他社事例から学ぶ。差が出る在庫配分のPDCAサイクルを解説!|セミナーレポート
2023/7/25(火)に、オンラインセミナー「他社事例から学ぶ。差が出る在庫配分のPDCAサイクルを解説!」を開催いたしました。
当日ご参加いただきました皆様に、御礼申し上げます。
本記事では、お客様のDB業務を支援しているメンバーがセミナー内でお伝えした以下2点についてご紹介します。
- 在庫配分、店間移動の効果検証ノウハウ
- 成果が出た事例のPDCAサイクルについてポイント解説
登壇者:田中 大介(フルカイテン株式会社カスタマーサクセス 責任者)
2007年にアクセンチュア株式会社に入社。
大手アパレル企業を中心にMD、DB、店舗運営の領域にて様々な業務改革/DX推進プロジェクトに従事。その後、化粧品ブランドにて店舗運営統括責任者、ホームセンターにて経営戦略室マネージャーとして事業会社を経験。
2022年4月よりフルカイテンに参画。
カスタマーサクセスチームの責任者として、定番品を扱う企業を中心に複数の小売企業を支援。
登壇者:森田 浩介(フルカイテン株式会社カスタマーサクセス)
大手セレクトショップの店長として都心、地方と、規模の大小含め様々なマーケットの店舗運営を経験。新店舗、新ブランドの立ち上げプロジェクトにも参画。
その後スーパーバイザーも兼務し、複数店舗のマネジメントも担う。人材育成、店舗計画の立案、店舗運営と幅広く業務に携わる。
現在は、フルカイテン株式会社カスタマーサクセスチームに所属し、第一線で顧客支援を行う。
【お役立ち資料】在庫配分の精度を上げる徹底解説ガイドはこちら>
はじめに
田中:まず、在庫配分業務について認識合わせをしましょう。
店間移動や倉庫出荷等は必ず行う業務のため、実施自体はできているかと思います。その一方で、「実施した後に振り返りまでできている」「在庫配分で成果が出ている」という企業には一度も出会ったことがありません。これが、在庫配分業務の特徴になります。
在庫配分でもPDCAを回して成果を出すことはできますので、今回はその方法をお伝えしていきたいと思います。
在庫配分・店間移動で利益を最大化させるノウハウと、短時間で移動リストを作成する方法は以下の記事で解説しております。
効果検証の考え方
田中:では、効果検証の考え方からご説明します。
施策を実行する時は、会社全体やブランド全体など大きい部分から、一番ボトルネックになっている場所を特定し対象商品を絞り込みます。
一方、効果検証はその逆で、施策の対象品番やSKUがカテゴリー単位や部門単位でどのような結果だったのか、会社全体ではどうだったのかを振り返ります。
つまり、施策実行は大から小を考える。効果検証は小から大を考えるということです。
在庫配分でも通常の効果検証と同様に、施策対象品番がどうだったのかを見ていきますが、さまざまな観点から検証していく必要があります。
在庫配分では足並みを揃えることが目的のため、店舗単位で週数や日数が揃っているかを指数化して見ていく必要があります。また、欠品や機会損失は起きていないか?余剰在庫は抑えられているか?を消化率や回転率などの指標で振り返りしていきましょう。
次からは、実際にどう振り返りをしていくかをご説明します。
効果検証の方法
効果検証のポイント
田中:振り返りをする際は「商品」「店舗」の2つの軸から考える必要がありますが、良かった点、悪かった点の両面を必ず見ることがポイントです。
良かった点については、何が良かったのかを踏まえて形式知化し、再現性を持たせます。悪かった点については、何が悪かったかを深堀り、どう改善するかを決めていきます。
商品軸での振り返り方
田中:商品軸で振り返りをする際は、以下3つの観点から良かった点と悪かった点を振り返っていきます。
- 施策実施のタイミングはどうだったのか
- 選定する商品は問題なかったか
- 基準となる在庫日数や週数は適切だったのか
では商品軸の振り返り方について、具体的にお伝えします。
森田:そもそも在庫移動を実施する上では、「在庫移動カレンダー」を作っておくことをおすすめします。
在庫移動カレンダーとは、販売計画と連動して以下2点を明記したカレンダーのことです。
- どの商品がどのタイミングで売れるのか
- どの商品群をどのタイミングで移動するのか
商売をする上では、売れるタイミングを逃さないことが非常に重要です。
このカレンダーを作っておくことで、売れる時期に売れる商品を移動できるため、売上最大化や消化促進が可能になります。
またあらかじめ移動する時期を決めていくことで、振り返りの実施とブラッシュアップを簡単に行うことができます。
店舗軸での振り返り方
田中:店舗軸で振り返りをする時も商品軸の時と同様に、店舗ごとの動きがどうだったのかを以下3つの観点から振り返ります。
- 在庫日数の基準が適切だったか
- 移動範囲は問題なかったか
- 補充/回収の優先順位は問題なかったか
では店舗軸での振り返り方を、事例を使ってお伝えします。
森田:店舗軸で振り返りをする際は、移動数(在庫日数)と移動先がポイントになります。
そもそも在庫移動をする上で、各店舗ごとにどのくらいの在庫数を持たせるかはあらかじめ決められているかと思います。
しかし、在庫を抜きすぎて店舗からクレームが入ったり売場が作れなくなってしまう等の問題も発生してしまうこともあるのではないでしょうか。
こういう問題を発生させないために、店舗軸での在庫日数を振り返り、修正していく必要があります。
修正をする際は、あらかじめ店舗のマーケットや特性に合わせてタイプを分類し、指数換算をしていくと、より精度の高い修正が可能になります。(上図の表でいう店舗タイプ)
またFULL KAITENを使っていただくと、上述した修正を簡単にできるような画面があるため、業務負荷の削減にも繋げることができます。
続いて、在庫移動先です。在庫移動先の振り返りでは、移動する上で店舗の利益を考慮できているのかという部分が重要になります。
在庫移動をする上では、店舗の余剰/不足在庫数や立地、月商、売場面積、店舗作業量など複数のロジックを加味して移動先を決めているかと思います。そのため、これらロジックの振り返りを実施する必要があります。
例えば立地の部分では、物流費の予算やコストを加味して移動できたか?作業量の部分では、1店舗からの出荷数が多すぎていないか?そもそもの移動数量が多すぎて人的コストが膨らんでいないか?などを見ていきます。
また、売場規模や坪数が小さいような店舗から高月商の店舗に移動するというのは皆様もやられているかと思いますが、そのような移動ができていたかの振り返りも必要です。
効果検証まとめ
田中:それでは、ここまでの話をまとめていきましょう。効果検証をする際は、以下4点の良かった点、悪かった点を洗い出します。
- 対象となる商品群やタイミングが適切だったか
- 店舗やSKUごとの在庫日数は適切だったか
- コストを考慮した移動先の選定ができていたか
- 月商や売場面積を考慮した移動数の算出ができていたか
また在庫移動カレンダーを作成することで、効果検証から改善までの動きをスピーディーに行うことができます。
在庫配分業務における定量成果の考え方
田中:ここからは、在庫移動の定量成果についてお伝えしていきます。
下図は、Excel等を使い在庫配分を行った場合とFULL KAITEN〈在庫配分〉(※)を使った場合の創出売上をシミュレーションしたものです。
※FULL KAITEN〈在庫配分〉は、全SKU×全店舗をAIを用いて予測・分析し、売れる商品を売れる店舗に必要な量だけ移動できるよう自動計算。売上・利益向上に繋がる在庫配分を実現するソリューション
従来の在庫配分業務は、対象とするSKUを決めて移動数を算出し、実際に移動という流れになりますが、リスト作成にかかる業務負荷が高いことがほとんどだと思います。
FULL KAITENではAIによって自動でリストを算出するため、人力と比べれば算出できる移動数とリスト作成にかかる時間を短縮することができます。
また上図では在庫移動後の稼働率を90%としていますが、FULL KAITENではこのままの状況では在庫が動かない店舗から、動く店舗に移動できるよう算出するため、必然的に稼働率をあげられるようになっています。
上図で算出した考え方自体は、皆様が取れるデータでも実践可能です。
上図のように、在庫移動による創出販売数を店舗×SKUで積み上げていくことで、創出売上を算出することが可能になります。
効果検証の他社事例
森田:それでは、FULL KAITEN〈在庫配分〉の成果事例をご紹介します。
1つ目の事例は在庫移動数を改善し、約500万円の売上を創出した事例です。
導入前は在庫配分にかかる業務負荷が高く、15品番の移動に約4時間かかっていましたが、FULL KAITEN〈在庫配分〉を導入することで移動品番を5倍にすることができました。
さらに先ほどご説明した効果検証の通りに振り返りを実施したことで、良し悪しの判断も行いやすくなりました。
2つ目はレディースアパレル企業にて、約64万円の売上を創出した事例です。
これに関しては先ほどの事例と違い、 在庫移動数(量)と稼働率(質)を改善することができました。
導入前では13品番と6品番しか移動できていなかったところ、導入後には34倍ほど移動数を増やすことができました。
さらに稼働率が1桁台だったところ、22%~30%ほどに改善することができています。この要因としては、上述した通り、在庫移動カレンダーを使い、売れるタイミングで売れる商品群を移動したことです。
Q&A
Q1.FULL KAITEN〈在庫配分〉はどのような企業にはまりやすいでしょうか?
田中:FULL KAITEN〈在庫配分〉は、全SKU×全店舗を対象にAIを用いて移動数や移動先を選定します。そのためSKUや店舗数が大きいほど、効果を感じて頂きやすいと考えております。
また業務負荷改善という効果もあるため、担当者が一人の場合やリスト作成に時間がかかっている場合も、効果を感じやすいのではないかと思います。
Q2.販売ピークは地域ごとに変わると思いますが、在庫移動カレンダーの作成はエリアごとに分けて作成されているのでしょうか?
森田:私が支援をしているお客様は店舗が首都圏に集中されている場合が多いため、全社の平均値で作られているケースが多いです。
全国展開されている場合は販売ピークの境界線があるかと思いますので、そこで分けて作っていただくのが良いかと思います。
まとめ
- 全体改善を目的とした施策実行のため、対象商品の効果検証だけでなく、全体での改善検証も必要
- 商品軸では、施策の「実施時期」、選定する「商品群」、商品群毎の「在庫日数」などの分析が必要
- 店舗軸では、店舗毎の「在庫日数」、「移動範囲」、「補充/回収優先度」などの分析が必要