三陽商会、ワールド、AOKI、ユナイテッドアローズ…業界大手が「在庫削減」へ。大量生産・販売モデルからIEM(在庫実行管理)モデルへの転換を
2020年5月25日、野村総合研究所より、新型コロナウイルス感染拡大による消費者の行動変容がICTメディア・サービス産業に及ぼすインパクトと対応策が発表されました。
記事によると、2020年4月の売上が前年同月比で8割以上(!)減った企業もあるとのこと。
小売企業の業績悪化の要因として、店舗休業の他に、「嗜好品に位置づけられる衣料品への支出意欲が低下したことが大きい」と述べられています。特に、外出自粛などにより在宅ワークが広まったことからか、スーツ、フォーマル、革靴などのオフィスウェアを取り扱う企業は大打撃を受けているとのことでした。
新型コロナ禍のような有事の際は、外出自粛や収入面での不安による家計の防衛意識から「嗜好品」とされる衣料品は支出抑制の対象となりやすく、実際、2011年の震災時でも、嗜好品とされる衣料品への支出の抑制が確認されているのだそうです。
一方で、従来の小売企業は大量生産・大量販売モデルで成長してきました。
言い換えれば、商品が売れ残ることを前提に、実際の需要を大幅に超える衣料品を生産・販売してきたということです。
プロパー価格(正価)で売れなかった商品はクリアランスセールなどで値引きをして販売されますが、それでも全てを売り切ることはできないので「バッタ屋」などの在庫処分業者に引き渡すか、滞留在庫となりコストとして企業の経営を圧迫してきました。
しかも、大量生産・販売モデルを継続させるためには多数の店舗や在庫を抱える必要があり、企業は高いリスクを背負った状態でした。
それでも消費力が右肩上がりな時代であれば、持続的に成長できていたことでしょう。しかし、今回のコロナ禍では、短期間に需要が消失したことでそのリスクが顕在化し、続々と小売企業の経営破綻を招きました。
3.11のような震災や、新型コロナ感染拡大のような一時的な災害は今後も起きるでしょう。また、それだけでなく長期的な話として、今後10年かけて、九州の人口と同程度の人口が消滅していくと言われています。
消費力と需要が減衰していく中、小売企業は在庫に関する考え方を転換する必要があります。実際に、業界大手は続々と「在庫削減」を主軸に据えた戦略を表明しています。
ワールドは今秋仕入れを3割減。小売企業では生産量・仕入れ量を削減するのがトレンドに。
2020年6月14付の日経新聞では、「過剰在庫の山/企業の重荷 ワールドは今秋仕入れを3割減」という見出しが踊りました。
新型コロナウィルスの影響で、2020年の春夏物を売り逃した小売各社は、財務リスクを抑えるため、秋冬物の仕入れ量を減少させるとのこと。
2020年6月14付の日経新聞より
新型コロナウィルスの流行をきっかけに、今後は需要を無視した大量生産・大量仕入れは経営破綻を招くというのが業界内共通の認識のようです。
実際に、三陽商会をはじめとした業界大手の企業から、「在庫削減を重視している」との宣言も相次いでいます。
過去のブログ、滞留在庫(不良在庫)の削減を!小売企業が10年先も生き残るための在庫の考え方 を参照
また、在庫削減のため、具体的な対策を取っている企業も。
AOKI スーツやワイシャツなどをネット通販で最大7割引
2020年6月14付の日経新聞より
ユナイテッドアローズ ネット通販で最大7割引で衣料品を販売
アサヒビール 酒販店や外食店から在庫のビールを回収
こういった値引きセールは在庫削減の常套手段ですが、同時に利益率の悪化は免れません。
やはり根本的には大量生産・仕入れを抑え、「今ある在庫」を活かして利益を最大化していく他ないのです。
クラウドサービス「FULL KAITEN」は一貫して、今ある在庫にメスを入れることで、滞留在庫問題を解消し、売上を最大化する手法を主張してきました。この手法をとれば、過剰な発注や、無闇に商品展開(SKU数)を増やす必要もなくなるので、在庫リスクを最小限に抑えることができます。
まさに、これからの小売業界の情勢にマッチしたクラウドサービスなのです。
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