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【定番品を扱う小売企業向け】在庫回転率を上げる『在庫戦略』|セミナーレポート

2023/8/23(水)に、オンラインセミナー「【定番品を扱う小売企業向け】在庫回転率を上げる『在庫戦略』」を開催いたしました。

当日ご参加いただきました皆様に、御礼申し上げます。

本記事では、数々の企業を支援してきたメンバーがセミナー内でお伝えした以下2点についてご紹介します。

  • 在庫回転率を上げる3つのポイント
  • 在庫コントロールがうまくいった業務ルールの設定事例

登壇者:田中 大介(フルカイテン株式会社カスタマーサクセス 責任者)
2007年にアクセンチュア株式会社に入社。大手アパレル企業を中心にMD、DB、店舗運営の領域にて様々な業務改革/DX推進プロジェクトに従事。
その後、化粧品ブランドにて店舗運営統括責任者、ホームセンターにて経営戦略室マネージャーとして事業会社を経験。
2022年4月よりフルカイテンに参画。カスタマーサクセスチームの責任者として、定番品を扱う企業を中心に複数の小売企業を支援を行う。

登壇者:杉山 茜(フルカイテン株式会社カスタマーサクセス)
繊維商社にて大手セレクトショップ向けOEM営業として16年間従事。
その後、アパレル向け生産支援システムを展開しているスタートアップにて、営業・カスタマーサクセスマネージャーとしてOEM事業 ニットチーム立ち上げ・SaaS事業 カスタマーサクセスチーム立ち上げ・システム改修プロジェクトを実施。
フルカイテン株式会社カスタマーサクセスチームにおいて人材育成を務める他、アパレル・雑貨企業を中心に様々な顧客支援を行う。

【お役立ち資料】滞留在庫を効率的に消化させる方法を3ステップ解説

よくある在庫課題

田中:まずは、みなさんが抱える在庫課題について、整理していきたいと思います。

  • SKUが多く、全てを管理しきれない
  • 在庫管理が属人的で、Excel職人がいないと在庫データが見えない
  • 在庫回転率が悪いのは分かるが、どこから手をつけていいか分からない
  • 滞留在庫に対する打ち手が少ない(値引きや売場変更が難しい)
  • 滞留在庫をキャッシュに変えられず、仕入れが十分にできない

最初の2つは在庫管理に関する問題です。品番/SKUが多いために全ての在庫を管理しきれていない、また、在庫のデータ管理が属人化しており、担当者に聞かないと状況がわからない、といった課題です。

そして、在庫状況を改善する際に問題となってくるのが3点目と4点目です。特に3点目は、適正な在庫管理が行えていないため、滞留在庫がどれだけ発生しているかなどの状況が把握できていないことが大きな原因に挙げられます。加えて、滞留在庫となると値引きや売り場変更が難しく、販促の手段が限られてしまうことも、在庫を消化できない大きな理由です。

その結果、滞留在庫が発生しても消化しきれず、資金が在庫として固定化し、新商品の仕入れや開発などへの投資が十分にできなくなってしまいます。

このように、個々の在庫課題が互いに影響を及ぼしあうことで、悪循環が起こっているのです。

滞留在庫のありがちな考え方

田中:滞留在庫のありがちな考え方として、「置いておけばいつか売れる、売れなくても品揃えとして必要だ」というのがあります。

もちろん、これも間違っているわけではありません。しかし、いずれは売れる商品もその裏側には様々なコストが隠されています。

例えば、在庫を保管するためには倉庫の賃借料や光熱費、加えて、在庫の運搬作業による輸送費や人件費がかかります。また、滞留在庫があることによって、他の商品を入れられずに機会損失が発生したり、在庫の品質が落ちることで評価損が発生します。

在庫を保管するということは、様々なコストと天秤のような関係だと、改めてご認識頂きたいです。

【お役立ち資料】滞留在庫を効率的に消化させる方法を3ステップ解説

在庫回転率を上げる3つのポイント

田中:それでは、在庫回転率を上げるポイントについてお話したいと思います。 

まず、在庫コントロールには3つの要素があります。

  1. 滞留在庫の消化促進
  2. 売れる定番商品のリピート
  3. 新商品の開発・仕入れ

1つ目は滞留在庫の消化を促進することです。

在庫を消化して、新たなキャッシュを作るのが目的になります。

滞留してしまった在庫はそのままにしても売れないケースが多いため、思い切って値引きをするというのが大事です。

2つ目は”売れる”定番商品をリピート発注することです。

ここでは”売れている”ことがポイントです。売れる商品を特定し、それを定番商品としてリピート発注することで、売上・粗利のベースを作ることができます。

確実に売れる定番商品を固めることで、売上粗利のベースをしっかり作ることができます。

3つ目は新商品の開発・仕入れをすることです。

滞留在庫を消化しキャッシュを作った上で、売れる定番商品で売上・粗利のベースを作り、新商品の開発に投資する、という流れが理想です。

新商品を投入することで、売上を引き上げ、売り場の鮮度を保つことができます。

この新商品の開発・仕入れは、まさにブランドの真価が問われる部分だと思います。

弊社(フルカイテン)が提供しているサービスでは、1つ目と2つ目の部分にアプローチしておりますので、本日はこの2点に焦点を当てて、ポイントを3つご紹介したいと思います。

1.在庫目標の設定

田中:まず、事業全体の在庫をコントロールするために在庫目標を設定しましょう。

まず、売上予算から在庫回転率目標を設定し、そこから在庫目標金額を算出します。

例えば、売上予算が1億円だった場合の在庫回転率目標が4.0であれば、在庫目標金額は2,500万円になります。

在庫目標金額を設定し、現在の在庫金額と比較することで、目標からの今の状況がどれくらい乖離しているかを確認することができます。

在庫をコントロールするためには、このゴールと現在地の距離を把握し、その差をどう埋めるか戦略を立てることが重要です。

2. 滞留在庫の特定

田中:2つ目のポイントは滞留在庫を特定することです。

在庫を減らすには、消化促進を行う品番を明確にしましょう。

そのために、まずは滞留在庫の判断基準となる数値を設定します。

その上で品番ごとに在庫回転率または在庫日数を算出し、基準値と比較することで、滞留在庫を洗い出すことができます。

例えば、在庫日数が300日以上のものを滞留在庫と定義すると、下の図では品番Eが300日を超えていることがわかり、これらの在庫を滞留在庫とみなすことができます。

このように、基準値を超えたものを滞留在庫とすることで、消化促進するべき商品を特定することができます。滞留在庫が特定できたら、それらの在庫の消化プランを立案し、実行しましょう。

3.商品ライフサイクルの構築

田中:ポイント3つ目は商品ライフサイクルの構築です。これが今日、最もお話したかったポイントです。

弊社では、新商品の投入から終売までのサイクルのことを商品ライフサイクルと呼んでいます。

在庫コントロールをする上では、このライフサイクルの中で誰が、いつ、どんなアクションをするのかをルール化することがとても大事です。

上図は企業様をご支援する中で、実際に決めたルールの一例になります。

まず、新商品を投入した後は、定番商品を含めて、必ずここまでに売り切るという販売期限を設定します。上述した通り、「置いておけば、いつか売れる」という考えから、定番商品は販売期限を設定しない場合が多くあります。しかし、在庫回転率を上げるためには非常に重要なアクションです。

そして、この期限を設定した時に、売上が好調な商品があったとします。そのような商品も最初から定番化を決めるのではなく、必ず売り切り期限を設定した後に判断しましょう。

判断の結果、定番化する場合はリピート発注をかけます。 

これが先ほど、在庫コントロールの3要素という部分でお話した「売れる商品のリピート」という部分ですね。

リピート発注した商品は露出を強化して打ち出していきますが、売上の良い状態がいつまでも続くわけではありません。この売上が下り坂になってきたタイミングで、リピート発注を止めるという判断が必要です。発注を止めたら、また冒頭の売り切り期限の設定に戻り、終売に向けたアクションをしていきましょう。

具体的には、次のようになるでしょう。

まずは倉庫から在庫を出し切り、在庫移動や店頭での売り込みによって消化を促進します。拠点ごとのばらつきが加速してきたら、大型店やECなどに在庫を集約しましょう。最後に、値引きができる場合は値引きを行い、できない場合は廃棄を行います。

このように商品ライフサイクルに応じたアクションを定義した上で、それらの業務をいつ、誰が、どんな基準でやるのか、というのをしっかりルール化するのが最大のポイントです。

これができてる企業様は、かなり少ないのではないでしょうか。

【お役立ち資料】滞留在庫を効率的に消化させる方法を3ステップ解説

具体的な業務ルールの設定事例

田中:ではここで、実際に企業様をご支援させていただいた際に設定した、具体的な業務ルールについてご説明いたします。では、杉山さんお願いいたします。

杉山:はい。ご支援内容に入る前に、前提としてFULL KAITEN〈在庫分析〉の機能についてご説明いたします。

FULL KAITEN〈在庫分析〉にはクオリティ分析という機能があり、各社様で今お持ちの在庫を、AIの予測を使って以下のように4象限に分類することができます。 

縦軸はその在庫が今後どれだけの売り上げを作るかを示す売上貢献度、横軸は完売予測日(左から早い順)という形になっています。

在庫は売れる・売れないの2択ではなく、元々は売れる商品だったが、何かしらの要因で売れなくなってきた商品が存在します。

これらの商品を打ち出すだけで、今ある在庫で利益を上げることができるにも関わらず、その商品が認識されず隠れている可能性が高いのです。

そこで、FULL KAITEN〈在庫分析〉は在庫を売上貢献度と完売予測日の2軸によって4つに分類することで、在庫の状態をより正確に把握することができます。

例えば、上図のBetterに分類されている在庫は、完売予測日が遅い(消化進捗が遅い)商品であるため、通常なら「売れない」在庫として見られてしまいますが、本来は売上に貢献する商品群です。そのため、露出強化や期間限定価格で売り出すことで、利益につなげることができます。

また、この在庫を分類する時に用いる2つの指標は、未来の予測に基づいた先行指標となっています。先行指標とは、売上や利益などの数値が将来どのようになるかを示唆する数値のことです。

通常、在庫分析に使われる指標は、売上や在庫消化率などの過去の結果(遅行指標)になりますが、在庫課題を解決するためには、その結果が起こる前に行動を起こさなくてはなりません。

FULL KAITEN 〈在庫分析〉ではその予測に基づいた指標が見れるため、しっかりと結果が起こる前に施策を打つことができます。

では、ここから、具体的な業務ルールの事例についてお話させていただきます。

本日は、以下の図の中で特にオレンジで囲っている、リピート発注、露出強化、リピート発注停止、値引きの4つについて事例をご紹介します。

業務ルール事例①:リピート発注

杉山:はじめに、リピート発注の業務ルールについてお話いたします。

<業務ルール>
・実施頻度:毎週月曜
・対象:全店舗
・各店舗において、在庫週数がリピート発注のリードタイム(=2週)未満になっており、販売数ランキング上位30位以内の商品を抽出
・抽出したリストを各店舗に配信
・店舗は配信リストの商品を発注し欠品を防ぐ

このお客様は、各店舗ごとにメーカーさんに追加発注を行ってらっしゃる企業様です。

そのため、まず決めたルールは、 毎週月曜日に在庫週数が2週間未満になっており、 販売数のランキングが上位30位以内の商品っていうのを抽出し、本部から各店舗に伝達するというものです。

FULL KAITEN 〈在庫分析〉を使って選定する場合は、まず原点の完売予測週数を2週間と設定します。そうすると、左上の範囲(=Best在庫)には、完売予測週数が2週間より短く、かつ売上貢献度が高い(販売数ランキング上位30位)商品がマッピングされ、これらが上記のルールの該当の商品になります。

このルールにより、あと2週間以内に売り切れる可能性のある人気商品を特定して、欠品を未然に防ぐことができます。

業務ルール事例②:露出強化

杉山:次は、露出強化の業務ルールについてです。

<業務ルール>
・実施頻度
 ・SNS=毎週
 ・売場変更=毎月第一週と第三週
・対象:全店舗
・各店舗において、在庫週数が12週以上(=消化に12週以上かかる)商品で、尚且つ販売数ランキング上位30位以内の商品を抽出
・抽出したリストを各店舗に配信
・店舗は配信リストの商品をInstagram自店舗アカウントで配信し、販促する
・店舗は配信リストの商品を売れる売場に配置することで露出を強化する

この事例では、在庫週数が12週以上で、かつ販売数ランキング上位30位以内に入っている商品を抽出して、本部から店舗の方に配信するというルールを設定しました。

店舗はそれを受けてインスタグラムによる配信や売り場替えを行い、そのリストの商品の露出強化をします。 

FULL KAITEN 〈在庫分析〉では、原点の基準日のところに 完売予測週数を12週と設定していただくと、右上の範囲には 完売予測週数が12週より遅く、かつ売上貢献度の高い商品(=Better在庫)が分類されます。

このように分析を行うことで、「消化期日までに売り切れないが売れたら売上に貢献する商品」をピンポイントで選定することができます。

業務ルール事例③:リピート発注停止

杉山:次に、リピート発注停止の業務ルールについてご説明いたします。

<業務ルール>
・実施頻度:毎週月曜
・対象:全店舗
・各店舗において、在庫週数がリピート発注のリードタイム(=2週)以上になっており、販売数ランキング下位50位以内の商品を抽出
・抽出したリストを各店舗に配信
・店舗は配信リストの商品がリピート発注対象になっていないかチェックし、発注をしないようにする

先ほどのリピート発注のルールと同じく、毎週月曜日に在庫週数が2週間以上を要するもので、かつ、販売数ランキングが、下から50位以内になっている商品を抽出し、各店舗に配信します。

各店舗側では、配信されたリストの商品がリピート対象になってないかどうか確認をし、発注がされないように注意してもらいます。

FULL KAITEN〈在庫分析〉で選定する場合は、原点の完売予測週数を2週間と設定したときに、右下に分類される商品になります。これらは、完売に2週間以上かかる予測され、かつ売上貢献も少ない商品です。(=BAD在庫)

このような分析により、今後在庫の消化進捗が悪くなりかつ顧客需要も落ちると予測される商品を特定することができ、それらの商品のリピート発注を未然に防ぐことができます。

業務ルール事例④:値引き

杉山:最後に、値引きの業務ルールについてご説明をさせていただきます。 

<業務ルール>
・実施頻度:毎月末
・対象:全店舗
・各店舗において、在庫週数が12週以上(=消化に12週以上かかる)商品で、尚且つ販売数ランキング下位30位以内の商品を抽出
・抽出したリストを各店舗に配信
・店舗は配信リストの商品を値引き対象とし、消化を促進する

この事例では、各店舗で在庫週数が12週以上になっている商品で、販売ランキング下位30位以内の商品を抽出して、 本部から配信をし、店舗側は配信されたリストの商品の値引きを行うという形になります。

FULL KAITEN〈在庫分析〉で商品を選定する場合は、まず原点の基準日を12週と設定します。すると、それより消化が遅れ、かつ売上貢献度が低い場合は右下のBadに商品が分類されます。このBadの商品が今回抽出する対象になります。

では、私からのご説明は以上になりますので、田中さんにお戻しします。

FULL KAITEN〈在庫分析〉の製品資料はこちら>

在庫課題を解決する上で大事なポイント

田中:杉山さん、ありがとうございました。

では、最後に私から在庫課題を解決する上で大事なポイントをお伝えしたいと思います。

まずは、経営層から現場の人たちまで、在庫課題を共通の課題として認識して取り組むことです。1人の担当が課題感を持ってやるぐらいですと、なかなか改善していかないのが事実です。全員が共通の認識を持ち、それを方針として盛り込んで、運営を行っていくのが大切です。

またその上で、自社の商品ライフサイクルを設計し、業務ルールを策定しましょう。

ご自身の企業にはどういうアクションがあるか、それを実行するためにどんなルールが必要かを、本日ご紹介した商品ライフサイクルを参考に、ぜひ考えてみてください。

Q&A

Q1.  FULL KAITEN〈在庫分析〉の4象限で、Bad商品に分類されているが原点に近いところにマッピングされている場合でも、Bad商品のアクションを取ることになりますか。 

基本的には、分類された商品を機械的にピックアップするところまでは、必ずやります。 

ですが、そこに対して本当にそのアクションを打つべきかという判断は、その商品の特性とかにも合わせて行うとよいのではないかなと思います。

Q2. 商品投入時にはどれぐらい売れるかわからないため、売切の設定はしていないのですが、その場合は、どうすればよろしいでしょうか。

その場合であっても、何かしらの設定をする必要があります。振り返りをする上では基準の値を決めることはとても重要だからです。

なので、週どれぐらいとか、月どれぐらい売るかというのを、想定でいいので計画値として出しましょう。

Q3. リピート発注の業務ルールに関して、各商品でリードタイムが異なる場合はどういう風に設定されてますか。

リードタイムにばらつきがあるのは、当たり前だと思いますので、 同じリードタイムの商品をなるべく絞り込んでいただき、在庫週数をそれぞれ見ていく必要があると思います。

まとめ

  • 「いつか売れる」の考え方では、売れない商品はいつまでも残ってしまう
  • 在庫回転率を上げるポイント
    • まず滞留在庫をキャッシュ化し、新商品の開発・仕入れに投資するサイクルを回す
    • 全ての商品に消化期限を設定することで、滞留在庫を生み出さない仕組みにする
    • 商品ライフサイクルの各アクションについて、いつ・誰が・どんな基準で判断するのか?といった業務ルールを定義するのが重要
  • 業務の実行にあたっては、まず全員の課題認識が合わせることが非常に大事

【お役立ち資料】滞留在庫を効率的に消化させる方法を3ステップ解説

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