原料や製品の無駄をなくす アパレルに革命を起こした島正博氏の半生記を読んでみた
和歌山出身の発明家、事業家といえば、松下電器産業(現パナソニック)創業者の故・松下幸之助氏がすぐに思い浮かびます。しかしアパレルや縫製、ニット業界では島精機製作所を創業した島正博会長が断トツで有名です。
その半生を綴った『アパレルに革命を起こした男』(梶山寿子著/日経BP)には「発明家、イノベーターとしての才は島さんの方が上と評する人もいる」と記され、欧州のファッション界で島氏の名を知らない者はいないほどだといいます。
島精機製作所といえば、無縫製ニットウェアを作ることができるホールガーメント(wholegarment)横編機が有名。この横編機は1本の糸からニットを1着丸ごと立体的に編み上げることができる画期的な機械です。
それでは、島氏の足跡の何が「革命を起こした」と評されるのでしょうか。半年前の2019年11年に刊行された同書を読んで、その先見性と革新性、社会的意義の大きさがよく分かりました。
廃棄や余剰在庫がなくなる究極のサステイナビリティ
衣料品の生産においては相当な量の資源の無駄遣いが生じています。その代表例が生地の裁ちくず。製品にもよりますが、原料の3割~5割が無駄になるといわれています。
これらを焼却処分する際にも資源を使いますし、二酸化炭素も排出されます。
しかし、島氏が発明したホールガーメント編機は、糸さえあればプログラムに従って洋服を1着編み上げるのです。裁ちくずだけでなく縫い代分の無駄すら無くなります。
サステイナブルなのは原料面だけではありません。コストを下げるために行われている大量生産→供給過剰→売れ残り大量廃棄というサプライチェーンのあり方を根底から変えることができるのです。
どういうことかというと、日本国内で流通する衣料品の実に98%は輸入品で、その多くが中国製やバングラデシュ製です。手間がかかる縫製作業を低賃金で発注するためです。その代償として、アパレル企業は長い納入リードタイムと大きい生産ロットを甘受しているという構図です。
これが業界全体として供給過剰と不良在庫につながってきました。
しかし、ホールガーメントなら消費地で生産できるのでトレンド変化に素早く対応できるうえ、必要な商品を必要な量だけつくることができます。しかも価格は手ごろ。
つまり、パーソナライズされた受注生産と、低コストでの生産を両立させた「マス・カスタマイゼーション」を実践できるツールであるということです。
マス・カスタマイゼーションにより、在庫も売れ残りも廃棄もない究極のサステイナブルなビジネスが実現すると言っても過言ではありません。
著者の梶山氏は「おわりに」でこう述べています。
ESG(環境、社会、ガバナンス)に着目した投資が広がり、SDGsが企業の課題として浮上するなか、島さんが1970年代から目指したものがようやく理解されるようになったということ。
糸さえセットすれば自分にぴったりの服ができ上がり、ほどけばまた1本の糸に還って別のものに生まれ変わる。
循環型社会の実現に、これほど適したシステムはないだろう。
ホールガーメント編機とはアプローチは全く異なりますが、弊社フルカイテン株式会社も『FULL KAITEN』の開発・提供を通じて「大量廃棄問題」に向き合っています。
滞留在庫の増大は「大量廃棄」につながるのに加え、小売企業のビジネス課題としても大変深刻です。そこで、FULL KAITENは「在庫問題」を解決するために、「今ある在庫」で売上を増やし、結果として在庫を減らす新理論「在庫実行管理(IEM)」を実践するための機能を実装しています。
これにより無駄な生産・仕入れと売れ残りの不良在庫の発生を抑えつつ売上を増やすことができます。
興味のある方はデモをご覧いただくことが可能です。
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