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【小売企業の客数に関する調査】市況変化で止まらぬ客数減|今後は客単価向上が鍵に

2022年から2024年、小売業の客数は右肩下がりに

フルカイテン株式会社は、アパレル・ライフスタイル企業の客数に関する調査を行いました。弊社が開発・提供する在庫分析クラウド「FULL KAITEN」の導入企業を対象に、2022年1月から2024年12月までを解析したところ、毎年客数が減少していることがデータから裏付けられました。

下図は、客数が減少/増加した企業数を表しています。

2022年と2024年を比較すると、客数が減った企業の割合は118.18%、客数が増えた企業数は41.94%となりました。

人口減少や高齢化、小売市場の成熟、オーバーストアなどの面でも、客数増より、少ない客数でも客単価を向上させることが重要です。加えて、客数を増やす施策には販管費がかかるため、利益観点でも客数増よりも客単価増の方が収益性を高める経営に繋がります。

本ブログでは、客数減少の背景や、「客単価を上げる」戦略の重要性に関して解説します。

客数減少の背景

客数の右肩下がりは、以下のような要因が絡み合っています。

1.経済的要因
世界的な景気減速やインフレが消費者の購買力を低下させています。また、消費者が支出を抑える傾向が見られ、以前に増して財布のひもが硬くなっていると考えられます。

日本総合研究所の報告によれば、根強いインフレが家計の購買力低下を通じて景気を下押ししており、先進国の消費者物価はなお高い伸びを示しています。これにより、家計の消費活動は慎重化し、日本も1964年に加盟したOECD諸国の実質可処分所得は前年と比較して減少しています。

中国初のオンラインファストファッション小売業者SHEIN(シーイン)や、同じく中国発の新興ECモールTemu(テム)の台頭などからも、消費者の低価格志向が垣間見えるのではないでしょうか。

参考:Temuと夢展望が提携|視線は世界市場へ

これらの話題からも、世界的な景気減速やインフレにより、消費者の購買力が低下し、支出が抑制されている状況であることが分かります。

2.オンラインショッピングの普及
EC市場の急成長により、従来の店舗に足を運ぶ機会が減少しています。特に利便性や価格競争力で優位なオンライン店舗が、多くの顧客を取り込んでいます。

日本国内のEC市場規模は2022年時点で前年比約9%増加しており、特にアパレル・雑貨のカテゴリーでオンライン化が進行中です。(経済産業省「電子商取引に関する市場調査」)

3.コロナ禍による消費スタイルの変化
新型コロナウイルス感染拡大を契機に、外出控えが定着したことで店舗への来店が減少しています。「不要不急の消費」を控える風潮が続き、アパレルや生活雑貨などの購買優先度が低下していると考えられます。

経済産業省の報告書によれば、2020年以降、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う外出制限等の影響で、衣料品等の国内市場規模は縮小し、2019年の11.0兆円から2021年には8.6兆円に減少しています。

また、繊維産業流通構造改革推進協議会(FISPA)によれば、2020年のアパレル製品(外衣、下着、補正着、寝着、乳児用の合計)の国内供給量は35億7,280万点で、前年比10.3%の減少が報告されています。

これらのデータから、2020年以降、外出自粛等の影響で「外出着」の需要が減少し、国内アパレル市場規模も縮小したことが示唆されています。

利益面でも客単価の向上が鍵

人口減少や市場の成熟といった市場環境では、客数を劇的に増やすのは困難です。

客単価を上げるには「客数UP」と「客単価UP」のアプローチが必要になりますが、どちらのアプローチを取るかは商売状況により異なります。

認知や市場シェア拡大のいわゆる”拡大期フェーズ”の場合は、マーケティング費用を投下し、客数を取りに行く施策が必要と言えます。

ただし売上のトップラインは引きあがる一方で、コスト投資をするための販管費も上がります。

成熟期に入っている日本市場では、売場開発や接客強化で販管費を抑えた粗利(筋肉)体質な経営を行うことで、客単価UPすることが重要だと言えます。

商売状況に応じた、客単価向上の重要性を解説した図

加えて、客数を増やす施策は販促等のコストが高く、利益面でも客単価の向上のほうが有効だといえます。

なぜなら、「客数」を上げるとレジ対応、お問い合わせ対応、店舗人員調整が必要となり販管費(人件費)がかさみます。

これらは店舗運営している人からすると、コスト高であることは容易に想像ができると思います。

現在、店舗人員の効率化が一般的となっており、客数UPは店舗の疲弊にも繋がる恐れがあります。そのために客単価UPの方がコストパフォーマンスよく利益率向上を狙うことができるので、客数UPより市況にも合っていると考えられます。

客数とコスト(人件費)の関係性を表した図

実態は、客単価を上げる具体的な対策が不透明で、高単価商品の販売や追加一点の合わせ買い提案に留まっている課題があります。

以下の理由からも客単価向上は重要です。

1.効率的な収益拡大
同じ客数であっても、1人あたりの購買金額が増えれば、売上全体が向上します。これにより、大規模な広告投資を必要とせずに利益を改善できます。

2.ロイヤルカスタマーの育成
客単価向上に繋がる取り組みは、顧客満足度を向上させる施策と密接に関連します。例えば、顧客が求める商品ラインナップの強化やサービス品質の向上は、リピーター増加の基盤となります。

3.競争優位性の確立
客単価向上に成功すれば、競争環境が厳しい市場でも安定した収益を確保でき、長期的な競争力を維持できます。

客単価を上げるための具体的な戦略

客単価は売上高 ÷ 購入者数で計算するため、少ない購入者数で多くの売上を生むことが客単価がアップする条件になります。つまり、売上高が同じでも、より少ない購入者数でその売上高を生んでいる客単価帯の主力商品の方が、客単価を生む力は高いといえます。

併せ買いされると客単価が低くなる商品も存在するため、全ての商品を対象に、以下のように区分けし施策を実行することが客単価向上に有効です。

①客単価が高いが併売回数が少ないので、購入頻度が低く打ち出し方に工夫が必要な商品群
②客単価と併売回数が低いので、販促強化にリソースを割く優先度が低い商品群
③客単価と併売回数が高いので、販売を強化すべき商品群
④併売回数は多いが客単価が低いので、売れても売上や粗利に対する影響が小さい商品群

FULL KAITEN〈セット提案〉で実現できること

多くの企業では、売上上位品や新商品を優先的に露出するケースが多いですが、弊社が開発・提供するFULL KAITEN〈セット提案〉を活用すると予測値を用いた消化の考慮をし「売るべき商品」を選定することが可能です。

さらに、レシートデータの分析をベースに商品毎の客単価を可視化し客単価が上がる商品を誰でも簡単に発見できます。

黄色く塗った個所が、在庫が潤沢にある粗利貢献度が高い商品群(FULL KAITENでBetter在庫と名称がついている箇所)

3ステップで施策リストが作成可能なため、小売業の本部だけではなく顧客の最前線にいる店舗スタッフが意思決定をし、スピード感をもって売り場の改善などに繋げることが可能です。

本製品を導入した株式会社ムラサキスポーツ様では、店舗のスタッフが客単価を上げる商品を分析し、実際に売り場の陳列を改善したところ施策を実施した期間中に創出粗利額1.4倍、客単価 伸長率は20%伸長という成果を創出しています。

ムラサキスポーツ様の成果はこちら

FULL KAITEN〈セット提案〉の資料ダウンロードはこちら

持続的成長のための視点転換

客数減少という厳しい現実の中で小売業が持続的な成長を実現するためには、客単価を向上させる施策に注力し、既存顧客の価値を引き出す取り組みを強化することが鍵となります。

消費の回復が本格的になってきたとはいえ、国内は人口減に直面しており、業績を伸ばしている会社は客単価の向上に注力する方向へ転換しています。適切な販売力を身につけ、在庫を効率的に利益やキャッシュフローに変えることで、過剰在庫や値引き依存、在庫評価減といった悪循環を回避できるでしょう。

在庫課題のご相談や、「FULL KAITEN〈セット提案〉の詳細を知りたい」という方は、こちらにお問い合わせをお待ちしております。

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