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インフレで仕入れ原価&在庫額が急上昇/大手アパレル2023年3〜5月決算まとめ

大手小売企業の2023年3〜5月期(2023年度第1四半期)決算が出そろいました。本記事では株式上場するアパレル主要16社を対象に、様々な在庫関連の指標から決算を読み解いてみたいと思います。新型コロナウイルス規制の緩和や値上げ効果で増収増益の会社が多く、在庫高も増えていますが、粗利率や在庫効率では明暗が分かれました。

※ファーストリテイリング、良品計画、ライトオンは例外的に8月期決算、ハニーズホールディングスは5月期決算ですが、いずれも人為的に3〜5月の3ヵ月を抽出しています。

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ファストリと良品計画が20%超の増収、オンワードHDは営業益2.6倍

まずは売上高、営業利益、当期純利益といった損益指標を見てみます(表1)。売上高はライトオン、マックハウス、パレモ・ホールディングス以外の13社が前期を上回りました。

ファーストリテイリングと良品計画は前年比20%を超える増収でした。ファーストリテイリングは中国をはじめとして海外ユニクロ事業が大幅な増収増益となったことが寄与しました。ジーユー事業もヒット商品が生まれたこと等により21.7%の増収となりました。

良品計画も前年はゼロコロナ政策で苦戦した中国での売上が大きく回復しました。国内では1月から一部商品を値上げした効果がようやく表れており、営業利益は前年比で2.1倍となるなど採算が改善してきています。

次に営業利益はしまむら、西松屋チェーン、ライトオン、マックハウスを除いて12社が増益または黒字転換となりました。中でもオンワードホールディングスは前年比2.6倍、良品計画と三陽商会は2倍と大きく回復しています。

オンワードホールディングスはここ2、3年の構造改革が大幅増益という結果につながっています。不採算店舗の閉鎖と同時にDXを進めており、日経電子版の記事(7月6日配信)によれば、ECで商品を店頭に取り寄せ試着できる「クリック&トライ」というサービスが支持を得ているそうです。23年5月末の時点で全店舗の51%に導入しており、今3〜5月期の導入店舗における売上高は2019年の同期比で13%増えたとのことです。

一方、しまむらと西松屋チェーンという低価格をウリにする2社は円安や原材料高によるコスト増の影響が出ました。しまむらは主力の「ファッションセンターしまむら」既存店の客単価が約5%上昇しましたが、コスト増を吸収しきれませんでした。

粗利率は明暗、ファストリでさえも昨対比悪化

次の表2は、各社の2023年3〜5月における仕入れ額(発注額)と粗利率および粗利率の前年比、2023年5月末における在庫高の対前年増減率を一覧にしています。

注目すべきは5月末の在庫高です。パレモ・ホールディングスとコックス以外の14社が前年よりも増やしています。各社とも円安と原材料高の影響を受けており、在庫高の増加は仕入れ(発注)数量の増加に加え仕入れ単価の上昇も要因となっているとみられます。

その結果、粗利率は前年よりも向上した会社と悪化した会社に二分されました。ファーストリテイリングは0.88ポイント低下して53.8%となりました。円安による原価率の上昇に加え、値引き販売により昨季からの在庫の削減を進めた結果とのことです。

一方、オンワードホールディングスや良品計画は、値引き抑制の継続や値上げの効果が出てそれぞれ2.58ポイント、2.13ポイント上昇しました。

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在庫効率は9社がコロナ禍前より悪化

次のグラフは、各社の3〜5月期のGMROI(商品投下資本粗利益率)について、2019~2023年の推移を示したものです。2019年3〜5月を1とした指数でコロナ禍前後を比較しています。

※GMROI:どれだけ少ない在庫で多くの粗利益を得たかを表す指標
GMROIについて詳しくはこちら>

※三陽商会の2023年は収益認識基準の変更により単純比較できず

2023年3~5月のGMROIは16社中10社が前年同期より悪化しました。13社が増収、12社が営業増益となったのとは対照的です。

コロナ禍前の2019年との比較で見ると、2023年のGMROIが2019年の水準を上回っている会社は次の7社にとどまります。

  • ファーストリテイリング
  • しまむら
  • オンワードホールディングス
  • ハニーズホールディングス
  • 三陽商会
  • ナルミヤ・インターナショナル
  • コックス

上記以外の9社のGMROI悪化の原因は次の2つが考えられます。

  • 円安と原材料高で原価が上がったが、売価(上代)を十分に上げられなかった
  • 売上増加ペースよりも在庫の増加ペースが大きい

各社とも仕入れを大きく増やし、5月末の在庫高も増えている状況ですから、在庫を効率よく利益と現金に変える販売力を付けなければ、過剰在庫と値引き頼み、在庫評価減というかつての悪循環に戻りかねません。

まとめ

以下、本稿のまとめです。

  • 新型コロナウイルス規制の緩和や値上げ効果で増収増益の会社が多い
  • 仕入れ額(発注額)と在庫高を大きく増やした会社が多数
  • GMROIがコロナ禍前を上回った会社は16社中7社のみ
  • 円安と原材料高で仕入れ原価が上がり、売価に転嫁し切れていない状況
  • 在庫を効率よく粗利益に変えてキャッシュを生み出す力が必須に

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