EC/オムニテックカンファレンス 2020(第1回)のオンラインセミナーで講演しました
フルカイテン株式会社は2020年7月1日、EC/オムニテックカンファレンス2020 第1回(インフォーマ マーケッツ ジャパン株式会社主催)に参加し、代表の瀬川直寛が「コロナ禍の2020秋冬商戦はチャンス 【在庫50%削減の事例も】売上増加と在庫削減を両立する具体的手法」と題して講演しました。約70名の方にご参加いただきました。
瀬川は、新型コロナウイルス危機の影響による個人消費の“蒸発”により、2020年春夏商戦が厳しい結果になりつつある小売業界に向けて、売上増加と在庫削減を両立させるための具体的な手法を説明しました。
以下にその内容をご紹介します。
コロナ禍の状態は2030年まで続く
今般のコロナ危機では、わずか3カ月で需要が消滅しました。2020年春夏物が売れず、今秋冬物の仕入れ予算が足りないという企業も多いと思います。
おまけに消費も冷え込んでいます。
現在はウィズコロナという状態ですが、経済が「元に戻るか」という議論は、私は呑気な話だと思っています。
その理由は「2030年問題」です。これは在庫の問題を考えるときにとても重要な要素です。
次の10年間で今の九州と同じくらいの人口がなくなるのです。
しかも、10年どころか次の4年間が勝負です。2024年には第1次ベビーブームに生まれた人たちが全員75歳以上の後期高齢者になります。社会保障の問題や、団塊ジュニア世代が親の介護問題などに直面し、可処分所得が減少するのは避けられません。
つまり、コロナ危機による需要消滅は2030年問題の疑似体験だったと考えていいと思います。そうなると、今までのような在庫過多を前提にしたビジネスモデルは、経営破綻を招くと言い切って良いでしょう。
それを回避するには、経営の力点をPLからBSに移していく変革をしないといけません。
今までは「欠品したらダメ」と言われていました。これからは「欠品してもいい。だって売り切ったんだから」と。BS脳だとそういう評価に変わるんですね。
もう1つあります。従来は原価を低く抑えていましたが、「原価は高くていい」となるでしょう。それは少量発注だからです。
皆さんには「瀬川は非常識なことを言っているなあ」と感じられると思います。でも、そうではない理由をこれから説明していきます。
なぜ欠品してもいいのか。今までは多くの企業がよく売れる商品だけで売上を作ってきました。でもよく考えれば、売上は「普通に売れている商品」でも作ることができるんですよね。そうした普通に売れている商品の中にある「隠れた実力商品」をみつけて販促すれば、まだまだ売上は伸びるんです。
次に原価が高くてもよい理由です。いくら大ロット発注をして原価を低く抑えても、売れ残った商品の原価はBSに蓄積されていきます。そのせいで資金繰りが悪化しますし、実際に倒産する企業も出ています。
BSの棚卸資産(在庫)は、売れないまま1年とか経過すると、原価どおりの価値がないと判断され、評価損はPLに特別損失などの形で返ってきます。
原価抑えるためにたくさん発注して在庫をもつと、後々評価損が響いてくるということです。元も子もないですよね。これから人口がどんどん減っていく社会において、PLだけ見ることの恐ろしさを理解してほしいと思います。
是非ともPL脳からBS脳に変わりましょう。
需要予測こそがボトルネック
しかし、在庫が増えることに対しては「需要予測でどうにかしたらいいだろう」と話す人もいます。でもこれは簡単なことではありません。
需要やトレンドを高い精度で予測することは、AIをもってしても非常に難しいのです。それは、前提となる条件がほんの少し変わるだけで、予測の結果も大きく変わるからです。
競合店の値下げや販売員の気分(夫婦喧嘩して気持ちが乗らない等)、天候など常に不安定な外部要因に結果が左右されてしまうのです。
つまり、需要予測が外れるのを前提に、発注量・価格の決定から納品、店頭配分、販促という後工程を変革する必要があるということです。そうすることで、棚卸資産のパフォーマンスを最大化し、売上増加と在庫削減の両立が可能になっていきます。
そのための新たな理論が、在庫実行管理(IEM = Inventory Execution Management)です。
IEMは、「今ある在庫」で売上を増やし、その結果として在庫が減っていく手法です。具体的な考え方は以下の3つです。
- 「今ある在庫」の中から、まだまだ売れる人気商品を見つける。だから在庫が減る
- 「今ある在庫」の中から、客単価向上に貢献する商品を見つける。だから在庫が減る
- 発注業務の負荷を下げることで発注頻度を高め、1回あたりの発注量を減らす
①について。在庫には『よく売れる商品』と『全然売れない商品』だけでなく、『普通に売れる商品』の3種類があります。たいていの企業は、よく売れる商品だけで売上を作っていて、普通に売れる商品には、可視化できていないがために販促が手薄になっているだけで、まだまだ売れる在庫が含まれています。これらの販促を強化することで、「今ある在庫」で売上が増え、在庫削減につながります。
次に②です。売上は「客単価 × 注文数(販売数)」の掛け算ですが、今以上に注文数を増やすことは非常にコストがかかって難しいのに対し、客単価はほぼコストをかけずに、ある程度ロジカルに向上させることができます。客単価帯の分布から平均客単価の向上に貢献する客単価帯を見つけ、その客単価帯の注文に貢献している主力商品の販促を実行すれば『今ある在庫』で売上が増え、在庫が減ります。
そして➂です。発注数を自動計算することで発注業務の負荷を下げられれば、発注頻度を上げることができます。すると1回あたりの発注量を減らすことができるので、在庫リスクが低減されます。このため、余計な在庫が増えなくなり、最小限の在庫で売上を増やすことができます。
在庫実行管理(IEM)実践ツールFULL KAITEN
続いて瀬川は、在庫実行管理(IEM)実践を支援ツールであるクラウドサービス
『FULL KAITEN』のデモを実演しました(消化率向上機能のみ)。
消化率向上機能は、全ての在庫をSKU単位で分析し、完売までの予測日数に応じて3段階に自動分類します。
- フル回転 :よく売れていて売り切れそう
- 過剰 : 普通に売れているが売り切れなさそう
- 不良 : 全然売れておらず売り切れなさそう
過剰在庫には隠れた人気商品が含まれています。過剰在庫の販促は大半の企業が手薄なため、過剰在庫にメスを入れるだけで「今ある在庫」で売上を増やし、結果として在庫を削減することが可能になります。
具体的には、商品写真を取り直す、露出を増やす、スタッフが着用してSNSで流す等、さまざまな販促の対象とすることで極力値引きをせずに売上と利益を増やすことが可能です。
また、不良在庫はセールに出したり福袋に含めたりすることで確実に現金を取り戻します。
※単価向上機能と回転率向上機能はこちらから
SaaSならではの投資対効果
あるアパレル系の企業では、FULL KAITENの導入から約9カ月で在庫が半減したにもかかわらず、売上は毎月、導入前を上回りました。
また、雑貨系企業では、在庫量は導入前と変わらないのに、売上は2倍になりました。
共通するのは、在庫の質が良くなったということ。さらに、部署ごとで大きな隔たりがあった在庫商品に対する認識が統一されたという副次的効果もあります。もちろん、利益やキャッシュフローへの効果は計り知れないくらい大きいものです。
一方で、FULL KAITENはSaaSであるため、数千万~億円単位の投資が必要なシステム構築とは異なり、人件費程度の月額料金で利用できます。
本セミナーのタイトルどおり、2020年秋冬商戦はウィズコロナというピンチで迎えますが、裏を返せば変革のチャンスでもあります。
在庫の山は、隠れた人気商品を含む宝の山。
仕入れ予算削減は、棚卸資産を削減する機会。
消費が冷え込んで買い物機会が減るからこそ、客単価向上に取り組む。
在庫実行管理(IEM)のスタートラインに立つチャンスなのです。
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フルカイテン株式会社は2020年7月29日(水)、『2030年アパレルの未来 ‐日本企業が半分になる日‐』著者で株式会社ローランド・ベルガーのパートナー、福田稔氏と弊社代表・瀬川による特別対談を無料オンラインセミナーとして実施します。両者が対談の中で2030年に向けての「アパレル業界のビジネスモデル変革」についてLiveで提言をまとめ、発表します。
ぜひご参加ください。
→申し込みはこちら