事例インタビュー

ブランド価値を高めるために、“作業”から社員を解放。毎月の店間移動で全体売上の1%を創出した方法とは

株式会社ディティジェイ

高級インポート婦人服

アウトレット店舗

課題

  • 「品番数は多いが奥行きは狭い」という特徴がある在庫をどう移動させるかの判断が困難
  • 大量SKUに対して人力で分析していたため、作業時間が膨大になっていた

解決策

  • FULL KAITEN〈店間移動〉で月に1回シーズン品の中から移動対象を絞り込み、作成した移動リストを各店舗への指示として送付

定量成果

  • 月1回の店間移動を3か月間で実施したことで、年間売上の1%を創出
  • 店間移動リストの作成時間に1回あたり2日ほど要していたが、2時間ほどに短縮

イタリア高級婦人服ブランドのアウトレット運営行う株式会社ディティジェイ様は、従来、人力での店間移動による売上、消化の適正化と業務負荷に課題を感じていらっしゃいました。

今回は、同社の営業部で売上と消化の最大化に取り組む堀川様と安河内様に、高級ブランドならではの課題や、年間売上の約1%を創出した店間移動の成果事例、働き方改革への挑戦なども伺いました。

※本稿に含まれる情報は、2025年4月時点のものです。

写真左から、弊社カスタマーサクセス 清水、株式会社ディティジェイ 堀川様、株式会社ディティジェイ 安河内様

在庫の横幅は広く、奥行きは浅い在庫と格闘する日々

営業部の堀川様と安河内様にお話を伺いました。

堀川様

  • 執行役員 営業本部長
  • 店舗運営の総責任者として、MD、SVなどのメンバーが働きやすい環境を整備

安河内様

  • 営業部 マネージャー
  • MD、催事企画/運営、EC管理など販売に関わる業務を推進

――どのような在庫課題を抱えていましたか

堀川様 弊社はイタリア高級婦人服ブランドで1年間プロパーとして販売されたものを仕入れ、数年間販売します。該当品は全て受け入れるため、かなりの品数になります。

数シーズン分の在庫はそこそこ物量がありますが、ほぼ全てを弊社のアウトレットで販売します。高級品のため在庫の奥行きは比較的狭いですが、品番数の横幅はかなり広いのが特徴です。

在庫の奥行きがどの品番も同じくらいあるのであれば、各店舗に均等に振り分けて移動する方法もあると思いますが、そうではないのでどの店舗に何を移動するか判断するのが困難です。今まではこの工程を人間が膨大な時間をかけて考えていたため、改善が必要だと思っていました。

安河内様 「在庫の品番数は多いが在庫の奥行きが狭い」という特徴がある在庫をどのように消化するか、データから示唆を得て判断するのは難しいと感じていました。

「何が売れた」「何が売れない」という感覚はスタッフごとに異なりますが、FULL KAITENのようなシステムがドライに判断することで、固定概念を無くし、広い視野で判断できるのではないかと感じています。

堀川様 人力で膨大な数の在庫を分析するのはかなりのリスクで、大幅な時間のロスに繋がるためAIでの在庫分析に対する期待値が高かったです。在庫の増加と比例してスタッフの負担も増えるため、労働生産性を上げることも大きな課題でした。

――これまで実施していた在庫消化施策を教えてください

堀川様 以前は悩みながら、担当者の経験と勘で店間移動をしていました。加えて、売れた商品を週に1回フォロー出荷することで、売上をキープできるようにしていました。

店舗に配分しても売れない商品はファミリーセールで販売することもありました。

安河内様 私は在庫移動の実務を担当していますが、以前は在庫の奥行きが狭いためデータの差が出にくく示唆を得づらかったです。

――なぜFULL KAITENを導入しようと思いましたか

堀川様 弊社とお付き合いのある企業様から、「FULL KAITENという在庫分析のシステムがありますよ。」と声をかけていただいたことがきっかけです。

はじめは「フルカイテン株式会社ってユニークな社名だな。」と思っていましたが、今のAI技術では、生産や企画段階からの需要予測を完璧に予測するのは難しいという見解が弊社にもあり、売り始めてからの在庫運用フェーズに特化しているという考え方に共感しました。

加えて、フルカイテン株式会社・瀬川代表が、在庫分析システムの開発に至った創業秘話には壮絶なものがあり、その血を吐く様な経験にも感銘を受けました。

コンセプトに共感したことに加え、労働生産性向上にも寄与すると感じたので導入を決めました。

株式会社ディティジェイ 堀川様

毎月の店間移動で全体売上の1%を創出!2日かかった作業も2時間へ短縮

――FULL KAITEN〈店間移動〉の具体的な活用法を教えてください

安河内様 移動の商品選定や設定などは毎回色々なパターンを試しています。

直近では、物流コストを加味したうえで、月に1回ほどシーズン品の中から移動対象を絞り込み、私が作成した移動リストを各店舗への指示として送付し、店間移動を実施しています。

何度か移動をするうちに、「この商品群は移動する必要が無いかもしれない。」という傾向が見えてきました。弊社はアウトレット業態ですが、1シーズンに何回も来店してくださるお客様が多いため顧客対応が多いです。せっかく来店してくださったのに「また同じような商品が並んでいるな。」とガッカリさせてしまうのではなく、商品の鮮度が新鮮なうちに、適切な在庫移動で売場の鮮度も上げたいと思っています。

店舗は、自分がお気に入りの商品、もしくは売れている商品なら「売れている」という実感を持つのですが、ノーマークの商品が売れるとあまり印象に残りません。こういう場合に店舗から「この商品を店間移動して意味があるのですか?」という声が挙がりますが、これはFULL KAITENが私たちが気が付かなかった隠れた売れ筋商品を見つけたということなので、とてもよい傾向だと思います。

――在庫配分の成果をどのように評価していらっしゃいますか

堀川様 2024年11月~2025年2月にアウトレット全店舗(10店舗)にて月1回の店間移動を3か月間で実施したことで、年間売上の1%を創出しました。年間売上の1%は大きな金額で、移動をしなかったら滞留したままになっていた可能性が高い在庫が他店で消化できました。

1%は少ないように感じますが、仮にA店の年間売上予算が3億円の場合、売上の1%は300万円になります。もし接客で300万円売ろうとすればとても大変なことですし、全店売上の1%となると更にインパクトは大きいと思います。

これを、今ある商品の移動で創出できるのは実は凄いことだと思っており、弊社はそこを高く評価しています。

斉藤(筆者) 移動を実施した店舗の平均稼働率は58.5%でしたが、この数字をどう評価していらっしゃいますか?

安河内様 稼働率は高いと思います。とある店舗の稼働率は74.4%でした。店舗は移動した商品が売れればFULL KAITENを使って店間移動をする意味があることが分かると思うので、活用を継続していく上で最も分かり易い指標だと思います。

定性成果

安河内様 以前は店間移動リストを作成するのに1回あたり2日ほど要していましたが、現在は2時間ほどに短縮しました。

私は営業部所属でMDも兼務しておりますが、空いた時間で今までできなかった新しいことに挑戦してみようと考える余裕が生まれました。

堀川様 弊社ではアウトレット専用品を一切作っておらず、プロパーで販売している商品と全く同じクオリティのものを販売しています。お客様にはお得感をきちんとお伝えすることが大事なので、店舗のスタッフが更にブランドについて語れるようになるように本部側も時間を使えるとよいと思います。

――導入を推進する際に、社内で壁になったことはありましたか

安河内様 日々忙しく働いている店舗スタッフからしてみれば、新しいITシステムを導入するとなれば既存の仕事にプラスされるため「面倒だな。」という気持ちになりがちです。FULL KAITENを導入する際も、今までの仕事にプラスアルファされるという認識だったので、まずは私が「FULL KAITENを導入することでこの業務がこう変わる。」と理解するところからはじめ、「それを自分の言葉で伝えたい。」と決め行動しました。

でもスタート時点ではそんなに簡単ではなく、慣れるまでは沢山時間を使いました。成果が出るまではみんな「面倒だし、本当に良い結果が出るのだろうか?」という不安を抱えながらスタートしました。ここをどう乗り切るかが肝になると思います。

株式会社ディティジェイ 安河内様

ブランド価値を高めるために、“作業”から社員を解放する

――チームや店舗の皆様からの率直なご感想を教えてください

安河内様 FULL KAITEN導入にあたって、ハレーションを起こすかと思っていました。ですが、意外と最初からそこまで大きな衝突はありませんでした。

「移動して本当に意味があるのですか?」という質問はありましたが、店間移動の業務自体には反対はしてません。

それは何度か移動する中で、自店で売れない商品は他店に移動し、自店で売れそうな商品が入荷して売れるという成功体験を積んでいったからだと思います。だから店舗スタッフはポジティブに取り組んでくれました。

――弊社カスタマーサクセスへのご意見はありますか

堀川様 店長とのコミュニケーションは店長会という形で、年2回実施しています。前回の店長会に、貴社カスタマーサクセスマネージャーの我妻さんにご参加いただきFULL KAITENの説明と質疑応答に対応いただいたのですが、参加して本当によかったです。

我妻さんがフルカイテンの生い立ちや製品の詳細などを話してくださったことで、店長達には「外部のよく分からないシステムが入ってきた…。」で終わらず、「こういう人がいる会社なんだ」や「こういう趣旨でシステムを導入するんだ」ということも伝わり、非常に有意義な時間でした。

本部側の我々にとってはFULL KAITENはあくまでも在庫分析の支援ソフトで、店舗側にとってはさらに遠い存在です。先ずは弊社本部側の理解を深めるために、カスタマーサクセス担当の清水さんと2週間に1度オンラインで顔を合わせて、実施した施策の結果の振り返りや相談などを実施していますが、大変きめ細かくフォローしていただいております。

安河内様 初めは1,2回操作方法をレクチャーしていただき、あとは何かあれば連絡をくださいという形式なのかと思っていました。ですが、今も手厚くミーティングを実施してくださっているので不明点はいつでも解消でき安心感があります。
堀川様 我妻(弊社カスタマーサクセスマネージャー)さんは常に笑顔を絶やしませんが、顧客を成果に導くために、時に厳しく接する姿勢も持ち合わせています。清水さんも次回までに弊社が取り組むアクションを決めないと絶対にミーティングを終わらせないですよね。そういう厳しさがあるほうが弊社としてはとてもありがたいですし、カスタマーサクセスはFULL KAITENの強みだと思っています。

――さらにFULL KAITENを使いたいと思っている領域や構想があれば教えてください

堀川様 既にFULL KAITENを使ったフォロー出荷の実現に向け、動き始めています。理想的には、在庫が入荷したら在庫データを読み込ませるだけで店舗への配分ができると嬉しいです。

効率よく在庫分析を実施し販売に繋げることが一番大事で、これはフルカイテンのミッション(世界の大量廃棄問題の解決)と同義だと思います。

もう一つは、適切に在庫を消化すると同時に、仕事にかかる時間も減らしたいです。

これは私の考えですが、日本人は働き過ぎだと思います。FULL KAITENはシステム上で膨大な在庫データの分析をしていますが、人が何日もかけて人力で在庫分析をしたら、仕事をやった感は出ると思います。

ですが、人力での分析はただの作業ですので、『仕事』ではないと思います。作業を一生懸命して、私は一人前だと思っている方が多い気がしています。

もちろん、FULL KAITENのようなシステムに任せるのはコストもかかり抵抗感がある方もいらっしゃるとは思いますが、私は社員や店舗スタッフに『作業』をしてほしくありません。

そんなことはシステムに任せて、ブランドの価値を上げる取り組みにご自身のエネルギーや頭脳を使っていただきたいですし、それらを効率よく取り組みきちんと休みを取ってほしいです。

労働時間の長さからプライベートを顧みる時間も確保できず、巡り巡って様々な社会問題が引き起こされていると感じています。

――FULL KAITENへのご要望を教えてください

安河内様 FULL KAITENでの操作は一通り覚えましたが、できることが多岐にわたるので、仮に別の担当者に引き継ぐ際に「何から話そう?」と正直思います。
極端なこと言えば、MD担当が毎年変わる企業様もいらっしゃると思うので、社内の引継ぎがスムーズにできるような仕組みもあれば助かります。

取材後記

ディティジェイ様の取材で印象的だったのは、従業員の皆様が幸せに生きるためにどうすべきかを突き詰めて考えていらっしゃる点です。

「人力での分析はただの作業ですので、仕事ではないと思います。」というご発言にハッとしました。どうしても自力でやるのが偉いといった固定概念があり、本来自分のエネルギーや脳を使うべきであるクリエイティブな仕事に割く時間が無くなるのは本末転倒だと思いました。

加えて、「労働時間の長さからプライベートを顧みる時間も確保できず、巡り巡って様々な社会問題が引き起こされていると感じています。」というご発言からも、視座の高さを感じました。

FULL KAITENは在庫課題の解決にとどまらず、ワークライフバランスにも寄与できるような存在価値を高めていきたいと気付かされるような取材でした。