アパレルディストリビューター(DB)が意識するべきポイントは”コミュニケーション” ∣元イトキンDBが語る
※最終更新日:2022年11月18日
アパレル企業にとって縁の下の力持ちであるディストリビューター(DB)。本記事ではディストリビューターの立ち上げに携わった筆者の立場から、DB業務の基本と成果を出すために意識するべきポイントについて解説します。
解説:熊谷 学(株式会社アパレル・コンサルティング 代表取締役)
1989年に大学卒業後、イトキン株式会社に入社。1997年に同社初のディストリビューターに任命され、2ブランドのDB業務を担当。
現在はファッションビジネス関連企業に対する戦略面のコンサルティングを提供するとともに、文化ファッション大学院大学の非常勤講師も務めている。
ディストリビューター(DB)とは
まず、ディストリビューター(DB)とは、簡単に表現すると“在庫を配分する人”です。
国語辞典では「分配者、配給者」、「卸売業者」と記されており、国内アパレル企業で勤務しているディストリビューターは前者を意味します。
一般的には店舗の特徴や売れ筋を把握し、売れる店舗に売れる商品を移動することが役割となります。ですが、DBという立場は同じでも企業やブランドの規模、社内の状況等により任せられる業務範疇が異なると思います。
私の場合は、社内初のディストリビューター職に任じられたため、業務範疇の定義やルール作りといった仕組みを0から構築する役割を担いました。あるべき姿を検討して大枠を設定し細部へ落とし込んだのですが、商品の取り扱いに関する変革期であり、相当な苦労がありました。
試行錯誤の末、仕組みを完成させ業務遂行に及んだのですが、その内容は、➀商品が出来上がるまで、②在庫の取り扱い、の2つに分類されます。以下が、当時実施していたディストリビューター業務を簡単にまとめた表です。
※お役立ち資料:【アパレル向け】 余計な値引きを抑制し、プロパー消化率を改善させる方法とは?
ディストリビューターは円滑なコミュニケーションを意識するべき
そもそもディストリビューターの業務の目的は何なのでしょうか? まず、ここを共通認識として社内に浸透させておくことが肝要となりますが、私の場合は「在庫商品の消化を通じブランドの利益が向上すること」と定義し業務に取り組んでいました。
その上でディストリビューター業務の重要なポイントとは、関係者との円滑なコミュニケーションだという考えに至りました。
- 最適となる判断を下す
- 業務連絡として伝える
- その連絡内容に沿って行動を起こしてもらう
- 気持ちよく仕事してもらう
この4つを実行してもらわなければ、ブランドの利益向上にはつながらないと思えたからです。以下、それぞれの内容について記してみます。
1.最適な判断を下す
在庫に関しては最適な判断を下すためにはエビデンスが必要であり、そのためには仮説に基づいたデータ分析が重要になります。
また、商品を追加すべきか消化すべきか、消化する方法は店間移動なのかマークダウンなのか、店頭から一旦在庫を引くべきなのか、など、掘れば掘るほど時間を要す作業です。
この判断については、移動平均法を使うことでエクセルでも3ステップで分析することが可能です。以下の記事に纏っていますので、参考にしてみてください。
関連記事:効果のある在庫分析とは?エクセルでできる方法を3ステップで解説
2.誰でもわかりやすいように伝える
ディストリビューターは、判断した内容を分かりやすく伝えていく必要が生じます。
私の場合、定時連絡として毎週月曜日と金曜日に情報を発信していたのですが、「フォーマットを決め、情報を極力シンプルに記載し、重要項目やイレギュラー項目は目に飛び込んでくるように際立たせる」ことを重視して取り組んでいました。
3.連絡内容に沿って行動を起こしてもらう
そんなの当たり前だろう、と感じられる方も多いと思いますが、これがまた大変です。凡事を徹底することの重要さを、嫌というほど味わいました。
連絡通りことが進まない原因は幾つかに集約されましたが、対策として、コミュニケーションのプロセスといえる「理解、納得、共感」のフェーズ毎に対策を講じました。その内容を以下にまとめます。
4.気持ちよく仕事をしてもらう
在庫最適化といっても、営業や店長、販売員の真摯な取り組みあってこそ実現できることであり、やはり企業は人なりといえます。
ディトリビューター業務はドライな対応になりがちです。その点に重々気を付け、データオリエンテッドでありながらも、血の通ったコミュニケーションを目指していました。失敗したことも数多くありましたが、今でも「気持ちよく仕事をしてもらう」ためのコミュニケーションは非常に大切なことだと考えています。
※関連記事:GDOが欠品率を下げ在庫回転率を上げた秘訣は「マインドセットとPDCA」
ディストリビューター業務のDX化
ディストリビューターとして最適な判断を下すために、データ収集や分析、将来予測等に多大な時間を費やしていると思えます。この部分に最新のテクノロジーを組み込むことで、迅速な意思決定が期待できます。
企業が成長発展していくうえでDXへの取り組みは避けて通ることができません。単なる業務効率化に終わらせず、テクノロジーを活用しながらあるべき姿に社内を変革することが重要です。
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