事例インタビュー

お客様と向き合う時間を増やしながら、在庫高1.9%の抑制かつ店舗の販売機会のロスを抑制!人材不足の課題にも向き合う取り組みとは

タビオ株式会社

靴下

小売
卸売
実店舗
EC

課題

  • 店長が在庫移動や倉庫出荷を実施していたが、在庫が個店最適になり、機会損失や余剰在庫が発生
  • 採用や人手不足に関して課題を感じており、店舗で接客をしたいのにその時間をなかなか取れない

解決策

  • FULL KAITEN〈倉庫出荷〉を導入し、各店舗に出荷数量を週2回メール配信。メールを元に各店舗で出荷数量を登録
  • 今後は全ての工程を自動化(データコネクト。別途費用が必要)し、作業時間は0になる見込み

定量成果

  • 在庫高1.9%の抑制かつ店舗の販売機会のロスを抑えた
  • 一店舗あたり、月8時間→月4時間に短縮(4時間×33店舗=120時間近く削減)
  • 荻窪店の店長様が、FULL KAITENの仕組みを活用して空いた時間で接客に注力し、同社で史上2人目のルミネストゴールドを受賞

1968年に設立し、ひたすら誠実に「お客様の足にやさしい靴下」を追い求めてものづくりを続けてきたタビオ株式会社様。現在では「靴下屋」「Tabio」「Tabio MEN」等の靴下専門店ブランドを日本全国に249店舗(2022年2月末時点)展開するまでとなりました。イギリス、フランス、中国でも「Tabio」を展開していらっしゃいます。

同社は従来、店長が在庫移動や倉庫出荷を実施していましたが、在庫が個店最適になり、機会損失や余剰在庫が発生する課題がありました。

今回は、同社で在庫の最適化に取り組む井上様と清水様に、抱えていた課題や導入による店長の大きな挑戦と成果、定量成果も伺いました。

※本稿に含まれる情報は、2024年12月時点のものです。

写真左から、弊社カスタマーサクセス内舘、タビオ株式会社 井上様、清水様、弊社プロダクトカスタマー部 部長 矢田

『現場主義』を最重視したい半面、在庫の全体最適に課題あり

井上様と清水様にお話を伺いました。

  • 清水様:マルチメディア企画部 部長(EC部門の統括)
    • FULL KAITEN導入時点では、全国にある直営店の統括を実施。直近で部署移動したため、EC部門の統括としてWEBの運営や物流改革にも携わっている
  • 井上様:システムソリューション部 部長(システム部門の統括)

――どのような在庫課題を抱えていましたか
清水様 弊社は在庫移動を行うディストリビューターを専任では置いていないため、店長が在庫移動業務を行っていました。店舗業務で忙しい中で他店の在庫状況などを確認する時間が限られていたことで、店舗ごとに在庫のバラつきが発生し店間移動に課題を感じていました。そのため当初は、売れる商品を売れる店舗に移動し、滞留している商品は売れる見込みのある店舗に移動することができるFULL KAITEN〈店間移動〉を契約していました。

矢田(弊社プロダクトカスタマー部) 御社のように、店長様が自ら手を挙げて店間移動と倉庫出荷の実務をまわすことは珍しいと思います。250近い店舗をお持ちなので、業務の手順も複雑になりそうですね。

清水様 はい。店長に大きな権限を持ってもらっていたのですが、そこに責任があまりついてきておらず、在庫過多になっていた側面はあったと思います。店長は良かれと思って実行してもそれが全体最適になっていない状況でした。

斉藤(弊社広報) 店長に大きな権限を持っていただくことを重視している理由を教えてください。

清水様 社内用の動画で弊社社長の越智勝寛が「タビオは情念的な会社」という表現をしています。情念というのは人の心に深く根ざした感情や、簡単には変わらない強い思いを意味します。仕組みでがんじがらめにして自由を奪うのではなく『現場主義』であることを最重視しており、現場を一番知っているのは店長という考えのもと、発注権限を店長に持ってもらっていました。

矢田 御社の情念に関してはご支援している際に強く感じていました。弊社とのミーティングに店長やエリアマネージャーも参加していただいていますが、すごい量の意見を出してくださいます。本部の清水さんが同じミーティングにいても、店長とエリアマネージャーは気を遣うことなく良い意味で一切壁がありませんでした。

斉藤 視点を変えて、粗利と売上の観点での課題はありましたか?

清水様 私は営業なので利益を出すことがミッションですが、店舗は売上で評価されるため売上重視になっている現状があります。

ショッピングモールなどのディベロッパーでは坪効率で評価されることが多いので、こちらも売上で評価されます。小売業では坪効率を上げるために値引きやノベルティも配布したり、利益確保とは逆の動きをしたりするケースもあるので、粗利も悪化しやすいのだと思います。

ディベロッパーには売上だけではなくて最適な利益と売上に加えて、ブランド力を評価していただくことで入居し続けられるようなブランドにしていきたいと思います。

写真左から、タビオ株式会社 井上様、清水様

人材不足を肩代わりできそうなサービスだと感じ、導入を決定

――導入に至ったきっかけは何でしたか
井上様 採用や人手不足に関して課題を感じており、店舗で接客をしたいのにその時間をなかなか取れないという課題もありました。そういう部分を改善したいという気持ちが大きかったですし、人材不足を肩代わりできそうなサービスだと思いました。

清水様 弊社は店長が裁量を沢山持っているからこそ、人件費にもそれが比例する傾向があると思います。今は最低賃金も上がっていますし、そういった観点でも役立つサービスだと感じています。

斉藤(筆者) 実際に導入してからは、売れる商品を売れる店舗に移動するFULL KAITEN〈店間移動〉の使用を中止し、不要な倉庫出荷を抑えて売上利益を最大化するサービス・FULL KAITEN〈倉庫出荷〉に切り替えていらっしゃいますね。このような決断をした経緯を教えてください。

清水様 店間移動をFULL KAITENで実施することで、在庫のばらつきを改善したいと考えていましたが、従来行っていなかった業務のため、店舗から「作業量が増えました。」という声が寄せられ、今までよりも作業負荷が上がりました。加えて、店間移動の施策を何度か実施したところ、弊社が想定していたよりも移動対象の商品が少なかったので、店舗で在庫のばらつきは発生していないことが分かりました。そもそも店舗で余剰が発生しやすい構造になっており、その結果、在庫のばらつきが発生していないという点を指摘いただき、倉庫出荷への切り替えを決めました。

カスタマーサクセスの矢田さんと内舘さんには粘り強く支援をしていただいており、途中で終わるのは成果に繋がらないと思ったので継続の判断をしました。

内舘(弊社カスタマーサクセス) 当時、御社から『後だしジャンケン早い者勝ち』という課題があると聞いた際にFULL KAITEN〈倉庫出荷〉で解決できるのではないかと思いました。この課題について詳しく教えていただけますか?

清水様 簡単に言うと、売れる店舗に売れる商品が行き渡らないという課題です。そうなった背景として、以前はこれから売れそうなものが分かりやすい傾向があったのですが、今はパルス型消費行動(2019年にGoogle社が提唱した新たな消費行動の概念であり、スマートフォンを眺めている際、瞬間的に気に入ったモノを即座に購入する行動)が増えています。その結果、SNSでバズった商品を見たお客様が「これはどこにありますか?」と問い合わせをくださいますが、それは生産と店舗在庫と連動していないことが多いです。

バズった商品は品薄になるので、店長が早い者勝ちで発注し店舗によって欠品と余剰が発生する原因になっていました。

FULL KAITEN〈倉庫出荷〉を導入することで在庫の全体最適に繋がりお客様や弊社も幸せになりますし、店長は電話で「在庫の振替をお願いします。」と電話し断られたりするやりとりも減ることを期待しています。

井上様 店舗では倉庫在庫数が見られない設定になっているので、欲しい分を発注する動きに繋がっているのだと思います。話題になればなるほど発注数が増え、本来必要ない数量まで発注しては実需が見えなくなってしまいます。これを弊社では『仮需』と呼んでいます。

今はだいぶは減りましたが、以前はバーゲン時期に対象品番をプロパーで発注できる期間を設けていました。店舗としてはプロパーで販売できたら利益を確保できるためバーゲン対象商品を大量に発注します。バーゲンが開始されると売価変更(値引き)をするので粗利を大きく毀損します。

資金力が大きい直営店が多くのバーゲン対象品番を抑えてしまうので、残った在庫がフランチャイズ店に届いたとしても内容が良くないので、フランチャイズ店のオーナー様から「直営店には本来我々が必要な在庫がありますよね?」というお叱りをいただくこともありました。
このように、在庫の供給量が全体最適になっていないという課題がありました。

――どのようにFULL KAITEN〈倉庫出荷〉を活用していますか
井上様 以前と今後の使い方に違いがあるので、分けてお話しします。

以前は、FULL KAITENが算出した倉庫出荷数を弊社が簡易的に作成したプログラムを経由し、各店舗に週2回メール配信していました。店舗ではメールが届いたらできるだけ数量変更や削除もしないように登録して、数量を確定する流れです。

今後は上記全ての工程を御社に自動化(データコネクト。別途費用が必要)していただくことに決めたので、私の作業時間は0になる見込みです。

矢田 今後は全自動化することが決まりましたが、ここに至るまで井上様の凄さを痛感しました。弊社がお客様とプロジェクトを進める際に、システムのご担当者様 VS 現場という構図になってしまうことがありますが、そんなことは微塵もありませんでした。

清水様 井上さんと一緒にFULL KAITENの推進を進めてきましたが、推進でぶつかった壁も全て井上さんが受け止めてくださいました(笑)

矢田 そうですよね。井上様は、現場のスーパーバイザーなど皆さんが言った意見を真摯に受け止めてすぐ行動して改善していらっしゃいます。

清水様 井上さんだけではなく、弊社のシステム部門のメンバーはまず聞いてすぐに行動してくださいます。

在庫高1.9%の抑制かつ店舗の販売機会のロスを抑えた

――FULL KAITEN〈倉庫出荷〉導入で創出した成果を教えてください
定量成果を創出した施策の詳細

  • 対象商品
    • 全商品
  • 実施期間
    • 2024年9~10月
  • 実施店舗
    • 33店舗

清水様 検証期間中で、在庫高1.9%の抑制かつ店舗の販売機会のロスを抑えることができました。販売機会のロスを防ぐことはもちろんのこと、私は営業なので「売上、利益をメインで見たいです。」と御社に伝えていました。今年は暖冬で施策を実施するタイミングがベストでなかったこともあり、全社的には少し苦しい状況もありました。そんな中でも、店舗が最も喜んだのは、発注時間が大幅に短縮できた点です。

店長が不在の際は店長以外が発注することもありますが、発注精度のバラつきが課題でした。

FULL KAITENの導入で在庫高が下がり、売上は他と比較しても同じぐらいの水準を維持できたので、精度も担保できていると判断しました。

斉藤 導入当初から、FULL KAITENが算出した数字を信じられましたか?

清水様 実は最初は皆「大丈夫なの?」と怯えていました。こっそり出荷数を追加したり、減らしたりしている人もいました(笑)

矢田 この状況ではなかなか成果が出ないと判断したため、清水様に率直な意見をくださりそうな店舗をピックアップしていただき、私と内舘で4店舗に訪問しお話を聞きに行きました。

そこで、出荷数に不信感を持っていらっしゃる方のお話も伺い、弊社側も軌道修正をして成果に向けて動いていきました。

――業務効率が上がったことで、どのような変化がありましたか
井上様 「この人がいないと店舗で発注できない」のような状況は無くなったのが大きな変化だと思います。

定性成果

  • 業務時間
    • 一店舗あたり、月8時間→月4時間に短縮
      • 4時間×33店舗=120時間近く削減

FULL KAITENで捻出した時間で接客を磨き、社内で13年ぶりにルミネストゴールドを受賞した荻窪店の店長

斉藤 倉庫出荷の成果報告会で、ルミネ荻窪店の店長 加藤様がオンラインで参加してくださったと伺いました。なぜ参加してくださったのでしょう?

清水様 弊社は「やりたい!」と思った人はどんな場にも出てくる社風です。すごく前のめりなので、冗談で「もうええで!」と言ってもやる気満々で参加しています(笑)

FULL KAITENの推進を本部だけで決めても絶対に上手くいかないので、いかに現場を巻き込んで進めていくかが重要です。その際にマネージャーや店舗にも前向きになっていただかないと成果は出ません。

斉藤 倉庫出荷の成果報告会で、荻窪店の加藤店長はどんなお話をしてくださったのですか?

清水様 FULL KAITENを今後も使いたいことと、機能など改善してほしい点を話していました。今は彼女が各店舗に「FULL KAITENを使った方がいいよ!」と自ら広報してくれています。

矢田 私と内舘が荻窪店に訪問した際に、加藤店長のやる気とバイタリティに圧倒されました。その場で倉庫出荷の成果報告会にも出席していただきたい旨をお伝えして、「ぜひ参加したいです!」と返答をいただくことができたので、参加していただくことになりました。

清水様 加藤店長はすごいですよ!FULL KAITENの仕組みを活用して空いた時間で接客を頑張って、弊社で史上2人目のルミネストゴールドを受賞しました。

斉藤 ドラマのようなストーリーで鳥肌が立ちました。ぜひ加藤店長へのインタビューもさせていただきたいです!

将来的には生産数の適正化まで繋げていきたい

――どのような課題を持っている方にFULL KAITENを勧めたいですか
井上様 人に依存しないような業務のオペレーションをまわしたい方にお勧めしたいです。

清水様 弊社のように店舗が発注権限を持つ企業様は少ないかもしれませんが、FULL KAITENのような仕組みを導入することで本社の狙いと店舗が実現したいことがリンクされて、全体最適なパターンが見えると思います。本部が決めた倉庫出荷数に対して店舗では「なんでこれが入荷するの?」と嚙み合わないまま誰も幸せにならず頑張って売ることを改善しませんか?と言いたいです。

――今後どのようにFULL KAITENを使っていきますか
清水様 弊社は奈良県に物流拠点があるのですが、そこでの欠品が一番の課題だと思っています。欠品は生産工場であるニッターへの発注数量にも繋がるので、 御社との取り組みが拡大していく要素はあると思っています。

井上様 理想を言えば、全店でFULL KAITENを導入して全店の提案数を算出し、これからの販売予測も加味して生産数の適正化まで繋げていきたいです。サプライチェーン全体まで広げられたら、弊社が本当にしたいことを実現できると思います。

――弊社カスタマーサクセスへのご意見を教えてください
井上様 いつも矢田さんと内舘さんには伝えていますが、「契約がゴールじゃないですよ!」という点です。課題が解決する見込みがあるから導入しているので、一緒にもっと良くしていきたいです。サプライチェーンの適正化まで一緒に取り組んでくださるなら非常にありがたいです。

清水様 個人的にはEC部門の統括担当になったので、物流改革をする必要があると思っています。現在ECの売上高は21.5億円ですが、これを5年以内に50億円に引き上げることをミッションとしています。物流は多くの改善点があり改革が必要なので、御社と取り組むことができる点もあると思っています。

ECではタイムセールを実施することもあるので、本当に適正な価格なのか検証することにも関心があります。

小売業では集客や売上を増やすために、10%オフとノベルティ施策を頻発することが多いですが、売上は得られても、粗利が減り物流の作業工数が大きく増えます。

先日、弊社の物流倉庫に行ってECでノベルティを入れる作業をスタッフの皆さんと一緒にしました。すると本当に手間がかかって骨が折れる作業でした。「これはやり方を変えなあかんな。」と思いました。

ですので、一律での値引きやノベルティに依存しないよう改善したいと思います。

――FULL KAITENへのご要望はありますか
井上様 弊社は店舗に大きな裁量があることもあり、新商品入れ替えなど店舗で展開しないと決めた商品を店舗へ入荷させないための設定などカスタマイズ設定ができるようにしたいと思っています。

倉庫出荷を自動化する「データコネクト」でそのような設定を試験的に対応していただけることになったので、店舗の裁量で柔軟にコントロールしやすくなると思います。

取材後記

取材の中で「タビオは情念的な会社」というお話をしてくださいましたが、それは節々から伝わってきました。

徹底した現場主義や、「挑戦したい!」と思ったことは誰に何と言われても貫き通す意志の強さを持っていらっしゃる社員の方のエピソードを聞いて心が揺さぶられました。

特にルミネ荻窪店の店長である加藤様が『FULL KAITENの仕組みを活用して空いた時間で接客を頑張って、弊社で史上2人目のルミネストゴールドを受賞した』というエピソードは今までの事例取材でも聞いたことがないストーリーで、ぜひご本人を取材し多くの方に『情念』を知っていただきたいと思いました。

望んでいる成果を出すのはツールだけではなく『人』なのだと痛感した取材でした。