事例インタビュー

“人では不可能”だった分析が1時間で完了。『仕組みの改善』で創出した年間利用料以上の価値とは

株式会社ドーム

リテール部門

アウトレット店舗

課題

  • 出荷業務における定数設定のロジックが不明瞭で属人的だったため、Excelでのデータ管理が限界に。業務効率の低下を招いていた
  • 定数設定の属人化が在庫の一部店舗への偏りという形で顕在化。高売上店で過剰な在庫を抱えがちな一方、その他店舗では欠品が発生していた

解決策

  • 倉庫在庫がない商品を対象に、FULL KAITEN〈店間移動〉を活用

定量成果

  • 1度の移動でFULL KAITENの年間利用料を回収できるほどの粗利を創出
  • 今まで2日ほどかかっていた店間移動リスト作成が1回あたり1時間に短縮

1996年に設立し、「社会価値の創造」のビジョンのもと、スポーツ人口の増加や需要促進といったスポーツ業界の経済的な発展を目指す株式会社ドーム様。「アンダーアーマー」の日本総代理店として、アパレル・フットウェアを中心にスポーツプロダクト事業を展開し、BRAND HOUSE、FACTORY HOUSEなど全国に36店舗を展開していらっしゃいます。

同社は従来、在庫移動の業務負荷の高さから場当たり的な対応になってしまっていたことで、在庫が偏り欠品や余剰の問題が発生していました。

今回は、同社で在庫の最適化に取り組む坪井様に、抱えていた課題や店舗を巻き込むアクション、定量成果、今後の展望なども伺いました。

※本稿に含まれる情報は、2025年4月時点のものです。

写真左から、弊社プロダクトカスタマー部・永田(ドーム様支援担当)、株式会社ドーム Retail&EC Divisionリテール部 Head of プランニング&ディストリビューションチーム・坪井大樹氏

人力での分析は限界。偏在する在庫が引き起こす悪循環を全社で打破

――本日はよろしくお願いいたします。まずはじめに、坪井様の業務内容をお伺いできますか

坪井様 株式会社ドーム Retail&EC Divisionリテール部 プランニング&ディストリビューションチームに所属をしており、プロパー直営店チャネルやアウトレットの予算達成(売上、利益)に向けた予実管理から在庫配分、その他消化促進のための施策実施をしております。

――どのような在庫課題を抱えていましたか

坪井 弊社の出荷業務は自動フォロー(在庫の定数を設定しそれに合わせて前日在庫との差分を出荷する仕組み)と手動フォロー(出荷したい数量を手入力)の2パターンあります。

自動フォローにおいては定数という仕組みが存在していたものの、その定数の設定ロジックが不明瞭で、人の感覚に頼って決めるケースも多くありました。

また、定数の設定が属人的だったことにより、全ての管理をExcelで行っていたことも課題となっていました。例えば、アウトレットであれば30店舗分という膨大なSKU数があり、数十万行に及ぶExcelデータを人の目で分析するのには限界があります。結果として、業務効率は悪くなり、作業が属人化してしまっていました。

その影響は、在庫の偏りにも現れていました。高月商店舗では繁忙期の欠品を避けるために多くの在庫を積んでいましたが、1SKUだけでも物によっては100枚以上の在庫があり、「本当にこれだけ必要なのか?」と疑問を感じることもありました。

自動フォローによる出荷では、高月商店舗が売れ筋商品を優先的に引き当てる傾向があるため、こうした店舗では在庫過多になりがちです。一方で、低月商店舗への引き当て数は少ないため、「欠品しているのでもっと送ってほしい」という声もあり、結果的に在庫の偏りやアンバランスが生じていました。

――以前はどれくらいの頻度で店間移動をしていましたか

坪井様 ほとんどしていませんでした。在庫課題というと仕入や出荷の調整が必要ですが、店舗ごとの在庫の偏りを解消し、在庫を平準化するうえで店間移動は即効性のある有効な手段だと考えていました。

しかし当時はどこかの店舗で在庫過多になっていたり、滞留在庫を動かさないと新商品がバックヤードや店頭に入らなかったりと、ネガティブな理由で移動をしていました。「とりあえず面積が広く月商が高い店舗に送ろう。」など、応急措置的な考え方になっており、大きな課題を感じていました。

――FULL KAITENを導入した経緯を教えてください

坪井様 前段でお話ししたような課題があり、人力での分析に限界を感じていました。仮に人員を補充したとしても、教育や作成したリストの再確認などが必要で、業務の属人化は解決しないためシステムの導入を検討することになりました。丁度そのタイミングで、MDの部署でFULL KAITENの導入が決まり、私の担当分野でも痒いところに届きそうなシステムだと思ったので、お話を伺うことにしました。

筆者(斉藤_フルカイテン広報) 貴社は以前FULL KAITENを解約なさった経緯がありますが、今回再契約してくださった理由を教えてください。

坪井様 私は以前のFULL KAITENの使い勝手なども知っているので、初めは「あのFULL KAITENか…。今はどうなっているのだろう?」と期待と不安が織り交じったような気持ちでした。ですがお話を聞くと、当時の機能からかなり進化していて、弊社がしたいことを叶えられそうだと思いました。

加えて、貴社のサポート体制がとても充実している点も決め手になりました。支援担当の矢田(フルカイテン プロダクトカスタマー部・部長)さんと永田(フルカイテン プロダクトカスタマー部)さんが非常に熱心で、「貴社の今の課題感を解決します!」という熱量で向き合ってくださったので、人で大きく心を動かされた側面もあります。

斉藤 解約時と比べて、機能面ではどこが進化したと感じましたか?

坪井様 以前は客単価を上げる商品の分析と値引きの判断でFULL KAITENを使っていましたが、施策の成果が分かりづらかったです。値引きを推奨する商品が分かっても、いつどれくらいの値引き率を適用すればよいかまでは分かりませんでした。今はそれも分かりますし、施策を実施した成果も振り返りやすく、効果検証までできるようになりました。

――どのようにFULL KAITEN〈店間移動〉を活用していますか

坪井 主にアウトレット販路のアウトレット専売品、プロパーチャネルや大手量販店からの返品商品(型落ち在庫)を対象に月に1度店間移動を実施しています。アウトレット専売品は計画を立てて販売しているため在庫の奥行きがある、返品商品はSKUもサイズ構成比もバラバラという特徴があります。

倉庫に在庫がある場合は出荷の定数を調整し各店のバラつきを改善することができますが、倉庫に在庫が無い場合は店間移動しか策はありません。この場合に、FULL KAITEN〈店間移動〉を活用しています。

FULL KAITEN〈店間移動〉では商品の絞り込みなど様々な設定ができますが、あまり細かく設定はしておらず、基本的にFULL KAITENが算出したデータを信じて移動しました。移動数が10点以下の商品に限って、送料と物量の採算が合わないので簡単に調整しています。

斉藤 AIの予測に抵抗を示す方もいると思うのですが、FULL KAITENが算出した移動リストを信じることに抵抗はありましたか?

坪井様 なんとしてでもトライアルを成功させたいという気持ちがあったため、中途半端にリストを編集して善し悪しが分からなくなるくらいなら「思い切って信じよう。」と考えました。そのため、特に抵抗はありませんでした。

株式会社ドーム 坪井大樹氏

斉藤 店舗の皆様からはどのような声が寄せられましたか?

坪井様 最初は、「なぜこの商品を移動するのか?」や「なぜこの商品が届いたのか?」という声も多数ありました。

ですが、まずは会社全体として在庫の現金化が重要であることと、「自店のバックヤードを見てみてください。」ということを伝えました。

斉藤 店間移動業務は店舗の皆さんにとって追加業務なので、必要性などを理解していただくのは大変でしたか?

坪井様 初めは大変でした。今までは品番単位での移動でしたが、今回はSKUごとに移動する必要があったため、FULL KAITENがどのように余剰と欠品を判断しているのかの仕組みも理解していただくところからはじめました。

商品のピックアップや梱包など店舗の負荷があることは確かですが「計画未達は何としても避けよう。」というコミュニケーションを重ねた甲斐もあり、1回目の移動から良い成果が出ました。

1回目から結果が出てくれたことにより、店舗からの反応も良い方向へと変わっています。

人手では不可能だった分析が1時間で完了。1度の店間移動で費用対効果を実感

――FULL KAITEN〈店間移動〉導入で創出した成果を教えてください

坪井 1度の移動でFULL KAITENの年間利用料を回収できるほどの粗利を創出することができました。

今まではほとんど店間移動を実施していなかったため、単純に在庫を動かしただけでこれだけの成果が出るのは凄いことだと思っています。在庫消化の観点でも、不動在庫と呼ばれていた商品でも移動したら売れたため、効果がありました。

加えて、今までは2日ほどかかっていた店間移動リスト作成が1回あたり1時間に短縮し、業務改善も大幅に進みました。今までは店舗数×SKU×その他条件などパズルのように考える必要がありましたが、クリック操作だけで完了するようになっています。

個人的には、属人化や業務効率化を鑑みると、新たに人員を補強するよりもFULL KAITENを導入した方が合理的だと思います。ディストリビューターの業務は売上に直結するため大きな責任が伴いますが、もし今FULL KAITENが無くなってしまった場合、リソースなどを鑑みると店間移動を諦める領域だと思います。

今はどの企業も優秀な人材の獲得に苦戦していらっしゃると思いますし、教育や、分析結果のダブルチェックなどをする必要も出てきます。FULL KAITENはそのような必要もなく、部署異動や欠勤すらありません。

また、元々4~5名で業務を実施していましたが、今は実質1人で行なっています。新たに生まれた時間で店舗とのコミュニケーションをとるなど、本来取り組みたいことに時間を使えるようになりました。

手厚い支援で利用が定着。在庫最適化に向けた次なる挑戦へ

――実際に導入してみてお役に立てている点は何ですか

坪井 お世辞でも何でもなく、弊社支援担当の矢田さんと永田さんのサポートがあってのFULL KAITENだと思っています。

今まで様々なシステムを導入してきましたが、サポートは最初だけでそのあと徐々に操作しなくなってしまうということがありました。ですが、FULL KAITENは手厚いサポートや定例のミーティングもあるので利用が定着しています。同僚も同じように思っていると思います。

――さらにFULL KAITENを使いたいと思っている領域や構想を教えてください

坪井様 店間移動で大きな利益を創出することができましたが、店舗ごとに在庫の偏りが出ていたことがそもそもの課題です。今後は、倉庫から店舗の出荷を適正にしてそもそも店間移動をしなくてもいいようなアプローチにも取り組むことで、全体最適を推進していきたいと考えています。

すでにFULL KAITEN〈倉庫出荷〉のPoCを進めており、売れ筋商品と死筋商品の在庫日数(何日分の在庫を持つか)を別で設定できると更に良いと感じています。直近では商品ランクに応じた在庫日数の設定に関して一緒に取り組んでおり、これが形になるとどのような小売業様でも活用が進むのではないかと思っています。

現在はFULL KAITENで出力した出荷リストを弊社の基幹システムに手動で取り込んで出荷指示をかけていますが、今後はこの工程を自動化したいと考えています。

余談ですが、FULL KAITEN〈倉庫出荷〉のPoCで学ぶことが多く、今取り組んでいる仕事の中でも特に面白い仕事の1つだと思っています。

――FULL KAITENへの要望はありますか

坪井様 強いて言うなら、施策を実施したあとの振り返りで使う効果検証画面を、誰が見てもパッと善し悪しが分かるようになると嬉しいです。

今は毎回貴社が振り返りをまとめてくださっていますが、施策をしてみてどうだったのかをササっと振り返れると、直近や次年度の対応なども考えやすくなると思います。 

編集後記

今回の取材で、FULL KAITENを導入し成果を出している企業に共通する特徴を再認識しました。

それは「現状維持の先に成長は無い」と考えていらっしゃる点です。

新しいことを始めるのは大変なので「現状維持がよい。」という気持ちや周囲に流されそうになることもあると思います。

しかし、ドーム様は改革しようという意思が非常に強く、弊社のシステムが信頼に値するものなのか判断するためにも「やるなら思い切って信じよう。」と決め、FULL KAITENでの店間移動に全社で取り組んできました。

新しい取り組みで上手くいく企業、人というのは、変わる意思があるかどうかなのだろうと感じた取材でした。