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ファッションワールド東京 第8回国際アパレルEXPO秋で瀬川が講演しました

フルカイテン株式会社は2020年10月27日に東京ビッグサイトで開幕した「ファッションワールド東京 第8回国際アパレルEXPO秋」に出展し、初日に行われた出展企業によるセミナーで代表・瀬川直寛が講演しました。新型コロナウイルス危機を踏まえ、「在庫を制する物は粗利を制す」をテーマに、売上・粗利増加と在庫削減を両立させる手法について語りました。
講演要旨を以下にご紹介します。

コロナ危機で買い物の価値が上がった

アパレル業界はコロナ危機で、わずか3ヵ月間で需要が大きく消失する事態を経験しました。その結果、いろんな企業の経営破綻や経営の悪化が起きましたが、原因となったのは店舗の過剰と在庫の問題でした。

しかし、この2つはこれまでもずっと問題として存在していました。それがたまたまコロナ危機で一気に需要が消失したことで噴出したといえるでしょう。

皆さんにぜひ知っていただきたいのは、コロナ危機で起きた事は決して一過性ではないということです。実はその前から日本の小売市場というのは縮小が始まっていたんです。うすうす感じておられた方もいるかもしれません。

まず、2014年までの15年間で1世帯あたりの消費支出は月間で最大6万円超落ちています。また、2018年には小売全体の市場規模は頭打ちになっていました。さらに昨年、日本の人口は50万人減少しました。これは鳥取県と同じくらいの人口です。

人口が減り、使えるお金も減っている。では未来はどうなるのでしょうか。2024年には団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者になり、社会保障費用が急増します。2025年からはおよそ50年にわたり毎年100万人近い人口が減っていきます。これは人口動態から分かることで、人口に関する統計は最も信頼できる推計だといわれています。

こういった人口減少は実は1960年代からずっと言われていたことなんです。現状はほぼほぼ当時の推計どおりになっています。

縮小していく市場で深刻になっていくのが在庫問題ですね。在庫を増やせば売上は増えるが、在庫を減らすと売上も減ってしまう。今も昔もなかなか解決できない問題です。しかしこれ以上、在庫過多を放置していては、縮小市場において小売ビジネスは成り立ちません。

ではどのようなアプローチをとるのか。在庫を単純に減らすと事業自体が縮小してしまいますから、在庫が多すぎるから減らせばいいという簡単な話ではなく、突破口は別のところにあるのです。

消費者が使えるお金が減っていくことは悪い話ばかりではなくて、お金を使うことに対する期待値、買い物の価値が高くなります。ここに突破口があります。釈迦に説法ですが、顧客接点が突破口になると思います。具体的にいうと商品・店舗、それから販売スタッフさんです。消費者がお金を出す時にどういう価値を提供できるかが勝敗を分けるポイントになるでしょう。

粗利と在庫の密接な関係

顧客接点への投資をしようとなったら、投資の原資を確保しなければなりませんから、今よりも粗利体質に変わらないといけません。

では、どうやって粗利を増やすのか。意識してほしいのは考え方をPL脳からBS脳に変えることです。PLは売上第一、BSは粗利第一という意味と捉えてください。

在庫と粗利には密接な関係があります。

上図の例では、9000円の売上を立てられたと喜んでいてはいけません。5000円の在庫がBSに蓄積しています。こうした在庫が、コロナ危機によってお金に換えられなくなったのです。また、在庫は資金繰りに影響するだけでなく、粗利に余計な影響を及ぼします。下図のように、売れ残った在庫は値引き販売と評価減(商品評価損)を誘発します。

これは、販売力を超える大量生産が元凶です。私は大量生産自体は悪いことだとは思っていません。ただ、売れる量を超えて生産するのはよくない。実際は売上原価は商品原価と値引き、評価減で決まるのですが、実際のところ商品原価イコール売上原価という誤解から、多くの企業で上図のようなことが起きています。

もう1つ、商品原価を下げたいがために、他社との間でどんどん商品が同質化していくという弊害も起きていると思います。そして売れ残るから値引き、評価減が発生するという悪循環です。

私は極端な話、商品原価は上がってもいいんじゃないかと思っているんです。値引きと評価減で失っている粗利の方がずっと大きいからです。

会場はほぼ満席となりました

AIの予測ではなく「在庫の質」に着目

「売れ残りを防ぐには、需要予測にAIを使えばいいんじゃないの?」という意見もあるかと思います。しかし、AIも決して万能ではなく、需要やトレンドを抜群の精度で予測するのは非常に難しいんです。これはちゃんと理由があります。予測し得ない外的な要因の影響を受けるからです。AIはそういうものに弱いんですね。

ですから、皆さんには予測だけに頼るという考え方をやめてほしいと思います。それはなぜか。商品には発注から入荷、販売終了までライフタイムサイクルがありますが、予測だけで在庫問題を解決しようとすると、発注段階で予測が外れたら終わりとなりますよね。

でも、値引きや評価減で粗利を失うリスクは、発注段階で起きているのではなく、売り始めてから起こります。販売開始から販売期間終了までの期間内に、在庫リスクを抑えながら粗利を極力失わないようにすると考える方が、よほど現実的なんです。

なので、予測が外れる原因となる変化は日々起きるということを制約条件だと捉えてほしいと思います。仕方ないこととして前提にし、変化に強い仕組みをつくりましょう。これが、私が3度の倒産危機の経験から考え出した理論である在庫実行管理(IEM)です。

IEMは3つのポイントで在庫の質を可視化します。

まず1つ目。「今ある在庫」の中からまだまだ売れる隠れた実力商品をみつけます。在庫をどんどん増やさずに売上・粗利が増え、その結果、在庫も減っていきます。

2つ目は「今ある在庫」の中から客単価向上に貢献する実力商品をみつけるというものです。売上・粗利を増やすために客数(注文数)を増やそうとするのではなく、客単価を上げるという考え方です。

そして3つ目。「今ある在庫」の中から、再発注すべき商品をSKU単位で可視化します。

在庫の質は予測し得ない外的な要因で日々変化しますが、どんな変化が起こるかということ自体も予測できません。ですので、在庫の質を数値として毎日計算し直して、その質に合わせて対策を変えていきます。プロパーでの販促を強化する商品、少しだけ値引きした方がいい商品、追加発注した方がいい商品というように。こうすると、在庫リスクが悪化していくことに気付かずに余計な値引きを抑えられるようになります。

弊社のお客さんで、50億円超くらいの在庫高をお持ちの企業で、意味のない値引きが数億円発生していた企業がありました。そういう会社が1%でも値引きを抑制できたら、何千万円という単位で営業利益が改善します。こういうことを考えるべきです。

弊社は、在庫実行管理をどんな企業でも実践できるように『FULL KAITEN』をクラウドサービスとして提供しています。最近の導入事例としては、手持ちの在庫を活用することで1ヵ月で客単価が5%上がった例がありました。

別のもう1社では、今までだったらシーズンが入れ替わる時期に売れ残りをVMDを変更してまで打ち出すということをやっていなかったのですが、今年はFULL KAITENが「隠れた実力商品」と判断していたので、やったんですね。すると、新規のお客が例年より増えて売り上げることができ、既存のお客よりも客単価が高かったそうです。従来なら売れ残りとして諦めていたところですが、FULL KAITENを活用することで在庫を減らすことにもつながりました。

在庫問題でお悩みの方、自社の在庫過多について相談したいという方は是非お問い合わせください。

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代表取締役・瀬川が語る
アパレル業界の
縮小する国内市場で
勝ち抜く粗利経営