生成AIはアパレル人材の仕事を奪うのか?|デザインやキャッチコピーも自動化
対話型AIであるChatGPTをはじめとする生成AIが社会に一大センセーションを巻き起こしています。生成AIは文章や画像を自動的に作り出せるため、従来は人が多大な労力をかけていた仕事の価値が相対的に低下する恐れがあり、人の働き方が激変することは必至です。アパレルで言えば商品デザインやPOP等のキャッチコピーも生成AIが作成してしまう段階にまで来ています。
本記事では、AIによる大淘汰時代を勝ち抜くために必要なことについて考えてみます。
生成AIとは
生成AIとは、AIがデータを基に学習を行い、新しいデータや情報をアウトプットする技術です。
これらの生成AIは、自然言語処理技術という人間が日常で使う言語(日本語、英語、フランス語等)をコンピューターが処理する技術を活用し、人間が打つような自然な文章を生成することができます。
その中でもLLM(Large Language Models)という大規模言語モデルは、高度な文章生成や質疑応答能力を持っているため、より適切な文章を生成することができ、オンライン接客で活用されているチャットボットでも、このLLMが採用されています。
ChatGPTとは
様々なチャットボットが登場する中、特に話題となっているのがChatGPTです。
ChatGPTとは、ユーザーが入力した質問に対して、自然な文章で対話ができるチャットサービスのことです。アメリカの人工知能の研究開発機関である「OpenAI」が開発した、GPT-4アーキテクチャという大規模言語モデルを採用しています。
ChatGPTがここまで話題になった理由として、質疑応答以外の用途にも使用できることが挙げられます。
従来のチャットボットは、入力した質問に対して応えるという機能しかありませんでした。しかしChatGPTでは質疑応答機能に加えて、文章の要約や翻訳、アイデア出し、シナリオ作成、さらにはプログラミングまで対応可能であり、日常業務を変えるツールだと言われています。
ChatGPT公式サイト:https://openai.com/blog/chatgpt
ChatGPTの裏に性能が急向上したLLMの存在あり
生成AIにおいては、ChatGPT、Bard(バード)、LLM(大規模言語モデル)といった専門用語が多く、よく分からない用語が頻出しています。これらについて整理しましょう。
まず、LLMとChatGPTは別物です。LLMはインターネット上で膨大な量のテキストを収集し、ある単語(言葉)の次に来る確率が高い単語をつなげられるように学習します。このため、「それらしい」文章を作成できるわけです。
つまり、文章の「意味」は全く理解しておらず、確率的にもっともらしい文章を作っているということです。
このLLMにChat機能を載せて人の指示(プロンプト)に応じて文章を回答するのがChatGPTです。グーグルが開発したBardも同様です。
これら生成AIが従来のAIと大きく異なるのがディープラーニング(深層学習)です。画像認識AIを例に考えると分かりやすいです。
動物の写真を見てイヌであることを認識するために、従来の学習方法では「毛だらけ」「目が2つ」「耳が垂れている品種と立っている品種がある」といった特徴を人が事前に教えておく必要がありました。
しかしディープラーニングでは、AIが自ら動物の写真から特徴を見つけ、認識するようになります。LLMもディープラーニングの進化で一気に性能が向上しました。下図が日本語LLMが文章を生成するイメージです。
なお、こうしたLLMの特性上、ChatGPTが堂々と事実に反する内容を回答してしまう現象(ハルシネーション)が起きてしまうことには注意が必要でしょう。前述のようにChatGPTやBardなどの生成AIは思考して事実や真実を結論としてアウトプットするわけではないからです。
画像生成AIも登場。衣服デザインも代替される!?
そんな生成AIによって代替され得る業務としては、資料づくりが真っ先に挙げられるでしょう。
例えば、「テーマ」と「プレゼン時間」「スライド枚数」などを指定すると、プレゼン時間とページ数に応じたスライドの目次と内容を回答してくれます。
さらにExcelを使ったグラフの作成方法もChatGPTが教えてくれます。なかなか覚えられないExcelの様々な関数も懇切丁寧に答えてくれます。
また、ECサイトのタイトル(見出し)やキャッチコピーのほか、売り場のPOPもChatGPTが得意とする分野です。効果的なタイトルやコピーを考案するのはクリエイターにとって難しい作業ですが、ChatGPTに商品コンセプトと希望の文字数を入力し、「20個考えて」と指示すると、ものの数秒でタイトルやキャッチコピーを20個生成します。
この回答からさらにブラッシュアップするためのプロンプト(※)を入力していけば、洗練されたタイトルやコピーが出来上がります。
(※)「こういう画像を作ってほしい」といった内容をAIに指示すること
生成AIはテキストにとどまりません。プロンプトに従って画像を生成してくれる画像生成AIも複数のプロダクトが出てきています。これを応用すれば、衣服のデザインも可能になるでしょう。
例えば、AdobeのPhotoshopで利用可能なFireflyは無料で利用できるベータ版が公開されています。プロンプトは英語で入力する必要がありますが、ChatGPTに画像生成用のプロンプトを英語で書くよう指示すれば容易です。
このほかにも画像生成AIサービスはいくつかあります。ここで注意したいのが著作権です。AIが生成する画像に著作権はありませんが、商用利用できるサービスとできないサービスがあります。
また、特定のデザイナーや作家の名前をプロンプトに入力して生成AIに画像やテキストを生成させた場合、当該デザイナーや作家の著作物である元のデータと近いアウトプットになる可能性があります。この場合、著作権に抵触する可能性が低くないため注意が必要でしょう。
差別化できる最後の砦はやはり「人」
とはいえ、生成AIには課題もあり、使い手である人間の能力が問われます。「AIが賢くなりすぎたせいで、私たち人間は高度な知力が求められる時代が来ている」と述べる専門家がいるくらいです。
アパレルを例に取ると、多くのブランドのデザイナーが生成AIを使って商品デザインの参考にしたとしましょう。ChatGPTに限らず、世に出ている生成AIにはデータ管理のルールやガイドラインの作成などが十分でないプロダクトが少なくありません。
各デザイナーが入力したプロンプトは生成AIの性能を向上させる目的で流用される場合もあり、そうして蓄積されたデータがその生成AIを利用する他ブランドのデザイナーに向けてそのままアウトプットされる恐れもあるのです。
つまり、みすみす競合ブランドに手の内をさらしていることになります。そして、勘の良い読者の方はお気づきかもしれませんが、最終的に商品の同質化を助長することになってしまうでしょう。
商品の同質化は、長引くデフレ下でコスト削減のためにOEM・ODMを多用した結果、タグが違うだけでデザインの似た商品が多くのブランドの店頭に並ぶという弊害においても見られました。同じ轍を踏むべきではありません。
また、この件について実際にChatGPTに質問をしてみました。
上図の通りChatGPT自身も、「あくまでも生成AIは、一部業務の効率化やインスピレーションの提供など人々の仕事を支援する役割である」と解答しています。つまり、生成AIに頼り切るのではなく、生成AIによるアウトプットを活用して創造性を発揮することが求められているのです。
また生成AIを活用する上では、AIに任せる部分と人間が受け持つ部分の線引きを行うことが必須なのです。
※線引きの引き方については、以下ブログで解説しております。
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