ZARAやPRIMARKが…発注キャンセルで問われる大手アパレルの品格と在庫問題
新型コロナウイルス危機の影響で、国内外の大手アパレルが工場や製造業者への発注を大量にキャンセルする動きが大きな批判を浴びています。両者の契約がどのような内容になっていて、注文のキャンセルについてどのように規定しているかが分からないので、本稿では野放図な批判は避けたいと思いますが、これだけははっきり言えます。
まず、受注側の工場はアジアに多く、相対的に立場が弱いため、キャンセルはアパレルのブランドイメージを棄損するということ。
そして、キャンセルは在庫問題と無縁ではないということです。
米ペンシルベニア州立大学リベラルアーツカレッジ・世界労働権センター(CGWR)は2020年3月27日、バングラデシュの工場に発注したものの、キャンセル(先延ばしを含む)したアパレル企業の社名や金額を公表しました。
CGWRによると、PRIMARKが2億7300万ドル、ベルギーのカジュアルウエアC&Aが1億6600万ドル、インディテックス(ZARA)1億900万ドルなどと続きます。繊維ニュースによると、H&Mは当発表前に「支払いをコミットした」ことが確認できたため、除外されたとのことです。
その後、インディテックスは発注した商品は全て買い取る意向を明らかにしたそうです。
コロナ危機で衣料品の需要が蒸発し、本来なら5月頃から店頭に並ぶ春夏物が不要になったのは理解できますが、工場の経営基盤は大手アパレルより脆弱。しかも多くの雇用を抱えています。CGWRは「このままでは100万人の縫製労働者が職を失う可能性がある」と警告していました。
ベトナム、そして日本でも
中国、バングラデシュに続き衣料品輸出額で世界3位のベトナムも、受注の蒸発に苦しみました。2020年2~3月は中国からの生地の調達が滞り、3月以降はアパレルからの注文の削減やキャンセルが相次ぎました。
2020年4月18日付日経新聞によれば、バングラデシュやベトナムなどアジア6カ国の業界団体は4月9日、共同声明を出しました。注文キャンセル時に全額補償などを求める内容です。
当記事を一部引用します。
H&Mなどは「生産工程に入った品物は契約通りの条件で買い取る」としているが、「商品完成後に代金減額や支払い延期を求めるアパレル企業も多い」(バングラデシュの団体)。
2020/4/18 日経新聞朝刊
SDGsやESG(環境・社会・企業統治)投資の観点から、劣悪な労働環境や児童労働は改善されつつありますが、次は契約の遵守が課題になっているといえます。
そして、キャンセル問題は日本でもありました。若者に人気の大手アパレルが6月、一部取引先に「7月の商品仕入をすべて一旦止める」旨をメールで通知していた、と信用調査会社がこのほどスクープしたのです。
記事によると、このアパレルは新型コロナの影響で4月上旬にも取引先に「4月納入商品をキャンセルする」とFAXで一方的に通知し、不評を買っていたとのことで、SNSで話題になっていました。
アパレル業界では、力関係の強いブランド側(発注元)が在庫調整のため仕入先にキャンセルを要請することが慣習として長く続いています。
ターンアラウンドマネジャー河合拓氏は、ダイヤモンド・チェーンストアオンラインに2020年6月25日に寄稿したコラムで、以下のように述べています。
一例として、中国工場の日本人と会食した時の話をしよう。そこで語られたアパレル企業、いや、生産事業部の常軌を逸した「仕入れ先いじめ」は驚くほどだった。
ダイヤモンド・チェーンストアオンライン アパレルのEC売上は「アフターコロナの時代でも増えない」理由(河合拓)
(中略)
年商1000億円の企業が50億円程度しかない工場に対して、「ヘッジ」の名の下、契約があるにも関わらず、平気でキャンセルするのである。なぜ、体力のある年商1000億円企業が、たった50億円の規模しかない工場に対し、一旦約定をいれた商品をキャンセルするのか。その理由を解きほぐすと、私が批判している生産部や商社の丸投げ体質の実態が見える。
(中略)
話を、その会食に戻す。私はそんな企業と付き合うなといったのだが、「そんなことをしたら、次回からオーダーをもらえないのだ」という。私が業界にはいった30年前と全く変わらない慣習がまだ残っているのである。調べてみると生産部の人間が前述で述べたように、売場の上司に「ムリ、ムチャ、ムダ」を強要され、また、原材料を残したら怒られるという。
キャンセル問題へFULL KAITENができること
こうした一方的なキャンセルがまかり通る業界に明るい未来があるとは考えにくいですが、解決に向けた糸口はないのでしょうか。
アパレルが注文をキャンセルするのは、商品企画から材料の手当て、生産、納品までリードタイムが長いうえ、リードタイムの間に有事があると販売計画が根底から崩れるのが一因でしょう。
さらに、業界全体として消費者の実需を度外視した大量発注と供給過剰が定着しているのも大きな理由です。普段から在庫過多であるため、発注済みなのにキャンセルしたり値切ったりしたい欲求が出てくるのだと思います。
そこでFULL KAITENができることを考えてみました。小売企業においては、自らの販売力を大きく超える在庫を持つことは、身動きが取りにくくなるうえ、キャッシュフローの面でも経営上の大きなリスクになります。
FULL KAITENは、売上拡大のために在庫を増やし、SKU展開も広げるのではなく、「いま手元にある在庫」で売上を最大化するプロダクト設計になっています。このため、滞留在庫の増大を防ぐことができます。
また、発注にかかる業務負荷を低減できるので、その分発注回数を増やす余裕が生まれます。リードタイムが長くても、多頻度発注が可能になれば、発注1回あたりの仕入れ量が減り、在庫リスクが格段に低下します。
ただ、「多頻度発注になると、発注ロットが小さくなって原価率が上がってしまうのでは?」という疑問を持たれる方も少なくないと思います。これには大きな誤解があります。
大ロットによる原価低減のメリットは、発注した分を全て売れり切って初めて享受できるのです。売れ残ったら在庫が増えて現金が戻ってこないだけでなく、資産価値はどんどん減っていきます。
持続可能なアパレル業界を作っていきたい方、滞留在庫に悩まされている在庫責任者の方はぜひ、FULL KAITENにお問い合わせください。
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(広報 南昇平)