客単価を上げる方法とは? ユニクロ・ニトリの決算書から読み解く。

日本経済を覆うデフレに新型コロナウイルス禍が拍車をかけ、大手小売が次々と値下げ戦略に舵を切り始めています。中小規模の小売は、大手チェーンの値下げ競争に巻き込まれないよう、価格戦略を見直さなければなりません。

かつては「安価」のイメージだったユニクロやニトリさえも、時代に合わせてコスパを実現しながら客単価を上げ続けており、2社の決算書からは、値上げをせずに客単価を向上させる戦略が読み取れます。

今回は、在庫最適化コンサルタント齊藤孝浩氏が弊社フルカイテン主催のセミナーで紹介した内容をメインに、客単価を上げる方法についてご紹介します。

(※本ブログはこちらのレポートでも読むことができます)

ユニクロは、この10年間で客単価20%アップ

齊藤 氏:ファーストリテイリングもニトリホールディングスも上場企業なので、決算書から一品単価までは出てこないですが、客数や客単価などのデータを追うことができます。

ユニクロの国内事業の既存店プラスEC。2010年8月期はヒートテックが大ヒットし営業利益が過去最高になった時期。そこを100とした推移をグラフにしています。(客単価はグレーの折れ線)

EDLPと値下げコントロール体制

上記のグラフを見ると、12年8月期まで客単価は横ばいですが、その後上がっていることがわかります。一方の客数は増減を繰り返して徐々に減っています。

ヒートテックブームの反動があり、13年8月期は客数を取り戻すために土日だけだった期間限定値下げを、金土日月の4日間へ拡大しました。それで客数、客単価を戻しましたが、14年8月期から15年8月期にかけ原価高騰を受けて値上げを行いました。その結果、客単価は上がりましたが、客数は減ってしまいました。

また営業利益率は下がっていて、16年8月期に12.8%まで落ち、17年8月期には11.8%になってしまいました。この反省からエブリデー・ロー・プライス(EDLP)に。そして同時に、値下げコントロールをしっかりやる体制にしました。この結果、客単価を下げずに客数を挽回していきました。

このように、ユニクロは、1,990円中心のイメージだですが、この10年間で20%も客単価をあげています。値上げで一時的に客離れを招きましたが、客単価をあげながら客数を上手にリカバーしていることがわかります。

ニトリ、営業利益率は16%超をキープ。

ニトリは、2011年2月期以降、既存店売上高は店舗の大型化を反映して順調に拡大中です。
転機になったのが15年2月期。

従来と比べ1割ほど客単価が上がり、現在まで維持しています。客数は15年2月期に底を打ち、16年2月期から右肩上がりになっていて、営業利益率は見事に16%超をキープしています。

客数が減っていく環境で有効な「ハイ&ロー政策」

従来からのお客様が期待する商品は、サプライチェーンの改善によって、価格維持または値下げをしています。同時に高価格帯の商品の投入を始めました。これらはニトリからすれば高価格ですが、マーケットからすれば割安なので、コスパが良いラインナップとなりました。ここが彼らのすごいところ。

当時は大塚家具のお家騒動が起きていた時期です。狙ってかどうかは分からないですが、消費者に「ニトリは安物屋と思っていたが、こんな良い商品もあるんだ」と思わせました。

低価格帯で客数を確保しながら、コスパの良い付加価値商品で上層マーケットから客を奪う、こうした「ハイ&ロー政策」は、客数が減っていく環境では非常に有効です。

中小アパレルがセット率を上げるには

齊藤 氏:ここからは、以上の例から、中小アパレルがセット率を上げるためにどのような学びを得られるか、をお話ししたいと思います。既存店の客数が減っていく時代に皆さんができることは何か。これらがヒントになれば幸いです。

①プライスポイントを意識すること

接客努力や「2点お買い上げで〇〇オフ」といったキャンペーン、品揃えによるセット率アップなど、客単価を上げる戦略は多岐にわたります。

ここで重要なのが、お客様が最も期待しているプライスポイントはブレてはいけないということ。「値上げ」と受け止められて客離れを誘発してしまうためです。
(詳細:在庫を起点に考える「値引きと粗利」

従来のプライスポイントを守りながら、高い価格帯にコスパが良い商品を投入することが肝心。あるブランドのワンピースの例を挙げます。(下図)

プライスポイントである5,999円の商品はしっかりと在庫を持ちながら、差別化を図ることができる6,999円、7,999円の商品を増やしました。その結果、一番売れたのは5,999円の商品でしたが、4,999円の売上は減り、6,999円、7,999円の売上は増えました。全体で数量ベースでは減りましたが、売上高は1割ほど増えました。

②値下げのコントロール手法

皆さん、値下げをしすぎていないか、胸に手を当てて考えてみて欲しいです。値入率や残在庫の原価を計算して、値下げ許容範囲をしっかり把握し、その範囲で値下げを行うことが大変重要です。
(詳細:在庫を起点に考える「値引きと粗利」

この許容範囲内で一気に値下げするのではなく、意思を持って戦略的に値下げしていくことがポイントになります。ユニクロの場合、従来は1,990円の商品を一気に1,290円まで値下げしていました。その後、1,490円というケースが増えました。両者では価格は15%も違いますが、売れる数量はさほど変わらず売上は15%上がったようです。

お客様に低価格が響くのか

瀬川(フルカイテン代表):EDLPと値下げコントロールの背景には、一定の割合で価格に響くお客様が多いということをちゃんと分かっているということがあったんだと思います。

コロナ禍で値下げの動きが広がっていますが、自社の顧客のうち価格に響く客層はどれくらいいるかを把握しているかいないかで大きな差が付くと思いました。

齊藤 氏:その通りですね。私も痛い目に遭ったことがあります。単価を上げて売上も利益も上がって喜んだんですが、2年目には客離れが起きて減収減益です。お客様はシビアだなあと。

結局、値下げを頻発するために「定価」を高めにするという側面が業界にはあるじゃないですか。逆に最初から「リーズナブルプライス」として、値下げしないことの方が重要だなと思います。

瀬川:色んな経営者の方とお話ししていて、特定の指標しか見ていないなと思うことがよくあります。

齊藤 氏 :そういう傾向はあるかなと思います。一つ言えるのは、いま見ている数字は必ず因数分解できるということです。「もう1階層だけ細かいところを見てみよう」という助言をよくします。カテゴリー別は結構されていても、価格帯別まで踏み込んで見ている企業は少ないです。可視化するだけでも違いますよ。

瀬川:主要企業の今年9月の月次速報を調べたところ、無印良品の数字にかなり驚きました。同社は昨年と今年、大規模な値下げに踏み切っていますが、客単価は前年同月から5.9%下がり、客数は0.7%の増加にとどまりました。その結果、売上高は5.2%減少しました。施策としては失敗だったと言わざるを得ないのではないかなと。

ユニクロは値段が響く客層がいると分かっていて値下げしたんだと思うんです。でも無印良品は値段ではなく、テイストや世界観が好きなお客様が多いことの現れだと思います。自社の客層がどういう構成なのかを把握してから値下げしないといけないなと思いました。

齊藤 氏:ただ、前年同月比で見ているので、その前年はどうだったのかは気になります。まあ、社長さんも代わりましたし、次の手に期待しています。

ヒット商品を生かすも殺すも在庫コントロール次第

Q.ヒット商材が出るかどうかの方が、営業利益率に寄与しているのではないでしょうか?

齊藤 氏:その通りですが、ヒット商品を生かすも殺すも在庫コントロール次第ですね。

瀬川:ヒット商品が出るかどうかはほぼ運任せです。期中にいかに利益を失わない形で在庫の消化を進めるかを重視しないと、企業の実力として収益力は付かないでしょう。

齊藤 氏:ユニクロの場合、ヒット商品は前年までの実績から積み重ねるケースが多いので、割と当たりやすい。とはいえ、在庫を仕込みすぎると利益を損なうので気を付けないといけませんね。

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【セミナー登壇者プロフィール】
ディマンドワークス代表 在庫最適化コンサルタント
齊藤孝浩 氏

ファッション専門店の在庫最適化コンサルタント。ディマンドワークス代表。
総合商社でアパレル生産、欧州ブランド日本法人で輸入卸、アパレル専門店で小売販売、商品管理からチェーンストア経営を経験。多くの新興・成長中ファッションチェーンの在庫最適化と人財育成を支援する傍ら、国内外のファッション流通を取り巻く環境や企業のビジネス構造をわかりやすく解説する専門家としても活動中。IFIビジネススクール講師として複数の大学講座のファッションビジネス論にも登壇する。
著書に「ユニクロ対ZARA」、「アパレル・サバイバル」(共に日本経済新聞出版社)がある。


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