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小売業界は人権コストの内部化が企業経営の要諦に。 在庫分析クラウド「FULL KAITEN」瀬川の年末談話

在庫を効率よく利益に変えるクラウドシステム『FULL KAITEN』を開発し小売企業等に提供するフルカイテン株式会社(本社・大阪市福島区、代表取締役CEO 瀬川直寛)は、小売業界における2022年の動きを総括するとともに2023年から起きる変化を展望し、瀬川の談話として公表します。繊維関連企業にとって2022年は人権元年であり、2023年からは人権の内部化が経営の要諦になることをまとめています。
本リリースの内容は、一報を頂ければ、各種まとめ記事等で瀬川のコメントとして自由に引用していただいて構いません。

1.人権元年が到来 ~2022年総括~

長引く新型コロナウイルス禍やコスト高で小売市場が大きく変化するなか、高齢化と人口減少に伴う市場規模の縮小や環境対応への必要性、消費者心理の変化など企業経営に様々な影響がありました。このような変化の多い2022年ですが、私は人権元年が到来した一年だったと考えています。

繊維業界団体では、日本繊維産業連盟がいち早く繊維産業向け人権ガイドラインを策定し、繊維関連企業が取るべき人権の対応策を公開しました。また、経済産業省が企業における人権尊重の取組を後押しするため、「サプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドライン検討会」を立ち上げ、企業が業種横断的に活用できるガイドラインの作成に取り組んでおり、これは日本政府のガイドラインとして決定されました。このように業界団体や国も人権対応の必要性を発信し始めました。
弊社はアパレルや雑貨企業の在庫を利益に変えるクラウドを提供していますが、ファッション業界と人権対応が結びついてしまう根本的な要因は、大量生産だと考えています。

例えば、製造原価を抑えるために日本から遠い地域に製造拠点が移ると作る量は増加し、その結果、働く環境が劣悪になったり、強制労働や児童労働の温床になる可能性を孕んでいます。国内に目を移しても、技能実習生の労働問題など様々な問題が露呈しました。そもそも作る量を適正化することにメスを入れないと、人権問題に対してファッション業界が一定の貢献をするのは難しいのではないかと私は考えています。しかし残念なことに、繊維業界全体はカーボンニュートラルや素材の循環利用に論点が集中している傾向があります。

上場しているアパレル企業にとってはTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)対応が義務化されたので環境問題に論点が集中するのはもちろん理解できるのですが、アパレル業界における温室効果ガスの排出量はScope3すなわち製品生産時に最も排出されていますので、やはり生産量の適正化にメスを入れなければ本質と向き合うことにならないだろうと思うのです。

環境問題も人権問題も、結局のところ売れるはずもない量を作りすぎることが問題の本質なのではないでしょうか。私も色々な企業との議論に参加した一年でしたが、本丸である生産量の適正化は議論を避ける企業が多い印象でした。

2.人権コストの内部化が企業価値に ~2023年から起きる変化と展望~

2023年は人権コストの内部化が企業経営のキーワードになると考えています。

日本のファッション業界は生産拠点が海外にあります。私はこれを製造コストの外部化と呼んでいます。またサプライチェーンは国境をまたぐ形でサイロ化しています。そうすると日本から遠い各地の労働環境や人権状況を把握することは非常に難しくなります。仮に自社が属するサプライチェーン上で労働環境や人権に関する重大な問題が起きたとしても、遠い場所での話だからどこか他人事になってしまうというわけです。私はこれを人権意識の外部化と呼んでいます。

2022年は省庁や各種団体が人権問題について様々な発信をした一年でした。

2023年以降を見た時、私は人権意識の内部化が進んでいくだろうと考えています。

既にヨーロッパでは人権問題と環境問題が同列で語られ、法制度の整備も進み始めています。サプライチェーンが国境をまたぐことを考えると、日本企業にとっても無視できる話ではなくなるはずです。
しかし人権意識の内部化は製造コストの内部化とは切っても切れない関係にあります。

日本のアパレル企業にとっては製造コストの内部化、すなわち製造拠点をもう一度外国から国内に戻す必要があるということです。
ところが国内にはそのような生産量に耐えられるだけの工場の余力がないと言われています。だから大手アパレルが国内の工場復活に向けて投資するようになるだろうと私は考えています。
EUでは環境問題への対応について企業に非常に厳しい規制が入り始めています。日本でも炭素税をもっと厳しいレベルで導入するための議論は行われていますので、炭素税で利益を失わないための投資として国内工場復活への投資が行われるようになるのではないでしょうか。
今年ローランド・ベルガーの福田稔さんと対談した際に教わったのですが、EUの大手アパレルでこういった環境問題への対応を損得で考えている企業は少ないのだそうです。気候変動への取り組みは企業の責務でありPLで考えるようなことではないからなのだそうです。

このお話は私自身も大きな気づきがありました。

経営者としては儲からないことにお金を使うのは避けたいはずだと思いますので、国内工場復活への投資をしたところでコストが増えるだけなら、どこまでアパレル企業が本気で取り組むのかと思っている自分もいたからです。
しかしそういうPL思考がダメなのです。温室効果ガスは過去から蓄積されていますので、最も厳しい排出削減目標を達成しても平均気温1.4度は上昇するそうです。そうすると数兆ドルという単位で経済損失が生まれるという試算もあります。海面が上昇し日本でも水没する地域が出たり自然災害のリスクが一気に上がってしまうという問題もあります。
つまり、一企業の損得の話を超えているということです。

アパレル企業の温室効果ガス排出量が製品生産時に80%以上を生み出していることを考えると、如何にして生産量を適正化するのかという観点に加えて、国内に工場を回帰させ日本人特有の創意工夫と工場運営で排出量を減らすような取り組みをするべきだと思うのです。

きっと大手アパレルを中心にそんな動きが生まれるはず、生まれてほしいと私は思っています。
しかしいくら人権意識が内部化する流れになると言っても、製造コストまで内部化する流れにはならないだろうと思います。それは日本国内にはもう製造コストの内部化に耐えられるような生産力(具体的な工場の余力)がないはずだからです。
では人権意識の内部化とは具体的に何なのかという話ですが、それは商品原価の中に人権対応費が組み込まれる形になっていくというのが私の見立てです。

サプライチェーン上の人権問題解決に対する投資は商品の製造に関わる原価として扱われるべきものになるという意味です。
そして私は人権問題に商品原価レベルで取り組んだ商品には付加価値が生まれるだろうと考えています。これは環境問題に商品原価レベルで取り組んだ商品に対しても同様の見解です。だからその付加価値分をきちんと粗利で回収する経営モデルへの変革が起きていくと思っています。
このような話をすると、人権に対応している商品は購買理由にならないという指摘をする方も中にはいらっしゃるかと思います。確かに今この瞬間はそうかもしれません。しかし今まさに目の前で起きている小さな変化が後の大変化につながっていた例などいくらでもあります。例えば私が子供の頃は「企業戦士」という言葉がメディアを賑わせ、「24時間戦えますか」というテレビCMが流れていました。これらは今の時代ではブラック企業扱いされてしまうようなフレーズです。

人権問題や環境問題への取り組みを商品原価に反映し付加価値として粗利を稼ぐモデルへの転換も同様で、今起きている小さな変化を3年5年10年というスパンで見ていけば、ファッション業界の今の常識は大きな変化を起こしているのではないでしょうか。

私は未来をそのように展望しています。

3.世界の大量廃棄問題の解決へ ~フルカイテンのミッション~

現在弊社は、サプライチェーンの川下(小売)に向けて在庫効率を上げるための在庫分析クラウド「FULL KAITEN」を提供しており、2022年9月にはFULL KAITENを利用するアパレル・生活雑貨・スポーツなどのブランドの月間売上高の合計(月間流通総額)が初めて500億円を突破しました。2023年には累計で1兆円を超える見込みです。またこれら売上データには導入企業の全ての販売チャネルのデータが集まっており、市場全体の売上動向が反映されているという意味で価値があります。
今後は、サプライチェーンを川下(小売)から川中(卸、商社、メーカー)へ遡って在庫過多の問題を解決する構想を具体化させるため、川下と川中に散在する販売・生産・在庫に関するデータを集約する「スーパーサプライチェーン構想」の具体化に取り組む予定です。

そして2023年から2024年にかけては適量生産の本丸である『生産量の需要予測』に着手する予定です。
今より良い地球を子供や孫の世代に残すため、2023年もFULL KAITEN導入企業に対する提供価値の最大化に社員一同より一層取り組んでまいります。

※本リリースの内容は、一報を頂ければ、各種まとめ記事等で瀬川のコメントとして自由に引用していただいて構いません。


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