店舗の利益を伸ばす客単価UP講座|セミナーレポート
2024/9/26(木)に、オンラインセミナー「店舗の利益を伸ばす客単価UP講座」を開催いたしました。
当日ご参加いただきました皆様に、御礼申し上げます。
本記事では、数々の企業を支援してきたメンバーがセミナー内でお伝えした以下2点についてご紹介します。
- 客単価=利益UPのロジック
- 客単力が高い商品の発掘方法
登壇者:矢田 陽平(フルカイテン株式会社プロダクトカスタマー部 部長)
株式会社ファーストリテイリングに入社。ジーユー日本事業で店長やSVを経験した後に、海外(中国/台湾)で営業/教育責任者として、全店舗の統括、採用/育成プログラムやインシーズンの商売立案を担当。
その後、HR-Techスタートアップでカスタマーサクセスを経験しフルカイテンに入社。現在はプロダクトカスタマー部 部長として、将来の顧客が属する業種・業態を開拓し、市場を創造することに従事している。
客単価と利益(粗利)の関係性を知る
矢田:客単価を上げる施策として、売場変更(VMD)や値引きなどの施策があります。
その中でも、どの施策が客単価=利益にインパクトがあるのか?を見たときに、売上や粗利だけではなく、コスト面(販管費)への影響も考慮する必要性があります。
矢田:各店舗や会社全体で取り組むアクションを細分化してみたのがこちらの一覧です。PL(損益計算書)勘定科目に対して、客単価を上げる施策を可視化してみると「売場開発」「接客」はインパクトが高い施策と言えるでしょう。
商売状況に応じた、客単価動向の重要性
矢田:売上ロジックツリーの構造上、トップに来るのは「客数UP」と「客単価UP」です。
どちらのアプローチを取るかは商売状況により異なります。
認知や市場シェア拡大のいわゆる”拡大期フェーズ”の場合は、マーケティング費用を投下し、客数を取りに行く施策が必要と言えます。
ただし売上のトップラインは引きあがる一方で、コスト投資をするための販管費も上がるため注意が必要です。
成熟期に入っている日本市場では、売場開発や接客強化で販管費を抑えた粗利(筋肉)体質な経営を行うことで、客単価UPすることが重要だと言えます。
客単価向上による高単価
矢田:「客単価」と「客数」を上げる行為はどちらの方が利益が残るかという部分では「客単価」を向上させた方が、人件費を抑えることができるため、結果、営業利益に繋がりコスパが良いと言えます。
客数とコスト(人件費)の関係性
矢田:なぜ「客数」を上げると販管費(人件費)がかさむのかを紐解いてみましょう。
客数UPに伴い、レジ対応、お問い合わせ対応、店舗人員調整が必要となります。
これらは店舗運営している人からすると、コスト高であることは容易に想像ができると思います。
現在の市場渦において、店舗人員の効率化が一般的となり、客数UPは店舗を疲弊させる懸念もあります。そのために客単価UPの方がコスパがよく利益率向上を狙うことができるので、客数UPより効果的であると言えます。
在庫屋視点の売場開発とは?
矢田:売場開発は大きく分けて「演出」「利便性」の2つにアプローチが分けられます。”わかりやすい”、”早く欲しい商品が見つかる”などの利便性を担保することで顧客満足ひいては利益が最大化されます。
売場開発のステップ
矢田:利便性を担保する具体的アクションで大事なことは「売上在庫計画」が起点になります。顧客満足を最大化できる売場とは、売上/在庫/売場の連動がされている状態であることです。また売上優位の商品が欠品なく訴求できる点も重要です。
利便性を担保した売るべき商品をどう選ぶのか
矢田:商品には「売るべき商品」と「売るべきでない商品」があります。
「売るべき商品」とは売上が高いのはもちろん、在庫が潤沢にあり欠品がない商品のことを指します。
「売るべき商品」とは具体的にどのようなことかをより分かりやすいように、縦軸に粗利ランク、横軸に消化進捗をおいた”在庫”を4つにマッピングした図がこちらです。
在庫、売場、人時の3点を効率的に上げる「売るべき商品」とは、右上のBetterあたりにマッピングされた商品と言えます。
商品ライフサイクルの定義
矢田:顧客需要の高い商品を訴求することは重要である一方、売場開発=計画の観点で見ていくと「来週、来月どうするのか?」の計画策定での「未来売れていく商品」こそ適切に訴求することが望ましいと言えます。
売るべき商品の選定フロー
矢田:売るべき商品の中にもダウントレンドや横ばいのトレンドもあります。その中でも”アップトレンド”を選ぶことがとても大切です。
「売るべき商品」をロジックツリーで展開した図がこちらです。
特にここでポイントなのが、フローの起点が「消化」であることです。
ほっといても売れる商品は訴求せず、計画通りに消化が進んでいない中で、売れ筋商品の訴求を強化する=消化に焦点をあてるのが重要です。
客単力が高い商品の発掘
矢田:これまでに述べた通り「売るべき商品」を掴むことも重要ですが、プラスαで「併売する商品」を発掘することもとても重要なポイントです。
「併売する商品」というのは、客単価も上がり、利益にも寄与しやすい商品です。
レシートデータと接続し「売るべき商品」に深みを増すことができるというご提案です。
レシート情報を基に「併売する商品」=合わせ買いしやすい商品かどうかを、システム上でデータとして取れると価値の高い情報になります。
商品毎の併売回数
矢田:では具体的に、弊社が支援している顧客様へアプローチしている方法をお伝えします。
レシートデータを分析すると同時に購入された商品の傾向分析が可能となります。
例えば靴×Tシャツよりも、靴×靴下のほうがより相性の良いセット商品と言えます。
また併売回数も指標として大事な数字です。
他商品を引き付ける商品を訴求することで、結果的に関連購買や比較購買の促進に繋がります。
商品毎の客単価
矢田:次も同じくレシートデータを用いて、客単価の高い商品を選定するという方法です。
これらの考え方を「売るべき商品」に接続すると客単力の高い商品を選定することが可能となります。
レシートデータとの接続で「売るべき商品」に深みを
矢田:「売るべき商品」とレシートデータの情報を接続すると、売るべき商品と客単価を引き上げやすい商品の分析ができ、結果「客単力が高い商品」の発掘が可能となります。
商品群の相性可視化でさらなる深みを
矢田:併売データは商品群というカテゴリーに落とし込むことで、さらにユニークな分析もできます。
例えばジャケットと相性の良い商品群はなんだろうと?と見たときにシャツとなるように、商品群と商品群を定量化することもできます。
これは商品のカテゴリーの話だけではなく、ブランドとの相性に置き換えることもできます。こうして相性を可視化することで、店舗のゾーニングやレイアウトに定量を以って活かすこともできます。
他店舗からの示唆
矢田:店舗の売上(客単価)を伸長させることにおいて、非常に重要な考え方をご説明いたします。
儲かる企業とは
矢田:儲かる企業の要因は複数ありますが、その中でも特に店別の販売進捗がタイムリーに可視化され、好調不調要因の特定ができ、即アクションというサイクルが高速に回ってる企業は儲かる傾向が強いです。
店舗単位でお伝えすると「仕入れた在庫を、仕入れた価格で、自店消化する」ことが重要になっていきます。これは商売の原理原則とも言えます。
とは言え、現場では何が起きているかというと店舗の特性上、なかなか売れない商品などが出てくるのも事実です。そのときは他店舗との差異を早くモニタリングして、ナレッジを横に並べることが大切です。
ただし、ここで非常に重要な観点なのが”どこと比較するか?”ということです。
比較対象が変わると商品の好調/不調の基準も変わってしまいます。
比較先をどう定義するのか?が重要になるわけです。
店舗タイプの定義とは
矢田:自店の異常値モニタリングを行う比較対象の理想は、販売特性が同じタイプが非常に良いと言えます。
例えば下部図で自店と近しいC店、F店、J店がマッピングされているという仮定をしましょう。
ここで言う、丸の大きさは月商で、丸の距離間は店舗の位置を表しています。
ここでポイントなのが、月商ではなく、あくまでも販売特性が近しいものをマッピングします。
販売特性による店舗タイプの定義
矢田:では、販売特性による店舗をどう定義するのか?ということですが、結論は価格帯情報(客単価、平均単価)で区分すると把握しやすいのでおすすめです。
また商品群別の売上構成比も、如実に店舗の特性を表す指標となります。
一般的には店舗の基礎情報と商品群別の売上構成比の2点で定義づけすると、よりノイズのない示唆を得ることができます。
店舗タイプ別の販売特性マッピング
矢田:店舗ビジネスで横軸、縦軸に何を定義するか?も非常に重要ではありますが、一例で
商品群を縦軸、価格帯を横軸で表した図がこちらです。
マッピングで可視化し、店舗比較をしながらアクションを起こすのが大切と言えます。
Q&A
Q1. アップトレンド商品の定義を教えてください。
矢田:FULL KAITENでアプローチしている方法でお伝えすると、ある商品の過去30日間(過去の売上期間)に対して先30日間(未来の売上期間)の売上や粗利がどうなるのか?という乖離分を見て、アップトレンドなのかという定義をしています。
FULL KAITENではAIの予測を活用し、未来の販売期間のトレンドを見ることも可能です。
Q2.Better在庫の中からさらに併売回数の高い商品を打ち出すという理解で合っていますでしょうか?
矢田:まさにそうですね。Better在庫の中をドリルダウンして、さらにレシートデータと突合して客単価が高く、併売回数も多い商品を掴んでいただくと成果が出やすいので、そういうアプローチをしていただくと良いと思います。
まとめ
- ポジティブインパクトで客単価をアップさせる施策は「売場開発」と「接客」。
- 利益を最大化するためには客数向上よりも、客単価の向上をさせた方がコスパ(人事効率)が良い。
- 演出だけでは顧客満足(利益)最大化できないので、利便性をきちんと担保することが重要。
- 「商品選定」「併売分析」「他店比較」のアプローチ精度向上で利益最大化に近づく。
- Better(売上上位品、かつ在庫潤沢にある)商品の中でも、アップトレンドは売るべき商品として特に適している。
- レシートデータ(購買履歴)を分析すると、売るべき商品×併売すべき商品が分かり「客単力が高い商品」の発掘が可能に。
- 店舗特性同タイプの店舗と比較して、異常値をモニタリングするとノイズのない示唆を得られる。(店舗タイプの定義が重要)