小売業が知っておくべき商品ライフサイクルとは?|利益最大化の鍵を基礎から徹底解説
商品には必ず投入〜終売までの”ライフサイクル”が存在します。そして小売業においては、このライフサイクルに応じて施策を実行することが利益最大化のために、何よりも重要です。
本記事では、弊社主催セミナーでも毎回好評いただく商品ライフサイクルについて、基本から徹底解説します。
商品ライフサイクルとは
商品ライフサイクルとは、商品の投入から完売までのプロセスを指します。概念としては、マーケティング用語の一つである製品ライフサイクルと同じものです。
特にシーズン性の高い商品の場合は、売れる時期が明確なため、時期を逃すと途端に売れなくなります。そのため、利益を最大化するためには、商品ライフサイクルの5つのフェーズに沿って施策を実行することが重要になります。
- シーズンイン:商品立ち上げ期間。売上は低い
- ピークイン:売上が大きく伸長し、売場拡大期間
- ピーク:最も売上に貢献する期間
- ピークアウト:売上が大きく下降し、売場縮小期間
- シーズンアウト:商品売り切り期間。売上は低い
商品ライフサイクルを定義していく上では、自社の戦略に応じて、各シーズンの販売期間15w(約3ヶ月)〜25w(約5ヶ月)を設定しましょう。また、商品の属するシーズン毎(春・夏・秋・冬)で定義すると、いつ、何をすべきかが明確になります。
商品ライフサイクルを把握するメリット
商品ライフサイクルを把握することで、欠品や過剰在庫などの在庫問題を回避することが可能になります。
例えば、シーズンイン〜ピーク前半は、販売数や売上が大幅に伸長していく時期ですが、この売上分や売場を拡大した分の在庫投入が後ろ倒しになることで、欠品リスクが高くなります。
また、ピーク後半〜ピークアウトの時期は、販売数や売上が下降していきます。ですが、売上ピークの波に沿って闇雲に売上分の在庫を発注してしまうと、納品はピーク後になるため在庫過多の原因となってしまいます。
もちろん、商品のシーズンインからシーズンアウトは感覚として持たれている方が多いかと思います。しかし、あくまでも感覚のため、少しでも施策や在庫投入のタイミングがズレてしまうと在庫問題の発生原因になってしまいます。
そのため、商品ライフサイクルの各フェーズがいつからいつまでなのかを把握することが重要なのです。
また、図2ではシーズンごとに定義をしていますが、商品カテゴリーごとに定義することがベストになります。例えば同じ冬シーズンでも、ニットとコートのシーズンインは違うタイミングで発生するためです。
商品ライフサイクルは定番品を扱う企業でも定義するべき
上記ではシーズン性の高い商品を例に解説しましたが、雑貨などの定番商品においても商品ライフサイクルを定義・把握することが重要です。
一般的に定番商品は、「在庫は回転していないが、置いておけばいつか売れる」「売れていないが品揃えとして必要」などの考えのもと、売り切り期限が設定されていないケースがほとんどです。
この考え方はもちろん間違ってはいません。しかし「置いておけばいつか売れる」という考え方の裏側には以下のようなコストが隠されており、これらを踏まえて滞留している在庫は本当に必要なのかを考える必要があります。
- 在庫を倉庫や店舗に置くための保管料
- 在庫を扱うための人件費
- 滞留在庫を保管し続けることによる販売機会ロス
- 滞留在庫を保管し続けることによる評価損
また、滞留在庫を放置し続けることで、消化の打ち手が値引きのみになってしまい、粗利毀損の原因となります。
そのため、定番商品にも新商品投入〜終売までのライフサイクルを設定し、適切に消化を進めることが利益最大化のために重要なのです。
商品ライフサイクルを定義するポイント
①フェーズごとに消化率目標を設定する
まずは、過去実績なども参考にしながら、フェーズごとの消化率目標を設定しましょう。
消化率を決めておくことで、計画通りに進んでいるかを確認できる他、消化率の未達/達成に応じて、次のアクションを決めやすくなります。
②誰でもできるように形式化する
このように、商品ライフサイクル毎の消化率目標と対策をパッケージ化することで誰もが同じ基準で意思決定をすることができます。
特に商売の計画修正は、人によって判断基準が大きく異なり、社内コミュニケーションに大きなコストがかかることが多くあります。
そのため、意思決定をパッケージ化し、知見を社内に残していくことで、再現性のある仕事にしていくことができるのです。
まとめ
- 商品ライフサイクルとは、商品の投入から完売までのプロセスのこと
- 商品ライフサイクルを把握することで、欠品や過剰在庫などの在庫問題を回避することが可能になる
- 商品ライフサイクルを定義する際は、フェーズごとに消化率目標とそれに応じた施策を決めておき、誰でもできるように形式化することが重要