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フォーエバー21が再上陸|アダストリアが仕掛ける4つの戦略

米国の人気カジュアル衣料ブランド「Forever21(フォーエバー21)」が日本に再上陸してから2カ月が経ちました。2019年秋に日本から撤退してから3年半。

今回はアダストリアと組み、ブランディングや販売戦略は、かつて人気を博したファストファッションの代名詞とは全くの別物となっており、アダストリアの深謀遠慮ぶりが際立ちます。

本稿では、新たな収益モデルに挑戦するアダストリアの視点で、フォーエバー21の船出を総括してみます。

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EC中心、実店舗は郊外型で静かな再出発

フォーエバー21は30年以上の歴史を持つ米ロサンゼルス発のカジュアルブランドです。日本では2009年に1号店を出店し、ファストファッションを牽引する人気ブランドの1つになりました。しかし、本国の運営会社が経営不振から2019年に連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請し経営破綻した影響で、日本から完全撤退しました。

ブランド自体は翌2020年に米オーセンティック・ブランズ・グループ(ABG)が権利を取得し、再事業に乗り出しています。現在は世界で570店舗以上を展開しており、このたび日本にも再上陸を果たしたのです。

今回ABGは伊藤忠商事に日本における販売権とマスターライセンスを供与する契約を結びました。伊藤忠商事はさらにアダストリア子会社とサブライセンス契約を締結。アダストリアグループが実際に新生フォーエバー21の展開を担うことになりました。

これら一連の契約発表から5カ月の準備期間を経た2023年2月21日、東京・渋谷で6日間限定のPOPUPストアがオープンしました。

アダストリアのプレスリリース(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001798.000001304.html)より

同時に、アダストリアの公式ECサイト、ドットエスティ(.st)やZOZOタウンで販売を開始しました。ただ、常設店舗は当面、大阪都心部のベッドタウンに立地するららぽーと門真店(4月17日オープン)のみとなります。東京や大阪の一等地に大型店舗を構えた2019年以前と異なり、EC中心かつ店舗規模も小さい静かな再出発となりました。

実際、伊藤忠商事は売上高目標として「5年後100億円」を掲げており、単純に売上規模を追う狙いが無いことが窺えます。

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データドリブンで売り場やアイテム数を絞る

日本におけるファストファッション市場は競争が激しくなっています。ファーストリテイリング傘下のジーユーは順調に売上を増やしているほか、中国のSHEIN(シーイン)も2022年になぐり込みをかけてきました。

また、しまむらやハニーズホールディングスなど、低価格〜中価格帯のカジュアルファッション各社も好業績を挙げています。

かつて一世を風靡したフォーエバー21といえど、こうした四面楚歌の市場を攻略することは難易度が高く、従来のような大量生産モデルはリスクが高すぎます。この点はABGや伊藤忠商事は百も承知だったに違いありません。

そこで白羽の矢が立ったのが、すでにドットエスティで1500万人の会員を擁するアダストリアでした。

そのポイントは次の4つでしょう。

  1. 売り場面積を絞る
  2. アイテム数を絞る
  3. データを有効活用
  4. 海外展開も視野に

まず(1)です。かつてのフォーエバー21は都心部に大型店舗を出店していましたが、今回はECを中心に売上を立てていく方針です。1号店が大阪市郊外であり、年3店という出店ペースから見ても、固定費を極力抑えることを優先しているのは明らかです。

実際、5年後の売上高目標100億円の6割はECで稼ぐ青写真を描いています。実店舗に期待される役割は売上ではなく、「EC専業ではありませんよ」という顧客とのタッチポイントにあると考えられます。

次の(2)は大変重要で、プレスリリースや各種報道を総合すると、この春夏で取り扱うのは従来の5分の1程度となる約1000アイテムとなります。また、アパレル商品の80%は日本でアダストリアが企画し、残り20%は米本国から買い付けます。

これまで、多くの海外ブランドが本国のサイズやデザインのまま日本で販売し、失敗を重ねてきました。アダストリアは同じ轍を踏まないようです。

トレンドの“韓国ファッション”の要素を取り入れたニューガーリースタイル

(3)は言うまでもないでしょう。アダストリアにはドットエスティを通じて膨大な顧客データが揃っています。適量販売を実現するには、真に必要な型数で必要な数量を企画する必要があり、これらのデータが大きな役に立つはずです。

また、アダストリアが既に擁している生産背景も強みです。売れ筋をすぐに追加生産するサプライチェーンマネジメント体制が整っているため、かつての大量生産・大量販売・大量廃棄からの脱却というテーマは現実味を帯びています。

アダストリア成長戦略を補完する新収益モデル

アダストリアは日本のアパレル小売において、ファーストリテイリング、しまむらに次ぐ3位につけていますが、2023年2月期の海外売上高比率(単体)は7.5%にとどまります。逆に言うと、人口減が続く縮小市場である国内と違い、海外はまだまだ伸ばす余地が大きいということになります。

一方で、グローバルワーク、ニコアンド、ローリーズファームなど売上高数百億円のブランドを数多く持つアダストリアといえど、勝手が違うライセンス事業は初めてであり、ハードルは決して低くありません。その点、フォーエバー21は3年半前まで日本で商売していたという下地があります。

出所:アダストリアの決算説明会資料

アダストリアはフォーエバー21のサブライセンシー(※)を起爆剤に、中期経営計画で掲げる「グローカル」「デジタルの顧客接点・サービス」を加速させる方針です。東洋経済オンラインに転載されたブルームバーグの記事に興味深い言及がありましたので、一部引用します。

(※)ライセンス契約

同社(筆者注:アダストリアのこと)はフォーエバー21のライセンス事業を他のアジア市場に広げ、さらに別の海外ブランドも手掛けようと目論む。広く認知されたブランドの方が、ゼロから育てるより事業展開にスピード感が出せるためだ。

杉田氏(筆者注:アダストリアのサブライセンシー子会社ゲートウィン杉田篤社長)によると、フォーエバー21向けには新素材も開発中で、今年の夏には試験的な販売を開始する予定だ。人気漫画などとのコラボも企画する。米国のフォーエバー21への提案も積極的に行い、日本発の商品が受け入れられるような展開も視野にある。

「フォーエバー21」3年半ぶり日本へ静かな再上陸(2023年2月22日)

出だしは好調のようです。マスメディアの関心は非常に高く、2月以降のPOPUPストアをきっかけにキー局を含む58社が報道しました。その結果、広告宣伝費換算で約9億円の効果があったそうです(アダストリア調べ)。

ここまでは、アダストリアとABGのマーケティング戦略は大成功を収めていると言えるでしょう。

完成されたブランドに頼って売上高を増やすのであれば、アイテム数の横展開を増やして在庫を縦に積めば事足ります。しかし、それでは残在庫と廃棄が増え、在庫効率(在庫回転率やGMROI)も落ちて資本の無駄遣いになってしまいます。

これでは、投資家や消費者など幅広いステークホルダーの負託と期待に応えることはできません。ライセンス事業という新収益モデルに挑むアダストリアの今後から目が離せません。

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