事例インタビュー

発注を本部に一元化し自動化。出荷量3割削減・売上は前年比7%増の改革の足跡

ファイテン株式会社

スポーツ用品

小売
実店舗
EC

課題

  • 店長や店舗スタッフの感覚に頼った手動発注が常態化し、発注ノウハウが属人化していた
  • 店単位では1カ月以上動かない「不動在庫」が全在庫の7割に上った一方、未発注による欠品や、店舗間で品揃えの偏りが発生していた
  • 店舗で在庫確認や発注の事務作業に時間を取られ、本来注力すべき店頭での接客時間が圧迫されていた

解決策

  • 店舗ごとに個別に行っていた手動発注を改め、FULL KAITEN〈倉庫出荷〉を活用した「本部主導」の自動補充・配分へ運用を一元化

定量成果

  • 先行導入した24店舗で約8カ月間の実証において、対象店舗の売上高が前年同期比7%増を記録(非対象店舗では見られなかった顕著な伸び)
  • 約150店舗への全店展開後、3カ月で全体出荷量を約30%削減
  • 店舗側で発注事務作業の工数が削減され、接客に集中できる環境が整った

ファイテン株式会社様は、ファイテンショップの店舗展開を開始して以来、約25年の小売の歴史を持ち、現在全国に約150店舗を展開しています。従来は各店舗の店長やスタッフの「感覚値」に基づく手動発注が行われていて、長年にわたり本部主導での在庫コントロールや適正な棚割りの維持が難しく、不動在庫の増大や店舗間の品揃えの偏りが大きな課題となっていました。この課題を解消するため「FULL KAITEN〈倉庫出荷〉」を導入。先行24店舗でのスモール検証を経て、2026年6月より全約150店舗へ運用を拡大しました。その結果、スモール検証での売上昨対比7%増に続き、全店展開後も出荷量を約30%削減しながら機会損失も減少させました。

本稿では、同社仕入情報管理部情報管理チームのチーム長、本郷様と同チームの大塚様にお話を伺いました。

※本記事に含まれる情報は2026年9月下旬時点のものです。

データに基づく出荷を定着させたい

――皆様の簡単な自己紹介をお願いします。

本郷様  仕入情報管理部の情報管理チームのチーム長として、各部署におけるデータ活用の仕組み改善や営業サイドが提案などに使える資料の作成などを統括しています。当チームは共通した元データをベースに各事業部に情報を出していくことを目的に立ち上がっています。

(本郷様)

大塚様 本郷と同じく情報管理チームで、FULL KAITEN〈倉庫出荷〉を活用してデータを集計し、営業側に提案をしています。

(大塚様)

――FULL KAITEN導入前は、小売店舗(ショップ)への出荷業務はどのように実行されていましたか。

大塚様 従来はアナログ、手動でした。ファイテンショップで店長やスタッフが感覚値で発注を行うのが基本になっていました。

本郷様  店舗のシステムで「発注勧告」を出せる仕組みにはなっていました。ただ、発注点や発注単位をリアルタイムで店舗の希望に反映させるのがなかなか難しく、店長やスタッフが感覚値を基に自分で考えて発注する状態でしたね。というのも、設定が難しい面もあり、希望があれば私たち本部も変更はしていたんですが、全店での定着には至りませんでした。その結果、発注ノウハウが属人化していました。

発注量の根拠が人の判断や感覚値になっていくと、販売現場としてはどうしても在庫を持ちたがるというか、在庫が無いと不安になってしまうんですよね。「売れるだろう」という感覚の発注になるので、稼働しない在庫が増えていき、「不動在庫」が多くなっていました。逆に、在庫が無いことに気づかない商品は発注しませんから、それによる在庫の偏りもありましたね。

大塚様 本部の営業も棚割りや販売方針を店舗に任せて、フランチャイズ(FC)に卸しているだけのような状態だったのかもしれません。なので、同じファイテンショップの看板を掲げているのにA店とB店で品揃えの差が激しいというようなことが起きていました。

例えば本部側で新商品を5,000個用意して、店舗に「初回投入数はいくつ欲しいですか」とヒアリングし、言われた数量を出すだけということもありました。このため、初回投入で2,000個しか出ず、追加発注も店舗任せなので消化率が5〜6割で止まり、在庫が残る状態が起きていました。

――営業として「このシーズンにこういう狙いで作った商品をこう売りたい」という意思が店舗側に伝わりにくかったのでしょうか。

大塚様 季節ものの新商品も「多少売れ残っても来年また売ればいい」という感覚で、でも翌年にはまた新商品を出しますから、不動在庫(1カ月以上動かない商品在庫)が増えてしまうという構図でした。

本郷様 これはFC店、直営店どちらにも同じ課題がありました。本部主導で自動補充せず、店舗が欲しい分だけ発注する形の弊害だったと思います。当然ながら発注には少なからず作業時間が発生します。やはり店頭ではお客様の接客に時間を割いてほしいので、そうした事務作業のロスは無くしていきたいという思いもありました。

――貴社商品のブランド力の高さが出荷・補充面では裏目に出ていたということかもしれませんね。

大塚様 当社が小売店の展開を始めて25年ほど経ちます。2002年頃のネックレスブームで急激にFC店舗が増えましたが、FCのひな型の整備が不十分なまま一気にオーナーさんたちが開業していったという歴史があります。オーナーさんの自由度が高く、私たち本部側のコントロールが弱い体質が20年以上続いてしまっていました。

本郷様 店舗側は「お客様がこう言っているんだから」「この商品が売れているんだから」ということで発注をかけるわけですが、それらがデータに基づいておらず感覚値だったんですね。店頭やバックヤードの現場を見て、在庫の少ないものをパッと見ながら感覚で発注するのが基本になっていたので、そうした長年の課題を解決するため、FULL KAITEN〈倉庫出荷〉を導入することになりました。

他プロダクトとの拡張性に可能性

――導入を検討される過程で、他社のシステムやツールも俎上に上がったのではないかと思います。その中でFULL KAITENに決められたポイントは何だったのでしょうか。

本郷様 AIが実装されていて、且つFULL KAITEN〈店間移動〉など在庫補充系の他プロダクトがあり、〈倉庫出荷〉との関係性が担保されている点ですね。店舗への出荷の課題が解決されたら、次は課題が別のことに移り変わるはずで、「じゃあ次は他プロダクトでこういうことができる」というふうに、小売オペレーション全体が広くカバーされているのがやっぱり大きいと思いますね。

あと、クラウドシステムでありながら当社の希望である程度カスタマイズ対応していただける点も魅力でした。

大塚様 前述のとおり既存システムでは在庫数が一定数を下回ったら補充するという仕組みが今もあるんですが、それだと実際の売れ行き動向に応じてこまめに人力で調整しないといけません。これに対してAIだと売上予測をして今後どれぐらい売れるかを判断してくれます。既存システムの発注勧告では10個だったところ、FULL KAITENは15個に引き上げるなど、AI独自の調整がはたらくのが導入の決断要素になりましたね。

本郷様 予測ってすごく難しいじゃないですか。しかも、人が予測したうえで全SKU単位で調整するというのは、もう無理だと思ったので。AIの一定の基準で出荷量を整えるということが、とても大事になってくると思って導入を決めました。

――FULL KAITENを活用し始めて、どんな変化が感じられましたか。

本郷様 まず、店舗で作業していた部分を本部一括で担うように変えましたから「発注の手間がなくなって助かりました」という声を実際いただいています。店舗からすれば仕入れの手法が変わるわけですから色々な意見がありましたが、やり方が変わることに対する反発はごく一部で、助かったという声が多いですね。

また、物流センターの作業効率を上げる目的でもFULL KAITENを導入したんですが、出荷方法を変えることで物流側の運用も以前よりスムーズに回るようになったと思います。というのも、店舗主導だと企画(イベント)の直前などに出荷の山がドンと来てしまうんですよね。そうなると、物流センターのキャパシティーをオーバーしてしまいます。

その点、FULL KAITENで出荷のコントロールができるようになったことで、企画を見越して前もって徐々に出荷量を増やすというような調整ができるようになりました。この結果、全社的な効率は上がってきたなと感じています。

――売上や不動在庫比率のようなKPIはどういった改善がありましたか。

本郷様 かなりいい感じで在庫が動いています。不動在庫の割合や欠品率は明らかに下がっています。

正直なところ、FULL KAITENを導入した当初は、全体的に在庫が増えることは覚悟していました。いったん在庫は増えるということです。というのも、導入に際して店舗が「これだけは最低限必要だ」という最低在庫数を上げられるようにしたんですね。なので在庫は以前より数%増えています。一方で、欠品率は下がり、1回当たりの出荷量は減っています。つまり、売れない商品の在庫が減ったという結果に繋がっているので、全体的には私たちが想定していたよりも早く効果が出ていると思いますね。

大塚様 昨秋から今年(2026年)5月まで、スモールスタートで一部の24店舗で導入しました。それらの店舗の売上高は前年同期から7%増えました。しっかりと売れるものを投入するという形を取れるようになったから売上も上がってきたんだなっていうのを実感できましたね。

本郷様 それを大塚から聞いた時、「そんな短期間で結果が出るんだ」と驚きましたよ。FULL KAITENに本当に必要な商品をきちんと計算して出してもらっているんだなと実感しました。店舗側からは最初のうちは「欲しい商品が入ってこず、要らない商品が入荷してくる」という意見も寄せられました。でも売上が昨対比で伸長したことで、「売れるという実績があるから出荷しているんですよ」という点を理解してもらえるようになりました。

永田(フルカイテン サプライチェーンコンサルタント) ファイテン様がFULL KAITENを全店舗(約150店)に導入されたのは今年6月からなんですが、6月と比較して全店で機会損失も下がっていますし1回当たりの出荷量も大幅に減っています。その結果、全体の出荷量は導入前よりも約30%削減され、過剰配分と無駄な在庫移動が抑制されています。

本郷様 この状態を続けることで、「最低在庫はこんなに要らないですよね。下げましょう」と店舗に納得してもらい、最低在庫水準を下げることにつながると思います。

(フルカイテン永田 = 右)

「全体の7割が不動在庫」という発見

――業務効率や作業時間の削減などの面はいかがですか。

本郷様 実際のところ、本部側の作業は当然増えています。ただ、店舗での作業は格段に減っています。それが約150店舗分あるので、会社全体で見ると作業工数はかなり減っていますね。

一方で、依然として発注作業に時間をかけている店舗もあります。そうしたところとはもっとコミュニケーションを取ってシンプルな構造にしていけば、もっと店頭作業は減っていくでしょう。この発注・出荷を皮切りに、本部への集約を他業務でも進めていきたいと考えています。

大塚様 これまできちんとデータを追うということはしていなかったんですが、FULL KAITENを導入したことで、データを見て検証するというフローができ、在庫に加えて売上でも「こういうところがさらに問題なんじゃないか」というふうにどんどん課題が可視化されていきました。そして今まさにショップの店長さんに「データを見るとこういう状況ですから、こう改善していきませんか」と提案していく流れができてきたんですよね。

本郷様 店舗に色々と任せてきていたので、「本部で数字を見ましょう」という習慣があまりありませんでした。そこから本部主導に仕組みを変えるには、本部でデータを見てきちんと検証できる体制が必要になります。FULL KAITEN導入はそのきっかけになったと思います。実際、店舗別に見たら「在庫の7割が不動在庫だった」とリアルに数字として出てきたりもして、いろんな気づきがありましたよ。

今日も永田さんから新しいダッシュボードを見せてもらいましたが、機会損失マップでどの店舗で機会損失がどのように起こっているかというのも見える化されますね。あと、在庫の持ち方の面で、1週間売れない商品の奥行き在庫が何点ありますよ、という表示もあり、これまで見えなかった指標がどんどん可視化されていっているのはすごくありがたいですね。

また、店間移動のダッシュボードなんですが、「店間移動ができる在庫が今これだけありますよ」だけでなく「そもそも店間移動もできないような在庫もこれだけあります」など、様々な使い方がありますよね。

永田 当社内では「ポテンシャル売上」「ポテンシャル機会損失」と呼んでいるんですが、ポテンシャルが大きければ大きいほど、まだまだ在庫が回転しなければいけないということを表しています。FULL KAITENを使うことでポテンシャルが減っていけば、それはポテンシャルを実際に売上につなげることができていることを意味するので、改善できているということになります。

その辺りをダッシュボードで見える化しています。まさに今後のFULL KAITENの活用イメージの候補だと思います。ダッシュボードで全体を見たうえで、どこから手を入れなければいけないかといった判断ができるようになりますから。

――定期的に組まれる企画(イベント)をめぐってはいかがでしょうか。

大塚様 はい、当社は企画で売上を取っている状況で、大きい企画は年に4回、中規模企画は月に1回強あるんですが、大きい企画だと売上のピークが平時の10倍くらいになるときもあります。こうした波はFULL KAITENのAI予測にとっては招かれざるデータですよね。

一方で、他社さんを見ても、企画で売上を立てるやり方は結構厳しくなりつつある傾向です。なので、今私たちの部署から営業へ「売上の取り方をもう少し改善しませんか」と提案しているところです。つまりは売上を平準化すると言いますか、平時からベースとなる売上をきっちり上げていく方向へシフトしましょうということです。

――現在、FULL KAITENの運用は大塚さんがお一人でされているんですか。

大塚様 はい、そうです。ベースとなる連携の部分は本郷が作成していて、それを基に私1人で運用しています。現在、店舗の要望を一旦は聞き入れるという対応を取っていまして、最低在庫数のラインや最低点数の設定を店舗から希望が来たら切り替えています。

今後はある程度のデータを基にひな型を作る予定です。棚割りなども考慮し、売上規模や坪数(売り場面積)に応じて5〜10パターンのテンプレートに各店を当て込む形です。これにより本部側の生産性をもっと上げていきます。

さらなる店舗改革と効率化に意欲

――今後、FULL KAITENをどのように活用していきたいとお考えでしょうか。

本郷様 まず、店舗への補充発注をできる限り自動化し、工数をかけないようにしていきたいです。

あとは御社の他のツール(プロダクト)の中に興味があるものがいくつかあります。店舗の営業活動に役立つ機能を増やしていきたいので、FULL KAITEN〈ストアエージェント〉が最優先ですね。

大塚様 マネージャーの業務が置き換えられることになりかねないとは思いますが、そこは営業がどう納得して活用するかです。ストアエージェントはうまく使えば店舗運営を大きく変えられると思いますので。販売について本部側から「こうやってお店を運営していけばこうやって利益がちゃんと出せますよ」と提案していく形を確立したいと考えているので、そこでストアエージェントが必要になってくるのではないでしょうか。

本郷様 当社の場合、店頭での接客がすごく重要なんですよね。取り扱う商品の特性上、お客様に商品の説明をして効果を理解していただくという一連の接客が大切で、接客のマニュアルを結構作っています。「こういう場面ではこういうデモをする」など色々と規定しているんですが、事務処理などがかなり多いんですよ。

あと、営業側で「この店舗はどこが弱くてどこが強いか」という店ごとの特徴を明確にデータ化できてないため、提案指示もできていないのが現状です。その点、ストアエージェントはデータに基づいて個店比較を計算して表示してくれるので、そこがかなりメリットに感じます。

――ありがとうございます。他社にFULL KAITENをお勧めされるとしたら、どんなことを伝えたいですか。

本郷様 出荷と予測がしっかりしているという点ですかね。正直なところ、よく分からないまま導入した部分もあったんですが、私たちの想像以上に噛み合って、きっちり数字として変化が出ていると実感しています。業務の改善に役立つというところはお勧めできるポイントだと思います。

大塚様 ここ数年、新型コロナウイルス禍の前にはあまり考えられなかった業務のやり方が生まれてきて、特に最近はAIがかなり発達しています。そういう面で需要予測というのは他社さんも導入しやすいんじゃないかと思います。

――FULL KAITENを導入しようと決めてから、現場の皆さんに納得してもらうのは難しかったですか。

本郷様 はい、営業を説得するのが一番ハードルが高かったですね。営業は店舗の意見に反応しますから。導入に際し、計10回くらい店舗向けの説明会を実施しました。

ただ、営業側からも「FULL KAITENを入れてもらって助かった」「業務改善や工数削減に繋がった」という声が実際に上がっています。他社さんでも、そういう声をきっちり拾いながら、店舗の運用にしっかり落とし込んでいけば、幅を広げて定着していくと思います。

――皆様、本日は誠にありがとうございました。