売上、粗利、消化率が向上!「本来、もっと移動すれば売れたのに。」を脱却し全店で成果を出した道のりとは
株式会社ティムコ
1969年に設立し、国内のフライフィッシングのパイオニアとして、フィッシングスクールや商品の提供を通じて、その啓蒙と発展に努めていらっしゃる株式会社ティムコ様。竿から衣料品に至るまで、すべてのフライ用品を取り扱う唯一の企業でもあり、世界的に有名なオリジナル商品の開発も積極的に展開しています。
同社は従来、リソース不足から数店舗に絞って在庫移動を実施していましたが、在庫が偏り欠品や余剰の問題が発生していました。
今回は、同社のアウトドア部企画営業課で在庫の最適化に取り組む、佐藤様と甲斐様に抱えていた課題や、アウトドアブランドであるFoxfire(フォックスファイヤー)事業でFULL KAITENを導入するまでの経緯、導入後の活用法や定量成果も伺いました。
※本稿に含まれる情報は、2024年8月時点のものです。
限られた店舗しか在庫移動できず、歯がゆさを感じていた
アウトドア部 企画営業課の佐藤様と甲斐様にお話を伺いました。
佐藤様:課長(Foxfireブランドの直営店運営を統括)
甲斐様:西日本エリア営業担当、ディストリビュート実務(Foxfireブランドの在庫関連実務を担当)
――どのような課題を抱えていましたか
佐藤様 店舗への初回投入までは売上や店舗規模に応じて本部主導で決めますが、在庫配分をするディストリビューター(以後、DBと表記)が不在だったため期中のフォロー出荷は店舗に任せていました。そのため、在庫バランスの悪さによる機会損失が多く、歯がゆさを感じていました。せめて売上上位店の機会損失を防ぎたいという思いで、私がDBを兼務したのですが、他にもすべき業務があるため、DBに充てる時間は月曜日の午前中のみでした。
月曜日に移動の指示を出さないと週末に間に合わず、午前中の数時間だけで全店舗の移動指示を出すのは無理があったので、数店舗に絞っていました。そのため、いつも「本来、もっと移動すれば改善できたのに。」という悔しさがありました。
甲斐様 私自身、3年前は店舗にいたので、欠品や余剰に対して「売上の高い店舗により効率良く在庫配分できないか」という考えや、在庫のアンバランスをどうにかしたいという思いもありました。現在はFULL KAITENを活用し在庫配分業務も実施しています。
――釣具、アウトドア業界ならではの慣習、在庫課題とは?
佐藤様 一般的なファッションアパレルと違いアウトドアブランドは、アウトドアアクティビティに必要なアイテムをインフラとしてできるだけ揃えたいという思いが私にはあります。一方で限られた仕入予算では、売れ筋にしっかり奥行きをつけられないことが課題としてありました。
今(8月初旬)は登山シーズンのため、靴やトレッキングポールなどのギア、レインウェアなど色々なものを揃える必要があります。自分がギア等を購入するとして、レインウェアだけを売っているお店よりは、全て揃うお店の方が嬉しいですよね。
「この商品はもっと沢山あれば売れそうだな。」と思っても、現実はなかなかそうもいきません。
――導入前の在庫分析方法を教えてください
佐藤様 正直に言いますと、十分な在庫分析ができていませんでした。店舗ごとに在庫目標は決めていますが、私としてはとにかくトップラインを上げたいという思いがありました。粗利益重視の考え方も十分理解していますし、全くその通りですが、粗利益は売上からしか発生しませんから、とにかくトップラインを上げよう。トップラインが上がれば必然的に在庫効率は向上する、と考えていました。
斉藤 店舗からは「もっとこの商品があれば売れたのに。」のような声が寄せられていましたか?
佐藤様 はい。「この商品は今の倍くらいあってもよかった。」や反対に「こんなになくてもよかった。」という声もありました。店舗は売上を第一目標としていますが、本部は売上に加えて粗利や在庫月数なども目標にしています。店舗では売上を伸ばしたいので、一番恐れているのは欠品です。ファーストオーダーの初回発注分は計画として組んでいますが、そこから先はある程度、店長の裁量に任せていました。店舗面積がコンパクトで売上規模の小さい店舗でも、欠品を恐れて発注する店長もいれば、旗艦店と呼ばれるような売上規模の大きい店舗でも、あまり頻繁に発注しない店長もいます。これが在庫のアンバランスに繋がる側面もあったと思います。
――導入に至ったきっかけと決め手は何でしたか
佐藤様 店頭在庫コントロールが十分にできていない状態だったので、しっかりしたシステムを導入すれば確実かつ安定した効果が出ることは確信していました。問題はその費用対効果だけでした。いくつか比較したなかで、FULL KAITENの仕組みが弊社に合いそうだと感じたことと、迅速で分かりやすい説明で導入を決めました。
斉藤 弊社の他にどのような選択肢があったかと決め手を教えてください。
佐藤様 とある在庫最適化サービスとFULL KAITENが選択肢にあったのですが、会社として在庫の効率化を進めるという目的に対して、御社のご提案を伺い「かゆいところに十分手が届いている」と思いました。
FULL KAITENのトライアル期間中(3か月間)の成果を振り返り、年間約3%の売上は残せるだろうと感じました。導入で成果が出ることは間違いなかったので、導入するとかかるコストなど費用対効果を算出し上席に訴えました。私の後任が必要だったことと、社内の流れとしても在庫効率化に注力していたこともあり、スムーズに導入が決まりました。
――具体的な活用方法を教えてください
甲斐様 1週間のうち、2回(月・木)倉庫からの出荷と、1回(月or火)店間移動を実施しています。また日々の売上や在庫状況を把握するために、戦略ボード機能の商品グループ比較を毎日確認しています。
斉藤 毎日、FULL KAITENにログインしてくださっているとのことで、利用が定着していると感じます。秘訣はありますか?
甲斐様 佐藤から倉庫出荷と店間移動に関しては、私が主担当で取り組むよう指名を頂きました。元々、週に2回ほど店長が店舗発注をしていたので、それに合わせて発注頻度はなるべく変えずに実施するようにしています。
せっかくシステムを導入したので、使えるものは使おうというスタンスでいます。毎朝9時頃にFULL KAITENからデータが連携されるので、出勤したらメールを見たあとにFULL KAITENを立ち上げて、在庫の状況が視覚的に分かる戦略ボード機能を見ています。
全店で売上高、粗利益高、在庫消化率が向上
佐藤様 FULL KAITENを導入してから、以下のような成果が出ております。
定量成果
- 4月~6月の全店実績(プロパー+アウトレット+EC)を合算して以下の成果
- 全店(プロパー+アウトレット+EC)
- 売上高前年比:+6.6pt
- 粗利益高前年比:+2.3pt
- 在庫消化率:+3.6pt
- プロパー店舗のみ
- 在庫週数前年比 -10週
- 在庫消化率前年比 +1,5pt
- プロパー消化率前年比 +12.7pt
- 全店(プロパー+アウトレット+EC)
原価率向上とセール期間が一週間ほど延びたことによって粗利率は低下したものの、トップライン(売上高)が上がり粗利額はキープできました。
FULL KAITEN導入前は、「この店だけは売上を落としたくない」という店舗を選定して、在庫移動先を考えてしていました。在庫を抜かれる店舗についてもある程度の配慮をしながら作業したつもりですが、結果的には偏っていたのだと思います。導入後はそうした『ひいき』が無くなり、全体最適が進んだことで倍以上の商品が動き、トップラインの向上につながったと思います。
FULL KAITENは一定の条件のもと、公平な目線で移動する商品を選定するので、商品を抜かれる店舗にも商品が移動されることもあります。そういう点では、店舗の仕事量は増えましたが、今までよりも納得感がある移動になったと感じています。
作業時間の面でも、短時間で全商品を高頻度で分析できるようになりました。
甲斐様 配送コストの観点で言うと、プロパー期はエリア区分を設定してなるべく近隣店舗で在庫を回すようにしていたので、配送コストも抑えられたと思います。セールが始まってからは配送コストよりも適切な在庫配分を優先したかったので、エリア区分は設けずに実施しました。
定性成果
佐藤様 在庫業務の教育コストが低減し、業務の引継ぎもスムーズに行えました。私が実施していた私なりのやり方を伝えていくのは、非常に難しいと思っていました。
FULL KAITENを導入すると決め、初期から甲斐に任せています。業務の属人化を防ぐのが目的とはいえ、運用で効果を高めていくにはある程度の経験値が必要だと思います。そこで、若くITに明るく、在庫への課題感を持っている甲斐に任せました。
斉藤 甲斐様は、佐藤様にFULL KAITENの運用を任命されたときはどう思いましたか?
甲斐様 私は元々店舗におり在庫への課題感は強く持っていたので、FULL KAITENに興味がありました。分析時に様々な指標が選択できるので、初めは使いこなすのに苦労しました。弊社が見たい数字とFULL KAITENで表示される数字に相違が生まれることもあったので、その際は慣れるまでリストを作り、疑問点があればカスタマーサクセスの清水さんに質問しました。
清水さんから「こういう風にしたらもっとよくなると思いますよ!」とアドバイスを頂きながら、習熟度を上げていきました。
FULL KAITENを導入して一番良かったのは、今までより多くの商品を見ることができ、在庫移動をする際にある店舗は在庫を抜かれるばかりではなく、必要なものであれば、売上規模の小さい店舗にもきちんと在庫が移動されるところだと思っています。
――成果へ導くためにどのように社内を巻き込みましたか
甲斐様 まずは私がプロパー店舗を対象にFULL KAITENを使い、今はアウトレット担当も在庫移動を行ったり、各エリアマネージャーも商品グループ比較を見たりしています。
斉藤 利用者を増やした理由や、利用者を広げる際のコミュニケーションについて教えてください。
佐藤様 実際に手を動かすかどうかは別として、運営に関わる全員が同じ意識を持ってもらいたいと考えました。FULLKAITENの戦略ボードによって得られるデータから、今まで気づかなかったような店頭の動きを見つけ出し、営業施策を提案してくれるものも出てきました。
在庫移動については、当初プロパー店から導入しましたが、売上規模の大きいアウトレット店なら、よりFULL KAITENの威力が出ると確信し、利用範囲を拡大しました。こちらについてはアウトレット店舗のエリアマネジャーに一任しています。
甲斐様 利用者を広げた当初は担当から電話がかかってくることも多く、私が最初に悩んでいたような内容について相談を受けました。それに対して自分の体験を踏まえて一緒に取り組みながら理解を深めていきました。私も一人でFULL KAITENを使うよりも、同じ課題を持つ仲間がいた方が色々と発見もあります。
より多くの品番数、商品点数の移動をしたい方におすすめしたい
――実際に導入してみて特にお役に立てている点を教えてください
佐藤様 本来、ピークイン(売上が大きく伸長し、売場を拡大する期間)のタイミングで在庫を移動できるのがFULL KAITENの強みだと思います。弊社においては、ピークアウト(売上が大きく下降し、売場を縮小する期間)の在庫消化に最も効果が出ていると感じています。まだまだ弊社の活用の仕方でトップラインと在庫効率の両方を上げていけると感じています。
また、常にアップデートされ、新しい機能が追加されていくのもよい点だと思います。
甲斐様 今後は、ピークアウト以前にあるべきところに在庫を移動し、早めの段階でプロパー販売することで期末のセールを減らし粗利向上を実現したいです。
――どのような課題を持っている方にFULL KAITENを勧めたいですか
佐藤様 売上上位店舗、上位品番の店間移動に偏っており、今よりも多くの品番数・商品点数の移動を実施したいと考えている方におすすめです。
少人数での運営で在庫分析をしていらっしゃる場合、様々な業務の兼任もあって現場の力量に任せてしまう傾向があるのではないでしょうか。そのような企業さんは効果を実感しやすいと思います。私はFULL KAITENを使い「やっぱりITの力は強いな。」と感じました。
分析はシステムに任せて、生まれた時間を本来すべきことに充てることができたらよいなと思います。
――チームや店舗の皆様からのご感想を教えてください
佐藤様 移動の頻度が増えて店舗からは賛否両論ありますが、以下のような声も届いています。
- 在庫移動で入荷してきたものは売れることが多い
- 求めるものが届いている
- 今まで在庫を抜かれることしかなかったのに、必要な在庫が入荷するようになり有難い
甲斐様 上記の声は店長からメールや電話で連絡を頂くこともあれば、私がお店を回った時に直接聞くこともあります。
――今後どのようにFULL KAITENを使っていきますか
甲斐様 導入して半年が経ちますが、まだ使いこなせていない機能もあるので、より成果の出る在庫日数の設定や移動品番の抽出方法を模索し、売上向上につなげたいです。
春夏シーズンが終わり、改善点も明確に見えてきているため、秋冬シーズンは更なる定量成果を期待できると思っています。具体的には、在庫日数の見直しや、在庫移動のタイミングも改善したいです。
期初は商品が一点売れると一点フォロー出荷をする設定になっているのですが、在庫日数の設定が短いとその一点すらフォローしきれないことがありました。在庫数の下限値設定についてもカスタマーサクセスの清水さんからアドバイスを頂いたので、今後に活かしていきたいです。
――弊社カスタマーサクセスへのご意見を教えてください
甲斐様 清水さんに「弊社が実現したいことはこうなんです。」と相談すると、基本的な方法から裏技まで教えてくださるので、弊社が理想とするものに近づいています。
時には私が無茶ぶりとも言えることを相談してしまっていることもあると思うのですが、いつも迅速かつ丁寧に対応してくださるのでとても助かってます。
清水(弊社カスタマーサクセス) 質問を頂くことで「こういう時はどうすればいいのか?」と考えるきっかけになるので私も勉強させて頂いております。考えた結果、「ここの設定を変更してみよう。」や「こんな裏技もあるな!」と自分の手を動かして上手くいった方法をお伝えするようにしています。
斉藤 清水さんは前職でDBを長く経験されていましたよね?
清水 はい。以前は全商品を自分の目で見て分析していたので、佐藤様や甲斐様のご苦労が分かります。ティムコ様のアウトドアブランドであるFoxfire(フォックスファイヤー)は、店舗に沢山の在庫を積むブランドではないので、在庫日数の設定など初めは試行錯誤をしました。現在はティムコ様独自のやり方を作っているところなので、更なる成果に向けて一緒に取り組ませて頂きたいと思っております。
――FULL KAITENへのご要望はありますか
佐藤様 弊社はFULL KAITEN〈在庫配分〉を導入していますが、それ以外のFULL KAITEN〈在庫分析〉、FULL KAITEN〈補充発注〉などのシステムをより安価に追加できるようにして頂きたいです。例えば、セット割引のようなものが適用されると良いと思います。
特にFULL KAITEN〈在庫分析〉が気になっており、値引きの抑制に活用できるのではないかと感じています。
現在はSKUごとに今後の売上予測を立てているとお聞きしましたが、SKUごとでは、他のサイズが欠けているのに特定のサイズだけが店舗へ届いてしまうことがあります。品番ごとで予測できると、店舗にはより納得感のある移動ができると思います。
編集後記
ティムコ様の取材で印象的だったのは、システムが得意なことはシステム任せながら、ご自身が納得するまで手を動かして試行錯誤していらっしゃるところです。
「システムに全部任せよう。」や「システムには任せられないから、今までの方法でやってみよう。」という偏った考えですと成果を創出することは難しいだろうと思います。
導入当初は、見たい数字とFULL KAITENで表示される数字に相違があり試行錯誤することもあったそうですが、慣れるまで手を動かし分からないことはCSに聞いて根気強く取り組むことで、活用の範囲も広がり全社で更なる成果に向け活用を進めていらっしゃいます。
お話しの中で「分析はシステムに任せて、生まれた時間を本来すべきことに充てることができたらよいなと思います。」と仰っていましたが、数字分析はFULL KAITENが担い、ティムコ様が本来すべきことに没頭できるよう最大限貢献してまいりたいと感じた取材でした。