在庫消化率とは?悪くなる原因から改善方法まで事例を交えて解説
在庫消化率は在庫を管理する上での重要な指標ですが、消化率が思うように上がらずお困りの企業も多いのではないでしょうか。本記事では、基本を踏まえた上で、消化率が悪くなってしまう原因から改善方法までをわかりやすく解説します。
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在庫消化率とは?
在庫消化率とは、仕入れ先から入荷した在庫数量のうち、一定期間に販売した在庫数量の割合を指します。在庫消化率は以下の式で計算することができます。
在庫消化率=販売した商品の数量 ÷ 仕入れた商品の数量
例えば、100個の同じ商品を仕入れて、そのうち80個売り上げた場合、消化率は80%になります。
在庫消化率を把握することは、在庫不足や在庫過多などのリスクを下げることにつながるため、とても重要な指標になります。
例えば、在庫消化率が目標より高い場合は、追加発注を行うことで機会損失を避けることができます。一方で、在庫消化率が目標より低い場合は、販促の強化や値引き等を行うことで、売れ残りのリスクを避けることができます。
このように、在庫消化率を指標として追うことで、状況に応じて適切な施策を実行することができ、最終的な利益を伸ばすことにつながります。
在庫消化率が上がらない原因
しかし、思うように商品が売れずに消化率が低迷している、という課題を抱える企業も多いのではないでしょうか。
在庫消化率が低いまま放置してしまうと、在庫が多くなりすぎてしまい、在庫の管理費などの無駄なコストの発生や商品の劣化、キャッシュフローの悪化など、経営上のリスクになる問題を引き起こします。
では、なぜ在庫消化率が上がらないのでしょうか?
原因としては主に以下の2点が挙げられます。
- 売上を見込んで商品を仕入れすぎている
- SKUが多く、全在庫の管理・分析ができていない
1点目は、売上を見込んで商品を仕入れすぎているという点です。
多くの小売企業では、欠品を防ぐために必要在庫数よりも多く発注する傾向があります。しかし、在庫消化率の式からもわかるように、販売できる数量(顧客の需要量)に対して仕入れの数が多すぎてしまうと、消化率は自然と低くなってしまいます。
2点目は、SKUが多く、全在庫の管理・分析ができていないという点です。
在庫消化率を上げるには、仕入れた商品をなるべく売り切ることができるように、販売数を伸ばす必要があります。つまり、在庫状況を分析した上で、それぞれの商品に対して適切な施策を実行することが重要になります。
しかし、SKUが多すぎて、全ての在庫の状況を見切れていない場合、どの在庫にどのような施策を打つべきであるのかを判断できないことが多いです。その結果、本来の商品のポテンシャルに反して販売数を伸ばすことができず、消化率が低くなってしまいます。
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在庫を効率よく消化するための2ステップ
以上を踏まえると、在庫消化を高く保つためには、適切な量を仕入れることと、在庫に対して適切な施策を実行することが重要になります。
しかし、仕入れを適正化することは現実的にかなり難しいです。なぜなら、新商品がどれだけ売れるかは、競合他者の販売状況や天候、SNSでの反応などさまざまな要因が関わってくるためです。
そのため、在庫を効率的に消化するには、在庫の管理・分析を徹底し、在庫の状況に応じた施策を実行することが必要になります。
以下では、その具体的な方法を2つのステップに分けて解説します。
1. 商品ライフサイクルに応じて消化率目標を設定する
まず、消化率の良し悪しを判断するためには、基準となる目標値が必要になります。
消化率の目標値は商品ライフサイクルに応じて設定すると良いでしょう。
商品ライフサイクルとは、商品の投入から完売までのプロセスを指し、以下の5つのフェーズに分けられます。
- シーズンイン :商品立ち上げ期間。売上は低い
- ピークイン :売上が大きく伸長し、売場拡大期間
- ピーク :最も売上に貢献する期間
- ピークアウト :売上が大きく下降し、売場縮小期間
- シーズンアウト:商品売り切り期間。売上は低い
上の図からわかるように、ピークイン〜ピークアウトでの売上の伸長に伴い、消化率はぐっと上がる一方で、ピークアウト以降は売上も大きく下降するため、消化率は伸び悩みます。そのため、ピークアウトまでに8割以上の消化率を達成することが理想的です。
具体的には、フェーズごとに以下のように消化率目標が設定できます。さらに、フェーズに応じて重点施策を定義することで、より効果的に利益を創出できるでしょう。
2. 在庫状況に応じて施策を実行する
消化率目標を設定したら、在庫消化の経過に応じて適切な施策を実行しましょう。
以下の図では、縦軸に「売上ランク」、横軸に「消化進捗」、原点に「消化目標」を設定し、各セグメントで実施するべき施策の一例をマッピングしています。
この図では、左側には消化進捗が目標よりも早い商品、右側には消化進捗が目標より遅い商品がマッピングされています。さらに、売上上位品は上に、下位品は下に配置されています。
例えば、図の左上は消化が予定より早く、かつ売上上位品であるため、欠品のリスクがあります。したがって、追加発注を行うのが効果的です。一方、図の右上は、売上上位品ではあるものの、消化が予定より滞っている商品群です。この場合は、値引きをせずとも露出を強化することで販売を促進できるでしょう。
このように、在庫の持つ現在地を分析し、適切な施策を行うことで消化率の伸長につなげることができます。
VMD変更で消化状況を改善した事例
実際に、あるレディースアパレル企業は上記の2ステップで在庫分析を行い、投入から週数が経過した商品をVMDを変更して再度打ち出した結果、在庫週数が11.8週から7.8週まで短縮し、さらに売上金額前週比141.4%を達成しました。
こちらの企業では、販売強化のタイミングを見誤り、プロパーで販売できる商品も値下げしてしまうという課題を抱えていました。
しかし、先ほど解説したステップで在庫分析を行い、プロパーで販売できるポテンシャルがある商品を選定できるようになったことで、値引きをせずに露出強化によって販売数を伸長することに成功し、大きな成果を創出しました。
FULL KAITENで在庫状況に応じた施策を実現
上の章で、縦軸に売上ランク、横軸に消化進捗を取った4章限を用いた在庫分析について解説しましたが、FULL KAITEN〈在庫分析〉では、在庫データを活用してAIで予測分析を行い、完売予測日と売上貢献度という2つの軸から在庫の評価を以下のように4つに分けることができます。
※完売予測日:在庫消化のスピードに関する予測値(各商品が何月何日に売り切れるかをAIで予測)
※売上貢献度:売上貢献の度合いに関する予測値(各商品の未来の売上への貢献度合いをAIで予測)
膨大な量のSKUの在庫管理・分析を瞬時に行うことができ、在庫状況に応じた施策の実行が可能になります。
まとめ
- 在庫消化率とは、消化率とは、仕入れ先から入荷した在庫数量のうち、一定期間に販売した在庫数量の割合を指す
- 在庫消化率が上がらない原因は、
- 売上を見込んで商品を仕入れすぎている
- SKUが多く、全在庫の管理・分析ができていない
- 在庫を効率よく消化するための2ステップ
- 商品ライフサイクルに応じて消化率目標を設定する
- 在庫状況に応じて施策を実行する