか

髙橋様 業務時間を大きく削減できているところが我々にとって最も良い点だと思っています。以前と比べて月で約22時間の短縮につながっています。また、追加で人員を増やすことなく、既存のリソースのままで、これまでの運用を維持しながらより正確なメンテナンスができるようになりました。

さらに、上位品番だけでなく、中位・下位品番も含めて一通り見るというルーティンが確立できたのは大きな変化です。

枝村様 従来は中位品番の移動判断が一番難しかったのですが、そのハードルが下がりました。

ーーFULL KAITEN導入前、そういう中位、下位品番の商品はどういう対応をされていたんですか

髙橋様 アナログな手法で都度メンテナンスしていましたが、基本的には上位数十品番を見るので手一杯でした。限られたリソースで成果を出すには、どうしても上位品番を優先せざるを得ない状況でした。

ーー2025年4月以降はFULL KAITENの対象にする店舗を拡大しています。毎年違うことをされているとはいえ、前年と比較してどのような定量的な改善があったのでしょうか

今榮様 直近では、全店で導入前後を比較して欠品率が1.3ポイント改善しました(2025年6月の週次平均の咋対比)。以前手が回りにくかった中位品番までアクションできた成果だと考えています。

さらに、在庫週数が3週以上の余剰比率が前期比で7.4ポイント改善しました。ここは大きく成果が出ていると感じています。従来の自動補充では、基準で決められた数字に対して売れたらその分補充する自動補充の仕組みで出荷していたので、「この在庫は本当に必要か」と疑問がありましたが、それに対してFULL KAITENの導入によって売れ行きの波動というか、ダウントレンドに沿った補充ができるようになったことが、余剰比率の低下に現れていると思います。

ーー販売のダウントレンドの兆候が見えてきたら、補充数を基準より少なくしないと在庫が余る可能性が高くなりますもんね

枝村様 今までは店舗単位でしか状況を把握できませんでした。総数で見ることになるため、余剰比率が低い店舗であっても、実際には特定の品番が大きく余っている可能性がありました。

今榮様 従来は感覚的な判断に頼っていた部分がありました。各店舗の在庫金額はモニタリングしていたものの、それらが本当に適正水準かどうかを定量的に判断する仕組みはありませんでした。そこを数字で可視化し把握できるようになったのは大きな進歩です。

ーー自動補充からFULL KAITENへ切り替える際に工数がかかったんじゃないかと思われる読者の方もいらっしゃるんじゃないかと思うんですが、いかがですか

今榮様 出荷作業の回数は増えましたが、もともと基準在庫の見直しは随時行っていたため、そこにFULL KAITENが置き換わったイメージです。したがって、大きな負担増になっていません。それ以上に、正確な補充が可能になり、メリットの方が大きいと感じています。

ECへ移動した商品が売れた割合が21pt上昇

ーー商品を売れる店舗に売れる量だけ適時に移動するオペレーションの成果が出ていると聞いております。具体的にどのように運用されたのでしょうか

グラニフ髙橋様

髙橋様 私は実店舗とECの間の在庫移動を主に担当していました。結果として、ECでの稼働率(在庫の移動先で実際に売れた率)が従来は52.6%だったのに対し、FULL KAITEN導入後は73.6%となり、確率が21ポイント改善しました。店舗→ECへの移動の質が向上したと実感しています。

また、店舗→ECの移動数量に関しても、以前は週あたり約5000点がベースでしたが、今では3000〜3500点前後で推移しています。そのため、店舗側の負担が小さくなっています。質が向上すると同時に量も削減できたことは、とても大きな成果だと考えています。

グラニフ今榮様

今榮様 お店のスタッフにとって接客が最優先であり、移動作業にかける時間はなるべく作りたくないのが本音です。そうした部分でも移動作業の負担が減った点は大きなメリットです。

髙橋様 また、ECで完売になった商品に対してお客様からリクエストをいただくことがあるのですが、リクエストされた商品を店舗からECへ取り寄せるアプローチも現在、太田さんと一緒に進めています。

ーー物流面でもコストが下がった等の検証はされていますか

髙橋様 はい、テスト店舗での導入時に店間移動にかかる配送コストや返品の配送費を大幅に削減することができました。今後はさらに減らせる余地があると考えており、店間移動の質を上げて、店舗の作業時間も減らしていきたいと考えます。

ーー成果を出せるようになるまでは、オペレーションを変えることに懸念や不安もあったと思うのですが

髙橋様 最初はやはり不安が大きかったです。これまで続けてきた業務を変えるには勇気が必要でしたので、まずは疑うところから始めました。当初は倉庫出荷と店間移動でFULL KAITENを試し、その後、実店舗→ECへの移動も活用してみました。

何度も検証を重ね、どのような運用フローが適切かを太田さんと打ち合わせを重ねた結果、徐々に不安は解消され、成果が数字として表れるようになって「導入して良かった」と実感できました。

ーー打ち合わせでどういう助言やすり合わせをしていったんですか

太田 あまり助言というスタンスではなくて、グラニフ様の立場に立って運用方法を一緒に考えさせていただきました。やはり〈倉庫出荷〉も〈店間移動〉も、まずはテスト店舗で試行してどんどん育てていこうという共通認識が取れていましたし、「まずはやってみよう」という精神を持ってくださっていたので、すごくやりやすかったです。

月曜中に指示出し完了で店舗の負担も軽減

ーーFULL KAITEN導入の前後で、定量的な成果以外に業務全般で大きく変化したことは何ですか

髙橋様 時間の使い方が大きく変わりました。私は適切な商品を適切な数量だけECの在庫にすることを目標に、独自で資料を作成し、1品ずつ選定していました。例えばTシャツや半袖シャツについて、毎週月曜の夕方から火曜昼頃まで、約5時間かけて当週の在庫調整が必要な品番の選定を行なっていた。それが今では、FULL KAITENを使うことで、品番の選定から店舗への指示出しまで1〜1.5時間で完了するようになりました。短縮できた3時間半は、資料作成や在庫分析ツールの活用に充てられています。

今榮様 店間移動においても時間の使い方が変わりました。以前は対象品番の指示が火曜日、遅いと水曜日になることもありましたが、今では月曜日中にすべて完了できています。その結果、店舗が接客に使える時間が増えます。

あとは倉庫に返品されてきた商品のばらし作業も早い時間で行えるようになりました。私たち以外にもプラスの効果が出ています。

ーー月曜のうちに済むというのは、1週間の業務フローに鑑みると効果は大きいですよね

枝村様 そうなんです。ずっと、月曜日中に動くということを実現したかったので、大きな進歩だと思っています。

ーーここまで太田の支援はいかがでしたか

枝村様 こちらのコメントに対して、無理難題もあったかもしれないですけど(笑)、嫌な顔ひとつせず対応いただいています。

髙橋様 間を置かずしっかり回答をいただけて、本当に助かっています。資料も分かりやすく、FULL KAITENについて社内で他のメンバーに説明できるレベルで理解を深められました。

今榮様 とても話しやすいなと思いました。会議中でも質問しやすい雰囲気を作っていただけました。行動で応えようと思える雰囲気を作ってくださったのが一番印象に残っています

ーー今後、FULL KAITENを活用してどのようなことに取り組みたいですか

髙橋様  新たに今年のSSシーズンからFULL KAITENの売価変更や在庫分析のツールも導入しました。倉庫出荷や店間移動に加えて、価格変更に対して正確性を高め、粗利の確保につなげていきたいと考えています。

枝村様 ブランドとしては、最終的に粗利益を最大化し、できるだけ値引き販売を行わない方向を目指しています。そのためにも、適正枚数を適所に配置することが重要です。FULL KAITENを通じてそれが実現できるのであれば、積極的に相談しながら取り組んでいきたいと思っています。

今榮様 当社は業態の異なる店舗が多いため、店舗ごとの特性とFULL KAITENのシステムを組み合わせることで、倉庫出荷の質がさらに高められると考えています。そして、本部スタッフだけでなく、例えば数店舗を統括するエリア責任者も分析ツールを使用することでより活用の幅が広がるのではと思っています。

ーーそれが実現すると、もっと機動的な判断に繋がりそうですね。今榮様がおっしゃっていた店舗特性を加味した在庫配分というものに、エリア責任者の方にも関わっていただくといいのかなと感じました