導入事例

定価販売でブランド粗利率が約1%向上!全社で挑む在庫意識を高める取り組みとは

株式会社ムラサキスポーツ

スポーツ用品・カジュアルウェア・シューズ

小売
実店舗
EC

1973年に設立し、2023年には50周年を迎えた株式会社ムラサキスポーツ様。スケートボードやローラースケート、サーフィン、スノーボードといったアクションスポーツ用品の販売を通して、アクションスポーツの普及にも貢献しています。スポーツ文化の発信基地でもある実店舗は約140店を展開し、複数のECサイトも運営しています。

同社は、従来から担当者ごとに在庫の分析を行っていましたが、個人によって分析の切り口と粒度が異なり、全社の共通認識を深めたいという課題を感じていました。 

今回は、同社サービス部で全社の課題を見つけ改善に取り組む高木様に、抱えていた課題や、FULL KAITENを導入するまでの経緯、導入後の活用法や成果、展望も伺いました。

※本稿に含まれる情報は、2024年3月時点のものです。(実店舗141店)

写真右が高木様、左は弊社カスタマーサクセス・永田

設立50周年を迎え社内改革に着手

高木様は、1994年神奈川県茅ケ崎市のムラサキスポーツ茅ヶ崎店に販売スタッフとして入社し、新潟店や秋田店、札幌2店舗、藤沢店の店長やチーフ、エリアマネージャーを9年担当。2024年4月よりサービス部に異動。社内の課題を見つけ、改善に向けて取り組みながら同部を統括している。FULL KAITENの活用を社内に推進する役割を担っている。

――2023年に設立50周年を迎えられましたが、会社の変化や新しい取り組みはありますか

高木 弊社は3月が年度末なので4月から新しい期になります。それに向けて、大きな組織変更があったり、これから数年かけて次の時代に向けて組織を変革するために動き出したりしています。

――どのような課題を抱えていましたか

高木 包み隠さずに申しますと、在庫への意識が高いとは言い難かったです。年間を通しての計画は事前に立案しますが、絵に描いた餅になっている傾向がありました。期中にその計画通りに売上が推移していてもしていなくても、在庫をきちんとコントロールできていなかったり、売上が下がってるのに在庫は計画よりも増えていたりする現象も起きていました。

社長の金山(取材時は専務)は以前から全社に対して「在庫に対してもっと危機感を持ちましょう。」と伝え続けていましたが、課題感がありました。

加えて、各人が異なる切り口と粒度で分析をしているという課題もありました。基幹の分析システムと、数字分析のツールを併用していますが、それも各自が見やすい形で数字を管理しており、誰もが同じ視点で見られるツールを探していました。今までの方法だと分析の仕方や観点も異なるため、どうしても話が噛み合わなかったり、売上にだけに集中してしまったりすることもありました。

FULL KAITEN導入前の在庫課題を話す高木様

――導入したきっかけは何ですか

高木 2022年の繊研新聞でFULL KAITENに関する記事を拝見したことがきっかけです。記事を見てすぐにお話を聞きたいと思い、社長の金山(当時は専務)と桑原(当時は専務室)が貴社代表の瀬川さんとアポイントをとって、大阪本社に伺いました。帰り際には、「契約しよう。」という話になったと聞きました。

すぐに導入を決めた決定打は、瀬川さんが「必ず全店で客単価を100円上げます。そうすると数億円の利益になります。絶対に損はさせません!」と言い切ってくださったことです。

金山はこの時に「この方は間違いなく信用してよい方だ。」と思ったそうです。

FULL KAITENの導入が決まった時は、見やすい画面なので皆が同じ見方ができるところに大きな魅力を感じました。

――具体的な活用方法を教えてください

高木 現在は、商品部と営業部が貴社カスタマーサクセスの永田さんからレクチャーを受けながら活用を進めています。基本的な使い方としては、毎週月曜日のフルカイテン定例会で参加メンバーと情報を共有して、前週の実績を基に1週間の計画を立てて店舗に情報配信をすることが多いです。他にも、店長が困っている際は店舗に行くこともあるのですが、FULL KAITENでそのお店を分析して、「こんな傾向があるから、こんな風にしたらもっと良くなると思います。」という話をしてくれているエリアマネージャーもいます。

個人的には、FULL KAITENは小売業の業務の中で商品部に特化した機能が強いと思っているため、商品部の方が比較的スムーズに自走が進みました。各部でどのように活用しているか端的にお話しします。

【商品部】
売価変更:いつまでに消化できそうかの予測を参考に、一部の商品を対象に売価変更の検討やプロパー販売期間の延長を実施。

在庫移動:これから夏の繁忙期に向けて店舗間移動を実施する体制が整った状況。

【営業部】
FULL KAITENの分析による「予測に基づいた在庫の質」に応じて、打ち手の方針を決定

①まだ定価で売れそうな滞留在庫の露出強化

Better在庫(※1)の左上(具体的には、ヒートマップのCとD ※2)に属する商品を抽出して、店頭の平台に置いたり、ゴンドラ中でも一番目に留まるような棚に置いたりすることで露出を強化。これにより、定価に近い価格で消化を促す。

(※1)FULL KAITENは、今ある在庫全てをBest、Better、Good、Badの4つに自動で分類可能。これにより、それぞれの分類の中で何をすればよいのかを早く判断できる点が特徴。

  • Best:早く売り切れそうで、売上・粗利にも貢献する「売れ筋在庫」
  • Good:早く売り切れそうだが、売上・粗利には貢献しない「様子見在庫」
  • Better:売り切るのに時間はかかるが、売上・粗利に貢献する「隠れた売れ筋在庫」
  • Bad:売り切るのに時間がかかり、売上・粗利にも貢献しない「危険在庫」
FULL KAITEN〈在庫分析〉のデモ画面
(※2) FULL KAITEN〈在庫分析〉のデモ画面。BetterのC、Dは赤線で囲った箇所

②自店と他店で売れているものを比較

BestとBetterに属する商品(ヒートマップ機能でいうAからD)は売上への貢献度が高いので、AからDに属する商品且つ全社で1位の商品を抜き出した。その商品の品番を品番検索ボックスに入力し、自分の担当エリアや自分の担当店舗で分析すると、全社で売れてるものが自分のエリアや店舗でどのような売れ方をしてるか分かる。

FULL KAITEN〈在庫分析〉のデモ画面。BestとBetterに属する商品は赤枠で囲った箇所

現在、各地方の担当エリアマネージャーが上記①、②の施策を店舗を巻き込んで実践中。全社での売れ方とランクを元に、自身のエリアでのランクを確認し全社で売れているものは更に良い場所に陳列するといった指示も出している。

③「在庫あり/売上なし」商品を洗い出し、消化を促進

ヒートマップ機能の分析対象外にある「在庫あり/売上なし」商品は、店舗には在庫があるが直近で売上がないため放置すると滞留在庫になる可能性が高いと考えられる。シーズン後半には値下げの対象商品となり粗利ダウンの要因となるので、品出しがされているか、陳列場所が適正かをチェックして滞留在庫にならないよう留意している。

FULL KAITEN〈在庫分析〉のデモ画面より。☑を入れて分析すると、設定した未来の完売予測日までに「在庫あり/売上なし」の状態になる可能性が高い商品が一覧で表示される

④併売率を見て客単価を向上

現在のFULL KAITEN画面上では算出できないデータのため、カスタマーサクセス・永田さんに『この商品を購入した場合はあの商品も購入する傾向が高い』というリストを算出して頂いている。ゆくゆくはFULL KAITENに実装してほしい機能の一つで、弊社ECチームからは「ECのレコメンドに活用できる!」という声が挙がっている。他の小売業からのニーズも高いと感じる。

不要な値引きを抑制し粗利が向上

高木 2023年の夏に、商品部が行った売価施策で成果が出ました。当時、某メーカー様から「期中なので、このタイミングになったら値下げして消化してください。」とオファーがありました。しかし、FULL KAITENで分析すると値下げしなくてもまだまだ売れるということが分かったので、商品部からメーカー様に「この商品はFULL KAITENによるとまだ定価で売れるので、値引きしないで定価で売ります。」と交渉を続けました。

結果的に理解いただくことができて、対象期間の粗利率が0.7%向上しました。取引金額の大きいお取引様なので、0.7%はかなりインパクトがありました。

写真左奥から時計回りに、永田、高木様、斉藤(筆者)

――作業時間は削減できましたか

高木 はい。以前は、在庫移動の時期になると、消化促進の為、バイヤーは数時間かけて在庫移動指示書を作成していました。仕入数、販売点数、現在庫から消化率を算出して、どの店舗に何点移動するのかを考えるのは気が遠くなる作業でした。

ですが、FULL KAITENでは移動指示書を数分で出力できるので、バイヤーの労力もかなり短縮されると感じています。初めは「時短にはなるけど、その精度はどうなのか?」という議論になり社内で検証した期間がありました。ですが、実際にバイヤーが時間をかけて作った資料とさほど差異はありませんでした。

このことから、FULL KAITENを使ったほうがより効果的で時間も短縮できると感じたため、次の在庫移動シーズンには定期的に実施する予定です。作業負担が軽減されたことでバイヤーの時間にゆとりができたため、その分、分析や情報収集、店舗への訪問などに時間を回すことができるようになったという報告を受けています。

利用者を拡大しさらなる成果へ

高木 社内でFULL KAITENへの理解度や知識も確実に上がってきているので、更に利用者を増やして沢山の意見が生まれる土壌を作りたいと思います。これはいつも弊社カスタマーサクセス・永田さんにはお伝えしていますが、「FULL KAITENを使ってこういう見方ができたらいいのに。」であったり、「こういう使い方ができたらいいのに。」という要望は沢山あります。

特に、店舗で活用する機能となると、今まで以上に沢山の要望が寄せられると思うので、ぜひ実現して頂きたいと思っています。

最近は、店舗でFULL KAITENを活用している企業は、どのような使い方をされていらっしゃるのか興味があります。効果的な使い方や推進するにあたってどのような苦労があったのか聞きたいです。実際に現場で活用されている皆様と交流できる機会を設けていただけるとありがたいです。

――今後の活用計画を教えてください

高木 商品部は、夏の繁忙期に向けて在庫移動と値引き抑制を定期的に実施する予定です。

店舗に関しては、前述した①から④の4つの施策を時期を加味して実施します。例えば、プロパー時期は①に集中し、繁忙期や閑散期に近づいてきた時には②と③という風に使い分けをしながら進めていこうと考えています。

――弊社カスタマーサクセスへのご意見はありますか

高木 貴社カスタマーサクセス・永田さんは、いつも全力投球で真剣そのものです。こちらが要望したことに対しても想像している以上のものをスピード感をもって返してくださるので、今以上にこういう風にしてくれたら嬉しいというリクエストはありません。

毎週月曜日に1時間の定例ミーティングがありますが、その前週の金曜日に月曜日のミーティングで話す内容の作戦会議を実施してくださっています。これによって、私と永田さんの共通認識が深まるので、会議に出席する人数が多かったとしてもスムーズに進行できています。
こんなにきめ細やかにやりとりをしてくださるので、正直「ここまでして頂いて良いのですか?」と思うことはあります。

――FULL KAITENへのご要望はありますか

高木 細かい要望はさておき、あと一歩でとても使いやすくなる機能がいくつかあるので、そこは改善をしていただけたら、更にユーザーが増えると思います。今の発言と矛盾するかもしれませんが、FULL KAITENは軽微な改善も含めアップデートがかなり多いです。進化していて凄いですが、ついていくのが大変です!

永田 貴社から頂いたご要望は全て書き留めて、弊社のプロダクトオーナーに伝えています。今は、そのうちどれを優先するかを検討しているところです。

――最後に一言お願いします

高木 2024年はFULL KAITENを導入して2年目になります。今年はより多くの結果に繋がる重要な年にしたいので、引き続き永田さんにはご協力いただきながら、業績アップに努めたいと思います。

取材後記

ムラサキスポーツ様は定期的に全国の店長が集う勉強会を開催されており、2024年3月には弊社代表が講師として在庫に関する講演をする機会を頂きました。その際も、皆様の在庫への意識の高まりを感じ、皆様が真剣にメモを取りながらお話を聞いてくださっている姿に感銘を受けました。

勉強会の様子はこちらからご覧になれます。

https://note.com/fullkaiten_re/n/n9243a147aff6

取材の途中で、高木様に「金山社長が高木様をFULL KAITENの推進担当者に指名したのは何故だと思いますか?」という質問をしました。すると、高木様は以下のように答えてくださいました。

直接聞いたことは無いのですが、まずは社内の在庫に対する意識をもっと高めること。もう一つは私たちぐらいの世代が新しいことにチャレンジをしていって、若いメンバーが次のステージでさらに活躍できる環境や組織を構築するためだと思っています。

今年51期目を迎え、これまで以上に新しいことに挑戦するムラサキスポーツ様のように、弊社も一丸となって、お客様の成果に最大限貢献してまいりたいと感じた取材でした。

左から、斉藤(筆者)、高木様、永田、岡崎(マーケティング)。取材の最後に記念撮影