出荷数量20%抑制でも売上は前年水準キープ! 店舗在庫を14%削減した倉庫出荷の極意
株式会社ピーチ・ジョン
課題
- 外部ECや実店舗の売上が伸びる中で倉庫在庫に欠品が発生。本来売上を伸ばすべき自社ECに在庫が十分に配分されなくなっていた
- ディストリビューター業務(DB業務)が属人化。在庫の中身まで見ることができていなかった
解決策
- FULL KAITEN〈倉庫出荷〉が日々の売上データから消化スピードを予測して算出した数値を、実店舗への出荷数量に採用
定量成果
- 実店舗への出荷数量が20%抑制され、店舗在庫は前年比14%削減された
- なおかつ売上高は前年と同水準を維持
女性用下着の通販の“さきがけ”的存在だった株式会社ピーチ・ジョン様も会社設立から31年を数え、販路は自社ECに加え実店舗や外部ECモールに広がっています。そうした中で、販売チャネルごとの在庫の偏りが生じ、欠品が生じる一方で倉庫への返品も増えるという課題を抱えていらっしゃいました。
そこでピーチ・ジョン様は、FULL KAITEN〈倉庫出荷〉の活用を通して各販路への商品出荷の数量最適化に取り組み、出荷量を20%抑制した一方で売上は前年の水準を維持し、店舗在庫を14%削減するという成果を出されました。
本稿では、MD部長の松井様とMD部企画MD課の牧野様に、成果がでた背景や今後の抱負について伺いました。

※本記事に含まれる情報は2025年7月下旬時点のものです。
勇気をもって欠品の不安を克服
ーー在庫全般について、御社ではどのような課題やお悩みをお持ちでしたか
松井様 当社には主なチャネルが自社ECと店舗、外部ECサイトの3つあるのですが、ここ2年くらいで外部ECがすごく伸びてきたんですよ。それに伴って倉庫在庫の欠品が目立つようになってきていました。逆に店舗から倉庫に戻ってくる在庫の数も多くなっていて、それが作業面とコスト面で負担になり、社内で課題になっていました。
そうした中、DB業務がどうしても属人化してしまい、なかなか在庫の中身まで見えなくて。かつ定量的な振り返りもできていなかったので、在庫がきちんと運用されているのかどうかすらもよく分からなかったんです。そこを明らかにできればいいなと考えていました
ーー在庫の偏在に悩んでおられたわけですね。そういう中で、FULL KAITENをどのように業務に落とし込んで使っていき、どういうふうに課題を解決していけそうだとイメージされましたか
松井様 大きかったのは、属人化してしまっているDB業務などの作業を平準化し、見える化できそうだと思えたことですね。あとは、当社は扱う商材的に生きているSKUだけでも1万を超えている状況なので、販売チャネルが広がる中で人力で在庫を見ることは本当に限界でした。そこにシステムを活用できれば、今までやりきれなかった部分まで手が回るだろうなと。例えば欠品を減少させられれば、売上の増加につながりますし

ーー実際に導入して活用されてみて、まずどんな業務がどういう風に変わったのでしょうか
牧野様 当社はもともと売り場ごとに各SKUに対して在庫の数を設定し、その設定数に基づいて自動発注をかける運用をしていました(※編注:1個売れれば1個補充し、3個売れれば3個補充する)。その設定数をFULL KAITENのデータに合わせて運用することになりました。
これは非常に大きな変更でした。今までは、実際に売れた数量、つまり実績に基づいて設定数を決めていたんですよ。売れている商品はどんどん設定数が上がってきますし、逆に売れなかったら設定を下げます。ただ、普段の業務の中では「過去に売れたことのある商品だから、きっとまた同じように売れるだろう」と考え、売り逃し(機会損失)の方を避けるために設定数を下げないという状態が慢性化していました
ーー販売のダウントレンドに差しかかる兆候が少しでも見えたら、すぐさま設定数を減らさないといけないのに、そこに気づけず、結果として在庫過剰の一因になっていたわけですね
牧野様 そうです。設定数を下げる勇気というんですかね、売り逃しが怖いがゆえに設定数をそのままにしてしまい、店頭在庫の余剰につながってしまうので。その点、FULL KAITENでは未来に必要な数量だけ、店頭に在庫を持たせることになりますから、結果として出荷数を減らすことができたのは大きな効果でした
ーーそういうSKUが多く存在していたのですね
牧野様 はい。 それこそ人力では把握できないくらい。全部見切るのは本当に時間がかかっていました。ただ、最初FULL KAITENのデータを見た時に、全体的に少ないなあという印象が強かったんですよ。なので少し(欠品しないかどうか)不安ではあったんですけど、やってみないと分からないですから、試行してみました

内舘(フルカイテン_カスタマーサクセス担当) 他社さまでのご支援でも、FULL KAITEN導入時に「これまで自分たちがやってきた数値と違う」と、FULL KAITENを信じて実行できないケースがあります。ここに成果を出せるか出せないかを左右する1つの大きなハードルがありますが、ピーチ・ジョン様の場合、「まずはやってみよう!」という実行力があったからこそ、このような成果につながったと考えています。
ーー松井さんは上長として結構、不安を感じてらしたんじゃないですか
松井様 私がというよりは、店舗側が不安がっていました。そこは事前に「こういう運用に変えますよ」と、きちんと店舗へ説明させてもらったのと、「何か気になることがあったら、すぐ上げてもらえれば対応します」と周知したうえで実行しました。実行してから見えてきた課題もあるため、それらは現在取り組み中です
ーー2025年3月末からゴールデンウィークまでの6週間で前述の運用を行った結果をまとめられましたね
松井様 はい、一部の売上規模が似た店舗を対象に、設定数にFULL KAITENを使う店舗10店と使わない店舗10店とでABテストを実施しました。使った店舗では出荷が抑制されていて、欠品率はFULL KAITENを使わなかった店舗と変わりませんでした。売上への負のインパクト無しで在庫を減らすことができた形です。
出荷量自体はFULL KAITENを使った店舗が使わなかった店舗よりも20%抑制され、在庫は前年比で14%くらい減り、売上と欠品は前年とほぼ同じでした
店舗部隊には懇切丁寧に意義を説明
ーーFULL KAITEN使用店舗では在庫効率が明らかに良くなっているということですね。一方で、何か課題感はありましたか
牧野様 今のところ特に売り逃しはしていないのですが、2カ所に出している商品などは、どうしても売り場(店)の数とそのSKUの売上数が釣り合わないので、FULL KAITENが出す売上に合わせた出荷量にすると店頭が薄く見えて見栄えが良くないから在庫を増やしてほしい、という反応があったりはしましたね
ーーそこは確かに、VMDの観点で悩みどころではありますね
松井様 そうなんですよ。これをきっかけに、店舗ごとにきちんと在庫の予算を設けて、持てる量が減ってしまう店舗に関してはディスプレイについて話し合っていきたいという話は店舗側のトップに伝えています。この下期(2025年10月〜)からできたらいいなと考えています

ーー少なくとも、FULL KAITENを活用すれば欠品を出さずに出荷と在庫を2割くらい減らせるということがファクトとして分かったわけですから、今後店舗で色々と施策を作り込んでいく場合における拠り所・安心感が得られたんじゃないかと思うのですが
松井様 そうですね。これから少しずつ社内全体で意識を変えていかないと、と思っています。というのも、店舗の評価指標が基本は売上ベースなので、お店として売上を取りこぼさないために在庫を多く持ちたいと思うのは自然なことだと思うんです。売上を取らないとどうしようもないという部分もありますし。
他方、私たちは昨年度までは商品部の中の企画MD課で、仕入れや品質管理などと同じ部に所属していたのですが、今年度(2026年3月期)からMD部として独立したんですよ。MD部隊を独立させることで社内的に利益重視、在庫重視という考え方で推進力を持って課題解決せよという使命を負った組織改編だと受け止めています
ーーそうした使命に沿ってFULL KAITENを契約していただいたと理解しました。御社社長の西澤様はFULL KAITENのどういった点に価値を見出してくださったんでしょうか
松井様 店舗への出荷数が抑制されることで、自社ECで販売するための倉庫在庫を確保できます。その結果、自社ECの売上拡大が見込めるという点が、一番の大きな価値でした。これを社内説明した際に、「それなら投資して余りあるリターンがありそうだから、やった方がいいね」という結論になりました。
ここ何年も、自社ECの売上を拡大するというのが経営の最優先課題になっていたので、意外に店舗に在庫が食われてしまって自社ECが欠品で売り逃していることが可視化されたインパクトは大きかったです。また、倉庫回収が多い点も課題なのですが、こちらも併せて改善が見込めました
本当に必要な在庫だけで店舗運用を
ーー出荷を抑制して店頭在庫が減ると、店舗からはどうしても欠品への不安の声が上がりそうです
松井様 私たちからは「在庫が減るのは売れていない商品のはずですよ」ということや「売れ筋はちゃんと在庫もあるから大丈夫ですよ」ということは引き続き丁寧に説明していきます
牧野様 そもそも、今までそこまで細かく欠品率と出荷数の関係などを見きれていなくて、欠品したかしていないかの判断も正直きちんとできていませんでした。その点、FULL KAITENを導入してデータを出してもらって初めて欠品率が何%くらいかというのが見えてきました。
あと、お客様によっては、展示で出してある商品ではなく、開けてない新品の商品をバックヤードから出してほしいという方もいらっしゃるので、売上の数と実際に置いておきたいの数に違いが出てくるという問題は常にありますね。下着ならではの課題ですが、どう対応していくかは少し悩ましいところではあります
※FULL KAITEN〈倉庫出荷〉の検証指標である「欠品率」とは、倉庫に在庫があるものの店頭で欠品してしまった(出荷できたはずなのに、出荷が不足したまたは漏れてしてしまった)商品の割合を示す「投入可欠品率」を指しています。

ーー今後、FULL KAITENの対象店舗を10店から32店へ拡大して運用していくうえで、どういったところを変革していきたいですか
松井様 現状はまだ色々と最低数の下限などを入れながら運用していますが、最終的には本当に必要な在庫だけで運用できるようにしたいなと思っているんです。ただ、今すぐお店のディスプレイを変えるのも難しいので、まずは店舗ごとの在庫予算を設定したり、品揃えを精査したりした上で、店舗側も「内装を変えるのもやぶさかではないよ」と言ってくれているので、相談しながらバランスを取りつつ進めたいと考えています
ーーこれまでの弊社および内舘の支援で印象に残っていることはありますか
牧野様 在庫も売上も大きいある店舗について、それまでは欠品がある店だという認識はあまりなかったのですが、内舘さんにデータを出してもらったら、意外と欠品していたことが分かったのが目から鱗でした。お店からもそういう声は上がっていなかったので。見えているようで見えていないことが本当にいっぱいあったんだなと。今までなんとなく見えていると感じていたことが、きちんと数字で出てきたというところは私たちの業務にとってすごく大きかったなと思っています
ーー今後の目標をお願いします
松井様 私たちがMD部として独立したのは、在庫の運用を含めてきちんとMD(マーチャンダイジング)を実践せよという会社からのメッセージだと思っています。ちょうどFULL KAITENを導入して新しいことに取り組んでいるところでもあるので、具体的に返品が減りましたとか、倉庫出荷が目に見えて減りましたとか、売上に寄与しましたというふうに結果につなげたいと思っています
牧野様 今後の運用を拡大していくうえでは、いかに店舗側の理解を得られるかが大きな要素だと思っています。地道に少しずつバランスを取りながら、少ない在庫で店頭の見栄えも落とすことなく調整しながら、うまく回せていけるようになればいいなと考えています