事例インタビュー

回転率13%上昇、2桁増収中でも倉庫費用2割カットを実現した店間移動の威力

エルソニック株式会社

雑貨

小売
実店舗
EC

課題

  • 店間移動の商品選定やリスト作成、店舗への移動指示に1週間ほど時間を要するなど作業負荷が大きく、トレンドを逃しかねない状況だった
  • EC用と店舗用とで在庫管理が分離しており、店舗側は売れる余地があるのに在庫が足りず、販売機会ロスが生じていた

解決策

  • FULL KAITEN〈店間移動〉を活用して店舗で売れ行きにばらつきのある品番をすぐに割り出し、移動指示書を1日で作成
  • FULL KAITEN〈店間移動〉の活用により店舗ごとの「売上ポテンシャル」を可視化し、ポテンシャルに見合った在庫配分を実施

定量成果

  • 適時、適切な店間移動により、FULL KAITEN導入後の在庫回転率が昨対比113%に改善
  • 全社売上高が毎月2桁成長を続ける中でも倉庫保管料を昨対比で2割カット

エルソニック株式会社様は、全品390円(税込429円)均一の商品を扱う雑貨店、THANK YOU MART(サンキューマート)を全国で展開しています。2024年夏からFULL KAITEN〈店間移動〉の活用を開始し、移動指示書の作成の効率化や在庫配分の最適化に取り組んできました。その結果、在庫回転率が前年比で13%上昇したほか、売上高が毎月2桁成長するなかでも在庫高をコントロールして倉庫費用を2割カットすることができました。

本記事では、エルソニックの商品物流部長・工藤様と商品開発課長・西谷様、商品開発課主任・高橋様にFULL KAITENを通じた取り組みについてお話を伺いました。

左から工藤様、西谷様、高橋様

※本記事に含まれる情報は2025年12月中旬時点のものです。

店舗の「売上ポテンシャル」を可視化

ーーFULL KAITEN導入前はどのような課題をお持ちでしたか。

高橋様 以前の店間移動指示では、対象商品の品番リストを作るだけでもかなりの工数がかかっていました。当社は商品数の多さがお客様にとっての魅力の1つではありますが、だからこそ人力での店間移動には限界がありました。本当に全力でやっていましたね。

まず品番を絞り込むのに2,3日かかります。そこからさらに、どの店からどの店に動かすかを考えるのにも2,3日かかっていました。他の業務もありますから、1週間かけて品番リストを作り、次に移動のリストを作って、ようやく指示を出したら今度は店舗がまた1週間かけて動かしていました。売れるのはさらに1週間後という、すごく時間のかかるサイクルでしたね。

ーーそれだけ時間が経ってしまうとトレンドも変わってしまいますよね。そこにFULL KAITEN〈店間移動〉を導入されて、どのように業務負荷が軽減されましたか。

高橋様 品番リストだけだったら、複数条件を設定したとしても1 日で終わるようになりました。FULL KAITENを使うことで、店舗ごとにばらつきのある品番や消化に時間がかかる品番などをすぐに割り出せるようになった効果です。リストを作っている間にも在庫が動いてしまいますから、リスト作成の時間短縮は本当に劇的な変化ですね。助けられています。

西谷様 仕入れ管理の見地で消化見込みを見ている立場からすると、店間移動によって全体の消化スピードが速くなりましたので、仕入れ業務でも役に立っています。販売の経過を追っていて、最後のあと一歩のところで在庫が残っている商品が滞留している店舗にしかないとなると、消化は止まってしまいますよね。そこを可視化して計画どおりに消化されていくようになっています。

その結果、全体で見ると回転率が上がってきています。追加発注のスパンが徐々に短くなっているところに効果を感じます。

ーー従来の店間移動は店舗側が主導していたとお聞きしています。FULL KAITEN導入によって本部主導に変えたことで、どんな変化や成果が出たのでしょうか。

工藤様 従来は店舗マネジャーが勘というか「売れているだろう」という感覚で移動させていました。FULL KAITEN導入後は、それまで見過ごされがちだった欠品アイテムを確実に補充できるようになった点が大きいですね。実際は欠品しているのに、店頭の現場では気付きにくかった潜在的な欠品に対しても、本部が全店のデータを横串で分析することで、必要な店舗へスピーディーに移動ができるようになりました。

やはり、キャラクター商品や目玉として打ち出しているトレンド商品というのがよく売れるのは当たり前であって、それ以外に実は継続的に売れていて、いつの間にか欠品していた商品が別の店では滞留しているという実態は、数字を見ないと分からないですよね。でも、品番が多すぎて目が行き届かなかった。ところが、そうした売上中位の商品や少し売れている商品の扱いが、売上や回転率の向上にかなり重要だったわけです。FULL KAITEN導入後、在庫回転率は昨対比で113%伸長という非常に大きな成果となりました。

高橋様 当社は全国85店舗で常時4000~5000アイテムを扱っています。誰もが「売れ筋」と認識している商品以外にも売れている商品があることに気づくことができたのは大きな変化だと思います。

ーーありがとうございます。とはいえ、FULL KAITENによって優先度をつけて戦略的に在庫を投下するとなると、従来よりも在庫の配分(割り当て)が減ってしまう店舗も出てくると思います。そうしたお店からは異論も出てきたのではないかと拝察しますが、どのように説得なさったのでしょうか。

工藤様 そういった声はありました。この点に関しては、山﨑さん(フルカイテンCS=カスタマーサクセス)からデータをいただいて、移動先の店舗における消化状況を毎週確認しています。しっかりと数字、データに基づく公平な判断に基づいて移動を実施しているということをフィードバックし、商品一点一点をしっかりと売り上げるという意識を全体で上げていきましょうということを店舗に落とし込んでいますので、全社で売上と消化率を高めていこう、と意識付けができているかなと考えています。

ーー「商品の売上ポテンシャル」とその可視化というのは、FULL KAITENによって売上・粗利を向上させるうえで必須の概念です。FULL KAITEN導入から早期に成果を上げられた要因はどんなことだったのでしょうか。

山﨑(フルカイテンCS) エルソニック様のケースでは当初、対象を上位の店舗に絞って開始しまして、移動の結果を見ながら徐々に対象店舗と対象商品を拡大していきました。 探り探りで始めて、各お店に消化が進んでいるという成果をお見せして、現場の方々に納得感を抱いていただいたうえで全社へ拡大していきました。

工藤様 成果が出た背景は山﨑さんがおっしゃった通りです(笑)。やはり小売業というのは、立地や店舗の坪数などの複数の要因を経験則で判断しながら在庫配分を決めていくのが普通だと思います。それに対してFULL KAITENは、実績データから「 その店舗が本来どれだけ売る力を持っているか」を数値として可視化してくれます。

これは、私たちにとって新しい視点だったと同時に納得感のある指標でした。結果として在庫配分や移動の精度が格段に上がったという風に考えています。

390円への再統一はブランド価値の再定義

ーー御社は物価高の折、上代を390円(税込429円)均一へ戻されましたね。価格改定というのは一大改革だったと思います。

西谷様 2022年までは390円均一でしたが、2023年のコロナ禍が明けた頃から高価格帯の商品を投入し始めました。

工藤様 原価が上昇する中で100円ショップが200円や300円の商品を扱い始めるなど、業界全体が値上げに動くタイミングでしたね。とはいえ、お客さまから見たら390円が2倍、3 倍になってしまうということで、一気に780円、1170円になります。やはり、私たちの強みは「ワンプライスで迷わず買える」という点です。安くて可愛いものが揃っているっていうところが、シンプルかつ強力な価値になっていたという点を再確認したんです。それで、社内で様々な議論を行い、社長が代わったタイミングで2024年12月から390円均一に戻しました。サンキューマート本来のブランド価値を再定義し直す取り組みだったんです。

価格を戻したことによって価値が明確になり、客数が一気に戻ってきました。以前の均一時代を上回る売上を達成しています。これに単に価格が戻ったからだけではなく、商品開発を強化した成果だと思っています。トレンドの把握やキャラクター企画などに注力し、「390円なのに欲しくなる」という商品力を磨いたことで、価格戦略×商品戦略の相乗効果によって売上増につながったと考えています。

具体的には、店頭のリフレッシュと言いますか、毎週金曜日にキャラクター新商品を店頭に並べるので、お客さまからすれば週末にサンキューマートに行けば常に何か新しい可愛いものがあると感じていただける仕組みはできていると思います。そこが以前の均一時代と大きく変わったところですね。

山﨑 これはすごいことだと思います。本当にすごいですよ。

西谷様 はい、毎週かなり必死にやっております(笑)。開発部の努力の結果ですね。390円だからこそ原価率を上げず維持するようにしています。かつ商品のクオリティは上がっているんですよ。

オール390円にする前は、価格設定に合わせて原価を上下できましたが、それが一切できなくなりました。どうしても原価率が高くなってしまう商品カテゴリもあるにはありますが、原価率が低いアイテムも一定数入れることで全体のバランスを取るようにしています。「全体で見れば〇〇%を超えていないよね」というような意識を全員が持って動いているんじゃないでしょうか。

滞留商品にもメスを入れる

ーーEC用在庫を実店舗へ振り分ける業務でもFULL KAITENがお役に立っていると伺っています。

工藤様 そうですね。私は以前ECを担当していたのですが、倉庫には決まった数量が「EC用」として入荷してきます。そのためEC用在庫を優先的に消化したい一方で、店舗側には売れる余地があるのに在庫が足りないという状態が発生しやすく、結果として機会ロスが生じていました。店舗用、EC用それぞれの在庫管理をお互いに見ることができていなかった点もネックでした。それがFULL KAITENの分析によって、店舗ごとの回転率や売上余地、在庫の過不足が定量的に見えるようになりました。店舗では完売しているもののECには残っている商品が割と多くありましたね。

また、売上の伸長に伴って保管料がどんどん上がっていたので、そうした倉庫費用を削減したいという思いもありました。EC用在庫を適正化することで、保管料を20%カットすることができました。属人的だった在庫配分の一連の業務の「根拠」を誰もが見える形にし、社内全体で同じ“在庫の地図”を共有できるという効果がありましたね。

ーー390円均一という価格戦略と商品開発の強化により、売上高が昨対比で2桁成長を続けています。今後どのように在庫政策を進めていくご予定でしょうか。

工藤様 2桁の伸長を今後も継続するために、これまで以上に在庫配分の精度を高める必要があります。最も重視しているのが、売上の伸び代が大きい店舗を正確に見極め、そこへ優先的に配分していくということです。従来は、各店舗が持つ実力値や潜在力を正確に測る指標が十分に揃っていなかったので、売上ポテンシャルに対して在庫量が追いついていないケースが散見されました。FULL KAITENでそうした店舗へ優先的、戦略的に在庫を投入できるようになり、全社としての売上最大化をより効率的に進められると期待しています。

あと、どうしても売れない滞留在庫が生じはじめているのも事実でして、それらをいかに店舗間で回しながら消化させていくかというところが次の課題かなと考えています。滞留在庫をどの店舗に回せば最も速く効率よく売れるかを、適正在庫との差分と移動の投資対効果のデータに基づいて判断できるようにしていきたいですね。

高橋様 全体の在庫高を抑えていくという意味でも、滞留在庫の扱いは重要ですね。極端な話、目につくのはやはり売れ筋商品なので、店舗にある在庫のうち、本当に売れる商品は何パーセントありますか、となっても、多分あまりないんですよ。そういう状況は解消していきたいです。滞留している商品を、全体にもう1回再分配をして、売れる商品でも売り場を再構成していく形にできたらなと考えています。

ただ、アイテム数が多いので人力では絶対に見切れません。そこはもう、FULL KAITENと御社の力を借りてやっていきたいです。

ーー山﨑になんでもお申し付けください。本日は誠にありがとうございました。