【MD必見】予算を達成させる販売計画の立案ノウハウ|セミナーレポート
2023/8/31(水)に、オンラインセミナー「【MD必見】予算を達成させる販売計画の立案ノウハウ」を開催いたしました。当日ご参加いただきました皆様に、御礼申し上げます。
本記事では、数々の企業を支援してきたメンバーがセミナー内でお伝えした以下2点についてご紹介します。
- 予算達成できる販売計画の立案方法
- 販売計画の精度向上のステップ
- 販売計画のPDCAの回し方
登壇者:田中 大介(フルカイテン株式会社カスタマーサクセス 責任者)
2007年にアクセンチュア株式会社に入社。大手アパレル企業を中心にMD、DB、店舗運営の領域にて様々な業務改革/DX推進プロジェクトに従事。
その後、化粧品ブランドにて店舗運営統括責任者、ホームセンターにて経営戦略室マネージャーとして事業会社を経験。
2022年4月よりフルカイテンに参画。カスタマーサクセスチームの責任者として、定番品を扱う企業を中心に複数の小売企業を支援を行う。
登壇者:永田 舞(フルカイテン株式会社カスタマーサクセス)
新卒より約5年間、コレクションブランドの販売員に従事。
その後、店舗・ECの両方でアパレルMDを担当。大手スポーツアパレルでは、モール出店の担当・運営からMD予算の計画など幅広く業務に携わる。
現在は、フルカイテン株式会社カスタマーサクセスチームに所属し、第一線で顧客支援を行う。
【お役立ち資料】販売計画立案ガイド|予算達成のためのポイントを解説
販売計画とは
田中:まず、販売計画とは、売上や在庫の消化の状況からどのように売上を作って予算を達成するのかを決める作戦書であり、現在地と予算をつなぐ役割を持っています。
販売計画がうまく策定できず、精度の低いものになってしまうと、発注のタイミングや発注数量を誤ってしまい、機会損失や余剰在庫の原因となってしまいます。
さらに、販売計画は商売におけるすべての計画の根幹であり、商品企画・開発はもちろん、発注や在庫配分、売り場作りなどの販促施策にも影響を与えます。
販売計画の質は、その他の計画の質にもつながるため、精度を向上させることが事業成功に大きく貢献するのです。
販売計画と予算の関係
田中:販売計画を策定する上では、それぞれの予算との関連性を理解することが重要です。
上の図からわかるように、販売計画は商品サイドの予算と販売サイドの予算を繋ぐ架け橋となります。事業全体(中期経営計画)からブレイクダウンしていくことで、品名計画などの商品側の予算と店舗別の月別予算などの販売側の予算が設定でき、それらを合流させることで販売計画が完成します。
つまり、販売計画は予算をベースに策定されているため、精度の高い販売計画を作るには正確な予算設定が不可欠となります。
ここでご注意いただきたいことは、予算比・計画比はあくまでも100%で着地することが理想、ということです。
予算を実際の目標より高く設定したほうがよい(ストレッチにした方がよい)、という考え方はありがちなものです。実際、ご支援している中でも、予算の8割達成できればよいと考えている、というお声を聞くことがあります。
しかし、そのように予算比が実際の目標とズレていると、在庫が滞留したり、発注のタイミングがうまくいかないなどの不具合が必ず発生するため、予算比は100%を目指すことが重要です。
【お役立ち資料】販売計画立案ガイド|予算達成のためのポイントを解説
販売計画立案の4STEP
田中:ここからは、どのように販売計画を作成するのかを予算設定から具体的にご説明いたします。以下では、年商30億、店舗数30店舗を持つ企業を想定して、販売計画を策定するまでのシミュレーションを行っています。
STEP1: 年間予算と月別予算の設定
年間予算を策定する上で、まずは事業全体を前年度と比較してどのくらい売上を伸長させるかを決めます。以下の表では、既存店で102%、新店で106%を売上を伸ばすことを目標に年間予算を設定しています。
次に、この年間予算を月別予算に落とし込んでいきます。店舗の開店・閉店や季節の市場動向(シーズン性)を考慮して、それぞれの月の目標を設定しましょう。
STEP2: シーズン予算の策定
月別予算を作成したら、それを元にシーズン予算を組みます。
シーズン予算を策定する上で最初に行うことは、月ごとにシーズン構成比を決定し、月別予算を割り当てることです。例えば、1月の売上を春物: 15%、夏物: 1%、秋物: 14%、冬物: 69%で構成するとし、この構成比に合わせて1月の予算を春、夏、秋、冬に割り当てていきます。(以下の表では、割合が高いシーズン順に緑で色分けがされている)
そして、シーズンごとに割り振られた予算を合計し、シーズン予算を設定します。
1月から6月のS/S予算を設定する場合は、それぞれの月で春夏に割り振られた予算を合計することで算出できます。(以下の表の黄色いマーカーの部分)
STEP3: カテゴリー予算と品名計画の作成
このようにしてS/S全体の予算を設定したら、これをさらにカテゴリー予算ごとに落とし込んでいきます。
ここで意識したいのが、カテゴリーごとの戦略です。このシミュレーションでは事業全体で106%の売上伸長を目指していますが、特にWOMENSの売上を伸ばしたいと考えています。したがって、以下の例では、WOMENSの売上を110%伸ばすのに対し、KIDSは102%とカテゴリーごとに強弱をつけて予算を設定しています。
さらに、このWOMENS、 KIDSといったような大分類のカテゴリーから、品目の中分類のカテゴリーに予算を落とし込みます。
上のカテゴリ予算②の例では、WOMENSの全体の予算を品目(ワンピース、シャツなど)の構成比に応じて割り当てています。
このようにしてカテゴリー予算を設定したら、その金額を目標に、どのような商品をいくらでいくつ売るかを企画し、品名計画を作成します。例えば、ワンピースの品名計画であれば、売上予算に届くようにワンピース全体の価格と仕入れ数を各品番ごとに設定します。
STEP4: 販売計画立案
品名計画が完了したら、月別予算と合流させて、販売計画を立案しましょう。
品名計画で設定した品番ごとの仕入れ数を元にして販売期間や売上の流れを計画し、月別で販売数と在庫数を決めていきます。
また、売上状況や在庫状況を見ながら、達成するべき予算に合わせて調整を加えるのも販売計画の役割です。
販売計画から売上状況と在庫状況を的確に把握するには、表を商品軸の「横」と販売軸の「縦」の2つの観点から見ることが重要です。下の図からわかるように、販売計画は横で見るか、縦で見るかによって表の意味合いが変わります。
横で見た場合は、販売数と在庫数が時系列で並んでいるため、仕入れた商品が計画通りに消化しているのかを確認することができます。一方、縦で見た場合は、月別予算に対して、実際の売上がどれくらい出ているのかを確かめることができます。
このように、販売計画の横軸と縦軸で見る意味を理解し、販売側と商品側の両軸から販売計画を分析することで、売上状況と在庫消化状況などの実績(現在地)と予算(ゴール)の乖離をより正確に把握することができます。
【お役立ち資料】販売計画立案ガイド|予算達成のためのポイントを解説
販売計画の精度を向上させるには?
田中:詳細な販売計画を立案するためには人手や時間が必要になるため、企業やブランドの置かれている状況に合わせて、段階的に予算や計画の幅を広げ、販売計画の精度を上げていきましょう。
以下の図のように、シーズン単位→カテゴリー単位→商品単位…と、徐々に細かくしていくことで、必然的に精度は向上します。
FULL KAITENの支援事例
田中:ではここで、FULL KAITENが実施した販売計画の支援事例を永田さんに解説していただきます。では、永田さんお願いいたします。
永田:はい。まずは、上の図のSTEP1に該当する、シーズン別・月別のカテゴリー予算をお持ちのお客様の事例について解説いたします。
こちらのお客様は、シーズンで商品カテゴリごとの仕入れ予算はあるものの月別の在庫計画がなく、また、品番あたりの仕入れ予算を一律に設定していたことで、機会損失や在庫過多が発生しておりました。
以上を改善するにあたって、まず月別の売上予算に合わせて在庫計画をご作成いただき、品番数と品番ごとに必要な受注金額を月別で算出しました。
加えて、品番ごとに発注数の強弱がつけられていないことが課題としてありましたので、プロモーションと連動して、月別で売るべき品番を事前に決めていただきました。
これらの解決策を実施していただくことで、シーズン中に在庫計画の進捗も確認できるようになったため、軌道修正が可能となり、シーズン終わりには過剰在庫が改善されました。
では次に、ステップ2に該当する、月別の売上予算・在庫計画をお持ちのお客様に向けた支援事例を解説いたします。
こちらのお客様は、月別の売上予算と在庫計画は立案されていたのですが、カラーやサイズの発注の詳細までは決めていない、という状況でした。そのため、カラーやサイズの販売傾向を感覚で把握していたため、発注は一律で行っており、結果、機会損失や在庫過多が発生しておりました。
ここで弊社がまずご提案したのは、新商品のモニタリングです。カラーやサイズごとに販売の初速からプロパー販売期間の売上実績を分析することで、プロパー期間で売れるサイズやカラーの傾向を特定することができ、発注数に濃淡をつけることが可能になりました。
現状把握を行ったことで、販売計画を整理することができ、現在は適正な販売計画が立てられております。
では、私からの説明は以上となりますので、田中さんにお戻しします。
販売計画のPDCAの回し方
田中:永田さんありがとうございました。
では最後に、精度の高い販売計画を策定するためのPDCAについてお話したいと思います。
販売計画を立案するのはかなり大変で、精度を上げるためさまざまな努力をされると思います。しかし、それを実行した上でもなお、実績とは乖離が出てしまうというのが現実です。
しかし、だからといって計画が無意味だというわけではありません。元々、立てた計画が基準となるからこそ、現実との差分が測れます。つまり、その差分を今後の販売計画に反映することで、さらなる精度の向上が期待できるのです。
このように差分を最小にする力を弊社では「修正力」と呼んでいます。実績と販売計画の間に起こる乖離を次の販売計画に生かすには、PDCAが欠かせません。
PDCA(振り返り)を行っていく上では、カテゴリ単位(ワンピース、パンツなど)の売上状況・在庫消化状況の検証が非常に重要になります。
カテゴリ単位での検証を行わない場合、売上が不調な品番があったとしても、全体の状況が把握できず、どこにどのような対策を打つのが最も効果が出るのかがわかりません。
しかし、カテゴリーごとに現状を確認することで、異常値を特定しやすくなり、全体の売上状況にインパクトを与えられるものから優先順位をつけながら施策をうつことができます。
具体的には、以下の表のようにカテゴリ単位の販売計画を予算の観点(縦軸)と在庫の観点(横軸)から分析することで、修正力を大幅に改善することができます。
FULL KAITEN〈在庫分析〉では、AI予測に基づいて在庫データを分析し、消化進捗の悪い在庫を可視化することができます。打つべき施策と在庫が一目でわかるようになることで、販売計画業務の負荷を軽減することが可能です。
販売計画の立案〜PDCAの回し方をより詳細に説明した資料は、以下からダウンロードいただけます。
【お役立ち資料】販売計画立案ガイド|予算達成のためのポイントを解説
まとめ
- 販売計画とは、予算達成のための作戦書(どうやって予算達成をするか?)
- 販売計画の前提となる予算自体の精度も大事
- 本来的に、予算比・計画比は100%で着地するのが理想
- 販売計画の検証のポイントを押さえれば必然的に精度は上がる
- 計画の粒度を細かくすれば精度は上げられるが、事業フェーズに応じて、段階的にステップアップしていくことが大事
- 販売計画は立てて終わりではなく、実行の中で必ず乖離が出てくるため、PDCA(改善アクション)を回し続けることが大事